東横堀川界隈。街づくりは新たなステージへ
かつて水の都と呼ばれた現在の大阪市域。淀川水系の大川からぐるりと中心の船場地区を囲むように堀川が開削され、人とモノの流通を担い経済都市大阪の発展を担っていた。今でも、大川から東横堀川、道頓堀川、木津川を結ぶ水の回廊としてその流れは健在だ。その中でも大阪城のお濠として最初に掘削されたのが、大川から道頓堀川へ南北に結ぶ東横堀川。2001年、政府による都市再生プロジェクトに指定されたのを契機に、水都大阪再生プロジェクトは、さまざまな取組みがスタートしている。
「β本町橋(ベータ本町橋)」は、大阪市を東西に結ぶ本町通にかかる本町橋周辺エリアにおける新たな水辺のにぎわい拠点づくりへの公募事業で生まれた。
「経済都市大阪の人やモノの流れを担った水の回廊は、経済発展で高速道路などに役割を変えました。でも近年、大阪は経済都市から暮らしの街へと、姿を変えつつあります。そこで、この川という資源を生かせば、暮らしの街としての魅力アップを果たせるのではないか。そんな考えから、β本町橋は生まれました」(一般社団法人水辺ラボ 理事 廣井真由美さん:以下同)
β本町橋プロジェクトは、一般社団法人水辺ラボを事務局として、4つの事業体が集まって生まれた。β本町橋のコンセプトから、街づくりの担い手としての意義、将来計画などを廣井さんに聞いた。
β本町橋はどんな施設?
訪れたのは、平日の午後。本町通を東に歩き、建造されてから100年を超えるという美しい造形の本町橋を過ぎると、すぐ左手に見えてくる。かつての国際ホテルの跡地に立つ近代的なホテルの道を挟んだ向かいに、東横堀川沿いに細長く広がる東横堀緑道。整備された歩道やベンチには、付近のサラリーマンたちがランチタイムの休憩時間を過ごしている。その中心にあるβ本町橋は、今年2021年8月28日にオープンした。
「建物は木造にこだわりました。国産の材木を構造材に、仕上げ材には吉野杉を使っています。オープン当初は、館内にいい杉の香りが充満して心地よかったです」
水辺を含めた自然との共生をコンセプトにするプロジェクトで、サステイナブルな思想が生かされた建物だ。1階には大きな開口部のあるリビングがあり、テイクアウトフードの販売や、アクティビティの受付、総合的な案内窓口の機能を果たすカウンターがある。
2階にはラボとルームの2つのレンタルスペースがある。開放的なラボは、地元企業の会議や懇親会、セミナー会場として使用。また、親子で参加できるワークショップや、人形劇の公演など、地域の住民の主催による催しが予定されている。ルームでは赤ちゃんとお母さんのスキンシッププログラムであるベビーピクス教室や、ヨガ教室も開催される。このように、地元企業や住民たちが、「学ぶ」「働く」スペースとして自由な発想で利用できるレンタルスペースが2階のフロアだ。
地域の暮らしを向上させる水辺空間に
建物から外に目をやるとそこには東横堀川の川面がすぐそこにある。その上は阪神高速道路環状線の高架の桁だ。ちょうど東横堀川を覆うように都市高速が走っている、都市ならではの光景は、廣井さんによれば、日焼けを防いでくれたり雨傘代わりにもなって、都会の水遊びには都合がいいらしい。
訪れた時にはガイドツアー用のクルーズボートが係留してあり、その向こうにはぷかぷか浮かんでプライベート空間を楽しめる水上ピクニック用のボート、SUP(スタンドアップパドル)や水上自転車のアクティビティの受付カウンターも目に入る。
オープン以来、毎週日曜日には隣接の東横堀緑道と合わせたスペースで、マルシェも開催されていて、地元産の野菜から、日本海の魚などの新鮮食材が並ぶ市場が川辺にお目見えする。都会の真ん中で味わえる朝市の風情が地元住民に好評を博しているという。マルシェ開催時には、地域の方の参加を得て、周辺の掃除も行っている。集客のイベントだけに終わらせるのではなく、地元住民との連携で水辺の美しい環境を守っていきたいという意識が伝わってくる。
文化資源を活かし、民間の力で暮らしの街大阪を変える
一言でβ本町橋はどんな施設なのか、廣井さんに聞いた。
「公園の少ない大阪にあって、人がふらっと立ち寄れる場所、のんびりできるスペースでありたいですね。『遊ぶ』『働く』『学ぶ』『暮らす』その喜びが、レベルアップするための水辺の実験基地でありたいと。β(ベータ)という言葉には、実験中、試行中という意味があります」
廣井さんはこのプロジェクトがスタートする前から、e-よこ会(東横堀川水辺再生協議会)という団体を通じて、水辺文化の保護・再生に携わってきた。
「本町橋の事業提案で求められたのは、にぎわいの創出でした。でも、ずっと東横堀川に関わってきて感じたのは、それだけではだめだ。にぎわいを求めて観光資源になるだけでなく、暮らしの価値を高める、住んでよかったと思える場所にすべきだと。川沿いにある水辺の安らぎ。例えば、水面のキラキラした揺らめきや、水の流れる音。これらを貴重な資源と考え、暮らしを上質なものにする装置にしたい。観光客ではなく生活者としての視点で。
またe-よこ会の活動で学んだのは、地域とのつながりです。清掃など地域の人々の活動が、川に橋に対する愛情を育み、永続的に街の文化を守っていきたいという思いが受け継がれていきます」
プロジェクト案採用にあたっては、そんな廣井さんたちの活動が評価されたという。
2025年に大阪で開催される国際的なイベントを見据えて、大阪ではさまざまなプロジェクトが目白押しだ。そして、大阪市は転入人口が増え続け、経済都市から暮らしの街と変貌しつつある。生活者にとって住んでよかったと思える街になるためには、官製のインフラ整備や都市開発だけでなく、橋や川といった生活の文化資源を生かしつつ、生活者の視点で地域の人を巻き込んだ形で、街づくりを考えることが重要になってくると感じた。
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