水辺はセンシュアスか? 独自の統計データを使った「センシュアス・シティ・ランキング」が面白い

HOME’S 総研の「センシュアス・シティ・ランキング」上位20位。「実際に住んでどうだったか」を調査したランキングだ。</br>金沢市、盛岡市、福岡市など、水辺の魅力が感じられる地方都市がランキング上位に顔を出しているのも特徴HOME’S 総研の「センシュアス・シティ・ランキング」上位20位。「実際に住んでどうだったか」を調査したランキングだ。
金沢市、盛岡市、福岡市など、水辺の魅力が感じられる地方都市がランキング上位に顔を出しているのも特徴

編集者の視点から、水辺はどう映るのか?各地域のプレゼンの後は、2名の編集者と有識者によるトーク、「エディターズ・インサイト」が行われた。まず、「水辺はセンシュアス」というテーマで話したのが、株式会社ネクスト HOME’S 総研 所長の島原万丈さんだ。

「近年、都市がどんどん均質化していると感じています。再開発ラッシュがあり、その後はどこもかしこも同じ。人間味があふれる街がどんどんなくなっています」と島原さん。
そこでHOME’S 総研では、「都市の魅力のものさし」を検証するため、経済誌や住宅情報サイトが調査する「住みたい街ランキング」とは異なる、独自の「センシュアス・シティ・ランキング」を作成した。

調査では、「共同体に属している」「匿名性がある」「ロマンスがある」など8つの指標にそれぞれ4つずつの選択肢を与え、「あなたはこの1年間でこのようなことをしましたか」という、その頻度を得点化してランキングを作成。
例えば「ロマンスがある」の指標の場合、「デートをした」「ナンパした・された」「路上でキスした」「素敵な異性に見とれた」の選択肢があり、どの指標も「動詞」で都市をランキングしているのが特徴だ。その結果、1位が東京都文京区、2位が大阪市北区、3位が武蔵野市という結果になった。

「なかなか見たことのないランキングではないでしょうか。8位に金沢市、14位に盛岡市、17位に福岡市が入るなど、水辺が楽しい街が上位にいるように思います。東京都目黒区は4位。路上でキスをするポイントが高い目黒川あっての目黒区ですね(笑)」と、独自の見解を交えながら話してくれた。また、このランキングは「実際に住んでどうだったか」という調査結果が反映されているので、大いに街選びの参考になるだろう。

「パリを流れるセーヌ川にかかる、南京錠で有名なポンデザール橋は、単なる交通路ではなくデートコースになっています。江戸時代の両国大橋は、丁稚がおつかいに出される時は『下を見ないで上を見て歩け』と言われていました。橋の付近では市場、芝居小屋、夜は飲食街となっていたため、下を見るとみんな遊んでいて楽しそうで、仕事をする気が失せてしまうというのがその理由です。
日本にも、昔から水辺を楽しむ文化があったのです。この辺から水辺を捉え直すとよいのではないでしょうか。水辺は都市をセンシュアスにします」と、街と水辺の関係を語った。

自身の体験を踏まえ、ソトコト流・水辺づくりに人を巻き込む方法を伝授

次に話をした編集者は、月刊ソトコト 編集長の指出一正さん。小学生の頃から川が好きで、毎日のように釣りに行っていた水辺好きだと自身の昔の姿を振り返る。

「最近の若い人の移住は水辺を意識していると思います」と、新卒で気仙沼の唐桑半島に移住した5人の「ペンターン女子」(ペンとはペニンシュラ=半島のこと)、長浜市の米川にシェアスペースをつくり若者が交流を図っている話、瀬戸内の風光明媚な場所に、サイクリストのためにつくったうどん屋さんの話を紹介した。

多摩川や県外で水辺での遊びを楽しんでいるという指出さんご家族。水辺で遊ぶ様子をSNSでアップすると、「うちの子どもにも教えて欲しい」などと知人から反響が多く、水辺の豊かさを子ども達に伝えていきたいと考えているそうだ。

自身の体験を参考に、水辺づくりに人を巻き込むソーシャルな視点で必要なものについて、指出さんは以下の3点を挙げる。それが、①水辺に何回も足を運んでくれるような「限りなく友達に近い『関係人口』を増やすこと」、②ここから未来がはじまるという、「自分が水辺づくりに関わっているワクワク感、未来への手応えを持つこと」、③やらされているのではなく「水辺づくりを自分ごととして楽しむことができること」。

水辺は大人も子どもも豊かにしてくれる場所。大人が楽しめば、その魅力は子どもにも伝わっていくはずだ。

月刊ソトコト編集長の指出さん。</br>子育ての話なども交えながら、小さい頃からの水辺好きである指出さんならではの話を披露してくれた月刊ソトコト編集長の指出さん。
子育ての話なども交えながら、小さい頃からの水辺好きである指出さんならではの話を披露してくれた

