人口減少が予測される市区町村は全体の95.5%

2050年時の人口が2020年よりも減少する市区町数は全体の95.5%という結果が、日本の地域別将来推計人口(2023年12月22日公表,国立社会保障・人口問題研究所)から明らかとなった。

この数字、皆さんはどう感じただろうか。

この国が実施した推計によれば、2050年までに人口の半数以上が減少する自治体は全体の約2割、3~5割減少する自治体が全体の4割という結果となった。人口が半減する自治体が全国の2割という結果は自治体に与えるインパクトが非常に大きい。

日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)*出典:国立社会保障・人口問題研究所日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)*出典:国立社会保障・人口問題研究所

自治体の人口減少とそれに伴う存続可能性の推計については、民間の有識者グループの「人口戦略会議」(座長:元岩手県知事の増田寛也)が、国の将来推計人口の結果を踏まえて「消滅可能性自治体」を今年4月に公表している。

この予測では、自治体の約4割にあたる744自治体において、2050年までに20~30代の女性が半減し、「最終的には消滅する可能性がある」という刺激的な分析結果を示したことでメディア等をにぎわせた。

本稿では、国の人口推計結果から、人口減少は今後、日本の都市づくりにどのような影響があるのか。また、これからの住まい探しの際に知っておいたほうがよい簡単な知識などを解説していきたいと思う。

日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)*出典:国立社会保障・人口問題研究所2020/2050比で人口減少率が高い自治体の一例。令和5年人口推計データを加工(*出典:国立社会保障・人口問題研究所)

一年間で政令指定都市の人口相当が消滅

はじめに日本の人口減少について情報を共有したい。

日本の総人口のピークは、2004年12月の1億2,784万人であった。その後、毎年連続して減少を続け、最新の2024年4月1日の総人口(概算値)は、1億2,400万人となった。

2024年4月1日時点の総人口は前年同月に比べて55万人減少している結果だ。この約55万人という数字、東京都八王子市(約56万人)や兵庫県姫路市(約52万人)の人口に相当する。

また、政令指定都市の指定基準の一つである人口50万人とほぼ一致しており、1年間で一つの政令指定都市程度の規模の自治体が消滅していることになる。これだけでも日本が置かれている人口減少の深刻さがわかるかもしれない。これに加えて、近年は物価上昇や円安、実質賃金のマイナスなど、日常生活を取り巻く環境は厳しさを増している。

人口推計2024年4月報(*出典:総務省統計局)人口推計2024年4月報(*出典:総務省統計局)

人口増加が予測される市区町村は全体の4.5%

一方で人口増加が進むと予測される自治体もある。

人口が増加する自治体は、大都市や大都市圏の通勤・通学圏内で積極的な住宅開発が行われているエリアとなる。

例えば、千葉県流山市や茨城県つくばみらい市などは、2015年に開業したつくばエクスプレス沿線の自治体となる。
つくばエクスプレス線整備の背景として、JR常磐線の混雑緩和や、増え続ける東京都市圏の人口の受け皿としての大規模住宅地開発、首都圏北東地域(筑波研究学園都市)への交通網の整備などの必要性などから、特措法(宅鉄法)を制定するなど国策として取り組んできた結果と言っていい。

日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)*出典:国立社会保障・人口問題研究所日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)*出典:国立社会保障・人口問題研究所

このほかにも、地方都市圏の一つであり人口が増加している福岡都市圏の粕屋町などでも人口増加が進むと予測されている。

現在でも人口増加傾向にある自治体の特徴としては、大都市圏を構成する自治体の一部で、かつ、都市圏の中心地に近く、新市街地の整備を政策的に展開しているところが多い。これらの自治体は、大都市中心部よりも地価が低いこともあり若い世代の人口増加が進むことで、社会増・自然増が継続し、将来的にも人口増加が進むと予測されている。

日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)*出典:国立社会保障・人口問題研究所2020/2050年比で人口増加率が高い自治体の一例。令和5年人口推計データを加工(*出典:国立社会保障・人口問題研究所)

人口減少による自治体運営への影響

前項の説明のように人口増加を続けるわずか5%の地域は極めてまれな自治体であり、多くの自治体では急速に人口減少が進む。

社会全体で見れば少子高齢化は社会保障費の増大により地方財政を圧迫する要因となるが、このこと以外にも人口減少による都市づくりへの影響を知るうえで重要なポイントが2つある。

