今後推進すべき具体的な物流施策
2017年は人口減や少子高齢化、ネット通販の増加などを背景に、物流業界の人材不足とそれに伴う宅配料金の値上げが世間を騒がせた。物流業界としては、値上げを原資に人材確保を狙っているようだが、そもそも労働人口自体が減少している日本で、改革は一筋縄ではいかないだろう。
このような社会環境の変化に対応するため、政府は2018年1月31日、新たな「総合物流施策推進プログラム」を決定した。これは2017年7月28日に閣議決定した「総合物流施策大綱」に基づき、今後推進すべき具体的な物流施策をまとめたものだ。
そこで、新たな「総合物流施策推進プログラム」が具体的にどういったものか、私たちの生活にどうかかわるのか、などを解説しよう。
「総合物流施策推進プログラム」の6つの視点
「総合物流施策推進プログラム」では、日本の経済成長と国民生活を持続的に支える「強い物流」の実現に向けて、物流事業の労働生産性を2020年度までに2割程度向上させることを目指している。そのために推進すべき視点が以下の6つだ。
1.サプライチェーンの効率化
【施策例】
・在庫、多頻度輸送などの見直しにより、物流量の変動幅を抑制し、稼働率を向上させる。
・RFID(※1)の利用拡大。
※1…RFID=radio frequency identifierの略。電波によって、RFタグのデータを非接触で読み書きするもの。電車やバスの乗車カード、電子マネー、社員証などに用いられている。
【指標例】
・トラックの積載効率を、39.9%(2016年)から50%にする。
・コンビニでの取扱商品のRFタグ貼付数を、0個(2016年)から推計1000億個(2025年)にする。
2.物流の透明化・効率化
【施策例】
・契約書面化の推進。
・宅配便の再配達削減による宅配事業の効率化。
【指標例】
・トラック運送事業における契約内容の書面化率を、約50%(2017年)から60%にする。
・宅配便の再配達率を、約16%(2017年)から13%程度にする。
3.ストック効果発現等のインフラの機能強化
【施策例】
・平常時、災害時を問わない安定的な輸送を確保するための基幹となる道路ネットワークの構築。
・ダブル連結トラックの早期導入。
【指標例】
・三大都市圏環状道路整備率を、74%(2016年)から80%にする。
4.サステナブルな物流の構築
【施策例】
・コンビニ等を指定公共機関として指定し、緊急物資などを円滑に輸送・供給する。
・道路や港湾等の防災・減災・老朽化対策。
【指標例】
・大企業および中堅企業の物流事業者におけるBCP(Business Continuity Planの略。災害時などに対する事業継続計画)の策定割合を大企業63%、中堅企業44.4%(いずれも2015年)から大企業ほぼ100%、中堅企業50%にする。
5.新技術(IoT、BD、AI等)の活用による物流革命
IoT=Internet of Thingsの略。モノとインターネットをつなぐこと、BD=ビジネスドキュメントの略、AI=artificial intelligenceの略。人工知能。
【施策例】
・隊列走行および自動運転による運送の飛躍的な効率化。
・小型無人機(ドローン)の物流事業への活用。
・荷役の自動化、機械化。
【指標例】
・2020年までに高速道路(新東名)での後続無人隊列走行の実現。
・2018年までに山間部などのニーズが見込まれる地域で、ドローンを使用した荷物配送を実現。
6.人材の確保・育成、物流への理解を深めるための国民への啓発活動
【施策例】
・物流に関する資格の取得促進などによる高度物流人材の育成
・学校教育等の機会を通じた物流への理解の増進
【指標例】
・物流に関する高度な資格の取得者数を、4,247人(2013~2016年)から4,700人(2017~2020年)にする。
・トラック運転に従事する女性労働者数を、約2万人(2016年)から約4万人にする。
2020年度までにトラックの無人隊列走行を実現
上記の中でも特に興味深いのが、私たちの暮らしに身近な自動車の自動運転など「5.新技術(IoT、BD、AI等)の活用による物流革命」ではないだろうか。この部分を具体例をあげて深掘りしてみよう。
政府は2025年の自動運転社会の到来を見据え、2020年までにレベル3以上の自動運転の市場化・サービス化の実現を目指している。レベル3とは、システムによる運転が前提の走行だ(レベル2までは人間による運転が前提)。
この取り組みの一つとして、トラックの高速道路での後続無人隊列走行の実現がある。これは先頭のトラックのみドライバーが運転し、後続の車両を電子的に連結させて無人走行を行うことで隊列を組む自動運転システムだ。これにより物流に必要なドライバーの数を大幅に削減できる。政府は2020年度までに実現させることを目標としている。
2018年度に過疎地などでのドローンの荷物配送を本格化
過疎地は人材の不足によって物流のニーズも少なく、宅配などのサービスが手薄になりがちだ。とはいえ、高齢化が住む地域や山間部にこそ手厚いサービスが必要ともいえる。
そこで関係各省は、2018年度にこのような地域でドローンの荷物配送を本格化させるため、目視外飛行に求められる機体性能や安全確保の要件をまとめている。また、性能基準の策定、運航管理システム、衝突回避技術などの開発や国際標準化を進めると同時に、安全な離着陸を可能とする物流用ドローンポートシステムの開発も行う。さらに2020年代には都市部でもドローンの安全な荷物配送を実用化することも目標に掲げている。
日本の物流は、人材不足などから円滑なサービスの提供を不安視する声もある。しかし、以上のように仕組みやインフラ、そして新技術の導入などにより、まだまだ便利になる可能性が大いにある。近い将来には今よりも「ほしいときに」「ほしいもの」がすぐに運ばれてくるようになるはずだ。
もしかしたら旅行先の南の島や雪国から配送を依頼し、滞在先で受け取れる、などという日も近いかもしれない。
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