20〜40代のリフォーム費用は50代以上の2倍超
20代~40代のリフォーム費用が急増している。
2024年度の住宅リフォームに関する調査(※1)によると、20~40代の平均リフォーム費用は662.6万円。一方、50代以上は281.9万円にとどまり、その金額は実に2.3倍に広がっている。
これまでリフォームの中心層は50代以上とされ、実際に実施者の約6割を占める。しかし20代~40代も約4割を占めており、人口比で考えれば若い世代の相対参加率は高い。しかも平均費用が大幅に高く、一部の高額案件による上振れとは考えにくい。
現場でも、若い世代の「中古+リノベ」の高額化が話題に上がることが増えており、リフォームの主役の世代交代が静かに進んでいるのを感じるのである。
データで見る上昇率。若い世代のリフォーム費用は2020年比で42%増
若い世代のリフォーム費用高額化の傾向は、ここ数年で顕著になっている。2020年度(※2)と2024年度(※1)のデータを比較すると、その変化は明確だ。
2020年度の20~40代の平均リフォーム費用は465.0万円。それが2024年度には662.6万円と、4年で約42.5%上昇している。
一方で、50代以上は268.3万円から281.9万円と、上昇率はわずか5.1%ほど。若い世代の伸び率は50代以上の約8倍に達しているのである。
若い世代のリフォーム費用が急増した背景には、単なる物価上昇ではない時代の変化がある。その要因を次章で見ていきたい。
建築費の値上がり幅以上の伸び率
20~40代のリフォーム費用は、建築費の値上がり幅以上の大きな上昇率となっている。
建築費はこの数年で20~30%ほど上昇している。「昨年できたものが、今年はもうできない」といった声が現場からも聞こえるほどで、例えば、住宅リフォーム費用の指標ともいえる「積算資料ポケット版リフォーム編」によると、
・2021年度版(※3):システムバスを新しくする 797,000円
・2025年度版(※4):同工事 952,000円(+20%)
といった具合である。
しかし、20~40代のリフォーム費用は同時期に42.5%増加。建築コスト上昇率を大きく上回っている。一方、50代以上はわずか5.1%増にとどまり、明らかに動きが異なる。
この差は、それぞれのリフォームの目的の違いによるものだ。20~40代は住宅の一次取得層であり、「これからの暮らしをつくる」ためのリフォームであるのに対し、50代以上は「今ある家をより快適に保つ」ための部分的リフォームが中心になる。
先述の2024年度の住宅リフォームに関する調査(※1)でも、「リフォームで実現したかった・したいこと」を見ると、20~40代では「耐震や省エネなどの性能向上」「長期優良住宅対応」「複数世帯同居の実現」「大規模模様替え」「改築・増築」など、大規模で性能や暮らし方を抜本から見直す項目の割合が高い傾向にある。
対して50代以上は、「一部の部屋の全面改修」など部分的なリフォームの割合が高く、リフォーム費用の伸び率から見ると、節約志向が高まっている印象だ。
つまり、同じリフォームでも、50代以上が維持・修繕型であるのに対し、20~40代は創造・再設計型であることが分かる。
新築価格の高騰による「中古+本格リノベ」へのニーズの高まり
若い世代のリフォーム費用が高額化している背景には、まず「新築価格の高騰」があるだろう。
首都圏の新築マンション価格はここ数年で急騰し、2025年の夏には平均価格がついに1億円を超えた(※5)ことがニュースにもなった。
一方、首都圏の中古マンションの平均成約価格は約4,900万円前後(※6)と差は大きく、差額をリフォームに充てれば間取りやインテリアを自由に設計し、十分な性能向上をしてもおつりがくる。
リフォームは予算配分の自由度が高い。まんべんなく費用が掛かっている新築とは異なり、自分がこだわりたい部分にしっかり費用をかけ、そうでない部分は節約するといった配分が可能だ。
