KADOKAWAが発信する日本最大級のポップカルチャー拠点が東所沢に誕生
閑静な住宅街の中に突如現れる、まるで巨大遺跡のような建造物。一度見たら忘れられない強烈な存在感を放っているのは、角川文化振興財団の文化複合施設「角川武蔵野ミュージアム」だ。
メディアではミュージアムの建物ばかりがクローズアップされがちだが、実はこの施設は総合エンターテインメント企業KADOKAWAが運営する日本最大級のポップカルチャー発信拠点「ところざわサクラタウン」のランドマークでもある。最寄り駅はJR武蔵野線「東所沢」駅。KADOKAWAはなぜこの場所を発信拠点に選んだのか?ところざわサクラタウンの誕生経緯について担当者に話を聞いた。
「COOL JAPAN FOREST 構想」に基づき誕生した大型文化複合施設
2020年11月にグランドオープンを迎えた「ところざわサクラタウン」は、単なる集客型のテーマパークとして誕生したわけではない。実は、東京・飯田橋に拠点を構えるKADOKAWAの“新しい巨大オフィス”としての重要な役割を担っているのだ。
「既存物流施設の老朽化や小部数印刷の需要の高まりなどを背景に、新たな書籍製造・物流工場の用地取得を検討しているなかで、旧・所沢浄化センター跡地の売却の情報を得て、所沢市と出会うことになりました。入札は公募型プロポーザル方式でおこなわれ、KADOKAWAが売却先に決定。2014年に土地の所有権がKADOKAWAへ移転しました。土地の広さが十分であったことと、さらに、物流拠点としての役割を考える上で、高速道路に近いこと・都心にほど近いことも当社としてのメリットでした」(以下「」内はKADOKAWA広報担当者からの回答)
近年の出版業界では電子化が進み、書籍全体の売り上げが減少傾向にある。しかしその反面、通常の製版ルートには乗りにくい少部数書籍へのニーズが高まっており、KADOKAWAでも1冊からの書籍製造に対応する「製販一体型ブックオンデマンド」を導入すべく、新たな拠点づくりを行ってきた(書籍製造・物流工場は2023年度本格稼働予定)。
また、新拠点をつくるにあたっては、KADOKAWAと所沢市が共同で取り組む『COOL JAPAN FOREST 構想』に基づき、“文化と自然が共生した誰もが住んでみたい・訪れてみたい地域づくり”のコンセプトを採り入れた。つまり「企業の業務機能を高めるためのオフィス」というだけではなく「地域社会とつながり、地域に貢献する拠点施設」として誕生したのが、この「ところざわサクラタウン」というわけだ。
隈研吾氏による石の建築の集大成。
「本棚劇場」「マンガ・ラノベ図書館」「EJアニメミュージアム」
ところざわサクラタウンの中には、KADOKAWAの書籍製造・物流工場・所沢キャンパス(オフィス)のほか、イベントスペース、ホテル、KADOKAWA直営の体験型書店、所沢の名産品やグルメなどを集めたショップ&レストランなどが揃っている。
中でも目を引くのは、ランドマークである巨大な石の建造物「角川武蔵野ミュージアム」だ。手掛けたのは建築家・隈研吾氏。「地球の地盤が台地の上に姿を現した状態をイメージした」というミュージアムの外壁は、中国山東省の山奥から切り出し、加工してから船便で運び込んだという約2万枚の花崗岩に覆われている。
「20世紀の建築はコンクリートだらけの時代だったが、人間が古くから親しんできた木と石の素材を建築に使いたいと考えた」と隈氏。同氏が手掛けた国立競技場が「木の建築の集大成」であるのに対し、このミュージアムは同氏にとって「石の建築の集大成」と呼ぶべき作品だ。
建物は地上5階建て。4~5階部分にはNHKの紅白歌合戦でも話題となった2層吹抜けの「本棚劇場」が設けられているほか、約2.5万冊を所蔵する「マンガ・ラノベ図書館」や、日本のアニメ文化を紹介する「EJアニメミュージアム」などが設けられている。まさに“ポップカルチャー発信拠点”の象徴たる施設となっている。
