「自然と共生して暮らせる」街づくりでABINC認証第1号に
<画像上>「フォレストガーデン秦野」(写真提供:住友林業緑化株式会社)<画像下>ABINC認定証を手にした住友林業緑化の担当者。右から住宅緑化事業部 分譲緑化部長の梶原さん、同事業部 分譲緑化部係長の酒井さん、分譲緑化部の住田さん
新宿から小田急線急行で1時間20分ほどの秦野市は、富士山や丹沢山系を望み湧水で知られる神奈川県唯一の盆地にある街だ。今回ご紹介する「フォレストガーデン秦野」(売主:住友林業株式会社)は、秦野駅から徒歩約5分という交通の便に恵まれた土地に広がる総戸数43戸の分譲住宅地。どの住まいも庭木が植えられ、四季の花々、芝生や自然石を貼った庭が開放的な雰囲気である。塀や柵などは極力減らしているため、どこまでも視界が開け、のびやかな印象だ。住宅地の中央には、荒井湧水を整備した「今泉あらい湧水公園」が配され、小川のせせらぎや季節の花の良い香り、野鳥のさえずり、子どもたちの笑い声も聞こえてくる。
住友林業の100%子会社である住友林業緑化株式会社は緑化事業の専門会社。同社が外構と植栽を担当した「フォレストガーデン秦野」は、2018年3月13日、いきもの共生事業所認証(ABINC認証:エイビンク)を取得した。これまでは、商業施設、マンション等の集合住宅、オフィスビルなどが認証の対象であったが、2017年度から「自然と共生する世界」の実現をめざし、街づくりに対しても認証の対象となった。生物多様性に配慮した「フォレストガーデン秦野」が、先進的な街づくり部門第1号の認証となった。
「荒井湧水」を活かした公園にはカワセミも
「フォレストガーデン秦野」は、3.2haもの広大な敷地に街づくりが行われている。1979年に都市計画が決定された区域の一部(今泉地区)の畑地と休耕田等だったが、地権者の合意が進まず長期未着手だった地域である。
「もともと湧水があり、水神様がいらしてという土地の歴史を継承しての街づくりでした」と同社住宅緑化事業部 分譲緑化部長の梶原さん。「荒井湧水」は、名水百選にも選ばれている秦野盆地湧水群の1つ。年間を通じて水温が一定で、冬でも水草が繁茂し生物が集まってくるという。「水辺には絶滅危惧種に指定されたホトケドジョウなどがいて、カワセミは実際に見ました」とは同分譲緑化部係長の酒井さん。
この「荒井湧水」は、同社が植栽の提案と施工を担当し、「今泉あらい湧水公園」(秦野市管理の為、ABINC認証範囲外)へと生まれ変わった。水辺は、ヒメシャラやコムラサキなどの自生種で彩られ、公園北西には水神様の祠、「荒井湧水」が流れる小川には小さな橋が架かり、水辺広場や親水デッキと共に、自然や水と親しめるしつらえがなされている。
宅地内にはシンボルツリーを含め16本以上の植栽ルール
「フォレストガーデン秦野」は、緑豊かな住環境と景観を保つため、緑化に関するガイドラインが定められている。例えばそれぞれの宅地内にはシンボルツリー1本以上、中高木5本以上、低木10本以上、花・地被植物適宜など、緑量や樹種、植栽の位置まで細かく規定されている。
「シンボルツリーは、自社で開発したハナミズキ・ホワイトラブを植栽しています。ハート型の白い花が連なっていくのがきれいです。全体設計が水・風・光・緑をキーワードとしていて、シンボルツリーも水の流れをイメージして選びました」(酒井さん)。
シンボルツリーは、建物へのアプローチがある側、かつ道路から3m以内に植栽するというガイドラインが、この美しい街並みを創出している。さらに公園側の擁壁際の緑化は、景観上シラカシ、トキワマンサク、キンマサキを樹種に限定した生垣と決められている。「フォレストガーデン秦野」では、道路や公園など公共空間からの眺めに至るまで、きめ細かく景観配慮して設計されているのが特長だ。
また樹木品種は、同社の「ハーモニックプランツⓇ(調和種)」に限定している。「侵略植物を使わずに、日本に古くから自生している植物や栽培品種を選び、生態系を守ろうという配慮です」と梶原さん。安心・安全な植物を選ぶことも人と自然が共生して暮らすルールかもしれない。
開放的な外構意匠で街をつなぎ統一感のある街並みを形成
街をつなぎ、統一感のある街並みを創出するために、外構に関するガイドラインも決められている。閉鎖的な塀や画一的な生垣などで囲まないのはもちろんのこと、道路側には統一舗装としてアールデザインの石英石乱貼りが採用されている。
「デザインが繋がって見えるので街並みとして統一感が生まれます」と酒井さん。この石英石の統一舗装は、敷地の間口寸法に対して60%以上、幅0.3m以上を確保するというルールだ。アルビノイエローの自然石は、豊富な植栽の緑とマッチして街に優雅な流れを表現している。
また駐車場は、タマリュウ目地や芝等による緑化、化粧砂利、石貼り等の美化舗装を採用。1台目は事業主の指定した位置と向きとし、2台目は駐車スペースの半分は芝生にするなど、極力緑が多く見えるようにという配慮がされている。駐車場の3台並列駐車は禁止となっている。この他、門柱は秦野駅前水無川にかかる「まほろば橋」の欄干をモチーフにしたデザインを、庭には自然石のバードバスやレインガーデンで宅地内の雨水をゆっくり処理するしつらえも。
緑豊かな住環境を維持することで資産価値を高める
全住戸が完成して約2年。今年の3月にはABINC認証を取得した「フォレストガーデン秦野」であるが、豊かな住環境を維持し、より美しい街へと発展させるために住友林業緑化は、今後3年間のメンテナンスプログラムを計画。同社の専属スタッフが入居者と共にガーデンメンテナンスに取り組むという。
プログラムには、モニタリング調査、植栽維持管理、勉強会から構成。
モニタリング調査ではよく見る鳥類や昆虫類の存在を定期的にチェックすることで生物多様性に配慮した取り組みが目標通りに進んでいるかを把握、庭木の具体的なお手入れ方法の習得、活動の勉強会等を行っていく予定。
ABINC認証取得は自然と人との共生を維持していく街としての証でもある。これからの3年間で入居者自らがこの緑豊かな住環境を維持管理するノウハウを学び、より潤いのある住環境へと発展させていくことが自分たちの住まいと街のさらなる資産価値向上へ繋がるといえそうだ。
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