まさに「神の道」を実感できる「ルート1」

前回は、市民有志の「寂れていくまちに活気を取り戻し、誰もが住みたいと思えるまちにしたい」「鹿嶋の魅力を国内外に発信して観光客を誘致したい」との思いから、韓国の「チェジュオルレ」や九州の「武雄オルレ」などを参考にした「鹿嶋神の道」誕生のいきさつなどについて紹介した。今回は「鹿嶋神の道」整備のプロセスや実際のルート、今後の課題や展望などを中心にお伝えしよう。

「鹿嶋神の道」は、2014年に鹿島神宮を中心に文化財や景観を巡る「鹿嶋神の道ルート1」をオープンし、2016年には三社詣りの古道を抜け剣聖塚原卜伝の里を巡る「鹿嶋神の道ルート2」を整備。現在はルート3のオープンを控えている。

「鹿嶋神の道 ルート1:神の住むまち」は約15kmのウォーキングコース。JR鹿島神宮駅をスタートし、鹿島神宮の奥参道を抜け、鹿島神宮の摂社のひとつ「坂戸神社」、6世紀前半に造営された宮中野古墳群の中で最大の前方後円墳である「夫婦塚古墳」(全長108m、高さ7.5m)、日本で15番目の大きさの北浦湖畔を歩き、水上鳥居としては日本最大級の大きさを誇る「一之鳥居」(高さ18.5m、幅22.5m)、大化の改新を断行した藤原鎌足を祀る「鎌足神社」、聖徳太子の開基とされる「根本寺」、市民の憩いの場で桜の名所でもある「鹿島城址」、護摩堂とも呼ばれ、709年に明道上人が創建したとされる「護国院」などを経由するルート。
一之鳥居から鹿島神宮までのいにしえの参道沿いに、鎌足神社、根本寺、鹿島城址、護国院がある、まさに「神の道」を実感できるルート構成になっている。

左/北浦湖畔に立つ、鹿島神宮に通じる西の一之鳥居。水上鳥居として国内最大級の大きさを誇る 右上/仏頂和尚を禅の師と仰ぐ松尾芭蕉も訪れた根本寺 右下/高台にある鹿島城址。市街の様子が見渡せる気持ち良い場所。桜の名所としても有名左/北浦湖畔に立つ、鹿島神宮に通じる西の一之鳥居。水上鳥居として国内最大級の大きさを誇る 右上/仏頂和尚を禅の師と仰ぐ松尾芭蕉も訪れた根本寺 右下/高台にある鹿島城址。市街の様子が見渡せる気持ち良い場所。桜の名所としても有名

剣聖塚原卜伝の里を巡る「ルート2」

「鹿嶋神の道 ルート2:剣聖の里」は約12kmのウォーキングコース。
豊郷公民館をスタートし、美しい里山の風景が楽しめる「谷津田の道」、鹿島神宮の摂社のひとつで国指定史跡の「坂戸神社」、鹿島神宮、坂戸神社、沼尾神社を結ぶ「三社詣りの古道」、鹿島神宮の摂社のひとつで幽玄の森に囲まれた国指定史跡の「沼尾神社」、7世紀後半の古墳群で群衆墳と呼ばれる大小69基の古墳群があり、眼下の北浦の眺めも見逃せない「塚原古墳群」、16世紀末に鹿島を支配した佐竹氏系統の領民が郷里に縁ある金砂神社を鎮守の神として建立した「金砂神社」、剣聖として名高い「塚原卜伝の墓」、塚原卜伝夫妻の位牌を安置している「長吉寺」などを経由するルート。

自然豊かな鹿嶋市の景観を楽しみながら、鹿嶋が誇る偉人、剣聖塚原卜伝の里を巡るルートになっている。

左/森の中を歩くと清々しい気分に。ボランティアの方々の手により整備されているので安心して歩くことができる </br>右上/谷津田の里山。訪れたのは冬だったが、春~秋には美しい自然が様々な表情を見せて目を楽しませてくれるだろう </br>右下/坂戸神社の案内板。案内板には見どころポイントが詳細に説明されている左/森の中を歩くと清々しい気分に。ボランティアの方々の手により整備されているので安心して歩くことができる 
右上/谷津田の里山。訪れたのは冬だったが、春~秋には美しい自然が様々な表情を見せて目を楽しませてくれるだろう 
右下/坂戸神社の案内板。案内板には見どころポイントが詳細に説明されている

活気を取り戻す鹿嶋。「鹿嶋神の道」が2016年度の国土交通大臣表彰「手づくり郷土賞」受賞

揚げおかきなども「鹿嶋神の道」ブランドとして販売。右は鹿嶋のご当地アイドル「鹿嶋未来りーな」。鹿嶋の知名度アップに貢献すると同時に、情報を全国に発信している揚げおかきなども「鹿嶋神の道」ブランドとして販売。右は鹿嶋のご当地アイドル「鹿嶋未来りーな」。鹿嶋の知名度アップに貢献すると同時に、情報を全国に発信している

