住宅ローンに頼らない住宅購入資金の多様化を
日本の住宅の新築着工戸数は減り続けている。がしかし、売買される不動産物件全体の中では、依然として新築住宅の割合は高い。欧米諸国における既存住宅流通シェアは7割~9割程度といわれるなか、日本の全住宅流通量(既存住宅流通+新築着工)に占める既存住宅のシェアは14.7%(平成25年国土交通省政策レビュー資料より)にとどまる。
国土交通省では、増え続ける空き家問題の解決へ向けて、中古住宅の流通促進を目的としてさまざまな施策を打ち出している。一方、不動産売買の現場では、多くの消費者が購入にあたって住宅ローンを利用するが、中古物件のなかには、いわゆる担保評価の面で住宅ローンを組むことができない、つまりローンが利用できない物件も存在する。住宅ローンが利用できないことが、中古物件を流通しにくくしているという面も、当然考えられる。
もちろん住宅ローンが利用できない問題は、物件に係る問題だけではない。デフレ経済の進展に加えて現下のコロナ禍で所得が減り、購入者が金融機関の審査に通らない場合もある。
そこで、注目したいのが、金融機関の住宅ローンを利用することなく、不動産の売買代金を数年にわたって分割して支払うことで販売される「割賦売買」だ。
今回、その割賦売買の普及促進を担う一般社団法人 日本不動産割賦販売取引適正運営監視機構(以下、不動産割賦機構)の理事長 小林宗春さんに話を話を伺った。
「住宅ローンが利用できない購入者。また、住宅ローンが利用できない不動産物件を流通させる手法として、また、資金面で中古物件流通を活性化させる手法として、これからの時代に役割は大きいと言えます」(小林さん:以下同)
一般にはまだなじみのない不動産の割賦売買とは? 割賦売買の普及によって、解決を目指す今日的な課題とは?
長期にわたる返済能力と、物件の担保価値。 住宅ローンには2つのハードルがある
一戸建て住宅や区分所有のマンションといった不動産を購入するとき、多くの方が利用するのが、住宅ローン。金融機関は、購入者の所得に応じて返済能力を審査し、売買代金に応じた金額を融資する。この融資によって、購入者は売買代金を一括で支払うことができるのが、住宅ローンだ。
もちろん購入者は、入居ののち長期にわたって、所得のなかから債務を返済し続けることになる。金融機関は現状での返済能力だけを見るのではなく、将来的に安定した返済能力があるかどうかが審査のポイントとなる。そのため、公務員や上場企業に勤めている方などは比較的借りやすく、自営業やフリーランス、非正規で働く人は審査に通りにくいとされる。現状では、外国籍を持った人も後者に含まれる。これが、一般的な住宅ローン審査の認識だ。
一方、住宅ローンを借りるにあたっては、購入者の返済能力だけではなく、購入物件も担保としての価値が審査される。つまり、ローンの返済が滞った場合、抵当権の実行によってその債務が戻ってくるのかどうか。それが、担保価値となる。
新築物件の場合はほぼ問題にはならないこの担保価値の問題。中古物件の場合は、その適法性などが問題とされる。例えば、土地付き一戸建て住宅だと、敷地に接する建築基準法上の道路の幅が4m以下のものや、敷地が2m以上道路に接していないものなど、建築基準法の接道義務を満たしていない場合、再建築不可物件として担保価値が低くなり、住宅ローンの利用ができない場合がある。この他にも、評価が出にくい狭い土地、極端に古い建物や借地権上の建物なども、審査に通りにくいとされる。
つまり、売主が売りたくても、買主が購入したくても、住宅ローンを利用し売買をするときには、購入者の返済能力と物件自体の担保価値、この二つの条件を満たすことが、必要になってくる。
2つの不動産割賦売買方法とは
不動産割賦機構では、中古物件の割賦売買に際して、2つの売買方法を推奨する。
ひとつはいわゆる通常の「不動産割賦売買」だ。過去には公団住宅の販売でも利用されていた方法で、売買代金を契約によって決めた年月にわたって分割で支払い、払い終わった段階で所有権移転登記がなされ、買主のものになるというもの。
もうひとつが、不動産割賦機構独自の「カップる」という名称の割賦売買制度。現状は住宅ローンが組めない買主が、まず「割賦売買特約付き」の賃貸借契約で入居。数年後、債務等の諸条件をクリアにして住宅ローンが組めるようになった時点で、ローンを組み残金を一括で支払う制度だ。
例えば、分割払いやクレジットカードを使ったネットショッピング等において、支払が遅延するなど各種ローンの返済が滞ったり、自己破産を申し立てたりすると、個人信用情報機関に滞納履歴情報として掲載され、住宅ローンや新たなクレジットカードの取得が困難となる。
しかし、きちんと債務の返済を完了し、さらに数年間が経過すると、新たに住宅ローンを組める可能性が出てくる。
賃貸期間中の賃料は、割賦金として売買代金に充当される。将来住宅ローンを組める可能性のある購入者にとって、メリットのある方法といえる。
眠る不動産を流通市場へ。割賦売買で市場を活性化
今、日本の不動産市場は二極化しているといってもいいだろう。都市部の買い手の多い不動産と、地方の買い手の見つからない不動産だ。特に、空き家問題として露呈する買い手の見つからない不動産は、その売買方法にも大きな課題がある。こういった物件は価格が安く、仲介手数料の観点から仲介ビジネスが成り立たず、流通市場に乗らない。したがって、購入希望者の手元に情報が届かないから、売主が売却の希望を持っていても、いつまでたっても売れずに残る。
空き家として放置され、借り手もなく買い手も現れない不動産。将来の所有権移転が約束された割賦売買は、そのような不動産オーナーにとってもメリットがある。将来の売買価格が確定し、それまでの間は家賃として入ってくる。
「売るか?貸すか?で悩むオーナーにとって、新たな解決策が割賦売買だと思います。空き家問題解消の一つの答えとなります」(同)
一方、仲介不動産会社の立場に立つと、賃貸借契約に係る手数料に加えて将来の売買に際しても仲介手数料が入ってくる。
「売れないと決めている不動産をビジネスに乗せる。その意味でも仲介不動産会社にも注目してほしい。住宅ローンが組めなくても、物件価格が低くても、不動産の新しいビジネスモデルとして、日本の不動産に関わる課題解決策として、割賦売買は意味のあるものになっていくと思います」(同)
不動産割賦機構では、広く不動産事業者を会員企業として募り、不動産割賦売買のノウハウの提供と普及へ向けて活動を加速させていく予定だ。
取材協力:一般社団法人 日本不動産割賦販売取引適正運営監視機構
https://www.kappukikou.org/
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