1つ目は、“急速”な人口増加と減少
2つ目は、都市の低密度化

日本の人口はどのように推移してきたのか、こちらの資料をご覧いただきたい。日本の人口はジェットコースターのように急登し急降下する。そして、現在はちょうど急降下のスタート地点にいる。

総人口の長期的推移(*出典:「国土の長期展望」中間とりまとめ概要平成23年2月21日国土審議会政策部会長期展望委員会)総人口の長期的推移(*出典:「国土の長期展望」中間とりまとめ概要平成23年2月21日国土審議会政策部会長期展望委員会)

戦後の人口急増に合わせて急ピッチで道路や上下水道、公園、公営住宅などの市街地を整備したが、今度は急速な人口減少が起き始めている。

ところが次第に社会が変わっていき、出生率の低下や首都圏への過度な人口集中に伴い、当初予測した計画人口を達成できなかった地方都市が多いように思う。公共施設に余剰があると言ってもいい。

しかしながら、人口増加傾向が緩やかになっても、核家族化の進展、マイホーム取得者の増加や自家用車の普及などは進み宅地需要が継続したことで、市街地は郊外へ拡散を続け、人口に対する開発可能な市街地面積を狭めるタイミングを逸してしまった。

都市の低密度化が地方を苦しめる

徐々に人口が増加しているのであれば、予測する人口に合わせて市街地整備を誘導して適切な規模の公共施設を整備するといった、行政側でコントロールが可能となる。

同様に緩やかに人口が減少する傾向であれば、適切に開発可能な市街地を閉じていくことで公共施設を徐々に縮小させることもできるが、人口減少への対応策を検討している間に人口減少社会に突入した。

現在は、適正な人口密度を確保できていない市街地の至るところでランダムに空き家や空き地が発生する実態に陥っている。その一方で、市街地の縁辺部に残る宅地開発しやすい農地が継承者不足などを背景として、アパートやミニ開発として宅地化され続け、市街地は外ににじみ出し続けている。

このことにより地方都市では、市街地の範囲は徐々に拡大しつつ、空き家等がランダムに増えていることで市街地の低密度化を招いている。この状態を都市のスポンジ化ともいい、治安や防災、地価低下、日常生活サービス施設の撤退など、都市の機能不全という深刻な病気を患っている状況だ。

青森市の人口密度の推移(*出典:不動産情報ライブラリ)青森市の人口密度の推移(*出典:不動産情報ライブラリ)

また、公共施設を管理していくうえでも大きな課題となっている。住民一人あたりの行政コストと市街地の人口密度には相関関係があり、市街地の公共施設を効率よく運営していくためには一定の人口密度の確保が必要となる。人口密度低下が続いている状況あれば、公共が提供可能なサービスの範囲を狭めるために人口を誘導して密度を維持するのが効率的となる。

これは、行政コストのみならず医療や商業等の日常生活サービス施設を提供する民間事業者の立地にも関わることで、日常生活に必要不可欠なサービス施設の維持には周辺人口密度が必ず必要となる。

しかしながら、今後も人口減少により都市の低密度化が止まらず、2050年には多くの地方都市で市街化区域(市街化を促進する区域)の設定基準である40人/haを下回ることが予測されている。

例えば、この数字を下回るとまちなかのコンビニ(幹線道路沿い設置を除く)ですら立地できない可能性が高い。当然にスーパーの立地も難しくなり、人口規模の小さな自治体であれば、いずれ隣接自治体の大規模スーパーに何十分もかけて行かなければならない状況になるかもしれない。

青森市の人口密度の推移(*出典:不動産情報ライブラリ)行政コストと人口密度の相関関係(*出典:都市のスポンジ化について、国土交通省)

人口減少に対する各自治体の対策

人口減少に対する自治体の対策というと、一般的に、子育て支援や移住支援、人口流出防止対策などが挙げられる。実際に多くの自治体で取り組んでいる。

しかしながら、交通網が不十分で隣接自治体への移動が困難であった時代とは異なり、現代では高速鉄道や道路網の充実により都市圏の範囲が広域化している。一つの自治体の行政区域で行政運営が完結している自治体は大規模合併により都市圏の範囲と一致している自治体くらいで、一般的には複数の自治体により都市圏を構成し、日常生活を営むうえで相互依存の関係が生じている。

こうした状況にもかかわらず、隣接自治体間での競争は継続している。例えば、同一都市圏の中核となる都市、ネットワーク型コンパクトシティの形成を推進するために都市内の各拠点への投資や公共交通の充実などにより都市圏全体の経済活性化を図っていこうとするが、隣接自治体では、町の税収増や隣接自治体からの人を呼び込むために郊外に自家用車でのみ来訪可能な大規模商業施設を誘導するケースがある。

