レインズの登録データをもとにまとめられる「市況トレンド」

前回の「不動産価格における土地価格は「一物多価」の代表格か~不動産価格指標の現状」では、公示地価、基準地価、地価LOOKレポート、相続税路線価、固定資産税評価額など、「公的な土地価格」について主な特徴や課題などをまとめた。引き続き今回は、住宅価格やマンション価格の指標となるデータについて、その現状や新しい動きなどをみていくことにしよう。

住宅価格を集計したものとして、まず挙げられるのが全国の「不動産流通機構」が公表する市況データだ。国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構は、東日本、中部圏、近畿圏、西日本の4地域を分担し、それぞれ不動産会社間の情報交換システムである「レインズ」を運用している。このレインズに登録された物件データや不動産会社からの成約報告をもとに、毎月さまざまな集計が行われているのである。

データの集計や公表の方法は不動産流通機構ごとに異なるが、たとえば公益財団法人東日本不動産流通機構では、首都圏を中心に毎月「月例マーケットウオッチ」、四半期・暦年・年度ごとに「首都圏不動産流通市場の動向」など「市況トレンド」を公表している。中古マンション、新築・中古戸建住宅、土地に分け、それぞれ成約・新規登録・在庫状況などを分析したものだ。

このデータをもとに、2002年以降の首都圏における「中古戸建住宅」および「中古マンション」の平均成約価格の推移を追ったのが下のグラフである。中古マンション価格の上昇傾向が続いているのに対して、中古戸建住宅価格は長期的にほとんど上がっていないことが分かるだろう。15年前には中古戸建住宅と中古マンションで1,200万円以上の価格差があったものの、ここ数年はほぼ同じ価格水準となっている。

公益財団法人東日本不動産流通機構公表資料をもとに作成公益財団法人東日本不動産流通機構公表資料をもとに作成

新築マンション市場のデータは民間調査会社が中心

不動産流通機構による公表データに「新築マンション」がないのは、レインズに登録された物件情報をもとに集計しているためだ。一部の新築マンションが登録されるケースはあるものの、仲介物件が中心となるレインズに大半の新築マンションは登録されない。

新築マンション市場の動きをまとめたデータとしてよく知られているのは、株式会社不動産経済研究所による「マンション市場動向」だろう。首都圏と近畿圏における毎月の新築マンションについて、発売戸数、契約率、平均価格などを翌月中旬に公表している。一般向けに販売される新築マンションはほぼ網羅されており、公表データがマスコミで引用されることも多い。なお、首都圏については「建売市場動向」もまとめているが、原則として10戸以上の物件を集計対象にしていることに注意が必要だ。

また、株式会社東京カンテイが毎月公表しているデータとしては、「中古マンション70m2価格月別推移(三大都市圏・主要都市別)」「価格天気図(全国)」「一戸建て価格推移(三大都市圏および福岡県の新築一戸建て)」が挙げられる。「中古マンション70m2価格」は売出し価格を単純平均するのではなく、同一面積に換算することによって価格の推移を分かりやすくしたものだ。「価格天気図」は都道府県ごとの中古マンション価格変動を「晴、薄日、曇、小雨、雨」の天気マークで表したもので、大まかな傾向が分かりやすい。「一戸建て価格推移」は木造(所有権)の新築一戸建てについて価格、土地面積、建物面積の平均を集計したものである。

アンケート調査をもとにする国土交通省の「不動産価格指数(住宅)」

上記以外にも民間調査会社、シンクタンク、大手不動産会社などが独自に集計した市況データ、価格指標などが公表されている。だが、それらを参照する際には「どのような資料をもとに、どのように算出した数値なのか」を意識することが欠かせない。一定の条件に当てはまる物件に対象を絞ったサンプル調査なのかそれとも悉皆調査なのか、さらに単純平均なのか何らかの補正を施したものなのかといった点である。

たとえば、価格相場そのものには変化がなくても、供給エリアや成約エリアが都心部に偏れば、平均価格が大きく上振れすることもある。逆に都心部が高くて売れなくなり、郊外での成約割合が増えれば見掛けの平均価格は下がる。新築の高額物件や大規模物件の供給によって平均価格が左右される場合もあるだろう。

そのような「物件の立地や特性による価格への影響を除去する手法」として、国際的に用いられているのが「ヘドニック法(時間ダミー変数法)」であり、これによって算出されているのが国土交通省による「不動産価格指数」だ。住宅については2015年3月から本格運用、商業用不動産については2016年3月から試験運用が開始された。

