住宅ローンの異例な低金利は2016年が最後になる?
新年早々「ゲス不倫」でスタートした2016年が間もなく終わろうとしている。「君の名は。」やシン・ゴジラ、逃げ恥、真田丸、リオ五輪、ポケモンGO、SMAP、PPAP、TPP、安保関連法、豊洲移転問題など話題も多い1年だった。
芸能ニュースは忘れてもよいだろうが、4月の熊本地震や10月の鳥取県中部地震はしっかりと記憶にとどめておきたい。台風上陸が相次ぐなど、2016年は自然災害も多発した。天皇陛下の生前退位問題も、これからどのような結論に落ち着くのか気になるところだ。
それでは不動産・住宅市場の2016年がどうだったのか、主な出来事を振り返っておきたい。
まず特筆すべきはマイナス金利の導入と、それに伴う住宅ローン金利の低下だ。すでに数年前から超低金利状態が続いている住宅ローンは「これ以上の引下げは無理」とする見方が強かった。
しかし、1月29日に日銀が「マイナス金利」の導入を発表し、住宅ローン固定金利の指標となる「10年物国債利回り」は2月下旬からマイナス圏が常態化。住宅ローン金利は下がり続け、8月には過去最低を記録する例も相次いだ。住宅金融支援機構による【フラット35】も、8月には年0.900%(返済期間21年以上、融資率9割以下の最低金利:最多適用金利)となっている。
その一方で、2015年の大納会を19,033円で終えた日経平均株価は、年初から「戦後最長」となる6日連続で値下がりした後も下落傾向が続き、2月と6月には15,000円を割り込む水準まで落ち込んだ。1月に120円前後だった円相場(対ドル)も、8月には一時100円を下回るなど円高傾向が続いていた。
ところが、2016年11月初旬に行われたアメリカ大統領選挙で事前予想を覆してトランプ氏が当選し、株式市場は乱高下した後に株高・円安傾向が続いている。12月16日時点では日経平均株価が7日連続で年初来高値を更新して19,401円となったほか、円相場も118円でほぼ1年前の水準に戻りつつある。
そして株高・円安傾向とともに長期金利も上がり始め、「10年物国債利回り」は11月中旬、およそ9ケ月ぶりにマイナス圏を脱した。住宅ローン金利への影響が本格化するのは2017年1月以降だろうが、株高も不動産価格に少なからず影響する。今後の推移を注視していきたい。
住宅価格の上昇と新築住宅市場の低迷
消費税率の再引上げを前にした駆け込み需要を見込んでいた事業者にとっては、期待外れに終わった2016年だったかもしれない。当初は2015年10月に10%へ引上げられる予定だったが、2017年4月まで1年半先送りされた際に「再延期はない」と明言されていたのだ。しかし、2016年5月になって「再度、2年半先送りする」方針が示され、11月18日の法案可決・成立で正式に2019年10月までの延期が決定した。
2017年4月1日に予定どおり消費税率の引上げが実施されるなら、その半年前にあたる2016年9月末までが住宅の駆け込み需要のピークになる見込みだったため、それに合わせて販売時期を調整していた不動産会社も多かっただろう。
その一方で、2016年は新築、中古ともマンション価格の上昇が目立った。マンション価格の上昇は2013年あたりから表れ始めていたものの、さらに上昇が続き、2016年は高止まりしている状況である。国土交通省がまとめた「不動産価格指数(住宅)全国」は、マンションが2013年3月から2016年8月まで42ケ月連続でプラスとなり、130.0に達した。戸建住宅が99.7、住宅地が98.2と、いずれも2010年平均の100を下回っているのとは対象的だ。
「不動産価格指数(住宅)」におけるマンションは「主に中古の区分所有建物の価格」を指数化したものだが、新築マンション価格に左右される側面が強いため、新築でもほぼ似通った値動きだと考えてよいだろう。また、マンション価格指数の上昇幅は東京都よりも北海道、東北、中部、九州・沖縄地方のほうが大きく、決して大都市圏だけの傾向ではない。
販売価格が高止まりする一方で、首都圏では新築マンション発売戸数の減少が目立ち、契約率も従来に比べ低い水準で推移している。数年後に振り返ったとき「2016年が潮目だった」という結果になる可能性もあるだろう。
既存住宅流通市場の整備は一歩前進
新築住宅市場が振るわないのとは対象的に、既存住宅(中古住宅)に注目が集まりつつある。2016年は既存住宅流通市場の整備が進んだ1年だったといえるだろう。その歩みが満足できるものなのかどうかは立場によって評価が分かれるだろうが、2016年3月には5年ぶりに見直された「住生活基本計画(全国計画)」が閣議決定され、既存住宅流通・リフォーム市場の活性化や空き家対策の推進などが前面に強く押し出された。
