マンションに加えて一戸建て、ビルなど様々な建物が対象に

2LDK+地下室+ロフト+テラスでかかった費用は1800万円。スキップフロアに吹き抜けと立体感が面白い2LDK+地下室+ロフト+テラスでかかった費用は1800万円。スキップフロアに吹き抜けと立体感が面白い

2013年と2014年のノミネート作品を比べてみると、いくつかの変化に気づく。そのひとつがリノベーションの対象となる物件の種別が広がったという点だ。これまでは比較的マンションでの事例が多かったのだが、今年は一戸建て、ビル、団地、変わったところでは塾などがリノベーションされており、対象はなんでもありということが分かる。

その代表格が今回、グランプリを受賞した「HOWS Renovation Lab」(株式会社リビタ)。27年前の建売一戸建てをリノベーションしたものである。大量生産を目的に作られたこの時代の建売住宅は築20年もすると建物価値はほぼゼロとされ、質に対する評価が低いのが一般的。しかし、世の中には多く存在している。そうした、これまで評価されてこなかった住宅をリノベーションによって甦らせたのがこの事例である。もし、こうしたやり方でかつての建売住宅を再生できるなら、今後打ち捨てられる可能性がある家が資産として新しい価値を生むことになる。

この事例でもうひとつ、審査員が評価したのは再生までのプロセスである。内装の解体から始まり、改修工事完了までのプロセスを入居者も含め、広く住まいづくりを検討している人向けに公開、参加できるイベントとしたというのである。これまで家は専門家だけが関わって作られるものだったが、この事例はそこに住む人が関与する、そうした作り方があり得ることを示したというのである。

モノを作ったことがある人であれば、モノを作る楽しさ、作ったモノの愛おしさは誰しもご存じだろうと思うが、家に関しては多くの住み手は蚊帳の外に置かれてきた。しかし、住む人が我が家に関与できるとしたら、家作りはもっと楽しくなるし、家はもっと大事なものになる。日本の住宅も消費するだけの存在ではなくなるはず。その意味ではこうした取り組みはもっと広く行われるべきだと思う。

仙台、熊本、大阪、兵庫……、地方での事例続々

地方での事例が増えた点も変化のひとつ。特別賞も含め、今回受賞した全13作品のうち、6作品が東京以外の会社によるもので、特に印象的だったのはビジネスモデル賞を受賞した仙台の事例「『仙台Rゲート』」地方から発信する異業種コラボリノベーション(株式会社アイ・クルール)。これは不動産会社と設計施工会社がコラボレーション、東北初のリノベーションショールームを開設したというもの。見て、触れて、体験できるリノベーションをコンセプトにしたそうで、楽しい雰囲気が家づくりのわくわく感を盛り上げてくれる。こうしたショールームが増えるとリノベーションも一般化するだろうと思う。

ビフォー、アフターで驚きがあったのが800万円以上部門で最優秀作品賞を受賞した熊本の有限会社中川正人商店(ASTER)による「カリフォルニアスタイルのフラットハウス」。元々の住宅は築35年、南に和室3室が並ぶ典型的な木造の平屋で、そのザ・和室のような家が白く輝く、カリフォルニアスタイルに化けるのである。リノベーションは、家は面白いと思う。

ぱっと見た目の驚きでは インパクト賞を受賞した大阪の9株式会社の「スペードのエース」がすごかった。築45年の賃貸マンションのワンルームのリノベーションでかかった費用は270万円。深刻な老朽化をカバーするためのリノベーションだったというから、本当であればもっと予算が欲しいところを最低の費用で収め、かつ床のスペードのエースで一目見たら忘れられない部屋に。賃貸は一点豪華主義と言われ、何か1点強烈な印象を残す部分があれば決まるというが、まさにそこを突いたリノベーションである。

左上が仙台のショールーム内部。右の上下2点は熊本の一戸建てリノベーション、左下は床の面白さでおおいに受けた大阪の賃貸ワンルーム左上が仙台のショールーム内部。右の上下2点は熊本の一戸建てリノベーション、左下は床の面白さでおおいに受けた大阪の賃貸ワンルーム

スタイリッシュばかりがリノベーションではない

淡い色やアールのある入口など、これまでのリノベーションのイメージとはかなり異なる雰囲気が特徴淡い色やアールのある入口など、これまでのリノベーションのイメージとはかなり異なる雰囲気が特徴