ヘドニック法によって「同一品質の物件」の価格がどのように変化しているのかを示すことができ、住宅については2010年の平均価格を100とした指数によって住宅地、戸建住宅、マンション(主に中古)の値動きを示している。2013年以降の全国における推移を示したのが下のグラフだが、とくにマンションの値上がりの大きさがよく分かるだろう。

ただし、国土交通省の集計は「買主に対するアンケート調査」をベースにしている。そのため、取引月から公表までに約3ケ月を要しているほか、地域や時期によっては十分なサンプル数が集まらず、「参考値」にとどめているケースがあることに注意しておきたい。

国土交通省「不動産価格指数(住宅)」をもとに作成国土交通省「不動産価格指数(住宅)」をもとに作成

新たにスタートした「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」とは?

株式会社LIFULLは2017年4月27日、国際指針に則って独自に開発した住宅指数である「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」試験版の公開を開始した。これは、国土交通省による不動産価格指数と同じ「ヘドニック法」をベースにしながら、価格の変化を即時に判定する独自のアルゴリズム技術を取り入れているという。

国土交通省の「不動産価格指数(住宅)」ではアンケート調査で集めた成約価格情報を用いるため、公表までにそれなりの期間を要しているが、「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」では国内については「LIFULL HOME’S」、海外については「Trovit」が有する膨大な物件データベースを活用することで、毎月末には前月分の指数が公開されることになっている。

また、公開されるのは「中古マンション」および「中古戸建て」であり、2010年における中古マンション価格の年間平均を100として指数化している。価格水準の比較を容易にするため、中古戸建ての価格についても、あえて2010年の中古マンション平均価格を100とする指数を用いることにしたようだ。

2017年4月27日に公開された3月分の住宅価格指数では、東京23区の中古マンションが131.3で前月比は0.5ポイントの上昇(3ケ月連続のプラス)、前年同月比は4.6ポイントの上昇(48ケ月連続のプラス)となった。その一方で、関西、中部の各都市では2017年に入ってから頭打ち傾向が表れているようだ。他のさまざまな価格指標に比べて、いち早く動向を知ることのできる意義は大きいだろう。

中古戸建ての価格指数では、実質的に価格が上昇しているのは東京23区内および福岡市に限られるといった結果も出ている。国内のその他の都市は、おおむね横ばいの状況で推移しているようだ。前年同月比では横浜市、神戸市、札幌市で下落がみられた。

なお、「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」の対象エリアは当初、日本の11地域・都市(東京23区、東京都下、横浜市、さいたま市、千葉市、大阪市、京都市、神戸市、名古屋市、札幌市、福岡市)およびアメリカの主要25都市となるものの、順次拡大していく予定のようだ。

「LIFULL HOME'S PRICE INDEX」(2017年3月値)の一部(公表資料より引用)「LIFULL HOME'S PRICE INDEX」(2017年3月値)の一部(公表資料より引用)

国内不動産市場の透明化、国際化を目指す
「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」

「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」を公開する目的として、株式会社LIFULLは「日米の住宅価格を比較できる指標を提供し、経済価値の共有化を目指す」「将来は多国間の住宅価格を指数化し、経済指標、景気変動指標としての機能を果たす」「住宅価格を指数化して比較することにより、経済的価値の変動実態を明らかにする」という3点を挙げている。その背景にあるのが、日本の不動産市場における透明度の低さだ。

アメリカの大手総合不動産サービス会社がまとめたデータによれば、日本の不動産市場における透明度は総合ランキングで世界19位と、先進国の中でかなり遅れた状況になっているという。この市場透明度を高めていくことにより、国内不動産市場の活性化が見込まれるほか、資産価値の維持向上によって国内経済全体に好循環をもたらすことも期待できるようである。

まだスタートしたばかりの「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」であり、今後はさらなる改良も加えられていくことだろう。PRICE INDEXによる分析データは、今後「LIFULL HOME’S PRICE MAP」(マンションの参考価格を地図上に表示するシステム)の算出価格に反映されるほか、両者を連携させて表示する新たなサービスが追加提供されることもあるだろう。

いずれにしても「不動産テック」の隆盛で、国内の不動産市場の環境が急速に変わろうとしている時代だ。不動産価格指標のあり方も、あと数年のうちに大きく姿を変えるのかもしれない。

「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」レポートはこちら

「LIFULL HOME'S PRICE INDEX」(2017年3月値)における東京23区とNewYorkCityの比較部分(公表資料より引用)「LIFULL HOME'S PRICE INDEX」(2017年3月値)における東京23区とNewYorkCityの比較部分(公表資料より引用)

2017年 06月19日 11時03分