「仏壇のあるリビング」をキャッチフレーズに。モダンな仏壇のパイオニア
名古屋駅前の大名古屋ビルヂング内にある、ギャラリーメモリア 名古屋駅前店・店長の荒谷真二郎さん。名古屋に異動する3年前までは、大阪の本社で営業を担当。ハウスメーカーへの営業では、過去には暗いイメージから新築時に仏壇を合わせて提案することは避けられていた。だが、最近は、仏間は減ってきたものの、精神性のある場所を作ることに前向きな話も出るようになったとか仏壇というと、金箔や金粉が施された漆塗りの“金仏壇”、黒檀や紫檀といった銘木の木目を生かした“唐木(からき)仏壇”が伝統的なものだ。そこに近年は、モダンなデザインの都市型・家具調仏壇が加わった。
日本の生活様式が西洋化し、住まいやインテリアが変化するなかで、仏壇だけはそのまま……。そこに目を付けたのが大阪市に本社を構える株式会社八木研。もとは研磨剤のメーカーで、1976年に取引先のひとつだった仏壇業界に企画メーカーとして進出した。
八木研は、当時、ライフスタイルが洋風に変化するのに合わせて、洋間にも置ける仏壇として「自由仏壇」と名付けた商品を1984年に発表。しかし、外観は洋風の家具のようなデザインを取り入れたが、中は金箔を使った伝統的なスタイルという仏壇の販売は苦戦。お寺や仏壇業界からは批判の声もあったという。
そこから7年。市場調査をしながら毎年新商品の発表を続け、1991年にまったく新しいコンセプトの「現代仏壇」というブランドをあらためて誕生させた。「ヒントになったのは、民俗学者の柳田國男さんの著書『先祖の話』です。そこには、日本人は仏教が伝わる以前から、家の中に”魂棚(たまだな)”を設けて、亡くなった人に野花を添えて手を合わせる習慣、”先祖供養する心”を持っていたということが書いてありました。それまでは仏壇は寺院のミニチュアというコンセプトで商品化していましたが、供養とは何か、先祖をお祀りすることとは何かと原点回帰して商品を作り出したんです。”ご先祖様を祀るステージ”というコンセプトは当たりました」
こう教えてくださったのは、八木研の「現代仏壇」を取り扱う直営店であるギャラリーメモリアの名古屋駅前店で店長を務める荒谷真二郎さん。都市型・家具調仏壇のパイオニア的存在として、「仏壇のあるリビング」をキャッチフレーズに、今では多彩な商品を展開するギャラリーメモリア。その商品を見せていただきながら、現在の仏壇の傾向や、ライフスタイルに合う選び方などについて伺った。
仏壇の“買替え”需要も高まっている
仏壇の購入を考えるのは、まずは近しい人が亡くなったとき。いわゆる、新仏(しんぼとけ、あらぼとけ)をお祀りするタイミングだ。
「もう一つが買替えの需要です」と荒谷さん。近しい人が亡くなり、それを機に受け継いできた仏壇を新しくするということもあるが、新築やリフォーム、引っ越しといったことを含む住空間の変化も理由の一つに。現代は、和室の減少とともに仏壇を置く仏間がない住まいも増えており、スペースの問題や西洋化したインテリアに合わないという悩みが聞かれるという。
加えて「団塊世代の方々が、息子や娘には負担をかけたくない、迷惑をかけたくないと思われ、引き継ぎやすい仏壇に買い替えてあげたいというご相談も増えています」とのこと。実際に、ショールームに子どもたちと来て、一緒に選ぶという客もいるそうだ。
仏壇が一般に普及したのは江戸時代からといわれる。手を合わせ、故人を思うことはとても身近なことだった。八木研では、2000年に「現代仏壇」を販売する直営店をスタートさせてから、顧客の“生の声”を受け取ることができるように。そして、その声を商品開発にフィードバックすることで、都市型の仏壇をより現代に合ったものへと、より成長させることができたそうだ。写真はアメリカにある絶景スポットにちなんだ「アンテロープ」という商品名で、波や水の流れをイメージした彫刻が施されている。他の商品名には花の名前が付けられているものもあり、故人がその花を好きだったからと選ばれることもあるという(写真提供:ギャラリーメモリア 名古屋駅前店)多彩に進化した都市型の仏壇
