部屋の扉、戸など、室内ドアも多様に
間取りプランによって異なるが、新築やリフォームの際には、リビングや個室、洗面やトイレなどに設置する、いくつかの室内ドア(扉・戸)を選ぶことになる。オリジナルで造作するケースもあるが、一般的には建材メーカーの商品を取り入れることになるだろう。
室内ドアにも多様なタイプがあるが、開閉方法で分類すると、開き戸(ドア)、引き戸(スライディングドア)、折れ戸に分けることができる。
開き戸(ドア)は、一般的に多く用いられているスタイル。1枚のドア(扉)を開閉する「片開き」、2枚のドアを開閉する「両開き」、大小の2枚のドアを持つ「親子ドア」などがある。
引き戸は、以前は和室に隣接していたり、狭い空間で開き戸を設置できない場合に用いられたが、最近では和洋問わず多用されている。1枚の戸を左右どちらかの壁に沿って滑らせて開閉する「片引き戸」、壁の中に引き込む「引き込み戸」、2枚の引き戸を左右にどちらでも開閉することができる「引き違い戸」、左右にひき分けて開閉する「引き分け戸(両引き戸)」などがある。戸を横にスライドさせるため、部屋が広く使えること、開け放して通風を確保しやすいことなどがメリットだ。
折れ戸は、蝶番(ちょうつがい)などで連結させた扉を折りたたんで開閉するスタイル。開き戸よりも開閉スペースが少なくてすむ形状だ。
室内ドアの素材もさまざま
室内建具の素材には、樹脂シート仕上げ(貼り)、突き板仕上げ(貼り)、無垢材などの木質系のほか、ガラスを取り入れたタイプ、枠にアルミなど金属系を用いた商品もみられる。
樹脂シート仕上げは、基材(合板、集成材、単板積層材など)の表面に、木目などの模様を印刷した樹脂やオレフィン、紙などのシートを貼ったもの。色柄やデザインが豊富、お手入れもしやすい。天然木の風合いを感じさせるようなタイプもみられる。
突板仕上げは、天然木を薄くそいだ板(単板)である突き板(つきいた)を基材に接着、塗装を施し仕上げたもの。肌触りのよさや木目の美しさなどが魅力。
無垢材は、深みのある素材感、風合いが、長く使っているうちに味わいが出てくるのが特徴だ。
金属系は、シンプルでシャープなアルミフレームを用いたタイプなど。ガラスと組み合わせたものもみられる。
天井までの高さのあるドア(ハイドア)が注目されている
最近の戸建て・マンションのプランニングの傾向のひとつとして、広さや開放感を出すために天井を高くした空間づくりが挙げられる。合わせるように、室内ドアも天井まで高さのあるタイプが注目されており、各メーカーからも多様な商品が提案されている。
天井までの高さのあるドアは「ハイドア」とも呼ばれ、一般的なドア(高さ2m程度)よりも背の高いドア、もしくは、床から天井まで達するようなドアを指すことが多い。
特徴は、まず、ドアを開けた時の開放感や広がり、ゆとりを感じることができること。取り込む光の量も多いので、明るさを得ることができることだろう。神谷コーポレーション湘南 ブランディング企画課 田中多世さんは「ドアが開くときには、壁の一部がそのまま開くような感覚で隣室と天井が繋がり開放感が生まれることがメリットでしょう。とくに狭小住宅の多い日本では、広さは変わらなくても部屋が広々と感じられるので効果的です」と話す。通常のドアでは「垂れ壁(ドア上部から天井までの間の壁)」があるが、天井高で納めることで、壁の一部のような、すっきりとした印象となるというわけだ。
株式会社LIXIL リビング事業部リビング商品部 金児寛子さんも「天井が繋がることで空間が広く見える効果があります。家で過ごす時間が増え、より快適な住空間にしたいというニーズと共に開放感のあるハイドアが注目されていると考えています」と話す。また、田中さんも「最近の住宅では、天井が高く、吹き抜けを採用した開放感のある空間作りが人気です。このことから開放感を生み出すハイドアがより注目されるようになったのではないかと考えています」という。
このような状況の中、建材メーカーのハイドア商品も多様なタイプがみられるようになってきた。金児さんのおすすめは「上枠がなくすっきりとおさまる2方枠のドアや、天井埋込レールですっきりとおさまる引き戸です。さらにサイズもH27サイズまでの対応が可能です」と話す。
また、「家族の集まる特別な空間であるリビングのドアに予算をかける傾向が強く、全面ミラーのドアや、ガラス1枚仕立てのドアといったハイクラスの商品が人気となっています。中でも国内では珍しいスイング開閉する、高さも幅も大きく重厚感のあるドアも受注が伸びています」と田中さん。
ハイドアを取り入れる際の注意点としては、部屋の広さとのバランスが重要。ハイドアは、インパクトもあるため、空間のサイズ(広さ)によっては圧迫感がある場合も。ドアの素材や色などに工夫が必要だろう。また、出入り口にハイドアを取り入れる場合、田中さんは「ちぐはぐな印象にならないように、クローゼットドアなども高さを合わせたハイドアにすることをおすすめします」とアドバイスする。
在宅ワークなどから間仕切り扉へのニーズも高まる
空間を細かく区切らない開放的なプランも人気となっている。LDKをひとつの空間としたり、個室を設けずにリビングの一角に書斎や子どもスペースを確保するようなプランもある。
しかし、在宅ワークなど生活スタイルの変化によって、ある程度仕切って使いたい、子ども部屋など将来、個室のように分割したいなど、用途に合わせて自由に使用できるプランへの要望も多く聞く。そのような中、ひとつの空間をフレキシブルに使用することが可能な間仕切り扉(可動間仕切り)も注目されている。
