東急リバブルはVRシアターを増設

東急リバブル銀座サロンのVRシアター。現在は大小2つのシアターがあり、大きいシアターではファミリータイプの物件の投影も可能東急リバブル銀座サロンのVRシアター。現在は大小2つのシアターがあり、大きいシアターではファミリータイプの物件の投影も可能

東急リバブル株式会社の新築マンション販売拠点「東急リバブル銀座サロン」が2022年5月にオープンしてから、まもなく2年となる。23年10月には、同サロンで販売受託物件として初となる「ルフォン上野松が谷(売主:株式会社サンケイビル)」のVRモデルルームを公開した。

同物件のルームプランは、1LDKから3LDK。同サロンのオープン時は、ワンルームなど主に単身者向けの物件しか表現できない「幅約4.6m×奥行約5.9m」のシアタールーム1つのみだったが、23年7月に「幅約9.3m×奥行約6.5m」のVRシアターを増設し、現在ではファミリータイプの投影も可能となっている。

シアタールーム増設の効果は、2LDK、3LDKの部屋を投影できるようになったことだけではない。アフターコロナとなった今も、土日祝日の同サロンの予約はほぼ満席。シアタールームが増えたことで顧客を案内しやすくなったという。

自社物件から受託物件まで、単身者向けからファミリータイプまで同サロンでVR内覧が可能になったことから、現在は、常時、複数の物件の販売拠点となっている同サロン。ときには、希望の物件が定まっていない顧客が訪れることもあるという。

販売受託業の永遠の課題

「販売受託業は、利益を出すのが難しい事業。販売期間が延びても、どれだけ人件費をかけても受託先から受領する手数料額は決まっているため、いかに早く、効率的に売れるかが非常に重要」

こう語るのは、同社の事業推進部事業企画グループの中泉圭介氏だ。

当初は、受託元から「モデルルームを作らずに売れるのか」という不安の声も聞かれたというが、同サロンオープンから約1年半は、自社物件「ルジェンテ」の販売に注力。ここで「VRだけでも売れる」という確信を得られたことが、冒頭の「ルフォン上野松が谷」のVRモデルルーム公開へと繋がった。

「新築マンションの供給数は減少傾向にあり、販売を外部に委託しないデベロッパーも増えた。当サロンは、受託販売の新しい形のチャレンジでもある」(中泉氏)

銀座サロンで扱う初めての販売受託物件となった、ルフォン上野松が谷 銀座サロンで扱う初めての販売受託物件となった、ルフォン上野松が谷

最新技術を基点とした「集約販売拠点」に

現地付近に建築するモデルルームは、その物件に興味があり、なおかつ一定程度、検討段階が進んだ人が訪れるケースが多く、モデルルームを見て条件やニーズに合致しなかった場合、すぐに他物件の具体的な提案をすることは難しい。

VRモデルルームが広く知られるようになった当時は、主に「非対面」であることがメリットだと認識されていた。しかし、現在は、検討段階が低い顧客まで取り込み、逃さないという点で、同社側のメリットも大きいようだ。加えて、当然ながら物件ごとに数千万円かけてモデルルームを建築する必要はなく、1人の人員が複数の物件を紹介できるため、費用面や効率面でのメリットも大きい。

自社物件から他のデベロッパーが手がけるマンションまで多様な物件の販売拠点となっている同サロンは、特にこのメリットが色濃く出る。さらに中古物件も紹介できるというのは、仲介会社ならではの強みだ。

単なる「VRモデルルーム」という位置付けではなく、最新技術を基点とした集約販売拠点となっているのが、東急リバブル銀座サロンの大きな特徴だ。同サロンのコンセプトは「シームレス」。まさに“境界のない”不動産取引が、顧客だけでなく、不動産会社にも利益をもたらす。

東急リバブルの銀座サロン。中泉氏は、「今後は当サロンでより多くの受託販売物件を扱っていきたい」と語る東急リバブルの銀座サロン。中泉氏は、「今後は当サロンでより多くの受託販売物件を扱っていきたい」と語る

日鉄興和不動産の販売拠点のコンセプトは「デジタルとリアルの融合」

LIVIO Life Design! SALONのイベントスペース。週末や休日には、様々なイベントが開催されるLIVIO Life Design! SALONのイベントスペース。週末や休日には、様々なイベントが開催される

マンションの販売を他社に委託する側の日鉄興和不動産株式会社もまた23年3月、品川でVRモデルルームを備えた「LIVIO Life Design! SALON」をオープンした。同社はこれまでも、同じくVRモデルルームを備えた「LIVIO Life Design! SALON UENO」やマンションのオンラインストア「sumune for LIVIO」などによって、デジタル技術を活用した顧客体験を創出してきた。

