熱中症は住宅内での発症が多い。暮らしの中での注意点
熱中症への注意喚起が多く聞かれる季節になってきた。
昨今の異常気象の中、日々の暮らしでも熱中症の対策は当然のこととなってきているようだ。しかし、外出時には、日傘や帽子、水分補給と対策を施していても、家の中ではあまり意識しない方も多いのではないだろうか。
認識しておきたいのは、熱中症を発症するのは、自宅内が一番多いということ。外気温の上昇と同時に部屋の温度も高くなっていることは気が付きにくく、温度や湿度を適切に保つことができないケースも多いという。電気代の高騰もあり、エアコンをつけるのを躊躇してしまうこともあるだろう。
家の中での熱中症の発症を防ぐには、まず、部屋の温度や湿度に注意して、エアコンや扇風機を上手に使い、こまめな換気をすること。もちろん、水分補給、涼しい服装といったことに注意することも大切だ。
新築・リフォーム時に配慮したい、室内温度を上げないための対策プラン
新築やリフォームを考えているのであれば、日々居心地がよく快適に暮らすことができるように、夏場の熱中症への対策にも配慮したい。基本は、室内温度を上げないこと。室内に入り込む日差しや太陽の熱を遮り、自然の風を取り込む、といったことがポイントになるだろう。
夏に室内温度を上げないようにするためには、敷地環境に適した間取りはもちろん、建物全体の断熱性能を高め、外からの熱を入れないようにすることが重要だ。断熱材や外壁材はもちろん、窓プラン(設置する方角や形状など)や開口部の建材選びが大きく関わってくる。窓まわりを中心に、適した建材アイテムや取り入れ方についてメーカーにそのポイントを聞いた。
対策1 太陽熱を低減する
YKK AP広報室の南雲歩さんは、窓の断熱性はもちろん遮熱対策の重要性をあげる。
「窓まわりでは、断熱性能の高い窓を用いて、外気の熱を部屋へ伝わりにくくすることはもちろん重要ですが、日射が部屋に入り込むことを防がないと、部屋の中が暖められてしまいます。断熱性能の高い窓である分、部屋の温度が逆に上がってしまうことを避けるためには、遮熱対策も重要なのです」と話す。
YKK APの日射遮蔽型のトリプルガラスの樹脂窓の場合、室温を上げる日射熱を53%ブロック。室内側のフレームとガラスの温度は高温になりにくく、室内温度は快適に保つことが可能だという。
LIXILジャパンコミュニケーションズ部の金澤直樹さんも
「夏は窓などの開口部から約7割の熱が室内に入りこむため、日射熱をカットする窓がいいでしょう。LIXILの特殊金属膜を採用したトリプルガラスの高性能ハイブリッド窓は、日射熱をカットし、高い断熱性能を有しているため、冷房の熱を外に逃がさない役目も果たします」と話す。
太陽の日射熱をカットすることで、冷房の利きがよくなり光熱費の削減につながり、また、家具やカーペットの退色を抑えることができるのもメリットだろう。
対策2 外からの日差しを遮る・調整する
窓サッシだけでなく、窓の外側に設置することで、日差しを遮ったり調整可能な建材も多く提案されている。
日差しを遮るアイテム(日射遮蔽商品)として注目されているのが、外付けのシェード(スクリーン)。外壁や窓枠などに取り付けて使用するもので、デッキやテラスの床面まで降ろし設置するタイプ、2階のバルコニーやパーゴラなどに設けることができるタイプなどがある。
「日差しを室内に入れないことは重要な対策。屋外に設置するシェードは有効です」とLIXILの金澤さん。LIXILのスタイルシェードの場合、太陽の熱を約83%カット(※)し、熱の大部分を窓の外側でシャットアウトできるので、室内の温度上昇を抑えることが可能だという。(※一般複層ガラスの窓にスタイルシェードを使用した場合。関連JISなどに基づき計測および算出した値であり保証値ではない)
YKK APのアウターシェードの場合も、日差しを窓の外で8割以上カット(スタンダードタイプの場合)することで熱の流入を遮り、室内温度の上昇を抑え、エアコンなどの電気代の節電効果も期待できるという。
窓まわりアイテムとしては、窓の上部に設置するオーニング(日除け・雨よけ・ひさし)もある。巻き取りパイプに布を取り付け、出し入れすることで日差しを調整することが可能だが、太陽の方角や角度によっては、横からの日差しを遮ることができない場合も。どちらかというと、テラスやデッキなどアウトドア空間をより快適に楽しむためのアイテムとして取り入れられるケースが多いようだ。
また、シェードと同様の効果がある建材として屋外用のブラインドを設置することも考えられる。YKK APのリモコン外付けブラインド「X-BLIND」は、自由に角度調整が可能なルーバーで、日射熱を85%以上カット可能。「遮蔽・採光・プライバシー・通風をバランスよくコントロールすることができる商品です」と南雲さん。その他、ルーバー(ガラリ)タイプの建具や採光・通風機能のある窓シャッターなどを設置するのもひとつの方法だろう。