全作品のうちで、これまでとの違いをもっとも感じたのは800万円未満部門で最優秀作品賞を受賞した「メルヘン」(株式会社しあわせな家)だった。過去の受賞作品、また今回の他の受賞作品と比べてみるとそのテイストの違いは明らか。これまではクールでスタイリッシュなテイストが格好いいとされ、メルヘンのような、ある種甘い雰囲気はどこか恥ずかしいものとされてきた風潮がある。だが、これもありとされたことはリノベーション自体の幅を広げてくれる大きな一歩だろうと思う。

また、この物件は築44年の団地で和室3室の3LDK。壁式構造で各部屋は細かく仕切られており、取れない壁も多数ある。自由に間取り変更ができないわけで、その制約の中でどのように空間のつながりを出すか、大きく張り出した梁の圧迫感をどうやって和らげるかなど工夫が必要な点も多く、それをうまくカバーしたリノベーションが行われている点も評価された。新旧の間取り図を見ると、壁の多くはそのままに使われているのだが、いくつかの仕切りが無くなっていたり、色使いが変わっていたりなどの変更で空間が全く別のものに変化。聞かなければ団地とは思わないだろうというものに生まれ変わっている。冒頭の建売一戸建て同様、団地の世に余っている住宅のひとつ。こうした魅力的な住戸が増えてくると団地のイメージも変わってくるかもしれない。

平屋、庭、色使い、和の住まいにも注目したい

最後に受賞作品以外を取り上げ、個人的な感想を。今回、一戸建てのエントリーが目についたが、その中でも注目したいのが平屋である。都会では土地の高さから贅沢な住まいになってしまっていがちだが、フラットで住みやすいのが特徴。都市近郊ではかつて賃貸住宅としてポピュラーだったコンパクトな平屋、いわゆる文化住宅が多く残されてもおり、そうした住宅をリノベーションしたのが「木造平屋文化住宅再生『都町ハウス』」(株式会社ブルースタジオ)。建物自体のかわいらしさも目をひくが、もうひとつ、塀に囲まれていない、誰にでも見える建物がリノベーションされるという意味も大事だろうと思う。古ぼけた、今風でないと思われがちな文化住宅がこんなに変わると多くの道行く人に思ってもらえれば、リノベーションの裾野も広がるだろうと思う。

色使いで目についたのがブルーである。水、雨漏りをイメージさせることから、これまで住宅ではあまり使われてこなかった色だが、技術の進化が雨漏りの心配を軽減したためか、はたまた内装材の変化が微妙な色合いを可能にしたせいか、このところ、ブルーが使われている例が増えている。中でも鮮やかなコバルトブルーの壁紙が印象的なのは「『色壁』」で魅せる部屋!築浅ローコストリノベ」(株式会社プロポライフ)。この家では和室は黒、リビング、寝室はブルー、トイレはマスタード、そして廊下に面する建具は赤とブルー以外にも様々な色で遊んだリノベーションが行われており、しかも費用は265万円(税込)とローコスト。色使いだけでもいろいろできるわけである。

話題には全く上がらなかったのだが、今回、ひとつ、庭のリノベーション事例があった。敷地も家と考えると、こうした事例がもっと出てきても良いのではないかと思うし、まだ手が付けら得ていない分、やりようもあろうと思う。ぜひ、次年以降も出展していただきたい。

最後に和風のリノベーションである。同じ和でも様々なタイプのリノベーションがあるが、心惹かれたのは「再建築不可の四棟の長屋を一棟のシェアハウスへ」(株式会社八清)。生き残りの難しい長屋を生かしているだけでなく、各戸に玄関のあるシェアハウスというスタイルにもなっているのもポイント。京都など古都のリノベーションは建物に個性がある分、得だなあととも思う。

受賞作品、エントリー作品などについては以下のページで見られる。リノベーションしてみたい人ならぜひ、じっくりご覧いただきたいところだ。

左上から時計回りに文化住宅の再生リノベーション、色使いが特徴のローコストリノベーション、初めて登場した庭利用、最後が和のテイストを生かしたシェアハウス左上から時計回りに文化住宅の再生リノベーション、色使いが特徴のローコストリノベーション、初めて登場した庭利用、最後が和のテイストを生かしたシェアハウス

2014年 12月02日 11時53分