スマホの操作ひとつで家の鍵を施錠・解錠できる世界初の後付スマートロック
総務省によると、平成25年末の情報通信機器の普及状況のうち「スマートフォン」の普及率は、62.6%(前年比13.1ポイント増)と急速に普及が進んでいる。スマートフォンの普及でさまざまなアプリの開発も進んでいるが、今回紹介するのは家のドアを鍵で開けず、スマホで鍵を開けるスマートロックロボットだ。従来のように鍵穴に鍵を差し込む手間を省き、スマホを使って家の鍵を施錠したり解錠できる画期的なアイデアだ。
これまでもスマートロック内蔵の玄関ドアは開発され実用化されてきたが、既存の住宅に取り入れるにはドアごと交換する必要があるため、手間もお金もかかりあまり普及していないのが現状だった。
株式会社フォトシンスが開発したスマートロックロボット「Akerun(アケルン)」は、世界初の後付けできるスマートロックロボット。ドアを交換するよりはるかに安く、スマートロック化できるデバイスだ。
同社の代表取締役社長 河瀬航大氏に詳しく話を聞いてみた。
不便を便利に。遊び心から生まれた画期的なアイデア
両手が荷物でふさがっていて、カバンの中の鍵をなかなか取り出せない。寝ている子どもを抱っこしながら鍵を開けるのは一苦労。誰もが一度は経験したことがあるだろうこうした煩わしさを解消してくれるのが、鍵を自動で開閉するスマートデバイス「Akerun」だ。
「アイデアを思いついたのは昨年の初めごろ。自分たちが不便だと感じているものを便利にしたいという思いからでした。開発メンバーも当時はそれぞれ別の会社に勤めていたので、趣味の延長のような感じで平日の夜や週末にいろいろなアイデアを出し合って開発に取り組んでいました」と河瀬氏。
たくさんのアプリやサービスが生まれるスマホの現状にあって、次にできることは何かと考えたとき、モノがインターネットでネットワークされる“IOT(Internet of Things)”に可能性があると踏んだという。
「Akerun」は、単三電池2本で稼働。基本的にサムターン式のドアならば取り付け可能で、アプリ上で対応可能なドアかどうかの診断もできる。アプリにログイン後、サムターンを開けたところ、閉めたところの写真と、ドアの型番が書かれた飛び出しの部分の写真と、全部で3枚の写真を撮って送ると、3営業日ほどで同社から診断結果が送られてくるのだという。
取り付け方はいたって簡単だ。「Akerun」の内側に強力なシートがついているので、サムターンにピタっとくっつけるだけで簡単に設置完了。工事などは必要ない。スマホのアプリでアカウントの登録が完了したらすぐに使用可能だ。設定や取り付け方は、「Akerun」アプリがガイドしてくれるので、難しい操作が苦手という人にでも簡単にできそうだ。
オートロック機能や、一時的・継続的な合鍵発行も可能
設置後は、スマートフォンを片手にドアの近くでアプリ画面の鍵マークをタップするだけで、鍵を開け閉めできる。タップすらせずに、スマートフォンを持って近づくだけで鍵が開け閉めできるハンズフリー設定もできる。家から外に出る場合は、スマホで操作するのが逆にめんどうなのでは?と思ったが、内側からはタッチパネルになっているので、「Akerun」を手で軽く押してやればドアは開くという。また「Akerun」のカバーをカパッと開けるとサムターンが見えるので、それをいつも通りに回して解錠することもできるのだ。
また、アプリのオプション機能として、一定時間以上鍵が開いていることを検知して自動的に施錠するオートロックも可能だという。このオプションを使えば、鍵の閉め忘れもなくなる。家を出てから「鍵かけたっけ?」と心配になっても、アプリの画面から鍵の状態を確認することができるのも便利な機能だ。
さらに注目を集めているのが鍵のシェアができる点。実家の親が来たときや友人など、登録すれば設定した日にちや時間だけの合鍵を発行することも可能だという。