2020年に開催される東京オリンピック。水辺を含めた公共空間の活かし方を考える

写真左から辻田さん、馬場さん、金尾さん。公共空間の有効な活用方法についてなど、シークレットキーワード方式に対応しながら、深い知識を元にした内容の濃い話で会場を楽しませた写真左から辻田さん、馬場さん、金尾さん。公共空間の有効な活用方法についてなど、シークレットキーワード方式に対応しながら、深い知識を元にした内容の濃い話で会場を楽しませた

最後に行われたのが、東京大学公共政策大学院特任教授の辻田昌弘さん、公共R不動産・Open A代表の馬場正尊さん、国土交通省 水管理・国土保全局長の金尾健司さんの有識者3名による「公共空間活用新時代トーク」と名付けられたインスパイアトーク。
トークではキーワードが出され、それに合わせて話を進めていくという形式がとられた。その中で2つのキーワードについてのトークを紹介しよう。

まず「公共空間活用とオリンピック」について。金尾さんが89と118という数字が書かれたボードを掲げた。
「この数字が何を意味するかわかりますか。歌川広重の名所江戸100景は、実は118景あるのですが、そのうちの89は水辺と関係性があるのです(若干異なるかもしれないという説明あり)。だいたい4分の3です。2020年に東京でオリンピックを開催するにあたって、東京の水辺を海外の方にアピールしたいと思います」
東京オリンピックでは、競技施設や選手村もベイエリアに多く展開するので、東京の水辺を印象付けるよい機会となるだろう。

馬場さんも以下のように続ける。
「オリンピックでは世界中から人が集まるので、公共空間を新しく使う実験をするのに格好のチャンスだと思います。使ってみて、そのノウハウを次の時代に活かすのです。
ロンドンオリンピックの時に『グレートロンドン』というプロジェクトがあって、オリンピックのオフィシャルパートナーではない市民団体や民間団体が、企業スポンサーを避けて公共空間で自由なアクティビティを仕掛けました。総額200億円のプロジェクトに発展し、この『グレートロンドン』の効果で、ロンドンはパブリック空間の活用の仕方がパッと広がりました」

さらに馬場さんは、「PPPエージェント」という、新しい職能が生まれるのではないかという考えを披露。「PPPエージェント」とは、「プライベート・パブリック・パートナーシップ」の頭文字だ。
「民間と行政の間で翻訳をして調整する役割が必要だと思います。そのエージェント機能があったら民間も行政もずっと楽になって物事も進むのではないでしょうか」。

その話を受けて辻田さんが補足する。
「民と官がある場合、民では当たり前だと思っていることが、官の理屈では通らない。官の理屈だと、絶対にダメだと言っていることが民はなぜわからないのか、となる。官と民の間に入るコーディネーターが必要ですね」。
官と民の間に入るコーディネーターが、東京オリンピック、ミズベリングを含めた今後の公共空間の有効活用をスムーズにするキーかもしれない。

水辺から地方創生を考える。水辺の活用方法、また課題は?

次に紹介するのが「地方創生は水辺から」というテーマである。

金尾さんが、九州の川内川の蛍の話を披露。たくさんのホタルが舞う川内川を船下りすることができ、それを地域のボランティアが行っているという。川の価値を活かした地域活性化の好例だ。

辻田さんも川の活かし方について語る。
「川は上流から下流まで流れているので、市町村が連携し、つながる要素があります。地方創生といっても基本的にお金がないので、10年20年前みたいに工場を誘致するとか、リサーチパークを建設するとか、リゾート開発するとかはできません。手持ちの資源で何とかするしかないのです。そう考えると川は大事なポイントになると思います。
一方、川はどこにでもあるものです。すごくきれいな渓谷などではなく、ただ普通に水が流れているだけのところをどう魅力付けしていくのかは難しい問題ですが」と、複数の行政が連携した川の活かし方と、どう魅力付けするかという難しさの両面を語った。

馬場さんは、地方再生について、民間と行政、そしてメディアの目が大切だと語る。
「何かをつくるのではなく、今ある自分たちの魅力を再発見して、その価値を最大化する。
民間と行政がパートナーシップを組む時に重要なのが、魅力ある空間を再発見できるメディアの目です。鋭い視点でものを発見し、ビジネスにし、それを行政が支える。その三角形をつくれた自治体が地方創生の勝者になると思います」

今回のイベントでは、ほかにもGoogleストリートビューの「川」版が披露されるなど(神田川、日本橋川など)、水辺の魅力、取り組みの動向、今後の課題など、多方面の話が展開された。

センシュアス・シティ・ランキングにあるように、水辺が豊かな街は魅力のある街が多い傾向があることは個人的にも新たな発見だった。

ぜひ毎日の生活に水辺を少しでも意識して、まちを愉しむ視点と共に上手に取入れてみてはいかがだろう。

関係者や興味がある人など、この日は会場に600名以上が来場し、大盛況のイベントとなった。</br>今後のミズベリング・プロジェクトにも要注目だ関係者や興味がある人など、この日は会場に600名以上が来場し、大盛況のイベントとなった。
今後のミズベリング・プロジェクトにも要注目だ

2016年 04月05日 11時05分