フィンランド発のインテリアブランドArtekとタカラトミーアーツがコラボ
北欧モダンを代表するフィンランドのインテリアブランド、Artek(以下、アルテック)が日本の玩具メーカー、株式会社タカラトミーアーツと共同開発したガチャ(カプセル玩具)「アルテック 北欧家具 ミニチュアコレクション<アルヴァ・アアルト>シリーズ」が2021年7月26日から発売になった。
アルテックの海外初の旗艦店である「Artek Tokyo Store」では7月7日から先行発売となったが、一時売切れになったほどで、その人気の高さがうかがえた。
全国発売に先駆けて7月16日にフィンランド大使館で行われたオンライン発表会の模様を取材。制作秘話などをリポートする。
アルテックと建築家アルヴァ・アアルト
今回のガチャでミニチュア版がつくられたのは、フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトがデザインした家具。アアルトは建物の設計のみならず、内装や家具、日用品のデザインと幅広く手がけた。
アアルトは、妻のアイノや、ピカソらとも交流のあったアートコレクターであるマイレ・グリクセン、そしてニルス=グスタフ・ハールの4人で、1935年にアルテックをフィンランドの首都・ヘルシンキで設立した。
アルテックとは「Art(芸術)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語。アアルトたちは、デザインが限られた人たちだけのラグジュアリーなものではなく、あらゆる人々にとってもっと日常の暮らしの一部となり、よりよい暮らしになることを目標にしたという。
機能性とシンプルで美しいデザインを追求した製品を取り扱い、いまでは北欧モダンの代表ブランドとして世界に名が知られている。
同ブランドが創業時に掲げたマニュフェストは、家具だけでなく、展覧会や啓もう活動などを通じて、モダニズムの文化、暮らしを世に広めること。そんななかで、同じような価値観を持つ建築家やデザイナーたちとコラボ企画を実施。日本のファッションブランド、ミナペルホネン(mina perhonen)やNY発のブランド、Supremeとも行っている。
ガチャは、そのコラボの一環だ。日本の文化として広く世界にも認識され、子どもから大人まで幅広いファンがいるガチャ。アルテックが創業時から大切にしてきた「よりよいものを毎日の暮らしに」という思いと、人に喜びを与えるというガチャに共通のメッセージを感じて今回のコラボに至った。
本国のアルヴァ・アアルト財団も公認
オンライン発表会には、アルテックのマーケティング&PR、平井尚子さん、フィンランド大使館の広報部、堀内都喜子さん、一等書記官のニーナ・ヴァイサネンさん、タカラトミーアーツのマーケティング部、森川修さんとガチャ企画部の分野大介さん、今回のガチャ企画のきっかけをつくった編集者の廣川淳哉さんらが登壇。また、スペシャルゲストとして俳優の小関裕太さんが登場した。
タカラトミーアーツは、トミカやプラレールなどで知られるタカラトミーのグループ会社。カプセル玩具に初めて彩色を施したり、1段だったマシンを2段にするなどし、ガチャのパイオニアともいわれる。近年では企業やブランドからのオファーを多数受け、さまざまな商品を展開。「アニメのキャラクターの世界観を生かしたものづくりにこだわっていたので、それが企業様のPRにマッチし、変わり種の商品が増えています」と森川さん。
今回の企画は、2011年にガチャの中身について廣川さんが「アアルトのスツール60はどうだろう?」と発案したのがきっかけ。ちょうどフィンランド旅行から帰ったばかりの森川さんが興味を持ったそうだ。「いろいろなアイデアがあったなかで、スツールがいいのはスタッキング(積み重ね)ができること。ガチャガチャにしたときに生きてくれるのではないかと思った」と廣川さんは語った。
そのアイデアを温め、森川さん、分野さん、廣川さんの3人が2019年の冬にArtek Tokyo Storeへ。「一般的にコンプリートしやすいのが6~7種類。そのなかで魅力的なラインナップをどう選ぶかをまず相談しました」(分野さん)。
その後は、データで3Dモデルを制作してから、3Dプリンタで仮制作をする流れに。「ただミニチュアにするだけではなく、縮小したときに脚の長さをコンマ何ミリまで調整したり、背もたれの角度や、色合いなど、どうみせるとミニチュアとしてきれいか、細かい調整を何度も繰り返してデータを作りました。それを3Dプリンタで出力し、手で少しずつ調整しながらできたものを、本国のアルテックの方に見ていただいて、ガチャでこういうものができますとプレゼンテーションをしました」(分野さん)
パイオニアとして業界をけん引してきたなかで、アルテックのガチャでもその精巧な技術力を発揮し、本国の承認を得ることができた。その出来栄えは目を見張るばかりだ。次から制作秘話とともにラインナップを紹介していく。
ガチャのラインナップ「スツール 60」「41 アームチェア パイミオ」
まず、アイデアの源となった「スツール 60」。これはアルテックを象徴する作品といわれている。