「鍵のシェアは簡単です。アプリ上で鍵を渡したい人の携帯電話番号やメールアドレスを入力して、有効期間など鍵の条件を設定して送信するだけ。相手の携帯電話には メールで通知が送られます」(河瀬氏)
鍵の受け渡しや合鍵を作るという物理的なやり取りがなく、ポストの中とか植木鉢の下だとか、秘密の場所に鍵を隠しておく必要もなくなるのだ。
また、だれがいつ入ったか、出入りの管理ができ、履歴も残るので、セキュリティを高めることができる。合鍵機能は、LINEやFacebookのメッセンジャー機能を使って、鍵の権限を家族や友人といった別の利用者のアプリに渡すことができ、「Akerun」 所有者は、登録している家族や友人の「Akerun」での鍵の開け閉めを、スマートフォン上にリアルタイムでポップアップ通知させることもできるそう。
実際に同社の鍵には「Akerun」が設置されているそう。
河瀬氏は「自分たちのアイデアを形にするため、実験的に取り付けていました。今は社員、スタッフ含め20人ほどが合鍵をシェアしているので、昔のようにオフィスの鍵当番などは必要なく、だれが出入りしたかもわかるので非常に便利だと実感しています」と話す。
不動産物件の内覧、ホテルの宿泊システム、空室利用など可能性は広がる
この世界初の後付型スマートロックロボット「Akerun」、すでに各企業の注目を集めている。
スマートロックを物件の鍵に!と考えたのが『HOME’S』を運営する株式会社ネクスト。不動産物件の内見時にスマートキーを活用する「スマート内覧」の試験運用を開始。これまで不動産の内覧には内覧日時の調整や鍵の受け渡しなど煩雑な手続きが必要だったが、ネット上で鍵の受け渡しができれば業務が簡素化する。さらに今後は空き家の不動産運用も視野に入れているという。たとえば、空き家を使ってイベントを開催したり、時間を限定してアパートの空室を教室として開放したりできるようにするというわけだ。
また、ホテルドーミーインと提携してフロントを介さずに宿泊できる「スマート宿泊システム」の実証実験も行っていくとのこと。
不動産仲介事業や企業の勤怠管理、ホテルフロント、貸宿・空きスペースなどの市場など、すでに提携が決定・予定されている市場以外でも、鍵のシェア機能を使い、入退室情報をもとに高齢者や子どもの見守りや、オフィスでのタイムカードとしての活用など、ユーザーの生活環境や利用環境によって、このスマートロックの可能性はまだまだ広がりを見せそうだ。
「たとえば、ある会員制バーを経営している方は、会員と鍵のシェアをすることによって、スムーズに入店してもらうことができると話していました。自分たちも思いつかないような使い方をしてくださる方がいるので、こちらも新しい可能性をユーザーの方から提案していただいているような気持ちです」と河瀬氏は話す。
鍵を入口に、家の中を便利にしてくれるコンシェルジュ的な役割も
ちなみに、同社ではこの「Akerun」をスマートロックロボットと呼んでいるが、なぜ“ロボット”なのか―。
「将来的にはコンシェルジュのような役割をしてくれたらいいなと考えております。たとえば、家を出るとき傘を持って行ったほうがいいよとか、家に帰ってきたら、自動的に電気がつきお風呂のスイッチをいれてくれるというように、鍵を入口にして生活をもっと便利に楽しくしていけたらいいと思っています」と河瀬氏は話す。
家の鍵が自動で空いて自分にぴったりなサービスを提供してくれる、そんな便利な時代が来たら夢のようだ。しかし、夢を夢で終わらせないのが彼らのような技術者集団なのだろう。
コンパクトでスマートなロボット的可能性を秘めた、未来のコンシェルジュに期待したい。
※「Akerun」がサポートするスマホOSはiOS7以上、Android4.4以上でBLE4.0に対応。
取材協力・写真提供 / 株式会社フォトシンス http://photosynth.co.jp/
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