東京都よりも広い土地が空き地に

空き地の数の上昇も問題となっている空き地の数の上昇も問題となっている

人口減、少子高齢化などによって日本の空き家、空き地は増え続けている。空き家の総数は、2018年までの30年間で394万戸から849万戸と約2.15倍に増加。このうち賃貸や売却などの利用予定がない、いわゆる「その他空き家」が131万戸から349万戸と約2.66倍も増えている。空き家のなかでも、放置されている物件が特に増加しているのだ。

また、空き家が立つ土地も含む空き地の数の上昇も問題となっている。全国の個人・法人が保有する土地の総面積は189万ヘクタール。このなかで空き地となっているのは23.4万ヘクタール(約12.4%)で東京都の面積(約22万ヘクタール)よりも広い。しかもそのうち7.9万ヘクタール、つまり全保有地の約4.2%は低未利用土地となっている。

空き地が増えていく所有者と不動産事業者の事情

低未利用土地とは、周辺の同一用途の土地と比べて利用の程度が著しく低い、またはまったく利用されていない土地のことである。たとえば一時的に資材置き場にしている土地などだ。上記の「その他空き家」もこれに当てはまる。

空き地は全国的に増加傾向で、地方においては宅地の1割が空き地といわれている。空き地が増えている背景には、所有者と、空き地を商品として扱う不動産事業者の両方に事情がある。

所有者の主な事情は3つ。まず売却価格が想定よりも低いということ。仮に数十年前に1,000万円以上費やして建てた家でも、地域によっては査定価格が土地代も含めて200~300万円以下になってしまうこともあり得る。それにもかかわらず、売却時には測量費や解体費などの譲渡費用を負担しなければならない。そのうえ、売却後は譲渡所得税も納めなければならないのだ。要するに売却しても割が合わないということだ。それゆえ、売らずに放置してしまい、低未利用土地(空き家)となってしまう。

一方で不動産事業者側の事情は、利益が少ないということだ。不動産事業者の仲介手数料は、取引金額によって上限が定められている。売買価格(税抜き)が200万円以下の場合は5%(税別)、売買価格(税抜き)が201万円以上400万円以下の場合は4%+2万円(税別)、売買価格(税抜き)が401万円以上の場合は3%+6万円(税別)だ。たとえば200万円の空き家売却を仲介した場合、手数料は5%なので10万円(税別)となる。しかし、不動産事業者の多くは普段から数千万円以上の取引を仲介している。仮に2,000万円の取引であれば手数料は3%+6万円で66万円(税別)だ。これだけ報酬に差があっても調査などに要する経費や手間は同等か、所有者の権利関係が複雑といったことでそれ以上になることもある。それゆえ、廉価な空き家の仲介には積極的になりにくいケースも多い。

廉価な空き家の仲介でも、調査などに要する経費や手間はかかる廉価な空き家の仲介でも、調査などに要する経費や手間はかかる

「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」とは

とはいえ、低未利用土地を活用したいという潜在的なニーズは少なくないはずだ。たとえば、高度経済成長期に分譲された住宅地のなかには、所有者が広さに満足していないケースもある。このような住宅の隣地が低未利用の空き地や空き家になれば、地元の不動産事業者を通じて廉価で購入し、増築や、ガレージ、庭にするといった活用が可能になる。

住宅地の隣地を取得した例。隣地を購入できればガレージや庭などに活用できる(出所:国土交通省『低未利用地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除について』)住宅地の隣地を取得した例。隣地を購入できればガレージや庭などに活用できる(出所:国土交通省『低未利用地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除について』)

これらの背景から国や自治体は、少額な低未利用土地の売買を促進するいくつかの施策を打っている。その一つが「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」だ。これは2022年12月31日までに下記要件を満たした取引について売主の長期譲渡所得を100万円控除するものだ。

・譲渡した者が個人であること
・都市計画区域内の低未利用土地等であること
(譲渡前に低未利用であることおよび譲渡後に買主が利用する意向があることについて市区町村が確認したもの)
・譲渡の年の1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡であること
・土地とその上物の取引額の合計が500万円以下であること

仮に課税対象額が500万円の取引をした場合、従来はその金額に対して20%の100万円を納税しなければならなかった。それがこの特例によって課税対象額が500万円―100万円=400万円となり、納税額は80万円で済むようになる。要するに最大で20万円の減税効果がある特例ということだ。この制度によって土地の適切な利用・管理だけでなく、土地の有効活用を通じた投資の促進、地域活性化、所有者不明土地の発生予防といった効果が期待できる。

住宅地の隣地を取得した例。隣地を購入できればガレージや庭などに活用できる(出所:国土交通省『低未利用地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除について』)特例が適用されれば最大で20万円の減税効果がある(出所:国土交通省『低未利用地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除について』)

低未利用土地を売りたい人と買いたい人をマッチングさせる空き家バンク

また、自治体による空き家バンクにも注目したい。これは自治体が移住促進や地域活性化を目的として、空き地・空き家・空き店舗などの売却を希望する所有者からの情報を収集・発信し、購入等を希望する人に紹介する制度だ。現在、全国の3分の2の自治体がこの取組みを行っている。

成功事例にはこのようなものがある。その物件は海を望むみかん畑の斜面地にある空き家で、10年以上引き取り手がいなかった。そこで所有者が希望譲渡価格250万円で空き家バンクに登録したところ、レストランを開業するため安価な物件を探していた買主へ売却することに成功。リノベーション後に開業したレストランは雑誌にも掲載され、地元市民や観光客に大好評で、平日ランチは予約が困難な状態になっている。

空き家バンクのイメージ。価値がつきにくい空き地等を売却したい所有者と安価な物件を探している買主をマッチングさせるサービスだ(出所:国土交通省『低未利用地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除について』)空き家バンクのイメージ。価値がつきにくい空き地等を売却したい所有者と安価な物件を探している買主をマッチングさせるサービスだ(出所:国土交通省『低未利用地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除について』)

売主・買主・不動産事業者の「三方よし」

不動産事業者の報酬額については、2018年1月1日に「空家等の売買又は交換の媒介における特例」が施行された。これによって廉価(400万円以下)な空き家等で、通常よりも現地調査費用等がかかる物件に関しては、従来の報酬額に加えて調査費用等に相当する額も売主から受領できるようになった(ただし、現地調査に要する費用を加えた合計報酬額は税抜き18万円が上限)。たとえば、売買価格200万円の物件であれば、従来の報酬額の上限は10万円(税別)だったが、場合によっては18万円(税別)を受け取ることもできるようになった。

低未利用土地は買主にとってもメリットは大きい。前述のように隣地を購入できれば居住水準が向上する。雑草が茂ったり害虫が発生するような土地をきれいに活用できれば周辺の住環境も向上することになる。さらに自治体によっては、低未利用土地の購入やリフォーム、そこでの新築費用に対して補助金を交付する制度もある。また、事業用地として取得すれば、安価に事業を拡大できることになる。売主にとっても買主にとっても、そして不動産事業者にとっても利点が大きくなった低未利用土地。興味を持った人は、ぜひ各自治体の空き家バンクなどを調べてほしい。