例えば、間取りを家族構成に合わせて再構築したり、キッチンや浴室をハイグレード仕様にしたり、趣味の部屋にお金を掛けたり、注文住宅のような自分仕様の家づくりができる。若い世代のリフォームは、単なる「再生」ではなく、「再設計」なのである。
築浅物件では1,000万円を超える大規模リノベーションも珍しくない。家の取得方法には中古住宅を購入するだけでなく、親の家を受け継ぐケースも見受けられる。
「新築信仰」「仕方なく中古」の時代から、「中古を選んでつくる」へ。中古+本格リノベを選ぶ若い世代は、限られた予算の中で理想を形にする、合理的で戦略的な家づくりを行っているのだ。
住宅性能に対する意識向上と補助金活用が後押し
若い世代のリフォーム費用が高額化しているもうひとつの背景には、「性能向上リフォーム」への意識の高まりがある。
2024年度の住宅リフォームに関する調査(※1)によると、「リフォームで実現したかった・したいこと」で20~40代のトップは「省エネ性能を高める」である。中には、中古でも新築並みの性能を実現したいという要望も聞く。
築年数別でみても、築10年未満の住宅でその割合が高く、築浅中古を購入して性能を底上げする層が増えていることがうかがえる。
こうした背景には、制度の後押しも大きい。2024年は、国交省・経産省・環境省が連携して実施した「住宅省エネ2024キャンペーン」により、内窓設置や断熱改修などの省エネリフォームに大規模な補助金が支給された。
情報感度の高い若い世代がこの制度を積極的に活用し、性能向上リフォームに取り組んだと考えられる。また、長期優良住宅の増改築認定制度の活用率は20~40代で28.8%に達している。
さらに、「フラット35リノベ」のように購入費用とリフォーム費用をまとめて住宅ローンに組み込める制度も普及し、資金計画を立てやすくなったことも後押ししている。
若い世代にとって性能向上リフォームは、もはや特別な取り組みではなく、これから長く住み続けるための標準的な投資として広まりつつあるのである。
これからのリフォーム市場は新しい住宅取得のスタンダードへ
今どきの20〜40代のリフォームでは、デザインや暮らし方だけでなく、断熱・耐震・省エネといった「見えない性能」に価値を見出して計画するケースが少なくない。
こうした動きは単なるブームではなく、社会の変化とも連動している。住宅の資産価値を性能でも測る時代が徐々に近づいており、今後のリフォーム市場では、断熱性能やエネルギー効率、さらに長期優良住宅化リフォームなどの認定制度といった「数値的価値」も重要な指標として注目されていくだろう。
さらに、国の省エネ政策や脱炭素の流れを背景に、エネルギー性能表示制度の整備や住宅版カーボンニュートラル対応などの制度がリフォーム領域にも浸透していくと考えられる。
「中古+本格リノベ」は、単なる新築の代替ではなく、未来の暮らしを自らの手でデザインするための、新しい住宅取得のスタンダードになりつつある。その先頭に立つのが若い世代であり、こうした新たなスタンダードがリノベーション費用の高額化に反映されているのではないだろうか。これからの動向を楽しみに見守りたい。
※1)2024年度住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査報告書(調査時期2024年7月24日~8月7日)/一般社団法人住宅リフォーム推進協議会
※2)2020年度住宅リフォームに関する消費者実態調査結果報告書(調査時期2020年8月21日~8月25日)/一般社団法人住宅リフォーム推進協議会
※3)積算資料ポケット版リフォーム編2021(2020年10月10日発行6~8月に調査実施 調査地区は首都圏主要都市及び近郊)/経済調査会
※4)積算資料ポケット版リフォーム編2025(2024年10月10日発行6~8月に調査実施 調査地区は首都圏主要都市及び近郊)/経済調査会
※5)首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年7月/株式会社不動産経済研究所
※6)首都圏不動産流通市場の動向(2024年)/公益財団法人東日本不動産流通機構












