定期借家契約の利用率は3.2%

賃貸物件の契約形態に定期借家契約というものがあることをご存知だろうか。同契約形態には2種類ある。1つは普通借家契約でもう一つは定期借家契約だ。

しかしながら、国土交通省の「住宅市場動向調査」(2014年度)によると、民間賃貸住宅に住み替えた世帯のうち、定期借家契約の利用率は3.2%だった。普通借家契約が95.8%(その他は無回答)だから、定期借家契約はほとんど利用されていない。やはり、あまり知られていないということだろう。

定期借家契約の制度は、2000年3月より施行されたものだ。それまでは普通借家契約しかなかった。普通借家契約は、借主に非常に手厚い内容になっている。たとえば、一般的に2年の契約期間が終了しても、貸主は正当な事由がなければ解約できない。したがって転勤などで一時的に自宅を貸したい場合や近々に売却したい場合などでは、貸したくても貸せない状況になっていた。
そこで施行されたのが定期借家制度だ。今はまだ利用率は低いが、貸主にとっても借主にとっても、状況によっては、空き家の有効活用、また遊休資産の有効活用法として利用価値の高い契約といえるのではないだろうか。従来の普通借家契約と比較しながらその内容を解説しよう。

2015年度の定期借家契約の利用率は、わずか3.2%。この割合はここ数年でそれほど変化していない(出典:国土交通省)2015年度の定期借家契約の利用率は、わずか3.2%。この割合はここ数年でそれほど変化していない(出典:国土交通省)

普通借家契約と定期借家契約の違い

両契約には以下のような違いがある。

●契約方法
【普通借家契約】
 書面でも口頭でも可。(ただし、宅建業者の媒介等により契約を締結したときは、契約書が作成され交付される)
【定期借家契約】
 公正証書などの書面による契約に限る。さらに、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない。この説明を怠ると「定期借家契約」の効力は無くなり「普通借家契約」になる。

●建物賃借料の増減に関する特約の効力
【普通借家契約】
 特約にかかわらず当事者は、賃借料の増減を請求できる。
【定期借家契約】
 賃借料の増減は特約の定めに従う。

●契約期間
【普通借家契約】
 契約期間は1年以上。 一般的には契約期間を2年とすることが多い。 なお、契約期間を1年未満とした場合には、期間の定めのない契約となる。
【定期借家契約】
 自由に定められ、1年未満も可能。契約の更新は無い。ただし、契約終了後に貸主・借主の双方が合意すれば再契約も可能。

●借主からの中途解約
【普通借家契約】
 特約で定めることが可能。特約では予告期間やその期間を過ぎた解約時に支払う金額などを定める。
【定期借家契約】
 借主が転勤、療養、親族の介護などやむを得ない事情により、借主が住み続けることが困難となったときは、中途解約が可能。ただし、居住用の建物で床面積が200m2未満のものに限る。また、特約で定めることでも可能になる。

●貸主からの解約
【普通借家契約】
 正当な事由(貸主がほかに住むところがなく貸している建物に住まなければならない場合など)が無ければ不可能。
【定期借家契約】
 原則不可能。

留守宅を有効活用したい場合「リロケーションサービス」という選択も

以上のように定期借家契約は、従来の普通借家契約に比べ借主よりも貸主に手厚い内容になっている。想定される利用場面には、前述のようにいずれ戻ってくることが分かっている転勤時や、近々の物件売却・解体予定などがあるケースだろう。

ここで、2000年3月の定期借家契約の施行後に登場した「リロケーションサービス」に触れておきたい。
このサービスは、貸主が委託した不動産管理会社と入居者間で「定期借家契約」を結ぶ形態で、貸主の留守中に、入居者管理や建物管理といった"大家の業務"を代理で行ってくれるというサービスだ。また、最近では仲介と管理を両方行う不動産会社も登場しており、管理会社が入居者の募集や家賃の集金、定期巡回、修理修繕の対応までおこなってくれる会社もあるので、どの程度まで代理で行ってもらうか、様々なサービスを比較検討して欲しい。
さらに、貸主はリロケーションサービスを利用することで、単に留守中の家賃収入を得られるだけではなく、実際に持ち家を貸し出した場合の賃料水準を把握できる点もメリットのひとつだ。

比較的に短い期間で貸し出すため、見ず知らずの他人ではなく、親戚や知人に貸す場合も想定されるだろう。こうした場合、いくら身内だからといって「言った、言わない」などのトラブルを防ぐためにも、きちんと定期借家契約を取り交わしたいものだ。

借主によってのメリットは、なんといっても家賃の安さ

一方で借りる側にも十分メリットがある。それは安く設定された家賃だ。定期借家契約は文字通り期間限定の契約だ。いくら気に入っても貸主の合意がなければ住み続けることができない。そのため、相場よりも家賃が安く設定されていることが多い。転勤や長期出張の期間が決まっている場合や自宅の建て替え時などで短期間の住まいを探しているケースでは利用価値は大きいだろう。
また、物件の購入を検討している人にとって、期限を決めた上で試験的に戸建てに住むというお試しができる点もある。実際にその地域に住まなくてはわからない、周辺地域の雰囲気や自治体の活動、通勤のイメージなどを知ることができる。
また、貸主は、トラブルを起こす住人を契約期間が過ぎた段階で退去させることができるので、長期間住んでいる住人が多いほど比較的住民トラブルが少ない傾向にあるようだ。

定期借家を利用する場合、貸し出す方は、契約内容や原状回復、税金などの手続きや注意点をきちんと理解し、反対に住む側は、オーナーが戻ってきたあとにすぐに住めるよう、住宅の手入れや日頃の掃除などに気をつけ、あくまでオーナーの大切な資産を借りているという意識を忘れずに住みたいものだ。
自分自身のライフスタイルに応じて、賃貸住宅を選ぶ際のひとつの選択肢として、定期借家も候補に入れてみてはいかがだろうか。

定期借家契約は一見貸主に手厚い内容となっている。しかし、状況によっては借主にも十分メリットはある。双方納得したうえで契約を締結したい定期借家契約は一見貸主に手厚い内容となっている。しかし、状況によっては借主にも十分メリットはある。双方納得したうえで契約を締結したい

2016年 03月27日 11時00分