物件価格や金利の上昇が続くなかで、「変動金利の住宅ローンを選んでもいいのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。将来、金利や返済額がどのように変化するか見通しづらい今、安心感を求めて固定金利に注目する人が増えています。

特に注目されているのが【フラット35】です。【フラット35】は住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供する全期間固定金利型の住宅ローンであり、借入時に完済までの金利と返済額が確定する安心感が大きな魅力です。

さらに、住宅性能や家族構成などの条件を満たせば金利が優遇され、返済負担を抑えられる点も見逃せません。ただし、金利水準や運用上の注意点もあるため、特徴を正しく把握したうえで選ぶことが大切です。

この記事では、固定金利が注目される背景や【フラット35】のメリット・デメリットについて、住宅専門ファイナンシャルプランナーとして活躍する草野芳史さん監修のもと解説します。

 

2026年現在、固定金利が注目されている背景のひとつとして、将来への不安が挙げられます。

 

住宅ローンは数十年にわたる長期契約だからこそ、今後の返済額や金利の変化が家計にどのような影響をおよぼすのかは気になるポイントです。

 

まずは、住宅ローンで固定金利を選ぶ人の割合や、なぜ今固定金利が注目されているのかを解説します。

 

直近の調査では、住宅ローンで固定金利を選択する人の割合が増えています。

 

住宅金融支援機構は、2025年4月から2025年9月までに住宅ローンを利用して住宅を購入した方を対象として「住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)」を行いました。

 

結果を見ると、回答数1,237件のうち、選ばれた金利タイプは変動型がもっとも多く75.0%でしたが、2025年4月の前回調査時よりも4.0ポイント減少していました(※)。

 

一方、「全期間固定型」は10.1%で前回調査より1.3ポイント増加、「固定期間選択型」も14.9%で2.7ポイント増加しています。

 

依然として変動金利が多く選ばれているものの、固定金利を選択する人の割合が増えており、金利上昇を見越したリスク回避の動きがうかがえます。

 

※出典 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)」

 

変動金利が多く選ばれている状況下においても、2026年に固定金利への関心が高まっている理由はどこにあるのでしょうか。

 

主な要因として「返済計画の安定性」「変動金利のリスク回避」「将来のライフイベントへの負担」の3つが挙げられます。

1. 返済計画の安定性

 

物価上昇に加え、住宅ローン金利も上昇局面が続く今は、あらかじめ返済額を確定しておきたいというニーズから、固定金利への関心が高まっています。

 

固定金利は全期間であれば毎月の返済額が完済まで変わりません。金利相場の変動がないため将来の家計を見通しやすく、長期的な返済計画を立てやすいのがメリットです。

 

住宅ローンは数十年返済が続くからこそ、短期的な金利の変動に振り回されず、住居費を固定して家計管理をしたい方に選ばれています。

2. 変動金利のリスク回避

 

変動金利の5年ルールと125%ルールを知ったことで不安を感じ、固定金利に注目する人も少なくありません。

 

「5年ルール」と「125%ルール」は、一般的に変動金利型の住宅ローンのうち元利均等返済の商品に設けられています(一部金融機関ではこれらを取り扱っていないケースもあります)。

 

5年ルールは「半年ごとに金利が見直されても、5年間は毎月の返済額が変わらない」、125%ルールは「返済額の見直しをする際に、それまでの返済額の125%までしか引き上げられない」というルールです。

 

これらのルールがある商品では、金利が上昇したとしてもすぐに毎月の返済額が増えず、家計の急激な負担増加は抑えられます。

 

一方、金利そのものの上昇を抑える仕組みではないため、金利が上昇すると返済額に占める利息の割合が上昇し、元金が減りにくくなります。

 

負担が軽減されるわけではなく、将来へ先送りされる場合がある点に不安を感じ、変動金利ではなく固定金利を検討する人も少なくありません。

3. 将来のライフイベントへの負担

 

将来のライフイベントに備えて教育費や老後資金を確保したい方にとって、毎月の返済額が変わらない固定金利は有力な選択肢です。

 

人生における三大支出は、住居費、教育費、老後資金といわれています。

 

住宅ローンを借りれば長期にわたる返済資金が必要となり、子どもが成長すると教育費が、退職後には自分たちの生活のための老後資金がかかります。

 

たとえば、教育費がピークを迎える時期に住宅ローンの返済額が増えてしまうと、家計が苦しくなって老後資金の確保にまで手が回らない事態になりかねません。

 

固定金利であれば住居費を固定できるため、教育費や老後資金の積み立てが住宅ローンの変動に左右されにくくなります。

 

専門家からのアドバイス

草野芳史
 
 

固定金利を選ぶかどうかは、「今の金利が高いか安いか」だけで判断しないことが大切です。

 

住宅ローンを返済している間には、子どもの教育費が増えたり、働き方が変わって世帯収入が減ったり、老後資金の準備が必要になったりすることもあります。

 

特に、今後金利が上昇したときに返済額が増えると家計に余裕がなくなる世帯は、多少金利が高くても全期間固定金利を選び、将来の住居費を確定させることは意味があります。

 