アアルトは1920年代の終わりごろから曲木(まげき)の研究をスタートし、1930年の初めに無垢材を90度に曲げる技術を開発して特許を取得した。L字形に曲がっていることから「L-レッグ」と呼ばれ、強度と耐久性があるのが特徴。それを用いた最初の作品が「スツール 60」だ。
この「L-レッグ」部分には、ちょうどL字に曲がったところにラインが入っている。ガチャではそれをも再現した。
「0.5ミリの線を5~6本入れるという作業は、普段のガチャの作り方ではなかなか表現できない細さです。400円のおもちゃにかける技術ではないんですけれど、工場の方と話し合いながら、このサイズで表現することができました」(分野さん)
シンプルで普遍的というアルテックが大事にするデザインで、世界中に愛好者がいる「スツール 60」。ガチャではナチュラル、イエロー、グリーンとカラーバリエーションを展開。また、レアアイテムとして色褪せ具合が絶妙な2nd Cycle( セカンドサイクル)版のものもある。廣川さんが最初のアイデアで出したように、本物同様、スタッキングできるのも楽しみのひとつだ。
次に「41 アームチェア パイミオ」。これはアアルトの建築の代表作である、結核患者の療養所であったパイミオサナトリウムのためにデザインされたもの。美しくカーブを描いているデザインは、患者が背もたれ部分にもたれかかると自然と胸が広がって呼吸がしやすいようにと考えたという。近代家具の名作としてファンが多い。
パイミオのガチャ版もかなり凝った作りだ。「今回のガチャではギューッと縮めたなかでもきちんとデザインの美しさを表現できるかということを考えました。パイミオでは、ひじ掛けのフレームの太さが本物に比べて若干太いところ、細いところ、薄いところがあります。デフォルメという表現になりますが、小さくしたときでもその世界がちゃんと見えるようにと、細かな調整をかけたところがガチャ作りのこだわり。本物を持っている方は、その違いをぜひ見つけていただければ楽しいと思います」(分野さん)
ガチャのラインナップ「66 チェア」「901 ティートロリー」
カフェなどでも使用されている「66 チェア」。本物は頑丈なフィンランド産のバーチ材を使っているが、ガチャ版ではその木目を再現。しかもひとつひとつ手塗りだというから驚きだ。
「何万個も量産するにあたっては木目をスタンプでポンポンと押していくのが簡単です。ですが、それだと木目の温もりが出ないということで、1個1個手で描いているんですよ。工場の方は大変ですが、そうすることで表現できるものが全く違うのでこだわりました」(分野さん)
「901 ティートロリー」は、アアルトが妻のアイノとの旅で出合ったイギリスの紅茶文化と、感銘を受けたという日本の優れた木工技術や建築から着想を得てデザインしたもの。「フィンランドでは、家庭に一台はいつか持ちたいとされている憧れのティーワゴンです」と平井さんが紹介した。
ということで、「スツール 60」のカラーバリエとレアアイテムを含めて、全7種類がラインナップ。高さ約40~65mmというサイズからカプセルにそのまま入れるには大きいため、いずれも組み立てが必要となり、対象年齢は15歳以上に設定されている。
「カプセルの大きさの関係で一部をお客様に組み立ててもらうことになり、だったらその工程も楽しんでもらおうと、本物と同じような組み立てにしてあります」(分野さん)ということなので、大人の建築好き、インテリア好きならば心をくすぐられるポイントにもなっているのではないだろうか。
ガチャを通じてフィンランドを身近に
発表会では、会場となったフィンランド大使館の一部も公開に。今回のガチャでラインナップされたアアルトの作品をはじめ、アルテックの製品も数多くインテリアに使われていた。
発表会に同席したニーナさんも、初任給で「スツール 60」を購入し、大事に使っているそうだ。今回のガチャ発売にあたり、ニーナさんは「シンプルで美しく、機能的なフィンランドのデザインにぜひ注目してください。自然にインスピレーションを得た、木を多く使うというところは日本のデザインと共通しています。北欧モダン、フィンランドを代表するアルテックの家具と、日本の文化であるガチャが時代と国を超えてコラボレーションし、こうやって日本のみなさんに楽しんでいただけることはとても嬉しいです。コロナ禍で思うように旅行ができず、フィンランドへ行くこともなかなか難しい日々が続いていますが、ガチャを通じてフィンランドを少し身近に感じていただけたら」とあいさつした。
ガチャマシンはArtek Tokyo Store(在庫がなくなり次第終了)のほか、全国のタカラトミーアーツのカプセル自販機設置店、アルテック取扱店などに設置。アルテックと関わりの深いさまざまな分野の会場をガチャマシンが巡回する“トラベリングガチャマシン”の実施も予定されているので、詳細はアルテックホームページの参照を。
アアルトの作品を持っている人も持っていない人も、ニーナさんがおっしゃったように、フィンランドを、アアルトの世界観を身近に感じるアイテムとしてガチャに挑戦してはいかがだろうか。
取材協力・写真提供:Artek www.artek.fi
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