「100人のお客さんより、1人のファンを」。そんな教えを胸に、大阪・泉州エリアで家づくりユーザーと真摯に向き合い続ける工務店がある。「お客さま目線」を大切にする同社には、業界にありがちな不透明さが一切ない。「こんな家を建てたい」という要望にもとことん応える。一方で、ユーザーの不利益となる要望にはプロとしてきっぱりとストップをかける。「仕事とは人を幸せにし、笑顔にすること」と口をそろえる代表取締役 小野寺敦史氏と営業部 部長 増田泰武氏の言葉には、家づくりを通じた人生のあり方の本質が詰まっていた。1975年の創業から51年、地域で愛される株式会社小野寺工務店の真っ直ぐな想いを紐解く。
下請けから地域に愛される工務店へ。大工出身・小野寺社長の地道な努力
─本日はよろしくお願いします。まずは家づくりユーザーからの口コミでも非常に評価が高い「スピード感」について伺いたいと思います。LIFULL HOME'S注文住宅の貴社情報ページには、「その場で明確な回答をいただくことができた」「電話をいれたらすぐに対応していただけた」といった契約者の声が並んでいます。
増田氏:私たちはプロですから、すぐに返事・対応ができることは当たり前だと思っています。当たり前のレベルが他社さんとは違うのかもしれません。今年の大型連休中に、お客さまから点検のご要望のお電話をいただいたことがありました。弊社は基本的に車で1時間以内で行けるエリアに絞って展開しているので、すぐ走って対応できます。こうした何かあったときの対応と判断の早さは、規模の大きい会社には難しい、私たちの大きな強みだと思います。
参考:【LIFULL HOME'S 注文住宅】アラハウス(小野寺工務店)の会社情報
─貴社は創業から50年以上、貝塚市を中心とした泉州エリアに密着して展開されています。どのような経緯で現在の経営スタイルに行き着いたのでしょうか。
小野寺氏:当社の原点は、父の代から続く職人気質の大工の工務店です。私もアルバイトで大工をしていましたが、その後大きな工場に就職しました。ただ、毎日同じ場所で同じ作業をする工場に比べ、家づくりは目の前でモノが出来上がっていく喜びがあり、気持ち的にも自由な感覚がありました。そこで、設計事務所を経て実家である小野寺工務店に戻ったのです。
当初は私を含む兄弟3人で一緒に大工をしていました。当時は住宅を建てる際、集客から営業までを不動産会社が行い、私たち工務店は下請けとして施工だけを行うのが一般的でした。しかし、いくら家を建てても利益の多くは不動産会社に取られてしまう。「このままでは利益も薄くなるし、10年先はないな」と危機感を抱き、「不動産会社に潰されるなら、自分が不動産会社になってやろう」と一念発起したんです。
─大工ではなく、経営や営業の道へと舵を切ったのですね。
小野寺氏:ええ。設計事務所を退職して当社に戻るまでの間に二級建築士になり、さらに宅建の資格も取得していました。営業は誰からも教わっていませんでしたが「誰かが営業せなあかんから、俺がやるわ」と宣言し、まずは地域の方に認知してもらうために、近所の家を1軒ずつ「ここで工務店やってます」とピンポンを押して回るところからのスタートでした。
地域密着については、エリアが広いと経費もかかりますし、そこまで手を出せていないと言うのが正直なところです。しかし結果的には、エリアの狭さがスピード感につながっています。
幅広い選択肢と価格の透明性は「お客さまの要望を叶えるため」
─対応エリアを絞る一方で、プランはローコストから高級志向まで幅広く用意されています。これには理由があるのでしょうか。
増田氏:最初はターゲットをもっと狭く設定していました。しかし、今はSNSなどでお客さまの知識がすごく豊富になっています。「あれもやりたい、これもやりたい」というご要望をたくさんお持ちです。しかし、一般的なハウスメーカーさんのツーバイフォー工法などはプランに制約が生じるケースがあり、不満を持っている方もいらっしゃいました。
そこで、お客さまが叶えたいことをなるべく実現してあげたいと考えていくうちに、選択肢が増えていったんです。一番安いプランは建売りと同等の価格帯ですが、関係会社とのやり取りでコストを下げているだけで、決して「安かろう悪かろう」ではありません。
─価格の透明性へのこだわりも、貴社の大きな特徴ですね。
小野寺氏:設備などをグレードアップされる際、当社ではメーカーからの仕入れ値にわずかな利益のみを上乗せした価格でお客さまにご提供します。会社としてはもっと利益を取りたいところですが、そこは「お客さまのやりたいことを叶えてあげたい」という私の強い思いです。
また、利益は一定の割合を定めています。例えば、定価に対して数十%の価格で仕入れられる設備があれば、その仕入れ値にあらかじめ決められた一定割合の利益を乗せるだけです。さらに、お客さまにはお見積りの根拠や価格の考え方を、できる限り分かりやすくご説明するようにしています。ショールームで定価をご覧になったお客さまに「この値段で仕入れられます。そこに弊社の手間賃としてこれだけ乗せさせてください」と包み隠さずお伝えすると、お客さまは「そんなに安くなるの!」とびっくりされ、大変喜んでくださいます。
─仕入れ値を公開するというのは、業界では珍しいですよね。
小野寺氏:出さない会社がほとんどだと思います。その代わり、当社では値引きせず、予算に余裕がある方も予算がギリギリの方も、誰に対しても公平な価格でご提案することを大切にしています。関西のお客さまは特に「値引いてくれるもの」と思いがちですが、値引きをすると“言ったもん勝ち”になってしまいます。言わなかったお客さまが不利になるのは不公平です。不動産・建築業界は金額が大きく不透明なイメージを持たれがちだからこそ、嘘をつかないこの透明性が、お客さまからの信用・信頼につながっているのだと思います。
