マンションの「2つの老い」問題
現在、マンションの総戸数は約694.3万戸だ(2022年末時点・国土交通省資料より)。これから計算すると国民の1割強がマンションに居住していると推計される。また、上記資料では築40年以上のマンションは、約125.7万戸ある。それが、10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加する見込みだ。
そこで不安視されているのが、マンションの「2つの老い」だ。建物の老朽化による修繕費の増加と、住民の高齢化による認知症のトラブルや孤独死など、さまざまな課題が顕在化しつつある。
このような背景があるなか、現在のマンションはどのような状況なのか。それを知る手掛かりとして注目されているのが「令和5(2023)年度マンション総合調査結果」(国土交通省)だ。
「令和5年度マンション総合調査結果」とは
「令和5(2023)年度マンション総合調査結果」は、国土交通省が管理組合と区分所有者に対して5年に1回行っているアンケート調査の最新結果である。その目的は、今まで行ってきたマンション管理に関する施策の効果や住生活基本計画に基づくマンションについての目標達成状況などを把握し、今後必要となる施策策定の資料とするためだ。たとえば住生活基本計画では、「空き家が多いマンションでの合意形成」「管理費等の確実な徴収や長期修繕計画の設定」などに取り組んでいる。
調査期間と調査対象は以下になる。
調査期間:2023年10月末から2024年1月末
調査対象:管理組合4,270件(回収率37.2%) 区分所有者8,540件(同36.3%)
増加傾向の70歳以上の世帯主
では、おもな結果を見ていこう。
マンション居住の状況
・世帯主の年齢
60歳代が27.8%ともっとも多く、次いで70歳代が25.9%、50歳代が23.7%、40歳代が15.7%となっている。ここで気になるのが70歳以上で、前回調査より3.7ポイント増加している。また、1984年以前に建てられたマンションに限れば、70歳以上が55.9%と過半数だった。
・賃貸戸数の割合
賃貸戸数の割合、つまり居住しているのが所有者ではない住戸があるマンションの割合は77.8%で、前回調査から3.1ポイント増加している。完成年次が古いマンションほど賃貸住戸の割合が大きくなる傾向があり、2015年以降に完成したマンションの場合65.9%だが、1984年以前の場合は87.0%となっている。
・空室戸数(3ヶ月以上)の割合
空室があるマンションの割合は34.0%で前回調査から3.3ポイント減少している。1993年度(52.9%)から5年ごとに見ても減少傾向といえる。ただし、完成年次が古いマンションほど空室がある割合は大きく、2015年以降に完成したマンションで空室がある割合は17.4%だが、1984年以前に完成したマンションは59.7%となっている。
「永住するつもり」は減少
・空室のうち、所有者が不明または連絡が取れない戸数の割合
空室があるマンションのなかで、組合員(区分所有者)名簿でも所有者がわからず、わかっていても連絡がつかない割合は3.3%となっている。
・現在の永住意識
居住しているマンションに「永住するつもり」と回答した区分所有者の割合は、60.4%で前回調査より2.4ポイント減少した。
・マンション購入の際に考慮した項目
マンション購入時に重視した点は、「駅からの距離などの交通利便性」が71.6%でもっとも多く、「間取り」(61.4%)、「日常の買い物環境」(53.5%)と続いている。一方で「マンションは管理を買え」といわれているが、「共用部分の維持管理状況」を重視した人は12.0%だった。
「修繕積立金の額を設定」「修繕積立金の額」はともに増加
マンション管理の状況
・修繕積立金の設定
計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定しているマンションの割合は、59.8%で前回調査から6.2ポイント増加した。また、2003年度調査と比較すると40.1ポイントも増えている。国は「25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定している分譲マンション管理組合の割合」の目標値を、2025年度時点で70.0%と設定している。その成果が出ているということだろう。
・修繕積立金の額(1月・一戸当たり)
月々の一戸当たりの修繕積立金の額は1万3,054円で前回調査から1,811円、1999年度から5,676円増加している。
・修繕積立金の積立状況
計画上の修繕積立金の額に対して、現在の額が不足しているマンションの割合は、36.6%で前回調査から1.8ポイント増加した。
・電気自動車充電設備の状況
電気自動車の充電設備が設置されているマンションの割合は5.7%。まだまだ少数派だ。
・宅配ボックスの状況
宅配ボックスが設置されているマンションは、「竣工当初から設置されている」が49.2%、「後から設置した」が8.2%で合計57.5%だった。また、設置台数については「5~9台」が36.1%でもっとも多く、次いで「10~14台」(34.9%)、「20台以上」(15.2%)となっている。
外部専門家を活用しているマンションは約4割
・老朽化対策について
老朽化対策について議論を行い、建替えや修繕などの方向性が出た管理組合は13.3%となっている。一方で議論を行っていない管理組合は66.1%だった。
・外部専門家の活用について
大規模修繕や管理費滞納などの問題について、外部専門家を活用しているマンションは41.4%。専門家の内訳は、建築士が15.6%でもっとも多く、次いで弁護士(14.5%)、マンション管理士(13.8%)となっている。
・外部専門家の選任理由
外部専門家を選任した理由は、大規模修繕等の実施が47.4%でもっとも多く、次いで知識・ノウハウの不足(32.7%)、管理費の滞納等への法的措置(30.5%)、管理の適正化(28.6%)となっている。
・大規模災害への対応状況
管理組合が大規模災害に対して行っていることで注目したいことはふたつある。ひとつは「防災・災害対応策に関する情報を収集・周知している」の23.7%で前回調査から7ポイント近く増加している。もうひとつが「特になにもしていない」の11.6%で前回調査から11.8ポイントも減少している。これらから防災意識の高まりがうかがえる。
「令和5年度マンション総合調査結果」をどう活用するか
・トラブルの発生状況
もっとも多いトラブルは、「居住者間のマナー」(60.5%)で、前回調査から4.6ポイント増加している。次いで「建物の不具合」(31.7%)、「費用負担」(24.2%)となっている。また、「特にトラブルなし」については16.0%で前回調査から7.2ポイント減少している。
・管理費または修繕積立金の滞納有無
滞納がないマンションの割合は62.1%で、前回調査(62.7%)からほとんど変化がない。ただし、前々回が56.1%だったので高止まりという状況だ。
以上が「令和5年度マンション総合調査」のおもな結果だ。これらから世帯主の高齢化が進行していることや、建物の老朽化対策の議論が深まっていないことなどの課題が浮き彫りになった。一方で、修繕積立金の額を設定しているマンションの割合や修繕積立金の額の増加などから国の施策が役立っていることも推測できた。マンションの「2つの老い」については、今のところ特効薬はない。官公庁の担当者や理事会メンバーだけでなく、より多くの人が、どうすればいいのか考えるきっかけとして「令和5年度マンション総合調査結果」を活用したい。
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