暮らしの多様化で人気が高まる平屋。市場は10年で1.8倍に
平屋市場が活況だ。
国土交通省の建築着工統計調査によると、平屋市場はこの10年で約1.8倍に拡大した。一戸建て住宅に占める平屋の割合も年々上昇し、2021年度には12.7%、九州や北関東など一部の地域では20%を超えている。Googleトレンドによれば、インターネットで「平屋」と検索する人はこの10年で4倍以上に増えており、平屋への関心の高さが窺える。
平屋を求める人が増えた背景には、少子化による世帯人数の減少や、新しい価値観を持つZ世代が住宅一次取得層となってきていることなどが挙げられるだろう。
平屋のメリットは、
・生活空間がワンフロアになることで、家族のコミュニケーションがとりやすくなること
・バリアフリーで効率的な生活動線を確保しやすいこと
・構造が安定するため開口部を大きく設計しやすいこと
・小屋裏を生かすことで天井を高く、開放感のある空間にしやすいこと
・メンテナンス費用を抑えられること
などがある。
上記のメリットを踏まえ、「広さは必要最低限でいい」「自分たちの暮らしに合った住まいがいい」といった観点で、一般的な一戸建て住宅ではなく平屋に注目する人が増えているようだ。ここ数年のコロナ禍による暮らし方、働き方の変容も平屋に人気が集まる背景の一つにあるだろう。
ニーズに応えるべく、大手ハウスメーカーが平屋のラインアップを拡充させたり、平屋専門メーカーも現れたりしている。しかし、主流の二階建て以上の一戸建て住宅に比べれば、まだまだ平屋の自由度や選択肢は少ないのが現状であろう。各社の事例を見れば、マンションの間取りをそのままワンフロアに落とし込んだような画一的なプランが多いことが分かる。
そのような平屋市場に「暮らしの新ジャンル」と銘打ち、新たな平屋シリーズを提案したのが「BESS」ブランドでログハウスを中心とした住宅を展開する株式会社アールシーコアだ。市場を生み出すことを得意としてきた同社は、2022年8月、平屋と小屋のコンセプトを融合させた「BESSの平小屋・栖(すみか)ログ」を発表した。
”鳥の巣”の意味を持つ「栖」の名前の通り、小さな平屋を巣のようにとらえ、そこを中心に住む人が自由に羽ばたける暮らしを提案したという。建築想定地は、土地の広さがある程度確保できる地方エリアや郊外。庭やデッキの活用、窓から覗く風景との一体感など、「外とのつながり」を強く感じられる暮らしは、従来の平屋ではなかなかなかったコンセプトだ。
平屋の選択肢を広げる、BESSの新シリーズの概要を紹介しよう。
BESSの新シリーズ「平小屋(ひらこや)・栖ログ」の原点は、”小屋”
平小屋とは、”平屋”と”小屋”を掛け合わせた造語だ。名前が示す通り、BESSの平小屋は「小屋」が発想の起点になっている。
同社が手がけてきたログハウスとの親和性もあり、BESSは2016年に「建てるログ小屋(庭などに固定するタイプの小屋)」、2021年には「走る・移るログ小屋(可動式のログ小屋)」を発売。建てるログ小屋は累計約700台を販売するなど、独自の視点から小屋市場を広げてきた実績がある。そして2022年8月、新たに「暮らすログ小屋」として発表したのが、BESSの平小屋・栖ログである。
小屋が出発点であることが、他メーカーの平屋とは一線を画している。
アールシーコアの専務取締役・永井氏は新商品のプレス発表会で、「栖ログは、家ではありません」と言い切った。定住する場所を家とするなら、紛れもなく家ではあるものの、「栖ログのルーツは小屋であるから、従来の"家"という固定概念に縛られずにとらえてほしい」という意味だそうだ。
その言葉を裏付けるように、栖ログには家であれば当たり前にある「間取り」の概念はない。「居間」「洋室」といった部屋の用途を規定する言葉が使われていないのだ。室内を仕切る壁はなく、小屋裏空間も含めたひとつづきの空間となっている。さらに、建物と外部との境目もあいまいで、緩やかだ。地面と近い平屋ならではかもしれない。家庭菜園を日常の一部にしたり、ウッドデッキ・庭も含めて一つのリビングのように使うなど、建物を取り巻く環境すべてが暮らしの舞台となる。
建物も周辺環境も、どのように使うかは使う人次第。室内に仕切り壁がなく、外空間の活用アイデアもさまざまなものがあるからこそ、今後どのように空間を生かしていくかは住む人に委ねられている。
“「住む」より「楽しむ」”を掲げてきた同社らしいコンセプトだ。余計なものは持たずに、好きなものや趣味、家族の時間など、自分が大切にしたいものに時間も空間も費やしたい。そんな価値観を持つ人であれば、わくわくする暮らしのイメージが湧きやすい空間だと感じられた。
価格が高いイメージの平屋。平小屋の価格ラインナップは?
