中核市とは?

政令指定都市というのは聞いたことがあるだろう。それが、ある人口規模以上で、政令で指定された都市だということを知っている人も多いだろう。では、中核市とはどのようなものかご存じだろうか。

地方自治法に定める大都市等に関する特例(大都市制度)では、以下のように区分されている。

●指定都市
人口50万人以上の市のうち、政令で指定した市。一般に、政令指定都市(政令市)と呼ばれる

●中核市
人口20万以上の市の申出に基づき政令で指定した市

●施行時特例市
特例市制度の廃止(2015年4月1日施行)の際、現に特例市である市


今回取り上げる中核市は、制度としては1995(平成7)年に創設されている。当時の要件は、人口30万人以上に加えて面積100km2、人口50万人未満の場合は昼夜人口比率が100超であることとされていた。その後、段階的に要件の見直しが進められる中で人口以外の要件は廃止。2014(平成26)年の地方自治法の一部改正により、2015(平成27)年には人口要件も30万人以上から20万人以上へと変更された。

人口要件の緩和には、特例市制度の廃止が関係する。特例市は2000(平成12)年に人口要件を20万人以上として創設されたが、さまざまな理由から2015年に廃止され、中核市の人口要件が20万人以上となったのだ。

なお、廃止時点で特例市であった市は、施行時特例市として引き続き区分された。人口20万人以上であれば中核市になれるわけだが、要件を満たせば自動的になるのではなく、あくまでも「申出に基づき」政令で指定されるため、中核市にならなかった市が施行時特例市となったのだ。

千葉県船橋市は、中核市で人口が最大千葉県船橋市は、中核市で人口が最大

中核市にできること

では中核市になれば何ができるのか。

簡単にいうと、都道府県が行う事務の一部を市で行うことができるようになる。行政にとっては、都道府県と市で分けていた事務が市に集約され、事務処理そのもののスピードアップにつながる。

また、住民にとって市はもっとも身近な行政機関でもある。都道府県が行っていた行政サービスを市が行うことで、より効率的に、かつ細やかな対応が可能になる。つまり、住民にとってもメリットがある。

なお、中核市ができる行政事務には、以下のようなものがある(中核市市長会HPより)。

●保健衛生に関する事務

・保健所の設置
・飲食店営業等の許可
・温泉の利用許可
・旅館業・公衆浴場の経営許可

●福祉に関する事務

・保育所の設置の認可、監督
・養護老人ホームの設置の認可、監督
・介護サービス事業者の指定
・身体障害者手帳の交付

●教育に関する事務

・県費負担教職員の研修

●環境に関する事務

・一般廃棄物処理施設、産業廃棄物処理施設の設置の許可
・ばい煙発生施設の設置の届出の受理

●まちづくりに関する事務

・屋外広告物の条例による設置制限
・サービス付き高齢者向け住宅事業の登録

大阪府吹田市役所。2020年、吹田市は中核市に移行した大阪府吹田市役所。2020年、吹田市は中核市に移行した

上記のうち、一般の市民の暮らしに大きく関りあるのが、福祉や保健衛生の分野だろう。

2020年4月に中核市に移行した、吹田市 行政経営部 企画財政室の担当者は、「市民に最も身近な基礎自治体である市が、市の実態に合わせた独自性を持ったまちづくりができる。つまり、市民ニーズに合わせたきめ細やかな行政サービスができる」とそのメリットを話す。

中核市への移行について「さまざまな分野で、今後も中核市のメリットを生かし、より市民の立場に立った行政サービスを実施したい」と語ってくれた。

中核市4市が連携した「NATS(ナッツ)」

2020年に吹田市が中核市となったことで、地図を見ると、西から西宮市(兵庫県)、尼崎市(兵庫県)、豊中市(大阪府)、吹田市(大阪府)と、4つの中核市が並んだ。中核市が4市並ぶのは、日本全国でもここだけだ。4市を合わせた人口は約173万人で、政令市に匹敵する。

そこで、4市の頭文字を西から東に順番に並べて「NATS(ナッツ)」という都市間ネットワークが生まれることとなった。北摂、阪神間の4つの中核市が、府県境を越えて手を結んだのだ。

吹田市 行政経営部 企画財政室の担当者に、これまでの成果を聞いた。

府県境を超えて4つの中核市が並ぶNATS府県境を超えて4つの中核市が並ぶNATS

府県境を越えた連携で「面白いことを」

4市の連携の第一歩となったのが、2020年1月の「NATS 0(ナッツゼロ)」と名付けたキックオフミーティング。ここでは、4市の市長が一堂に会し、新しい都市間ネットワーク形成の方法を探った。

ここからNATS4市では、担当者間の意見交換や情報共有などが始まり、労働相談の相互利用が開始されるなど、市民サービスの向上や各市が抱える課題の解決に向け、連携を深めてきた。

単独の市では取り組みにくい地球環境問題にも、NATS4市として共通の問題認識をもって取り組んでいる。その成果のひとつが、2021年「地球温暖化対策の自治体間連携に関する基本協定」だ。府県を越えて広域的に取り組むことで、より効果的な施策の実現を目指すという。

具体的には、①更なる再生可能エネルギー導入促進 ②プラスチックごみ削減・熱中症対策 ③広域連携を活用した環境啓発 をテーマに共同事業を模索する。

そのひとつとして2022年度には、ペットボトルごみの削減を目指したマイボトルの利用促進に向け、4市を結ぶ鉄道ネットワークをもつ阪急電車の各市1駅ずつに、無料の給水機を構内に設置する実証実験を実施。翌2023年度から本格設置に至った。

今後も、市民サービスの向上に向け、NATS4市で連携を探っていく方向だ。

ペットボトルごみ削減へ向けた給水機の設置など、4市で地球環境問題に取り組むペットボトルごみ削減へ向けた給水機の設置など、4市で地球環境問題に取り組む

NATSの今後に期待

行政機関の中でも、住民に一番近い組織である市。そのなかでも、中核市は多くの行政サービスを市自身で実施できる。そんな中核市4市が連携したNATSは、ある意味住民目線の都市間ネットワークといえる。

西宮市、尼崎市、豊中市、吹田市……これらの4市は、いずれも良質な住宅地を抱え、各メディアが発表する住みたい街ランキングでも上位に名を連ねるなど、ブランド力を持っている。しかし、人口規模も市域の特性も似通った4市には、共通する都市課題も多い。それぞれの市の強みを持ち寄り、連携することによって、より効果的にできる施策も今後ますます生まれてくるかもしれない。

筆者はこれまでも、住み替えの際には、住まいだけでなく行政にも目を向けてみてはどうかと書いてきた。例えば、財政状況や、独自の子育て施策などだ。

NATS4市には、中核市として住民に寄り添った住民目線のきめ細かな行政サービスはもちろん、画期的な都市間ネットワークから生まれる新たな施策や発信に期待したい。

連携を深める4市長連携を深める4市長
連携を深める4市長北摂エリア

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