まちづくりはそれぞれの自治体で方針が異なる。明確に正しさを判断することはできないうえに都市計画法上も厳しい制限が設けられていないためそれぞれの自治体の考え方が尊重されるが、同一都市圏内の自治体で協調することができれば都市圏内の住民にとってよりよい公共サービスが提供できるのではと思う。

立地適正化計画制度の概要(抜粋)立地適正化計画制度の概要(抜粋)

話を戻し、自治体単体での取り組みを見ると、人口減少下でも市街地において一定の人口密度を維持するための取り組みを進めている自治体が増えている。これを立地適正化計画制度という。

2014年の都市再生特別措置法の改正により新たなに誕生した制度であり、2023年末時点で539都市が策定を終えている。自治体が国の補助制度などを活用する場合には当該計画の策定が必須となるため人口減少が予測されている自治体では策定が進められている。また、公共施設の維持・再編などのあり方をまとめた「公共施設等総合管理計画」を策定し、立地適正化計画などの各まちづくり計画と連携した取り組みを行っているところもある。

この立地適正化計画では、ネットワーク型コンパクトシティといって、公共交通等で都市内の各拠点を結び、それら拠点周辺の人口密度の維持等を行う計画となっている。現在は、自治体単体または都市圏ベースで策定されている。中心市街地活性化が盛んであった時代のコンパクトシティは中心市街地の1ヶ所に集中させようとするものとして住民や各業界から誤解・反発されていたが、2014年度に制度化された立地適正化計画制度では、都市ごとに異なる市街地形成の成り立ちや都市構造に対応した計画となっている。

具体的には居住を誘導する区域(居住誘導区域)や日常生活サービス施設を誘導する区域(都市機能誘導区域)を設定するほか、数ある都市の諸課題から何を重点的に解決するのかを定めて施策を展開している。なお、計画の対象とする範囲は都市計画区域などの法定上の区域であり、郊外の山間部や農村部などに居住する方々を強制的にまちなかに誘導するための計画ではないことに注意が必要となる。

限界集落等については、集落単位での統合や撤退、地域コミュニティの維持などの小さな拠点化を図っていかなければ最低限の公共サービスすら提供することが難しくなる。このため、今後の集落のあり方を行政・住民・各種サービスを提供する民間事業者等と対話を重ね、個々の課題に応じた解決方法を導き出す必要がある。

立地適正化計画制度の概要(抜粋)立地適正化計画制度の概要(*出典:国土交通省)

住まい探しでは、人口減少率ではなく将来人口密度を確認する

住まい探しといっても、まちなかなのか、市街地郊外なのか、山間部なのかによって判断する指標が異なるため、一概に「こうするべき」という判断方法はないが、こちらのサイトをご覧になっている方の多くがマンションやアパートが立ち並ぶまちなかを選択すると想定して提案したい。

今後の住まい探しでは、市区町村毎の人口減少率で良し悪しを判断するのではなく、街中の人口密度を把握する必要がある。今後、人口が大きく減少する市区町村であっても、細部を確認すると人口密度が低下する地域と増加する地域に分かれる。

また、自治体として、どの地域の人口密度を維持するのか。その方針を確認し土地の将来性を判断する必要がある。それらを簡単に確認する方法をお伝えしたい。

先ほど立地適正化計画で解説したように、人口減少下であっても将来にわたって一定の人口密度を確保していこうとするエリアを「居住誘導区域」および「都市機能誘導区域」という。

自治体ごとのWEBサイトで立地適正化計画を見れば確認できるが、この方法以外にも簡単に閲覧可能な方法がある。

それが、国が今年4月から運用を開始した「不動産情報ライブラリ」となる。このライブラリでは、立地適正化計画の誘導区域を地図上で簡単に閲覧することができる。自治体が独自の名称を設定していても法定上の誘導区域名として表示されるため区域を誤解することがない。

加えて、2015年の国勢調査結果ベースの将来推計人口(2050年)を閲覧することができる。将来推計人口は500mメッシュのデータとなっており、誘導区域図と重ね合わせることが可能となっている。サクサク動いてスマホでも使いやすいので、住まい探しの際にはとても参考となるサイトのため活用してみてほしい。

不動産情報ライブラリ(*https://www.reinfolib.mlit.go.jp)不動産情報ライブラリ(*https://www.reinfolib.mlit.go.jp)

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