大鳥居をライトアップ、神社も日本のポップカルチャーの1コンテンツに
もうひとつ、タウンの中で異彩を放っているのが『武蔵野坐令和神社』だ。もともとこの地に鎮座していた社ではなく、ところざわサクラタウンの安全や繁栄を願って新しく創建された神社で、人々が祈り・憩い・賑わうためのCOOL JAPANの聖地として、ここ所沢から新しい物語を発信する起点となることを目指しているという。
ちなみに、神社の大鳥居には現在全6色のライトアップ機能が備えられており、鳥居の下を通り抜けると色が変わってその日の運勢を占うことができるなど、ワクワクする仕掛けも満載だ。若者たちにとっては絶好の自撮りスポットであり“SNS映えするお洒落な神社”としても注目を集めている。
このように、ところざわサクラタウンの中では神聖な神社でさえも「日本のポップカルチャーを発信するコンテンツのひとつ」となるのだ。
新型コロナの感染拡大を受け、新しいイベントの在り方を構築中
実際に訪れてみると、ところざわサクラタウンは、一般のレジャー施設やショッピングモールとは全く異なる新感覚の施設で、一日中過ごしていても飽きない不思議な魅力がある。
国内だけでなく、外国人観光客にも首都圏の新たな観光スポットとしてオススメしたいところだが、オープンがちょうど新型コロナの感染拡大期に重なったこともあり、“withコロナ”における新様式でのタウン運営が求められている。
「当初の来場者のターゲットとしては、近隣住民の方や国内外のコンテンツファンの方、インバウンドの旅行客などを想定していました。残念ながら海外からのお客様にお越しいただくのが難しい状況ですが、国内外問わず施設に対する関心度はとても高く、海外向けメディアやSNSでもよく取り上げていただき、“コロナ禍が収束したらぜひ行ってみたい”という声も多数いただいています。
現在は密を避けるため、ミュージアムでは入館者の人数制限をおこなったり、イベントホールでは無観客でのイベントを実施したりと、常にお客様の安全・安心を最優先に対策を取りながら、施設をお楽しみいただけるように努めています。今後もCOOL JAPAN FOREST構想に基づき、行政とも綿密に連携し、地域づくりを行っていきたいと思っています」
今後は産官連携のまちづくりで「所沢版シリコンバレー」を目指す
グランドオープンから半年が経過し、新たなトピックもある。
「5月にはところざわサクラタウンのお隣りに、所沢市観光情報・物産館『YOT-TOKO(よっとこ)』がオープンする予定ですので、さらにこの地域の盛り上がりが期待されます。
COOL JAPAN FOREST構想の目的は、住民にとっても訪問者にとっても、文化と自然が共生した居心地の良いまちをつくること。所沢の魅力である豊かなみどりと、人々のにぎわい、元気な産業が同居する“みどり・文化・産業が調和したまち”を目指しながら、引き続き文化発信に努めて参りたいと思います」
つい半年前まで、ごく普通ののどかな住宅地だった「東所沢」は、ところざわサクラタウンの誕生によって街の機能や人流が大きく変化した。
所沢市が2016年に発表した『COOL JAPAN FOREST 構想』によると、ところざわサクラタウンの開業による経済波及(総合)効果は、年間で合計 311 億 5126 万円と想定。地元の雇用誘発や消費活動の拡大など、地域活性に大きな効果をもたらすことが期待されている。
また、今後はサクラタウンを中心として、周辺エリアに先端産業が集積し、起業を志す人たちが集まるための産官連携のまちづくりを進めていく。言うなれば「所沢版シリコンバレー」を目指す構想だ。
日本最大級のポップカルチャー発信拠点『ところざわサクラタウン』の本格稼働をきっかけに、これから東所沢エリアがどのように変貌を遂げていくのか、10年後のこの街の姿が楽しみだ。
■取材協力/ところざわサクラタウン(株式会社KADOKAWA)
https://tokorozawa-sakuratown.jp/