間仕切り扉の開閉スタイルには、引き戸タイプ、開き戸や折れ戸タイプなどがあるが、最近増えているのが引き戸タイプ。田中さんも「一般的なドアの開き戸と引き戸の割合は、20年前と比べて明らかに引き戸が増えています。また、最近増加している間仕切り戸は、ほぼスライディング式となっており、スライディング式の間仕切り戸が増加してきていることは間違いないと思います」と話す。
間仕切りに用いる扉にも、天井までのサイズが揃っている。開放時にはより広がりを得ることができ、また、敷居や下レールがない上吊タイプをなどであれば、すっきりとした床面となり、空間的なつながりを確保することもできるだろう。
金児さんは「ハイドアの『ラフィスシリーズ』では引き戸の割合は少しずつですが増えています。おすすめは空間に繋がりを持たせながら仕切ることができるアルミガラス建具です」と話す。
田中さんも「コロナ以前からパーティションの役割を果たすスライディングドアをいくつか発売しています。中でも、大きなガラスと木のフレームを組み合わせた『マルコ』は、家族の気配が感じられ、リビング内の仕事スペース作りなどに役立ちます。また、まるで動く壁のように見える大開口向けの大型幅広ドア(扉幅1350㎜まで対応可能)の『モンスターシリーズ』もおすすめです」
ガラスを用いた開放的なデザインも充実
ドアや可動間仕切り戸ともに、ガラスを用いた商品の充実も最近の特徴のひとつだろう。大型ガラスを使用したタイプや金属枠のタイプなど各メーカーの商品バリエーションも増えてきている。
「ガラスドアの一番のポイントは明るさが確保できることでしょう。また、隣の部屋まで見通すことができるため、空間を広く感じることができます。その他、ドアの前に人がいることがわかるため、開閉時の危険を回避できることも。開き戸を開けた際にぶつかってしまうことを防ぐことが可能です」と田中さん。クリアなガラスだけでなく、表面に加工を施したタイプや色のあるタイプなども揃い、取り入れる場所やインテリアに合わせて取り入れることが可能だ。
「ガラスが入ったデザインは、空間を開放的に仕切ることができる点が魅力。ガラスの大きさはもちろん、ガラスの種類によってもイメージが変わるので、インテリアに合わせて選ぶことがおすすめです」(金児さん)
アルミなどの枠材にガラスを組み合わせることで、広がりはもとより明るさも確保できる。ガラスは、強化ガラスなどを用いており、通常ぶつかったりしても割れる心配がない。
部屋の用途によってスタイルやデザインを選びたい
多様なドアがある中、家づくりの際にはどのように選べばいいのだろうか。
ポイントとしては、「部屋の使い方によってガラス入りなのかパネルなのかデザインを選ぶこと。たとえば、リビングであれば光を取り入れたいのでガラスを、個室はプライバシーを考慮してパネルデザインなどと考えてみるといいでしょう」と金児さんはアドバイスする。
田中さんも家の中心となるリビングにはガラスドアの採用をすすめる。
「リビングは一番日当たりが良い場所に配置されるケースも多く、その分、エントランスや廊下などは暗くなりがち。ガラスドアを採用することで、ガラスを通した光でエントランスや廊下などを明るくすることができます」と話す。ただし、玄関先からもリビング内が見えてしまう場合、視線が気になる場合は、ガラスの位置や大きさなどに注意を。曇りガラスや色のついたガラスなどを検討するのもいいだろう。
また、引き戸と開き戸と悩むケースもあるだろう。狭小住宅などで広い部屋が確保できない場合は、開閉時にスペースを取らない引き戸が向いている。設置するための壁面は必要なので、家具の配置や動線などを検討しプランニングしたい。
金児さんは、「開いた時の軌跡も考えることも大切です。ドアは手前にスペースが必要ですし、引き戸は壁面を多く使うことになります。間取りや家具の配置・動線によって、ドアなのか引き戸なのか検討を。その他、空間になじませる存在にしたいのか、アクセントにしたいのかを考えて、色みを選ぶこともポイントでしょう」と話す。
最近では多様な色みのドアが多くみられるようになってきている。田中さんによると、「以前は壁の色と合わせた単色ホワイトが人気でしたが、様々なインテリアスタイルとの相性が良いことから、近年は単色のブラック色やグレー色もニーズが高まっています」。インテリアのイメージに合わせてコーディネートしたい。
ショールームで細かな部分の確認を
室内ドアは、単に部屋の出入り口の建具だけでなく、空間の使い勝手やデザイン性に大きく影響するものだ。選ぶ際には、繋がる空間の行き来、動線はもちろん、床や壁材など内装材との調和などにも配慮したい。
また、本体だけでなく、ドアノブやレバー、開閉方法などにも配慮を。最近では、デザイン性はもとより、開閉しやすい工夫が施されたものが多くみられる。たとえば、枠に取っ手の役割を持たせたタイプであれば、操作もしやすくすっきりとしたデザインに。また、軽く触れるだけで開閉できる機能を持つタイプであれば、高齢者や力の弱い方でも使いやすい。
その他、最近ではドアと壁が一体化するように枠に工夫を施している商品も多くみられる。枠を薄くしたり、完全に見えない納まりとするなど各社特徴がある。合わせて、蝶番やヒンジなどのつくりもチェックしておきたいポイントだ。
具体的に商品を選ぶ際には、ショールームも上手に活用して、大きさや素材感、操作性、細かなつくりなどの確認を。安全性はもちろん、お手入れのしやすさなども確認しておくことが大切だろう。
協力/神谷コーポレーション湘南 LIXIL
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