平屋に住みたい人が増える一方、平屋というと「価格が高い」イメージを持つ人も多いだろう。2階がない分材料費は抑えられるが、全体の構造や施工工程はそれほど変わらない。実際にBESSの栖ログも平米単価でいえば、決して安いわけではない。
ただ3つのモデルラインナップが用意されており、価格設定は分かりやすくなっている。サイズ違いの3つのモデルをみていこう。
■S30(えす さんまる)
栖ログの中で一番小さな妻入り形状のタイプだ。名称の「S30」は1階の床面積のおおよその大きさを表している(1階の床面積は31.05m2)。ダイニングスペースと就寝空間とをイメージすると、ややゆったりした1DKといったところだろう。荷物をそれほど多く持たない大人二人暮らしであれば、デッキ部分や小屋裏空間をうまく使えば快適に暮らせそうだ。
■M40(えむ よんまる)
1階の床面積が41.40m2のミドルサイズ。コンパクトながら大人二人がそれぞれの空間を確保できそうな2DK~2LDK程度の広さだ。また桁向きに設けられたデッキ部分は3モデルの中で最も大きく、その広さは9.1m2。平小屋の中央に位置する掃き出し窓を開け放てば、自然光を生かしたアウトドアリビングのように空間を広く使うこともできる。
庭や小屋裏の活用イメージが広がる、遊び心をくすぐる住空間
■L60(える ろくまる)
M40と同様、L60も桁入りの形状。1階の床面積は57.96m2と、二人暮らしとしては十分な広さがある。入口から見て両側にそれぞれ16.6m2の小屋裏空間があるのも特徴的だ。16.6m2といえば約10畳。梯子の上に広がる2つの空間をどのように使うか、想像がかき立てられる。
※3モデルとも価格は参考価格。地域・建築条件により異なる。
増える二人世帯の住宅ニーズに応える、平屋の可能性
BESSの平小屋・栖ログが発売となり、ユーザーからの問合せは中間のサイズ「M40」が多いという。そして若い世代だけではなく、想定以上に高齢二人世帯からの反響も大きいそうだ。
今の住宅市場は、二人暮らし向けの住まいが不足しているのかもしれない。
二人世帯の割合は年々増えている。総務省の国勢調査報告によると、1970年から2020年の全世帯に占める二人世帯の割合は、14%から28%へと約2倍となった。単身世帯も20%から38%へほぼ倍増した一方で、3人世帯以上の割合は66%から34%にまで減少している。また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によれば、将来的な平均世帯人員は2015年の2.33人から減少し続け、2040年には2.08人にまで減少すると推計されている。
ライフスタイルの多様化や世帯人数の変化につれ、二人暮らし向けのコンパクトマンションは増えているが、一般的な一戸建て住宅は依然ファミリーを前提とした間取りがほとんどだ。コンパクトな住まいへのニーズに応える既存物件が少ないなか、その受け皿として平屋市場は今後も広がっていくと想定される。BESSの平小屋・栖ログのように、暮らしの選択肢を広げる各社の平屋シリーズに今後も注目したい。
取材協力:株式会社アールシーコア
https://sumikalog.bess.jp/
https://www.bess.jp/
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