ついに固定金利が引き上げられた

2024年7月31日、日本銀行は金融政策決定会合で、3月のマイナス金利の解除に続く追加の利上げに踏み切り、政策金利を0.25%程度に引き上げることを決めた。これを受け、複数の大手銀行が「短期プライムレート」を引き上げると発表。8月から三菱UFJ銀行は10年固定の最優遇金利を0.02ポイント、三井住友銀行は0.1ポイント、三井住友信託銀行は0.02ポイント、りそな銀行は0.04ポイント引き上げた。このような報道もあり、これから住宅ローンを組む予定の人も、すでに借りている人も、今後の金利動向と同時に「ほかの人がどのような住宅ローンを借りているのか」が気になるのではないだろうか。そのようなときは国土交通省の「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」が役立つはずだ。主な内容を解説しよう。

多くは都市銀行、信託銀行、地方銀行からの借り入れ

同報告書は都市銀行、地方銀行、農業協同組合等の住宅ローンを供給している民間金融機関を対象に実施した調査結果だ。調査期間は2023年10月~11月。調査対象機関数は1,223となっている。今回は「新規貸出額」「新規貸出額の使途別割合」「新規貸出額における金利タイプ別割合」「新規貸出額における固定金利期間選択型の固定金利期間別割合」「スコアリング方式審査」「審査項目」について紹介したいと思う。

「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」は、1223の民間金融機関を対象に行った調査の結果(出典:「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」は、1223の民間金融機関を対象に行った調査の結果(出典:「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)

●新規貸出額

2022年度の新規貸出額は20兆2,934億円で、2021年度から5,014億円減少しているものの、ここ数年ほぼ横ばい状態だ。業態別の新規貸出額を見ると、都市銀行・信託銀行(7兆1,363億円)と地方銀行(6兆1,086億円)が圧倒的に多く、3位の信用金庫(1兆7,471億円)を大きく引き離している。

「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」は、1223の民間金融機関を対象に行った調査の結果(出典:「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)住宅ローンは、都市銀行・信託銀行・地方銀行からの貸出額が圧倒的に多い(出典:「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)

8割近くが変動金利型を選択

●新規貸出額の使途別割合

新規貸出額の使途別割合(新築、既存(中古)、借換)は、新築が圧倒的に多く73.6%。続いて既存(中古)が20.5%、借換が5.9%となっている。この割合は、ここ数年ほとんど変化していない。日本人はほかの先進国と比べて新築を好む人の割合が多いといわれているが、この数値を見ると間違いないようだ。

●新規貸出額における金利タイプ別割合

新規貸出額の変動金利型、固定金利型(全期間固定金利型・固定金利期間選択型)、証券化ローン(フラット35等)の割合を確認すると、変動金利型が77.9%と圧倒的に高く、固定金利選択型が11.9%、全期間固定金利型が3.9%、証券化ローンが6.3%になっている。住宅ローンを利用する人のおよそ8割が変動金利型を選択しているともいえる。しかも、4年前の2018年度と比較すると17.4ポイントも増加している。その理由は、周知のとおり年々金利が低くなっていることだ。2024年6月現在、変動金利型の商品は、金利0.3%前後からある。一方で固定金利型(10年)の金利は、0.9%前後からだ。仮に3,000万円を借りた場合(元利均等、ボーナス払い無し、借入期間35年)、月々の返済額は前者が約7万5,000円で後者が約8万3,000円。毎月1万2,000円も生活が楽になれば、多少リスクが高くなっても変動金利を選びたくなる人が多くなるわけだ。

8割近くが変動金利で借りており、その割合は年々増加傾向だ。一方で固定金利期間選択型の割合減少が目立つ(出典:「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)8割近くが変動金利で借りており、その割合は年々増加傾向だ。一方で固定金利期間選択型の割合減少が目立つ(出典:「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)

●新規貸出額における固定金利期間選択型の固定金利期間別割合

固定金利期間選択型を選んだ人の固定金利期間を見ると、もっとも多いのが10年で47.6%。次に3年(28.6%)、2年(14.2%)、5年(4.5%)、10年超(4.1%)、10年以下その他(0.9%)と続く。とはいえ、10年は年々減少傾向だ(前年比では0.3ポイント増)。一方で2年が増加傾向にある。その理由は明確ではない。考えられることとしては、一般的に固定金利期間が短ければ短いほど金利が低くなるので、低金利時代の今はもっとも短い2年を選択する人が増えているのかもしれない。

なお、固定金利期間選択型にすると、最初の選択期間は金利が変わらない。たとえば2年固定を選択すれば、2年間は金利が変わらず3年目にあらためて固定金利期間を設定するか、変動金利型を選択することになる。

自動的に審査結果を出すスコアリング方式

●スコアリング方式審査

スコアリング方式審査とは、住宅ローンを申し込んだ人の年齢や年収、勤務先といったさまざまな審査項目を審査用のシステムに入力し、その分析結果で融資判断をする仕組みのことだ。入力さえすれば自動的に審査結果が出せるので、金融機関にとっては便利な仕組みといえる。

今回の調査で民間金融機関に「スコアリング方式で審査を行っているか否か」を聞いたところ、「スコアリング方式を中心に審査を行っている」が15.8%、「スコアリング方式により一部審査を行っている」が26.2%、「スコアリング方式では審査を行っていない」が58.0%だった。つまり、42%の民間金融機関がスコアリング方式を導入していることになる。ただし、その割合は減少傾向で2019年度は46.6%、2020年度は46.4%だった。やはり杓子定規に個人の信用度を判断することは難しいのかもしれない。

「スコアリング方式を中心に審査を行っている」(15.8%)と「スコアリング方式により一部審査を行っている」(26.2%)を合わせて42%がスコアリング方式を導入している。しかし、その割合はわずかながら減少傾向(出典:「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)「スコアリング方式を中心に審査を行っている」(15.8%)と「スコアリング方式により一部審査を行っている」(26.2%)を合わせて42%がスコアリング方式を導入している。しかし、その割合はわずかながら減少傾向(出典:「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)

●審査項目

では、具体的な審査項目を見てみよう。民間金融機関が融資審査を行う際に考慮する上位10項目は以下になる。

1. 完済時年齢:98.5%
2. 健康状態:96.6%
3. 借入時年齢:96.0%
4. 年収:94.0%
5. 勤続年数:93.6%
6. 返済負担率:92.0%
7. 担保評価:91.8%
8. 金融機関の営業エリア:90.4%
9. 連帯保証:87.1%
10. 国籍:75.6%

この上位10項目は過去3年間ほとんど変化がない。ただし、今回9番目となった「連帯保証」(87.1%)は、前回93.1%で6ポイントも減っている。その理由は、昨今は連帯保証人を見つけることが難しい場合が多く、保証会社を利用するケースが増えてきたことなどが考えられる。

変動金利型(元利均等)なら5年間返済額は変わらない

2024年5月31日、大手銀行は6月に適用する固定金利をいずれも引き上げると発表した2024年5月31日、大手銀行は6月に適用する固定金利をいずれも引き上げると発表した

最近は住宅ローン金利の上昇が噂されることが多くなってきた。しかし、実情として圧倒的人気の変動金利型については、しばらく心配いらないはずだ。なぜなら、固定金利型と違い、変動金利型は日本銀行の短期金利を指標としているため各金融機関は金利を据え置いているからだ。そもそも変動金利型(元利均等)で借りていれば、金利が上がっても5年間は返済額が上がらず、6年目からの返済額も前回の125%以内に抑えるというルールがある。それでも心配ならば貯蓄を増やす、または繰上返済をするといった対策が考えられるだろう。

公開日: