SDGsに取り組む岐阜の住宅メーカー、三承工業
岐阜県岐阜市に本社を構える三承(さんしょう)工業株式会社は、1999年11月に創業。住宅メーカーとして地域に根差し、建設事業を中心に、外構事業、メンテナンス事業など多角的に展開している。
同社はSUNSHOW GROUPとして、2018年に「第2回ジャパンSDGsアワード」で特別賞を受賞。建設業に関わる企業では初めてのことだった。
Sustainable Development Goalsの略であるSDGs(エスディージーズ)は、2015年の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のことだ。“貧困をなくそう”“飢餓をゼロに”など、17のゴールと169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さないことを誓っている。
SUNSHOW GROUPは、住宅ブランド「SUNSHOW夢ハウス」での低価格高品質な注文住宅の提供による相対的貧困の解消や、女性だけの工務店を立ちあげるなどジェンダー平等の実現、外国籍の方に対して土地の購入や住宅ローンなどのサポートをするなどの取り組みが評価された。
今回、岐阜県瑞穂市に「SUNSHOW夢ハウス」の新しいモデルハウスが完成したと聞き、取材に伺った。
低価格高品質を実現する住宅ブランド
まず、「SUNSHOW夢ハウス」についてご紹介したい。同ブランドを立ち上げたのは2012年。「社長の『普通に働いていて、家が持てないのはおかしい』という考えから始まりました」と、建築事業部統括部長の山口真智子さん。
年収によりマイホームを持つことが難しいなどといった状況に対し、「780万円からの家創り」をキャッチフレーズにした。低価格ながら高品質な住宅に取り組んでいる。
コスト面はグループ全体で仕入れしたり、住宅展示場の維持費や広告費用といった経費を削減したりしているという。モデルルームに関しても、移動式にして、3ヶ月ほどで販売する。
「結局、10年後にメンテナンスでお金がかかってしまってはローコストではないと思っているので、断熱や屋根などに使う素材はきちんとしたものを採用し、ほかでコストを下げるように工夫しています」
また、「ローコストですが、注文住宅のスタイルにしています。決まり事としては、1・2階が同じ大きさであれば、間取りは自由にできます。形を変えれば、それだけ金額はかかりますが。ただ、この自由設計ということを生かしてのご提案もしますし、基礎、配筋などすべて写真を残して、最終的にお客さまにお渡しして、安心感を持っていただけるようにしています」というのもポイントだ。
そうして、一人親家庭などでも住宅ローンを家賃並みの支払額で実現し、安心してマイホームを手に入れることができるようにした。
支店のある美濃加茂市は外国籍の住人も多いことから、外国籍の人にもマイホームの提案をするように。「ただ、外国籍の方は、どちらかというと住んだ後のサポートが大変でした」と山口さん。地域住民へのあいさつ回りに同行したりする一方で、生活習慣の違いからか、請求がきてから支払うといった感覚があったりで、住宅ローンの引き落としに対応できないことへのサポートも必要だった。
そんななかで、岐阜県国際交流センターを通して話す機会を設けてもらい、住宅ローンや税金、光熱費などについて説明。そこに参加した人から、SNSなどを通じても情報が広まり、意識を変えてもらうことに成功したそうだ。
丁寧なサポートにより相談も増加。外国籍の顧客には、2014年に最初に販売して以来、現在まで約120棟を販売している。
自然災害に備えた設備を充実させた家
今回のモデルハウスの大きな特徴は、災害時に対応する設備が整えられていることだ。
キッチン横には、備蓄庫になる収納スペースと洗い場を備えた内土間がある。この家は木造2階建てだが、「こちらのスペースは2階部分がなく、大きな地震が起きたとしても重みでつぶれることがないようにしました」と山口さん。
わざわざ備蓄用の場所をとることは難しいかもしれないが、キッチン横の収納スペースということなら普段の食品庫として使える。
また、同社では外構ブランド「SUNSHOWエクステリア」で“キャンプできる庭”を提案しており、普段からバーベキューを楽しみながら、いざというときにコンロや炭などをとまどうことなく活用できることを目指す。そのバーベキューセットは内土間にしまうことができるというわけだ。
さらに、庭の家庭菜園で育てる野菜は、非常食にも。断水対策として雨水タンクも設置している。
「災害が起きたときに、避難することなく、安心して住み続けられること。それには食べ物の確保も必要だなと思いました。そして雨水タンクがあれば、トイレが使える。わざわざ災害のために用意するのではなく、通常の生活を楽しく過ごせて、そこで使っているものが被災したときに役立てられたらいいですよね」
①白い外壁のところが、収納スペースと内土間。2階部分がないので、地震などの倒壊による重みでつぶれる心配が少ない。例えば玄関から出入りできなくなっても、ここの入り口を使える②ウッドデッキ横の緑色のものが雨水タンク。溜めた雨水を、家庭菜園の水やりや、緊急時のトイレなどに利用できる。写真は110リットルのものだが、200リットルあれば4人家族が4日間生活できる水量だという(以上、写真提供:三承工業)
③キッチンからつながる収納スペースと内土間
④通常は食品庫として使え、災害用の備蓄もできる収納スペース。キッチン横で普段使いできることで、「賞味期限を見落としやすい缶詰などの食品もチェックしやすい」と山口さん。また、このスペースの照明は、停電時に約20分間点灯するものを使用
⑤内土間。庭とつながっているので収穫したばかりの土がついた野菜を洗える
子育て支援のNPO法人とコラボした間取り
間取りについては、岐阜県内の子育て世代を対象とした子育て支援団体、NPO法人こどもトリニティネットとコラボ。子育て中の母親に協力してもらったアンケートの結果を基に仕上げた。
例えば、キッチンの脇には、カウンターを設置。子どもがお絵かきや勉強をしたりする様子を料理しながら見守ることができるほか、家事の合間のワークスペースにもなる。
洗面所は、「広いほうがいい」が72%というアンケート結果から、標準仕様の2畳よりも0.5畳分広くした。そして、収納の希望もあり、可動棚で使いやすさを向上させた。
2階の主寝室は、ウォークインクローゼットを入り口としても利用できるような配置にしたのも家事動線をよくしている。
なお、今回のモデルルームは、約28坪で3LDK。土地代を含めて2,580万円(税込み)だそうだ。
SDGsの情報発信基地も
SUNSHOW夢ハウスの家を購入した外国籍の家族が、マイホームの”夢“が実現したことをきっかけに、同社に入社して現場監督をしていたり、通訳として活躍している人もいると聞いた。
家造りから、「この会社で働きたい」と思われる働きがいのある会社という魅力につながった。それもSDGsの取り組みの成果だろう。
2018年にJR岐阜駅に直結するビルで「SUNSHOW.BASE(サンショウベース)」という名称の場を設けた。“キャンプのある庭”をイメージしたスペースとともに、SDGsを身近に感じてもらう情報発信基地としての役割を持つ。家に関するイベントなども開催しているそうなので、機会があれば訪れてみてはいかがだろうか。
山口さんは、今後も地域に貢献できるような企画を考えているとお話ししてくださった。これからの取り組みにも期待したい。
取材協力:
三承工業 http://www.sunshow.jp/
SUNSHOW夢ハウス http://www.yume-house.com/
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