マンションの外部管理者方式とは
マンションについての「2つの老い」という言葉をご存じだろうか。これは、建物の老朽化による修繕費の増加と住民の高齢化による問題のことだ。国土交通省の資料によると、2022年末現在で築40年以上のマンションは約125.7万戸ある。それが、10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加する見込みだ。築年数に比例して高齢の区分所有者も増えていく。区分所有者の高齢化による大きな問題のひとつに管理組合の役員(理事)の担い手不足がある。役員になると、プライベートの時間を削って業務を行わなければならず、若い人でもやりたがる人は少ない。そのうえ、高齢になると会議への出席や役員業務の負担がより重くなり、75歳以上は就任を断ることも可能といった管理組合もある。そのため、高齢化が進めば進むほど、役員の担い手が減っていくというわけだ。
このような背景から昨今は、外部管理者方式が注目されている。これはマンション管理士、管理会社、弁護士、建築士といった外部の専門家に役員になってもらい管理組合の運営を任せる、といった管理方法だ。この方法は高齢化対策だけでなく、何年も同じ人が役員をやっているので運営内容に偏りがある、投資用マンションなので区分所有者の多くが遠方に住んでおり役員の担い手がいない、といった状況でも有用だ。
外部管理者方式のメリット・デメリット
ただし、外部管理者方式にはメリットだけでなく、デメリットもあるのでしっかり把握しておきたい。
メリット
・区分所有者の負担を軽減できる
役員になると前述のようにプライベートの時間を削って業務を行う必要がある。また、役員の担い手が不足すると、役員の選出に苦労するといった心理的な負担も生じる。外部管理者方式を導入すれば、こういった肉体的、心理的負担を軽減できる。
・レベルの高い管理運営を期待できる
第三者目線を持つ専門家に役員業務を依頼することで、効率的でレベルの高い管理運営が実現する可能性が高まる。
デメリット
・管理費が高額になる
外部の専門家へ報酬を支払う必要が生じるため、管理費が従来よりも高くなる。そのことを区分所有者に納得してもらうための手間もかかる。
・利益相反行為のリスクがある
外部管理者が修繕工事会社からバックマージンを受け取って工事の依頼をする、外部管理者と同じグループの修繕工事会社へ工事を発注する、といった区分所有者が望まない運営が行われる可能性が生じる。
・運営ノウハウが蓄積されない
一般的な管理組合は、直接業務を行うことで修繕や会計などのノウハウが蓄積され、代々役員たちに引き継がれていく。ところが外部管理者方式にすると、その引き継ぎができない可能性が高まる。
上記の中で特に「利益相反行為のリスク」を不安視する声が多い。外部管理者方式は歴史がまだ浅く、国土交通省の「マンション標準管理規約」にその内容が追加されたのは2016年だ。しかも、「区分所有者の意志から離れた不適切な管理」や「利益相反行為のリスク」に対処するためのガイドラインはなかった。
そこで国土交通省は、「外部専門家の活用ガイドライン(2017年6月)」を再構成し、2024年6月7日に「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を策定した。外部管理者方式を定義したうえで、その留意点を整理している。具体的には、第2章において「外部管理者方式の3つのパターン」や「外部管理者方式の導入までのプロセス」など、第3章において「管理組合に不利益が生じることを防ぐための留意するべき事項」などを規定している。同ガイドラインは全131ページにわたる。そこでここでは、主な内容を解説しよう。
外部管理者方式のパターン
外部管理者方式の主要パターン
ガイドラインで示された外部管理者方式の主要パターンは以下の3つだ。
1.理事・監事外部専門家型または理事長外部専門家型(ガイドラインで主に想定する方式)
理事会あり。管理者が理事長である。外部専門家は役員に就任。
2.外部管理者・理事会監督型
理事会あり。管理者は必ずしも理事長ではない。外部専門家は役員ではない。外部専門家は管理者に就任。
3.外部管理者・総会監督型(ガイドラインで主に想定する方式)
理事会無し(総会のみ)。理事長無し。外部専門家は役員ではない。外部専門家は管理者に就任。
外部管理者方式導入までのプロセス
まずは理事会で外部管理者方式のメリット・デメリットをしっかり共有し、ニーズの有無を見極める。次に現在の理事等が主体となり、区分所有者へ情報共有を重ねながら検討。総会での導入推進決議を経て候補者の選定や予算を検討し、総会決議で正式に決定する。
不利益が生じることを防ぐための留意事項
第3章では、「管理組合に不利益が生じることを防ぐための留意するべき事項」を8つに分けて規定している。その一部を紹介する。
①既存マンションにおいて外部管理者方式を導入する場合のプロセス
外部管理者は、区分所有者に対して説明会などで少なくても以下③~⑧の事項について説明することが望ましい、など。
②新築マンションにおいて外部管理者方式を導入する場合の説明
分譲事業者は、購入希望者に対して少なくても以下③~⑧の事項について情報提供することが望ましい、など。
③管理組合運営のあり方
管理者業務委託契約書を管理事務委託契約書の別紙という形式で締結すると、管理事務の延長で業務を担うことになってしまうので管理者としての責任の所在が不明確になってしまう。そのため、管理業務委託契約と管理事務委託契約は別々の契約書を交わす必要がある、など。
④外部管理者方式における通帳・印鑑の望ましい保管方法
一般的に管理組合財産の預金口座の通帳は管理事業者が保管していることが多い。通帳と印鑑の同一者保管を避けるため、口座の印鑑等は監事が保管することが望ましい、など。
⑤外部管理者が管理者の地位を離れる際の準備
規約には管理者の固有名詞を記載しないことが望ましい、など。
⑥日常の管理での利益相反取引等に対するプロセスや区分所有者に対する情報開示
総会で承認を得た金額以上の支出を伴う取引や自社取引またはグループ会社との取引等は、総会の承認を得る必要がある、など。
⑦大規模修繕工事のプロセスや区分所有者に対する情報開示
大規模修繕工事は、修繕委員会(区分所有者と監事で構成)を設置し、これを主体として検討することが望ましい、など。
⑧監事の設置と監査のあり方
監事は、少なくても1名は外部専門家から選任し、加えて区分所有者からも選任することが望ましい、など。
外部管理者方式を導入するには、管理規約の大幅な変更が必要になる。したがって、導入後に元に戻すのは非常に手間がかかる。このような点も考慮し、外部管理者方式を導入する際は、「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を参考に細心の注意を払って検討を進めたい。





