地価は全用途平均で4年連続上昇、上昇率も前年を上回る2.7%

コロナ禍によって落ち込んだ経済が少しずつ回復傾向に向かう中、令和7年(2025年)の地価公示が3月18日に国土交通省より発表された。毎年発表される地価公示からは、地域ごとの地価トレンドや用途別の価格動向、景気の回復や後退といった経済状況が見て取れる。

令和7年の地価公示の注目ポイントは、新型コロナウイルスの影響で下落した地価が、景気回復基調と不動産需要の高まりにより、どれほど回復したのかという点である。一方で、人口減少が避けられない地方都市や、災害リスクが高いエリアの地価動向にも目を向けなければならない。このようなポイントに注目しながら、令和7年の地価公示を確認していこう。

令和7年の地価公示は、全国の全用途平均の地価変動率が前年の2.3%を上回る2.7%となり、4年連続の上昇かつ上昇幅の拡大という結果となった。コロナ禍の影響を脱した2022年の上昇率が0.6%、2023年が1.6%、2024年に2.3%と着実に拡大してきており、上昇幅の拡大傾向が続いていることがわかる。

用途別にみると、住宅地は2.1%(前年2.0%)、商業地は3.9%(前年3.1%)と、いずれも上昇率が拡大している。特に商業地の上昇率が大きく、本格的に経済活動が回復した結果だと言えるだろう。

全国の地価動向率。前年の2.3%を上回る2.7%となり、4年連続の上昇となった(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)全国の地価動向率。前年の2.3%を上回る2.7%となり、4年連続の上昇となった(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)

上昇率が拡大している主な要因として、引き続き低金利の状況が継続していることや、円安により海外投資家にとって日本の不動産の割安感が増していることが挙げられる。さらに、新型コロナウイルスによる市況の停滞感が払拭されたことで社会経済活動が正常化し、インバウンド需要が大幅に回復したのも大きな要因だ。

主要都市部を中心にホテル需要や商業施設需要が高まり、地価を押し上げている点にも注目だ。大阪圏では、先日開幕した大阪・関西万博開催に向けた開発やインフラ整備により、特に商業地の地価上昇を後押ししている。

ただし、三大都市圏と地方圏の差が鮮明になっている点にも注目しよう。三大都市圏では全用途平均4.3%上昇(前年3.5%上昇)と上昇幅が拡大した一方で、地方圏の上昇率は1.3%と限定的だ。特に、令和6年能登半島地震の被害を受けた地域では地価が大きく下落するなど、地域間格差が浮き彫りになった形だ。

都市圏ごとに上昇率の差が見られた三大都市圏

三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)の地価動向は、、都市圏ごとの差は大きいが、全体としては上昇基調が続いている。

その中でも東京圏の勢いが最も強く、全用途平均5.2%(前年4.0%)と大幅な上昇を記録した。住宅地は4.2%(前年3.4%)、商業地に至っては8.2%(前年5.6%)と急上昇している。特に23区内の商業地は平均11.8%上昇し、中野区(16.3%)や杉並区(15.1%)など再開発が進む地域での上昇が目立つ。住宅地も中央区(13.9%)や港区(12.7%)など、都心部を中心に高い上昇率となった。

大阪圏も全用途平均3.3%(前年2.4%)と上昇幅が拡大している。商業地は6.7%(前年5.1%)と大きく伸び、大阪市(11.6%)や京都市(10.2%)では10%を超える上昇となった。2025年大阪・関西万博の開催の大規模開発や大阪駅北ヤード2期(グラングリーン大阪)開発、京都駅周辺の開発進展、そしてインバウンド需要の回復が大きな要因だ。

2025年大阪・関西万博の開催の大規模開発や大阪駅北ヤード2期(グラングリーン大阪)開発など大阪圏も全用途平均3.3%(前年2.4%)と上昇幅が拡大2025年大阪・関西万博の開催の大規模開発や大阪駅北ヤード2期(グラングリーン大阪)開発など大阪圏も全用途平均3.3%(前年2.4%)と上昇幅が拡大

対照的なのが名古屋圏で、三大都市圏で唯一上昇幅が縮小し、全用途平均2.8%(前年3.3%)となった。名古屋市の商業地は5.0%(前年6.0%)と上昇は続いているものの、16区のうち11区で上昇幅が縮小しており、インバウンド需要の回復の遅れが影響しているとみられる。

このように、東京圏と大阪圏が加速する一方で名古屋圏の上昇率が縮小するなど、三大都市圏内でも地価動向の二極化が進んでいる。今後も低金利政策が続く中、都市の開発や交通インフラの整備状況によって、この差はさらに広がる可能性もある。

2025年大阪・関西万博の開催の大規模開発や大阪駅北ヤード2期(グラングリーン大阪)開発など大阪圏も全用途平均3.3%(前年2.4%)と上昇幅が拡大住宅地の都道府県別地価変動率。変動率がマイナスの都道府県が17から15に(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)
2025年大阪・関西万博の開催の大規模開発や大阪駅北ヤード2期(グラングリーン大阪)開発など大阪圏も全用途平均3.3%(前年2.4%)と上昇幅が拡大商業地の都道府県別地価変動率。変動率プラスの都道府県が29から34に(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)

地方圏はリゾート地と半導体関連企業の進出エリアが上昇著しい

地方圏の地価も上昇が続いているが、地域間の格差が大きくなっている。特に注目すべきは、リゾート地や半導体関連企業の進出エリアの急上昇と、地方四市の堅調な推移だ。

地方圏全体では全用途平均で+1.3%(前年同率)と緩やかな上昇が続いている。内訳を見ると、地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)は全用途平均+5.8%(前年+7.7%)と高水準を維持しているものの、2年連続で上昇幅が縮小した。一方、地方四市を除く地域は全用途平均+0.8%(前年+0.7%)と微増にとどまっている。

