住宅ローンを検討しているときに気になるのは、「借りられる額」ではないでしょうか。借りられる額によって購入できる住宅が変わってくるため、いくらまで借りることができるのかは早めに知りたいポイントです。

しかし、「借りられる額」と、無理なく「返せる額」は異なります。住宅ローンを組むのであれば、両者の違いを意識しなければなりません。

この記事では、住宅ローンの借りられる額について知っておきたいポイントを、住宅専門ファイナンシャルプランナーとして活躍する草野芳史さん監修のもと解説します。

 

住宅ローンでは「借りられる額」に注目しがちですが、これは無理なく「返せる額」とは明確に異なります。

 

理想のマイホームを手に入れてからも無理のない返済を続けるためには、この2つの違いを理解することが大切です。

 

「借りられる額」とは、金融機関の審査基準に基づいて算出される、融資可能な上限額です。

 

年齢や年収、勤務先、他社借入れの状況といった客観的なデータから決まります。そのため、各家庭の実際の生活費や、将来の出費の変化までは考慮されていません。

 

住宅ローンにおける「返せる額」とは、自分たちの家計を考慮して無理なく返済し続けられる現実的な上限額を指します。

 

家族のライフスタイルや子どもの教育方針、老後の希望などにより、「返せる額」は大きく変わるのが特徴です。

 

専門家からのアドバイス

草野芳史
 
 

金融機関の審査は、申込者の収入やほかの借り入れ、担保となる住宅の価値(万が一、返済が滞った場合に、土地と建物を売却してどの程度融資を回収できるか)などから、「融資しても問題ないか」を判断するものです。

 

「銀行というプロが審査したのだから、ちゃんと返せる金額なのだろう」と楽観的に考えていると、思った以上に返済が大変だったということになりかねません。実際に借りる額は、ご自身の家計をもとにしっかり考えましょう。

 

 

「返せる額」を考慮せず限度額いっぱいまで借りると、審査に通っても家計が苦しくなることがあります。

 

ここでは、借りられる額で契約する際に注意したい3つのポイントを解説します。

 

住宅ローンの審査は、サラリーマンなどの給与所得者の場合、税金や社会保険料が差し引かれる前の額面年収(総支給額)で行われますが、実際に毎月の返済に充てられるのは手取り収入です。

 

手取り額は年収や家族構成などによって異なりますが、一般に額面年収より2~3割程度少なくなります。

 

額面だけを見て借入額を決めると、返済開始と同時に家計が圧迫される恐れがあります。住宅ローンの審査に通ることと、無理なく返せることは別だと理解しましょう。

 

金融機関によっては、年収に対する年間返済額の割合である「返済負担率」の上限を30~35%、あるいはそれ以上に設定している場合もあります。

 

ただし、この基準はあくまで融資審査上の上限であり、その割合まで借りても家計に余裕があることを意味するものではありません。

 

同じ年収でも、家族構成や車の保有状況、生活水準などによって無理なく返せる額は大きく異なります。

 

場合によっては、子どもの成長に伴う食費・教育費の増加や急な出費に対応しにくくなることもあります。

 

返済負担率はあくまで貸し手(金融機関)側の目安です。借りられる額を借りるのではなく、家計にゆとりが残る水準の借入れを意識しましょう。

 

住宅ローンの借りられる額が算出される際には、住宅購入後の維持費やライフイベントにかかる費用が考慮されていません。

 

住宅購入後は、固定資産税や火災・地震保険料のほか、マンションなら修繕積立金、管理費、駐車場代、一戸建てなら将来の修繕・リフォーム費などがかかります。

 

また、子どもの教育費や老後資金といった将来の大きな支出も、同様に含まれていません。

 

「借りられる額」だけで住宅ローンを組み、「返せる額」の想定が甘い場合、大きな支出が発生したときに家計が苦しくなる可能性があります。

 

専門家からのアドバイス

草野芳史
 
 

返済負担率の計算では、住宅ローンだけでなく、自動車ローンやカードローンなど、ほかの借入れの返済額も含めて判定される場合があります。

 

また、金融機関によっては、クレジットカードのキャッシング枠が審査に影響することもあります。

 

住宅ローンを申し込む前に現在の借り入れ状況を確認し、返済できるローンや不要なキャッシング枠などは整理しておくとよいでしょう。

 

 

住宅ローンは、借りられる上限額ではなく、「本当に返せる額」を考えて契約することが大切です。以下では、生活を圧迫せず現実的に返済できる金額を見極める方法をお金のプロが伝授します。

 

