不動産の情報整備は住まいの選択肢を増やす

「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」の開発を監修・指導した清水教授「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」の開発を監修・指導した清水教授

前回は、「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」を開発した背景をお伝えした。
インタビューによると、日本の不動産マーケットに対する情報量の厚みが足りないために、グローバルな市場から取り残されている現状があるとのことだった。それでは不動産情報の整備によって、どのような効果が期待できるのだろうか。前回に続いて日本大学の清水千弘教授にお話を伺った。

「日本の不動産マーケットを成熟させていくことは、一人ひとりの仕事やライフスタイルの多様化にもつながります。世界で活躍しようとする若者が外国で住宅を求めようとすれば、日本と比べたときの価格水準や価値基準を容易に知ることのできる環境が欠かせません。外国人が日本の住宅を買おうとするときも同様です。

ところが、これまで住宅には国際的な尺度がなく、なかなか国境を越えた住宅投資ができませんでした。不動産マーケットの情報を整備することによって、将来の住まい選びにおける選択肢を増やすことができます。日本人の海外移住だけでなく、外国人の日本移住も容易になっていくでしょう」

価値観の多様化によって、日本人の仕事や生き方も大きく変わりつつある。若い世代の海外進出だけでなく、リタイア後に海外移住を選択する人も次第に増えていくだろう。

それと同時に特定の国に偏ることなく、さまざまな国の人が日本を移住先、あるいは投資先として選ぶようになれば、国内の住宅市場のあり方も大きく変わっていくことになりそうだ。

価格指数に関する国際的な統一基準とは

それでは、不動産マーケットの情報を整備していくため、具体的にどのような方策が求められているのだろうか。

「まず、不動産に関する情報を整備し適切に開示していくことが重要です。しかし、それだけでは不十分で国際的に通用するものでなければなりません。これは各国共通の課題でもあり、2009年のG20における協議などを経て住宅価格指標の国際化が図られました。『ヘドニック法』と呼ばれる共通尺度を導入し、統一された基準で比較できるようにするためのものです」

ヘドニック法(時間ダミー変数法)は国土交通省が算出する不動産価格指数(2015年3月より本格運用)でも用いられている。国土交通省による解説では「多数のデータから物件ごとの個別の特性が価格に及ぼす影響を除去し、いわば同一品質の物件を仮定して不動産市場の動向を把握する手法」とされているが、これを補足するとどのようなイメージだろうか。

「ヘドニック法とは、住宅の品質など条件に応じて価格をいったん分解したうえで再構成する技術であり、『まったく同じものが取引されたらどうなるのか』といった価格水準の変化を数値化することができます。住宅を通して『その時々の同じ幸せを得るために必要なコストの時間的な変化』を算出するものだといえるでしょう」

「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」の大きな特長は何か

『同じ基準による国際比較』により、国を超えて不動産の活用場面が拡がることが目的の一つだと清水教授は語る『同じ基準による国際比較』により、国を超えて不動産の活用場面が拡がることが目的の一つだと清水教授は語る

国土交通省が算出する「不動産価格指数(住宅)」と「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」の大きな違いは何だろうか。

「不動産の価格水準を算出するためには、年収倍率による購買力などさまざまな要素も絡んできますが、『LIFULL HOME’S PRICE INDEX』はヘドニック法を用いたうえで、売出し価格の変化とほぼ同時に価格水準を判定(推計)する独自のアルゴリズム技術を取り入れました。これはシンガポール大学における共同研究の成果であり、国土交通省をはじめとした従来のさまざまな不動産指標と比べても画期的なものです。

また、LIFULL HOME’Sに掲載された豊富な国内の物件データと同時に、Trovit(注:53の国と地域に展開する世界最大級のアグリゲーションサイト)の膨大なデータをもとに『同じ基準による国際比較』が可能になります。さらに、今後は『フューチャーバリュー』を算出することも検討しています」

国土交通省による「不動産価格指数(住宅)」は住宅購入者に対するアンケート調査をもとに算出され、その公表タイミングは取引月のおよそ3ケ月後だ。地域によってはサンプル数が少なく、参考値にとどめているケースもある。また、他国との比較ではアメリカ、EU、イギリス、フランス、ドイツが対象で、一部は四半期ごとのデータにとどまる。

それに対して「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」では、膨大な売出しデータをもとにおおむね2日でデータ作成ができ、レポートの発行は翌月末には発表できる。経済指標としても活用できる「情報の即時性」が大きな特長の一つだといえるだろう。

また、当面は日米の主要都市が対象となるものの、今後はヨーロッパ、アジアの数十都市を追加することが予定されている。

さまざまな場面で活用できる不動産指標へ

「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」は、グローバルな不動産投資市場の透明性向上が一つの目的となっているが、一般の住宅購入者や所有者はどのように活用すればよいのだろうか。

「『LIFULL HOME’S PRICE INDEX』では、バードアイウォッチのように不動産価格の相対的な動きをきちんと示すことで、一般ユーザーも『自分の家の価値はどうなっているのか』『不動産トレンドがいまどうなっているのか』を容易に把握することができます。

そのことによって、幅広い世界観のなかで住まい探しをすることが可能になり、ひいては生きる選択肢を増やしたり、人生設計の可能性を広げたりすることにもつながると考えています。もちろん外国の不動産に投資をしたり、外国人が日本の不動産に投資をしたりする際にこの指数を活用すれば、不動産マーケットの活性化にもつながるでしょう」

今回のシステム開発にあたった技術者の労をねぎらったうえで、日本における不動産市場の将来像を生き生きと語る清水教授が印象的だった。

これまでのさまざまな不動産指標は公表までのタイムラグがあるうえ、都道府県単位または政令市単位で平均データなどがまとめられることも多く、必ずしも経済圏や生活圏の実態を反映していない。そこで「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」は常住人口200万人以上の「都市圏」を対象に指数を算出している。札幌、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の7都市圏だ。さらに市区町村単位のデータも産出が可能である。

日々の変動幅はそれほど大きなものにはならないだろうが、「不動産価格がどうなっているのか」をほぼリアルタイムで知ることのできる意義は大きいだろう。

不動産の価格指標がよりオープンに即時性を持って開示されることで、国を超えて活用場面が拡がり、遅れていた日本の不動産にも新たな活況が生み出されることを期待したい。

多国間比較を可能にし、即時性のある不動産情報となることで、幅広い世界観のなかで住まい探しをすることが可能になり、人生設計の可能性を広げ、ひいては、不動産マーケットの活性化にもつながる多国間比較を可能にし、即時性のある不動産情報となることで、幅広い世界観のなかで住まい探しをすることが可能になり、人生設計の可能性を広げ、ひいては、不動産マーケットの活性化にもつながる

2017年 06月29日 11時05分