2009年にオープンした「鹿嶋人ギャラリー」。特にウィークデーなど、人がほとんど来なかったという。
「まち歩きを行えば、人がここに集まって来る。まち歩きを始めた頃考えていたのは大きなことではなく、地元の人に鹿島神宮に足を運んでもらいたい。そんなきっかけをつくることでした」と西岡さん。神宮参道の入口に店を構えたのは、少しでも参道にある商店街の活気を取り戻したいと考えてのことだった。

鹿嶋人ギャラリーの出店から8年。まち歩きツアーなどで商店街に活力が戻りつつあり、参道の空き店舗が5店再開したという。
「『人に来てもらいたい』というのと同時に考えたのが、『買ってもらいたい』ということ。そのためのひとつが日本酒です。もともと地元で酒米をつくってそれを日本酒として普通に販売していました。しかし、それではもったいないと。ブランド価値をつけるべきだと考えました。なぜかというと、近くに「山の上」という蛍の里があるのですが、蛍を保護するためには無農薬、減農薬でないとダメなんです。ここでつくっているのは、その田んぼで手作業で育てた酒米を使った日本酒。そこで私は『鹿島神の道』というブランド名を付けようと。これを世界の人に売りたいと考え、米の説明を英文で付けています。どこにでも売っているのではなく、鹿嶋でしか買えないようにしてブランド価値を高めています」

無農薬米を使用した日本酒に加え、鹿嶋産のもち米、古代米を使用した揚げおかきなどのアイテムには「鹿嶋神の道」のロゴマークを使用し、「鹿嶋神の道」のブランド化を進めている。

「鹿嶋神の道」は2015年に「新日本歩く道紀行100選シリーズ:文化の道」に認定。さらに2016年度の国土交通大臣表彰「手づくり郷土賞」を受賞するなど、まちの活性化に大きく貢献している。

インバウンドへの対応、確固たる組織の確立など今後の課題解決に向けて

鹿嶋市の魅力について熱く語っていただいた、鹿嶋神の道運営委員会 代表の西岡邦彦さん。明るい人柄とリーダーシップで鹿嶋市の活性化に貢献してきた。今後は組織力の強化、人材育成などにも力を注いでいきたいと話す鹿嶋市の魅力について熱く語っていただいた、鹿嶋神の道運営委員会 代表の西岡邦彦さん。明るい人柄とリーダーシップで鹿嶋市の活性化に貢献してきた。今後は組織力の強化、人材育成などにも力を注いでいきたいと話す

2017年5月21日(日)には、「鹿嶋神の道 ルート3:降臨の里」がオープンする。太平洋を望む、潮の香りが感じられるルートだ。「かしま灘楽習塾」の開講や「鹿嶋人ギャラリー」のオープン、さらには鹿嶋市民はもとより国内外からウォーキング愛好者を呼び込む「鹿嶋神の道」の完成などの効果もあり、まちの活性化が見られる鹿嶋市。西岡さんに今後の課題についてうかがった。

「海外からもっとたくさんの方に鹿嶋市に来ていただきたいと思いますが、同時に受け入れ態勢の充実も必要です。例えば神の道ウォーキングで英語でガイドを依頼されてもすぐには対応できないでしょう。たくさんの宿泊場所や飲食店などインフラの整備のほか、おもてなしをするという住民の意識も必要だと感じています。このまちをどうしたいのかという長期的な展望を持ち、それに乗っ取って予算の許す範囲で少しずつ進めていくことが大切ではないでしょうか」

より住みやすく、人が訪れる魅力的なまちに変えていくためには、行政のリーダーシップはもちろん市民の意識改革や協力も大切だ。
「プロジェクトを成功させるために大切なのが、組織づくり、予算の獲得、人の融和です。会社の組織が次々と生まれ変わっていくように、我々の『鹿嶋神の道運営委員会』も後継者を育てていかなくてはならないと考えています。また、ボランティアではなく、人を雇い、給料を払い、みんなが幸せに感じる組織にしていかないとビジネスとして一人前ではないと思います」

パワフルに走り続けてきた西岡さんの夢、これからやってみたいことをお聞きした。
「近隣の潮来市や香取市などと連携して、日本遺産化を実現したいですね。自治体ごとに考え方や予算も異なるのですぐに実現できるとは思っていません。しかし、鹿嶋だけ、潮来だけ、香取だけではなく、周辺一体となって取り組まないと本当の地方創世はできないと思います。そのためにも、まずは『鹿嶋神の道』の運営をしっかりと、地道にやっていくことが大切だと考えています」

鹿島神宮を中心とした歴史と、豊かな自然が感じられるまち、鹿嶋市。鹿島神宮方面へは、東京駅から高速バスが10分~20分おきに出発するなどアクセスが良好なこともまちにとって追い風だろう。市民有志が中心となり大きな輪に広げた、「町おこし」の好例と言えるのではないだろうか。

■鹿嶋再発見・まち歩きツアー参加費
神の道ウォーク/参加費1000円・お弁当+特典付き
半日のショートコース/参加費500円+買い物券付き

■鹿嶋神の道ホームページ
http://www.god-road.com/index.html

■鹿嶋再発見・まち歩きツアー年間予定(平成29年度)
http://www.god-road.com/one%20point/h29plan.pdf

■かしま灘楽習塾
http://www.geocities.jp/kashimanada_info/

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