「いまのお仏壇を大きく分けますと、床置きタイプ、チェストやテレビボードなどの上に置く上置きタイプ、そして壁掛けタイプと3つあります」
壁掛けタイプが最も新しいスタイルで、仏間を設けない住空間の変化から発想が生まれた最たるものだ。薄型で、まるで飾り棚のような雰囲気。ただ、デメリットとしてはお位牌などを置くスペースも少ないということがあるが、薄型はそのままに縦長に形を変えたものも誕生。上下にできる空きスペースを活用することができる(写真参照)。
また、床置きや上置きタイプの仏壇では、扉に工夫がみられる。従来のものは開いた扉の分のスペースも必要だった。だが、現在は省スペース対応が進み、上下に開いて、上の扉がスライドしてそのまま天井部分にしまうことができ、下の扉は台替わりにもなるというようなものや、側面にぴったりと収納できるといったものがある。数センチ、数十センチでも、置く場所の悩みを解消する設計となっている。
上置きタイプのなかには、箱のないオープンタイプがあり、手元供養などシンプルに祀ることもできる。
リビングになじむデザイン
「仏壇のあるリビング」をコンセプトに、リビングに仏壇を置くことを提案している八木研。荒谷さんは「リビングはテレビがあって、みんなが集まる場所。昔の仏間はどちらかというと家の奥で、暗い所でお祀りしているイメージでした。それを、みんなが集まるところで気軽に手を合わせてはいかがでしょうか、という思いからです」と語る。
それに伴い、モダンな家具調の仏壇は、ナチュラル、シック、シンプルとどんなインテリアにも合わせられるものがそろっている。筆者も実際にショールームでバリエーションを拝見して驚いた。白い仏壇も八木研が初めて誕生させたものだそうだが、業界から賛否の声がありつつも、白いクロスの家が多いことや、黒をあまり好まない人もいるなど、顧客には抵抗なく受け入れられたという。
「リビングに置くとなると、やはり来客時に、ちょっと気を遣われるという方もいらっしゃいます。そういう時には、扉を閉じておけば、一見しただけではお仏壇と分からなくなります」
また、「最近は位牌などお仏具のバリエーションが増えて、以前の仏壇にはなかったコーディネートができることもポイントになっています。故人様やお祀りする側の趣味や好みに合わせて、石でできたものや、ガラス製、陶器製とさまざまなものからお選びいただけます。同じお仏壇でも、選ぶお仏具で全くイメージが変わるんです」とも。
仏具もまた現代に合うものへと進化。おしゃれに、そして自由度が増し、仏壇の選択肢が実に広くなっている。しかし、それゆえに、何度も買替えるものでもないので、自宅のリビングや仏壇や置きたい部屋にぴったりと合うかどうか心配になるかもしれない。あるいはお寺の宗派がある場合はそれに沿った仏具を用意しなければならない。そういった場合は、やはりプロに相談するのがベストだ。ギャラリーメモリアでは、過去に仏壇を納品した家の写真を撮らせてもらい、参考となるように見本を用意している。
仏壇の存在が見直されている?
「最初は身近な人を亡くされて沈まれているお客様が、私たちがお話を聞き、仏壇を選ぶと、少しお顔が晴れやかになることも。『こんなにお仏壇を選ぶことが楽しいとは』と言われたこともあります。自分で選んだという満足感もあるのでしょうね」と荒谷さん。
実家には仏壇があるが、自宅でも手を合わせたいと、新しく購入を希望する人もいるという。あるいは、海外赴任になり、小さな仏壇を海外の家で祀りたいということも。そういった場合には、よりシンプルにしたオープンタイプの仏壇を選ぶこともできる。
先の項で荒谷さんの言葉にもあったように、かつては仏間でどちらかというとひっそりとお祀りしていたのに対し、リビングでお祀りすることで、気軽に手を合わせることができる。それは日本古来の姿に通じ、心のよりどころになりうる。ライフスタイルに寄り添いながら、心安らぐ住空間が実現できるのではないだろうか。
取材協力:ギャラリーメモリア 名古屋駅前店
https://yagiken-memoria.com/