一方で、マンションは顧客にとって人生における最も大きな買い物であり、対面相談やリアルな体験も重要であることから、同サロンは「デジタルとリアルの融合」をコンセプトにした体感型のマンションギャラリーという位置付けとしている。

同サロンで販売している物件は、LIVIOシリーズのうち品川から約1時間圏内のエリアで分譲される中小規模のマンション。集約販売拠点である点は東急リバブルと同様だが、日鉄興和不動産の同サロンが扱うのはすべて自社物件だ。

販売拠点でありながら多様な役割を担う

お話を伺った弓田氏は、LIVIO Life Design! SALONの設立当初から企画などに携わり、現在ではリーダーを務めるお話を伺った弓田氏は、LIVIO Life Design! SALONの設立当初から企画などに携わり、現在ではリーダーを務める

サロンリーダーの弓田秀人氏は、同サロンが担う役割は「マンションの販売」だけではないと語る。

「販売を他社に委託するとなると、どうしても販売から引き渡しまでの間、お客様との接点が持ちにくくなる。このサロンは販売拠点であるとともに、こうした課題を解決する目的もある」

同サロンでは、週末や休日に、契約者や入居者が参加できるイベントを開催している。その内容は、マンションに関連するものから健康や掃除に関するもの、季節の小物作りや自由研究ワークショップなどまで多岐にわたる。

このようなイベントを開催する狙いは、顧客と接点を持つことで、入居までの悩み、入居してからの悩みを吸い上げることにあるという。サロン内には、インテリアやリフォーム、買い替えといった悩みに対応するコンシェルジュも常駐する。

LIVIOは、21年にリブランディングを実施している。新たなコンセプトは「人生を豊かにするためのマンション」。同サロンは、こうした同社の想いを伝え、広げる役割も担っている。

「弊社はコロナ禍でも新築マンションの販売数を伸ばすことができたが、これは認知度の拡大によるところが大きいと考えている。とはいえ、まだまだ大手には劣る。当サロンは、LIVIOブランドの旗艦店でもある。他にも、LIVIOの最新の設備や共用部の設備、構造などもご体感いただき、お客様の声を聞くためのリアルな場、マンション購入の検討から入居後までサポートする拠点など様々な顔を持つ」(弓田氏)

リアルとデジタルの融合で没入感を高める

同サロンを訪れる顧客は、エントランスで靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて荷物をロッカーに預ける。一歩立ち入ると、アロマの香りが立ち込める空間に優雅な音楽が流れ、モデルルームというよりはまさしくサロンやギャラリーといった印象を持つ。

約420坪という首都圏最大級の広さを活かし、内部はシアタールームやVRを活用したリアルサイズスクリーン、3つのリアルモデルルームなど様々なスペースで構成される。モデルルームは1箇所にまとめるのではなく、あえて点在させることで、巡る楽しみを創出しているのだという。サロン内にはカフェやキッズスペースなども用意され、まるでホスピタリティの行き届いたテーマパークを彷彿とさせる。

「当サロンの企画時から意識していたのは、リラックスしていただくこと。これも、単に販売するだけの拠点ではないことからのこだわり」(弓田氏)

同サロンの巡り方に決められた順序はないものの、初めて訪れた人の多くがVRモデルルームに辿り着くのは、最新の設備や共用部の構造、リアルのモデルルームなどを体感した後。「リアル」を見たあとに「デジタル」を体感することで、没入感が高まる。まさにリアルとデジタルの融合だ。

VRモデルルームの役割もまた「販売」に特化していない点も、同サロンの特徴といえるだろう。VRモデルルームでは、リアルのモデルルームにはない間取りを体感できることはもちろん、契約を決めた後に家具配置のシミュレーションをすることも可能。先述のとおり、同サロンにはインテリアについて相談できるコンシェルジュが常駐していることから、契約後も同サロンを訪れる大きな理由の一つとなるはずだ。このような点からも、同社が顧客とのつながりを大切にしていることが伺える。

※LIVIO Life Design! SALONは2024年3月現在、一部改修中

VRモデルルームでは家具の配置もシミュレーションできるVRモデルルームでは家具の配置もシミュレーションできる

VRモデルルームの目的・活用方法は多様化している

コロナ禍で広がった、VRモデルルーム。“アフターコロナ”が本格化した今、VRモデルルームは顧客にとって多様化する不動産の選び方の一つにすぎない。現在では多くの不動産関連会社が導入しているが、その目的や活用方法もまた多様化しつつある。

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