従来の制度や優遇税制は新築住宅を基本的な対象としたうえで、「一定の既存住宅にも適用する」というスタンスのものも多かったが、10月に【フラット35】リノベがスタートしたほか、11月からの「住宅ストック循環支援事業」など既存住宅をメインにした制度も始まっている。
また、2016年5月には「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」が可決・成立した。その施行は2018年4月1日になるが、既存住宅の売買にあたってインスペクションの活用を促し、その結果を重要事項説明の対象に加えたことが大きな特長だ。消費者が安心して既存住宅を購入するためにはインスペクションの役割が大きく、今後の普及が期待されている。
「貸家」の着工は高い水準が続く
既存住宅流通市場の整備が急がれる背景には年々悪化する空き家問題があるのだが、それを尻目に賃貸住宅の建設が相次いでいる。相続対策を目的としたアパート建設も多いとみられるが、過去1年間(2015年11月〜2016年10月)における「新設住宅着工戸数」(国土交通省調べ)の推移をみると「持家」や「分譲住宅」に比べ、「貸家」の戸数が突出している。過去1年間にわたり前年同月を上回り続けているのも「貸家」だけだ。「分譲住宅」は振れ幅が大きいが、前年同月を下回った月も少なくない。
アパートや賃貸マンションなどの建設が増えている要因のひとつが、2015年1月に実施された相続税の課税強化だ。国税庁が2016年12月に発表した相続税の申告状況によれば、2015年に亡くなった人のうち課税対象者は前年比83.2%増に達し、課税割合は8.0%、東京国税局では12.7%になるという。課税割合は過去最高となり、相続財産のなかで最も多くの割合を占めるのが土地である。賃貸住宅の建設などが有効な相続税対策となる現行制度がそのままなら、「需要に見合わないアパート建設」も続きそうだ。
賃貸住宅をめぐっては、2016年9月に国土交通省が「賃貸住宅管理業者登録制度」を改正して、いわゆる「サブリース問題」の対策に乗り出したが、建設戸数やその立地をコントロールしなければ、将来の世代に回すツケがさらに大きくなるだけだろう。
今後の課題として残されたものもあるが、不動産のあり方は変わりつつある
それ以外にも2016年の出来事をいくつか書き留めておきたい。
まず、4月1日に電力小売りが全面自由化されたが、電力広域的運営推進機関のまとめによれば11月30日まで8ケ月間における切替件数は234万件あまりにとどまる。契約総数の3%台であり、まだ低調だといわざるを得ない。2017年4月には都市ガス小売りの自由化も始まるが、切替えが一般化するまでにはしばらくかかりそうだ。
東京都大田区などで2016年に始まった「特区民泊」は、当初の「6泊7日以上」の要件が緩和され、10月31日から「2泊3日以上」となったものの、なかなか思惑どおりには普及していないようだ。その一方で、違法状態とみられる民泊は増え続けているようである。厚生労働省は4月に旅館業法の規制を緩和し、それに伴い条例を改正した自治体もあるが、まだ正規の民泊を営むためのハードルは高いだろう。2016年の臨時国会へ提出が期待された「民泊新法」は、2017年の通常国会へ先送りされた。
2016年4月の熊本地震、10月の鳥取県中部地震では住宅の被害も相次いだ。とくに熊本地震では旧耐震基準だけでなく新耐震基準の建物でも多くの被害があり、耐震性能への関心も高まっただろう。1981年に改正された「新耐震基準」ではなく、それが強化された「2000年基準」が注目されている。
2015年10月に明らかとなった横浜市都筑区の「傾斜マンション」は、管理組合により2016年9月に全4棟の建て替えが決議された。問題発覚から1年ほどの決議は異例の早さだろうが、住民にとってはまだ先の長い道のりだ。これですべてが解決したわけではない。
マンションの管理組合をめぐっては、国土交通省による「標準管理規約」が2016年3月に改正された。「コミュニティ条項」をめぐる問題が大きく取り沙汰されているが、管理組合の役員などに外部の専門家が就任することや、住戸の価値割合に応じた議決権や管理費負担割合の設定を可能にしたことなども注目される。2017年度の税制改正に盛り込まれたタワーマンションの課税強化なども含め、共同生活の場としてのマンションのあり方も少しずつ変わっていきそうだ。
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