競合は大手ハウスメーカー。情熱を込めることでファンになっていただく
─お客さまからのご要望には、制限なく応えていらっしゃるのでしょうか。
小野寺氏:基本的にお客さまがやりたいことは極力叶えられるよう、制限を設けずに何度でも無料で間取り変更の打ち合わせを行っています。平均して6~7回、多い方だと10回、11回と打ち合わせをすることもあります。他社さんだと「3回目以降は1回何万円」というところもありますが、うちは最後までとことん付き合います。せっかく一生に一度の家づくりなのに、「プラン変更にお金がかかるから」と我慢してほしくないんです。
増田氏:ただ、お客さまの不利益につながるようなご要望に対しては、プロの目線でしっかりストップをかけます。例えば「太陽光パネルを乗せたい」と言われた場合、設置すれば当社の利益は増えますが、屋根への負担、将来的な撤去費用や足場代、屋根の補修費などを計算し、『本当にお客さまにとって最適なタイミングか』という視点を大切にご提案しています。将来的には、ペロブスカイト太陽電池のような軽量で柔軟性の高い新素材の普及も期待されているため、将来の選択肢も見据えながらご提案しています。
─自社の利益よりも、お客さまの不利益を回避することを優先されるのですね。
小野寺氏:はい。お客さまのことは、本当の身内のように考えています。絶対に失敗してもらいたくないんです。家づくりは誰しも不安を抱えるものだからこそ「この会社なら任せられる。安心して付き合っていける」という状態にしたい。昔、お世話になっていた不動産会社の社長に「100人のお客さんより1人のファンを増やしなさい。そうすれば10年先は営業しなくても食べていける」と教わりました。
増田氏:競合となる大手ハウスメーカーさんは保証の長さや高気密・高断熱といったスペックをアピールする傾向にあります。そこと戦う術として、当社は柱1本から、内部の構造、サッシの種類まで、どんな思いで家づくりをしているか、すべてを細かくご説明します。「信用してください」と言葉で言うだけでは、誰も信用してくれません。その説明に私たちの家づくりへの情熱を込めることで、性能の数値だけではない部分を感じ取っていただき、ファンになっていただけるのだと思っています。
小野寺工務店が考える仕事の真髄と幸せの形
─貴社の「お客さま目線」の強い理念は、どこから生まれたのでしょうか。最初からそのようなお考えだったのですか?
増田氏:最初からではありません。私は大学卒業後、アパートやマンションを建てる超実力主義のハウスメーカーに入りました。そこは非常に厳しい環境で……。とにかく「売上がすべて」という職場で、1年目の売上はゼロでしたが、2年目にポコポコと契約が取れて課長になり、トップセールスにまでのぼり詰めました。
当然、そこにいると完全に“数字脳”になります。どうやって売上を上げるか、そればかり考えていました。でもある時、自分の中でどうしても腑に落ちない部分があり、哲学書などを読み漁りました。そこで、自分の考え方がガラッと変わったんです。「世のため人のために仕事をしなければ、面白くないし楽しくない」と気づきました。
数字ばかりに追われると、一番大切なお客さまが見えなくなってしまう。お客さまに喜んでいただいた結果が売上や利益になるのに、まず数字から弾き出すというのは順番が逆なんです。だからこそ今の会社では「どうすればお客さまに喜んでもらえるか」をとことん追求しています。
─貴社のスタッフには、そのような考え方が浸透しているのでしょうか。
小野寺氏:面接では必ず「仕事って何だと考えますか?」と聞きます。「家族のため」という答えも分かりますが、仕事の根本は「人の役に立つこと」です。八百屋さんは美味しい野菜で人を笑顔にし、学校の先生は子どもを賢くして親御さんを喜ばせる。人を喜ばせ、笑顔にした対価としてお金をいただく。この大前提を理解していることが絶対条件です。
以前、社員研修のテーマで「人はどんな時に幸せか」という話をしたことがあります。皆さんも、人生で「あの時楽しかったな」という記憶を思い返してみてください。何でもいいです。その一番楽しかった思い出の中には、絶対に「誰か」が一緒にいるはずです。1人きりで最高に楽しかった、なんて人はまずいません。
つまり、「人を幸せにし続けることは、結局、自分自身を幸せにすること」。家づくりもまったく同じなんです。お客さまと一緒に真剣に悩み、苦労し、最後に満面の笑みで喜んでもらえた時、私たち自身が最高の幸せを感じるんです。
─素晴らしいお話ですね。家づくりという枠を超えて、人生の本質に触れた気がします。最後に、貴社の今後のビジョンをお聞かせください。
小野寺氏:売上ありきではなく、お客さまに喜んでいただいた結果が売上になる。全員が同じ思いでお客さまのために頑張れる集団でありたいと思っています。そして10年後くらいには、今の会社を信頼できるスタッフたちに託したいと考えています。
私自身は、また違う形で「人を笑顔にする」新しい挑戦をしてみたいですね。それが何であれ、「人を幸せにして自分も幸せになる」という根本は絶対に変わりませんから。
─お客さまを第一に、そして働くうえでの考え方を大切にする貴社の姿勢が、地域の方々に愛される理由なのだと実感しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。