「本当に返せる額」を見極める方法のひとつが、現在の家賃と毎月の貯蓄額から逆算するやり方です。

 

今の家計で実際に支払えている金額を基準にすることで、無理なく返済できる金額を把握できます。

 

現在の家賃と毎月貯蓄できている額を合計し、そこから住宅取得後の維持費を差し引いた金額を、返済額の目安にしましょう。

 

たとえば、現在の家賃が月10万円で、毎月5万円を安定して貯蓄できている家庭で考えてみましょう。

 

単純に合計すると、

家賃10万円+毎月の貯蓄5万円=15万円

となるため、現在の家計では月15万円程度までなら住居費や将来への備えに回せていることになります。

 

ただし、この15万円をすべて住宅ローンの返済に充てられるわけではありません。

 

住宅を購入すると、固定資産税や保険料、修繕費など、賃貸ではかからなかった費用も発生します。

 

仮に、こうした住宅ローン以外の住居関連費として月平均2万5,000円を見込むなら、

15万円-2万5,000円=12万5,000円

となり、月12万5,000円程度が住宅ローン返済額を考える際のひとつの目安になります。

 

たとえば、金利2%、35年返済、元利均等返済の場合、毎月12万5,000円の返済額から逆算した借入額の目安はおよそ3,770万円です。

 

ただし、子どもの教育費がこれから増える家庭や、現在の貯蓄額の中に旅行・車購入など将来使う予定のお金が含まれている家庭では、そのすべてを住宅ローン返済に回すことはできません。

 

「家賃+貯蓄額」はあくまで出発点と考え、住宅購入後の維持費や将来の支出を差し引いて、無理のない返済額を考えることが重要です。

 

住宅ローンで「本当に返せる額」を考える際には、手取り年収に対する住宅ローンの返済額の割合も参考になります。ひとつの目安として20~25%程度に収めるよう意識してみてください。

 

すべての家庭に当てはまる安全ラインではありませんが、家計にゆとりを残しながら毎月の返済を継続しやすくなるでしょう。

 

手取り年収別の年間返済額と月々の返済額の目安は、以下のとおりです。

手取り年収額

年間返済額

月々の返済額

400万円

80万~100万円

約6.6万~8.3万円

500万円

100万~125万円

約8.3万~10.4万円

600万円

120万~150万円

約10万~12.5万円

700万円

140万~175万円

約11.7万~14.6万円

800万円

160万~200万円

約13.3万~16.7万円

上記はあくまでも一般的な目安のため、実際の返済額は現在の支出や将来的な出費などを考慮して決めるようにしてください。

 

住宅ローンの返済期間を決める際は、毎月の返済額だけでなく、完済までの道筋を考えておくことが重要です。

 

期間を長くすると月々の負担が減り、教育費などほかの支出に備えやすくなります。

 

一方、例えば 35 年超の長期ローンの場合、完済時の年齢が高くなることから、退職後もローンが残ることがあります。この場合、返済を年金収入に頼ることになりますが、老後は現役時代より収入が減るため、返済が生活費を圧迫する可能性があります。

 

長期ローンを組む場合は、現役のうちに老後の返済資金を準備する、必要に応じて繰り上げ返済を行うなど、年金に頼らず完済できる見通しを立てたうえで期間を決めましょう。

 

専門家からのアドバイス

草野芳史
 
 

住宅ローンの借入額を検討する際は、住宅ローンの返済額だけを見るのではなく、固定資産税や火災・地震保険料、管理費、修繕費なども含めた「住居費全体」で家計への負担を確認しましょう。

 

また、借入額を考える際には、今後の家族のライフプランを作成することも有効です。

 

給与や退職金、年金、児童手当などの収入と、日常の生活費、子どもの教育費、車の買い替え、旅行などのレジャー費、老後資金などの支出を将来にわたってシミュレーションすると、無理なく返済できる住宅ローンの借入額をより具体的に判断できます。

 

自分で作成するのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談するのもひとつの方法です。

 

 

住宅ローンを組むときは、「借りられる額」と「返せる額」を分けて考えることが大切です。

 

金融機関の審査で提示される借りられる額は、あくまでも金融機関が貸すことができる上限額であり、家計に負担なく返済を続けられる金額とは限りません。

 

手取り収入や現在の家賃、毎月の貯蓄額、将来の教育費や老後資金などを考慮して、自分たちの家計に合った借入額を決めることが重要です。

 

余裕を持って返済できるように、金融機関から提示された額をそのまま住宅予算とするのではなく、将来にわたって無理なく返せる額を考えてみましょう。

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