ネズミがもたらす実害を考える
自宅や職場などで、ネズミ(イエネズミ)の被害に悩まされた人は少なくないはずだ。筆者は学生時代に飲食店でアルバイトをしており、店長にネズミ退治を命じられて途方に暮れた経験がある。粘着シートで大きなドブネズミを捕獲したものの、その処理に頭を抱えてしまったのだ。しかしながら、実際にネズミが私たち人間にどのような被害をもたらすのか詳しく知る人も少ないのではないだろうか。そこで公益社団法人 東京都ペストコントロール協会の資料などを基に、住宅を中心としたネズミ被害の内容と、それらを防ぐ方法を解説する。
ネズミが与える3つの被害
ネズミが私たちに与える被害は、「衛生的被害」「都市機能の阻害」「経済的被害」の3つに分けられる。
衛生的被害
主な衛生的被害は、ネズミから人へ伝播する感染症。ネズミに噛まれる、ネズミの身体や排泄物に触るといったことで、病原体が感染する。たとえばサルモネラ菌による食中毒の発症などだ。また、ネズミの身体にはダニが付いており、それが人間にも寄生して猛烈なかゆみなどの被害をもたらすこともある。
都市機能の阻害
ネズミは電気コードなど電気設備をかじることがある。電気コードをかじられると、停電や火災につながるのだ。社団法人 関東電気保安協会によると、同協会が管轄する地域内では小動物による電気設備トラブルが年間約70件発生しており、そのうち6割弱がネズミによるものだという。また、東京消防庁の管内では、年間約6,000~7,000件の火災が発生しているが、そのうち12件前後の原因はネズミである。
経済的損害
ネズミは家の中のあらゆるものをかじる。食料品はもちろん、靴、かばん、洋服なども被害に遭う可能性がある。さらに、ネズミの尿や糞でそれらが汚されるケースもある。また、家自体の柱や断熱材などをかじられたり、汚されたりされれば、家の資産価値が下がることもあり得る。
建物内に住み着くネズミの種類
建物内に定着するネズミは、おもにクマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの3種類で、これらを総称してイエネズミと呼ぶこともある。アカネズミ、ヒメネズミといった野ネズミは建物の中に入ってくることはあっても定着はしない。
クマネズミ
体長15~23cm。背中は茶色、褐色、黒色だがお腹は黄色がかっている。多くは建物の上層階や天井裏など高所で活動し、電線や配管を登ることもできる。警戒心が強いため駆除は非常に難しい。
ドブネズミ
体長22~26cm。クマネズミよりも大型でずんぐりしている。毛色は褐色または灰褐色。床下や下水溝などで活動し、地下街などでもよく見かける。肉や植物などさまざまなものを餌とし、極めてどん欲でどう猛。駆除は難しい。
ハツカネズミ
体長は6~9cm。毛色は灰褐色がメインだが、白色など他の色もあり、これらはペットとしても売られている。身体が小さいためわずかな隙間でも侵入してくるが、警戒心が低いので比較的駆除は容易。
自分でできるネズミの防除方法
ネズミは種類によって身体の大きさが異なり、それによって侵入経路も変わってくる。とはいえ、種類にかかわらず500円玉ほどの隙間があれば侵入してくると考えて間違いはない。ハツカネズミに限れば1cmの隙間でも入ってくるといわれている。
以上を前提に行うべき防除方法は、①餌をなくす・侵入口を塞ぐ、②罠による捕獲、③毒餌による殺鼠だ。基本的にこの順に行い、あまりにもネズミが多い場合は①②③を併用する。
①餌をなくす・侵入口を塞ぐ
食品や生ごみは蓋つきの容器で管理する、乱雑な放置をしないなどでネズミが住みつかない環境にすることが重要。また、床下の通風口、エアコンの配管穴、排水管、壊れた外壁といった隙間はネズミの侵入口となり得るので専用の部材などで塞ぐようにする。
②罠による捕獲
ネズミ捕獲用の粘着シート、生け捕りカゴなどで捕獲する。しかし、仕掛ける場所や誘い餌の付け方などにコツがあるため、一般人では上手くいかないことも多い。
③毒餌による殺鼠
毒餌(殺鼠剤)には2種類あり、急性毒剤と抗疑血剤に大別される。最近はより安全性の高い抗疑血剤が使用されることが多い。殺鼠剤は置いておけば食べてくれるというものではなく、好みそうな餌を混ぜる、3日経って反応がなければ配置場所を変えるといった工夫も必要だ。
防除に限界を感じたら専門事業者へ依頼を
罠や毒餌は、事故を防ぐために子ども、高齢者、ペットの手の届かない場所で使用しなければならない。また、粘着シートを使用する場合は、捕獲後にネズミが餓死するまで待たなければならないし、生け捕りカゴの場合は、自身で殺処分を行う必要がある。そして毒餌の場合は、どこでネズミが死んでいるのかわからないので、定期的に天井裏などをチェックする必要がある。死骸の存在を知らずに放置していると、今度は悪臭や害虫の発生に悩まされることになるだろう。
このような手間をかけたくないのであれば、やはり専門事業者へ防除を依頼するのが得策だろう。同事業者に依頼すれば、「スピーディーな駆除」「再発の防止」「死体の処理」などを期待できる。
この際に注意したいのが、事業者の選び方だ。できる限り適切に防除し、安価な事業者に依頼したい。そのため、まずは複数の事業者から見積もりを取ろう。そうすれば、「だいたいの相場」と「それぞれの信頼度」などがわかるはずだ。信頼度については、最初の電話やメール対応の態度、知識量である程度判断できる。さらに現地見積もりを行って各社共通の質問をすれば、横並びで比較できる。質問内容は、「ネズミの種類はなんですか」「どのような薬剤を使用しますか」「その薬剤のメリットとデメリットを教えてください」「追加料金の可能性はありますか」といったことだ。これらに親切、丁寧に回答してくれ、価格も納得できる事業者ならば問題ないはずだ。
取材協力
公益社団法人 東京都ペストコントロール協会






