全国で活用事例が増えるPark-PFI。愛知県豊田市「鞍ケ池公園」もその一つ
全国各地にある都市公園が、Park-PFI(略してP-PFI)という制度によって様変わりしたり、話題になることが増えている。
Park-PFI(公募設置管理制度)とは、都市公園の魅力や利便性を高めるために、整備や管理を行う民間の事業者を公募して選定する制度のこと。この制度により民間事業者のノウハウが生かされることで、公共の場である都市公園内に飲食店や売店などの施設の設置や管理ができることになる。より魅力的な公園になれば訪れる人も増えて地域が活性され、また、そこでの収益は公園整備にも還元されるため、利用者も行政も民間事業者にとっても好ましい循環が生まれることが期待できるわけだ。
同制度を活用した公園としては、園内にカフェやショップなどを設ける事例をはじめ、「泊まれる公園」として再生された公園や、一帯を野外劇場とした公園、ほかにも「映えるグランピング施設」が人気を博している公園など多数ある。
そんな全国に存在する魅力的な都市公園のなかでも、リニューアルして約1年が経つ愛知県豊田市の鞍ケ池公園は成功事例の一つといえるだろう。
豊田市の都心部から車で15分。名古屋からも40分ほどの広大かつ美しい都市公園
木の葉をイメージした大きな屋根と建物が一体となったプレイハウスは、多目的に利用できる全天候型のスペース。建物内には子どもたちが思いっきり楽しめる遊具もいっぱい!青々とした芝生広場も特に休日は家族連れでにぎわう1965年に開設した鞍ケ池公園は、人と自然が織り成す「四季の古里」というコンセプトのもと広く親しまれている都市公園である。豊田市の都心部から車で15分ほどの場所にあり、公園面積は約96ヘクタール。広大かつ愛知高原国定公園の恵まれた自然環境を生かし、シンボルとして整備された鞍ヶ池をはじめ、動物園や植物園、観光牧場、芝の丘や広場、英国庭園、春に咲き誇る園内の桜、子どもが楽しく遊べるプレイハウスなどなど…緑潤う園内はさまざまな施設を有している。豊田市民の憩いの場であり、東海環状自動車道「鞍ヶ池パーキングエリア」からも利用可能なハイウェイオアシスの玄関口でもある人気スポットだ。
そんな豊田市を代表する都市公園がリニューアルしたのは2021年5月のこと。
鞍ケ池公園に新たな魅力ある空間をつくり出すための整備事業者と指定管理者の公募を豊田市が行い、その結果、代表の大和リース株式会社を筆頭に、ホーメックス株式会社(施設運営)、株式会社スノーピーク(キャンプフィールド運営)、株式会社スノーピーク地方創生コンサルティング(キャンプフィールド企画)、有限会社エルミオーレ(乗馬体験)、株式会社川合造園土木(植栽管理)で構成される共同企業体が発足。各社が得意とする分野で知恵とノウハウを持ち寄り、行政はもちろん、時には地元の人々を迎えて座談会を開催するなど地域の意見も反映しながら、官民連携で公園の魅力向上を図るための事業が進められた。
そして、アウトドア人気ブランド・株式会社スノーピークが運営するパークフィールドスノーピーク豊田鞍ヶ池、鞍ヶ池の風景を眺めながら寛げる水辺テラスやカフェ、乗馬体験ができるエルミオーレ鞍ヶ池ホースパークといった新たな施設が加わり、一年前からさらに魅力的な都市公園へとパワーアップしたのだ。
「鞍ケ池公園ミライプロジェクト共同企業体」を発足してリニューアル
リニューアル後の園内は「動物園」「四季の古里」「交流エリア」「パークフィールド」「フォレストパーク」の大きく5エリアに分かれている。特に「パークフィールド」は、人気がますます高騰しているアウトドア関連施設を置くエリアだ。
レストラン&ショップ、宿泊用トレーラーハウス、キャンプデッキエリア、ピクニックエリアで構成されるこのエリアの運営・管理を行うのは、アウトドア人気ブランドの株式会社スノーピーク。見晴らしのいい丘の上には、自社のキャンプギアやキャンプ料理も好評なレストラン&ショップが建てられた。キャンプデッキエリアは、緑に囲まれた中でゆったりとキャンプを楽しめるように整備され、テントをはじめスノーピーク製品のレンタルもあるため手ぶらキャンプもOKだ。同様にピクニックエリアでも用品の貸し出しを行っており、思い立てばすぐにアウトドア体験ができるのがうれしい。また、屋外で仕事やミーティングを行える「キャンピングオフィス」のサービスも展開している。
そして、キャンプサイトのほかにも宿泊ができるのが、「住箱(じゅうばこ)」と名づけられた全5棟のトレーラーハウス。建築家・隈研吾氏の設計による木のプライベート空間は、アウトドア初心者でも気軽に利用できる洒落た宿泊施設として人気となっている。
行政と民間活力、そして地域の声も反映してつくる魅力ある都市公園
鞍ケ池公園ミライプロジェクト共同企業体の代表企業・大和リース株式会社の永井大揮さんに話を伺ったところ、"新施設を整えて公園に人を呼ぶ事業"ではあるものの、単に大幅リニューアルすればよいわけではなく、これまでの鞍ケ池公園の自然環境や設備などを維持しつつ「いじり過ぎず」に新旧のバランスを取りながら事業を進めたそう。引き続き、地域の人の声を聞くことも大切にし、今後も座談会形式での意見交換を年に2回程度は開催予定であることや、英国庭園などの手入れを行っている市民ボランティアの方たちとの交流も温めていきたいそうだ。
鞍ケ池公園ミライプロジェクト共同企業体は、2021年12月に「アジア都市景観賞」を受賞した。今春からは、子どもたちにも人気の園内移動バス「てんとう虫号」に加え、東京五輪で導入されたAPM( Accessible Peaple Mover)やくらモビ(C⁺WalkT)などの先進モビリティも導入し、「クルマのまち・豊田市」らしさを感じる新しい都市公園づくりも行われている。
さらに、今年5月には自然共生型アスレチック施設「フォレストアドベンチャー」もオープン。東海三県初の池超えジップラインを有する4コース・32のアクティビティが楽しめるとあって、鞍ケ池公園は"人を呼ぶコンテンツ"をさらに増やすこととなった。
官民連携でのリニューアルは反響も大きく、来場者は増加。全国的に人出の多かった今年のゴールデンウィークも多くの人が訪れ、「公園の知名度が上がった実感もある」と永井さんは話す。
「withコロナ」の暮らし方も新たなステージに入り、人の動きがさらに活発になる気配のリニューアル2年目は、恵まれたロケーションと施設力の高いポテンシャルを生かし、積極的にイベントを開催して人を呼び込みたい考えだ。
豊田市の観光スポットとして常に上位に挙がる鞍ケ池公園は、今後ますます「豊田市が誇るスポット」になっていくのではないだろうか。
■鞍ケ池公園 https://kuragaikepark.com/
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