対策3 通風を確保する
住まいの中に風を取り込み、換気を行うことは、熱中症だけでなくコロナウィルス等の対策にも欠かせない。家の中に風の通り道をつくるためには、窓の配置や形状にも配慮が必要だ。
南雲さんは、「風の通り道をつくるには、2方向の窓を開け、風の入口と出口を作ることが重要です。窓の開き方によっても換気効率は大きく異なるため、外に開く窓で壁に沿う風を取り入れることのできる外に開く窓がおすすめです」と話す。
「たとえば、FIX窓の両側にたてすべり出し窓を組み合わせた「ウインドキャッチ連窓」は、たてすべり出し窓が垂直に突き出るように開くので、建物に沿って流れる風がガラス面に当たって室内に入ってきます。そして、室内を循環しもうひとつのたてすべり出し窓が室内の古い空気の出口となり、換気効果が高まります」(南雲さん)
また、高所に窓を設けることでも換気効果は高まるという。金澤さんは「住宅密集地などの場合、住まいの脇を通り抜ける風を縦すべり出し窓でつかまえ、換気を促すことも可能。暖かい空気は上に、冷たい空気は下に行く特性を利用し、無風状態でも地窓から、高所窓へ空気の流れをつくる重力換気も有効です」と話す。
その他、家全体の通風を考慮する中で、窓だけでなく換気が可能な玄関扉も人気が高まっているという。扉本体部分に開閉可能な小窓やスリット窓を設けた、風が通り抜けるタイプだ。「窓とあわせて、玄関にも風の入口・出口をつくることで、住戸全体の風の流れを大きくし、快適な暮らしにつながります」と南雲さん。
金澤さんも「玄関の鍵を閉めたまま風を採り入れられるため防犯面でも安心。採風部分には網戸がついているので、虫が侵入する心配もありません。虫が特に気になる夏場も、安心して採風できます。条件等によって異なりますが、社内の試算結果では、窓と組み合わせて風の通り道を作ることで、5分の採風で玄関ホールの気温が約4度涼しくなります」と話す。
熱中症対策の住宅プランニング注意点
室内温度や換気に配慮した住まいづくりを行うことは、熱中症対策だけに限ったことではない。夏は、室内温度を上げないことがポイントになるが、冬は室温を上げたいということが重要になる。
南雲さんは「室内温度を上げたい冬の場合は、遮熱ではなく日射熱取得率を高くする方が良いということになります。断熱と遮熱のバランスをどうとるかはお住まいの地域の気候特性や窓の方角とお隣との状況等も含めた立地条件、生活スタイルなどを踏まえ、年間を通じてバランスが良いと思うプランを設計担当者と相談しながら決められると良いと思います」とアドバイスする。
金澤さんも、「地域特性や、生活スタイル・趣味に合わせ、1年を通して快適に過ごす為には、断熱(熱の通しにくさ)、夏の日射遮蔽、冬の日射取得をバランス良く検討することが重要です。方位に合わせて窓のガラス種類を変えることも可能ですので、必要な面だけ日射を取り入れやすい窓とするのもいいでしょう」。
たとえば、南面の窓に高い断熱性を持ちながらも日射を通しやすい大きい窓をプランニングする場合、夏はシェードなどを使い外側で日射を止め、室内の温度上昇を防ぐ。冬は逆にふんだんに日射を取り入れることで、室内が暖かくなり暖房効率を上げることができるという。
最近では、リフォームで居心地のよさを高めたい、というニーズも多いようだ。
特に窓や玄関といった開口部のリフォームは注目されている。リフォームに適する商品も充実し取り入れやすくなっていること、「先進的窓リノベ事業」「こどもエコすまい支援事業」などの補助金の対象となっていること、消費者の省エネへの意識が高まっていることなどがその理由。YKK APでは、リフォーム向け商品である「マドリモ 断熱窓」、「ドアリモ 玄関ドア」「ドアリモ 玄関ドア 通風ドア」などが、またLIXILでも、内窓「インプラス」や取替窓「リプラス」などの開口部リフォーム商材の販売が大きく伸びているという。
多様なライフスタイルがみられる中、自宅では、より快適に、安心して暮らしたい、と考える方も多いだろう。居心地のよい空間を実現するためには、熱中症対策も含め、室内温度や湿度、換気に関して配慮することが大切だ。新築やリフォームを検討しているのであれば、間取りプランと同時に、開口部の計画を十分に検討したい。専門的な知識も必要なので、希望やライフスタイルなどを設計担当者に伝え、相談・確認しながら進めていくことがポイントだろう。
協力 LIXIL YKK AP
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