リゾート地の地価上昇について見てみよう。
住宅地の上昇率トップは、スキーリゾート地で有名な北海道富良野市の+31.3%(前年+27.9%)で、2位に長野県白馬村+29.6%(前年+19.5%)となっている。これらのリゾート地では、インバウンド需要を背景とした外国人向けの別荘やコンドミニアム需要が高まりが、地価上昇を牽引していると考えられている。

北海道富良野市は+31.3%(前年+27.9%)とリゾート地としてトップの上昇率北海道富良野市は+31.3%(前年+27.9%)とリゾート地としてトップの上昇率

また、沖縄県も高い上昇率で、宮古島の+23.1%(前年+21.2%)や石垣島の+20.3(前年+11.9%)、+19.3%(前年+12.5%)の地点が上位に入った。沖縄県は、住宅地の上昇率が都道府県別で最高の7.3%を記録している。

また、大手半導体メーカーのラビタスが進出している北海道千歳市の商業地が、上昇率1位(+48.8%)、2位(+42.9%)、3位(+36.8%)を独占するなど、極めて高い伸びを示している。このエリアでは、関連企業の従業員向け住宅や事務所、ホテル、店舗などの需要が高く、住宅地・商業地・工業地ともに高い上昇率となっている。

一方で、令和6年能登半島地震の被害を受けた地域では、地震や豪雨の影響で人口が流出し、地価が大きく下落した。

北海道富良野市は+31.3%(前年+27.9%)とリゾート地としてトップの上昇率住宅地の変動率上位順位表。リゾート地が上位を占める結果に(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)
北海道富良野市は+31.3%(前年+27.9%)とリゾート地としてトップの上昇率商業地の変動率上位順位表。半導体関連の進出エリアが3位までを独占(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)

都市部と地方の地域間格差が拡大

令和7年地価公示の結果から、全国的な地価上昇の中でも地域間の格差がこれまで以上に鮮明になってきていることがわかる。三大都市圏と地方四市が高い上昇率を見せる中、その他の地方圏との二極化が広がっているのだ。

東京圏の住宅地は4.2%、商業地に至っては8.2%と大幅な上昇を記録した一方で、地方四市を除く地方圏の住宅地は0.6%、商業地は0.9%と微増にとどまっている。この差は実に7倍以上に達する。

さらに、地方圏の中でも格差が広がっている。札幌・仙台・広島・福岡の地方四市は住宅地で4.9%、商業地で7.4%と12年連続の上昇を記録し、三大都市圏に匹敵するほどの勢いを見せている。対照的に、地方四市以外の上昇率はわずかで、インバウンド需要やブランド力がある都市とそうでない都市の差が拡大している。

今後も地価の二極化は続くと予想され、地方都市が生き残るためには、地域の特性を活かした独自の戦略や企業誘致などが不可欠となるだろう。

能登半島地震により地価が大幅に下落した被災地

令和6年元日に発生した能登半島地震は、地価動向に大きな影響を与えた。被災した地域では地価が大幅に下落し、地域間の格差をさらに拡大させる結果となっている。

令和7年地価公示では、能登半島地震の影響が初めて地価に反映された。それにより、全国で下落率が最も大きかった住宅地10地点すべてが能登地方の市町となったのである。

商業地においても同様の傾向が見られ、石川県珠洲市の商業地点が−16.8%(前年−7.7%)で下落率1位となった。その他にも、石川県七尾市や志賀町の商業地でも大幅な下落率を記録している。

今回の能登半島地震による地価への影響は、一時的な下落にとどまらず、自然災害が地域経済や不動産市場に長期的な影響を与えることを示している。今後は地価公示の評価において、利便性だけでなく災害リスクも重要な判断基準となっていくのではないだろうか。

住宅地の変動率下位順位表。能登半島地震で被害を受けたエリアが10位全てを占めている(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)住宅地の変動率下位順位表。能登半島地震で被害を受けたエリアが10位全てを占めている(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)
住宅地の変動率下位順位表。能登半島地震で被害を受けたエリアが10位全てを占めている(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)商業地の変動率下位順位表。能登半島地震の被災地や北海道夕張市など(出所:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)

2025年以降も地価上昇が継続する見込み。一方で二極化が鮮明になると予想

令和7年の地価公示の結果から、日本の不動産市場は当面上昇基調が続くと予測される。ただし、すべての地域が共に上昇するのではなく、「選ばれるエリア」と「そうでないエリア」の二極化が進む見通しだ。

日本の地価は4年連続で上昇し、上昇幅も拡大しているが、これはバブル期とは異なる状況である。ここ最近の消費者物価指数が約3%で推移していることを考えると、全国平均2.7%の地価上昇率は物価上昇に沿った妥当な水準と言えるだろう。バブル期のように、急激な上昇ではないことがわかる。

低い政策金利が継続される見込みであることも、地価の上昇が続く要因だ。2025年中に政策金利が複数回利上げされる可能性が高いものの、上昇ペースは緩やかだと予想されるため、依然として金融緩和状態が続くと考えられる。そのため、不動産投資の意欲は当面衰えないだろう。

今後は「交通・生活の利便性」や「安全性」、「独自の地域ブランド」を兼ね備えたエリアが安定して地価上昇していくと予想される。特に安全性については、能登半島地震の影響で災害リスクへの意識が高まっており、立地を考えるにあたり重要な判断基準となるだろう。

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