一方、十分な貯蓄があり、金利上昇による返済額の増加にも対応できる家計であれば、変動金利を選ぶ考え方もあります。

 

大切なのは金利を予想することではなく、「金利が上がったとき、わが家の家計がどこまで耐えられるか」を確認したうえで選ぶことです。

 

そのためには、今後のライフプランを踏まえ、教育費や老後資金なども含めた将来の家計をキャッシュフロー表などでシミュレーションし、住宅ローンの返済を無理なく続けられるかを検討することが重要です。

 

 

返済額が安定しないことや、お金が必要なときに金利が上昇してしまうことを懸念している方にとって、全期間固定金利の【フラット35】は有力な選択肢です。

 

変動金利の住宅ローンとは異なるメリット・デメリットがあるため、特徴を正しく理解して活用する必要があります。

 

【フラット35】のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット

デメリット

・借入時に決まった返済額が完済まで変わらない

・借り入れ当初の負担を抑えやすい(「子育てプラス」「【フラット35】S」)

 

・団体信用生命保険(団信)に複数の保障プランがある

・保証料や繰り上げ返済手数料が不要

・変動金利よりも借入時点では金利が高くなりやすい

・資金受取時の金利が適用されるため申込時より金利が高くなることがある

・独自の技術基準を満たす必要がある

 

 

また、【フラット35】が向いている人は、以下のような特徴を持つ人です。

  • 毎月の返済額を固定したい人
  • 将来の金利上昇が不安な人
  • 【フラット35】子育てプラスや【フラット35】Sなどの金利引き下げ制度を利用できる人

 

一方で、市場金利が下がった際に、その恩恵を受けたい人や、こまめに繰り上げ返済したい人にとって、【フラット35】は向いていない場合があります。

 

このような人は、民間金融機関の住宅ローンと【フラット35】を比較し、どちらが自分たちに向いているかを判断する必要があります。

 

専門家からのアドバイス

草野芳史
 
 

【フラット35】には、金利や住宅性能だけでなく、審査や団信の面でも民間住宅ローンとは異なる特徴があります。

 

たとえば、勤続年数による申し込み要件が設けられていないため、転職して間もない人でも審査の対象になります。

 

もちろん、転職直後に必ず借りられるという意味ではなく、現在の収入や返済負担率などを含めて審査されますが、勤続年数を理由に民間住宅ローンの選択肢が限られる場合には、【フラット35】を検討する余地があります。

 

新機構団信の保障内容にも特徴があり、たとえば所定の身体障がい状態については、身体障害者福祉法に基づく障がいの級別が1級または2級に該当し、身体障害者手帳が交付されたことなどが支払い事由のひとつとなっています。

 

民間の団信では「所定の高度障がい状態」など約款上の基準で判断される商品もあるため、保障の対象となる条件を比較しておくことも住宅ローン選びでは重要です。

 

【フラット35】は「金利を固定したい人のための商品」と考えられがちですが、転職歴や健康状態などによって民間住宅ローンを利用しにくい人にとっても、検討する価値のある住宅ローンです。

 

 

2026年に【フラット35】を検討する際は、変動金利との表面上の金利差だけで判断しないことが大切です。

 

【フラット35】には、子育て世帯や若年夫婦世帯を対象とした「子育てプラス」や、省エネ性・耐震性など一定の住宅性能を満たした場合に利用できる「【フラット35】S」などの金利引き下げ制度があります。

 

条件によっては複数の制度を組み合わせることもできるため、自分たちがどの金利引き下げを受けられるのかを確認したうえで、毎月の返済額や総返済額を民間住宅ローンと比較するとよいでしょう。

 

また、【フラット35】は融資率が9割を超えるかどうかによって金利が異なります。自己資金に余裕があれば、頭金を入れて融資率を9割以下に抑えることも選択肢になります。

 

ただし、金利を下げるために手元の資金を使いすぎ、教育費や万が一に備える予備資金が不足してしまっては本末転倒です。住宅購入後の家計も考えながら、自己資金の額を決めることが重要です。

 

もうひとつ注意したいのが、【フラット35】では申込時ではなく資金受取時の金利が適用されることです。

 

特に注文住宅など、申し込みから融資実行まで時間がかかるケースでは、その間に金利が上昇する可能性があります。

 

現在の金利だけで資金計画を立てるのではなく、もう少し金利が上がった場合でも無理なく返済できるかを確認しておくと安心です。

 

住宅ローン金利が上昇傾向にある2026年は、完済まで毎月の返済額を確定できる安心感から、全期間固定金利の【フラット35】が注目されています。

 

固定金利であれば、市場金利が上がっても毎月の返済額が変わらないため、教育費や老後資金と両立しながら長期的な家計の見通しを立てやすくなります。

 

ただし、【フラット35】は変動金利よりも借り入れ時点では金利が高めに設定されやすく、独自の技術基準や繰り上げ返済の最低額などの制限もあるため、すべての人にとって最適とは限りません。

 

変動金利と固定金利の特徴をしっかりと比較し、自身のライフプランに合った適切な金利タイプで住宅ローンを組みましょう。

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