住宅ローンを利用するときには、多くの人が一定額の頭金を用意しています。
しかし、「いくら用意すればいいのか」「返済がどのくらい楽になるのか」「自己資金のすべてを充てても問題ないのか」など、考えるべきポイントは意外と多く、具体的な判断基準を理解している人は多くないかもしれません。
今回は頭金の役割や効果、金額設定のポイントについて詳しく見ていきましょう。
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頭金の役割と用意しておくメリット

頭金は自己資金の一部であるものの、用意するかは任意であり、フルローンで住宅を購入することもできます。しかし、頭金を用意するメリットは大きいため、慎重に計画を立てることが大切です。
ここでは、頭金の役割やメリットを3つに分けて見ていきましょう。
総支払額が低くなる
もっとも大きなメリットは、住宅購入にかかる総支払額を抑えられる点にあります。頭金として用意した部分には利息がかからないため、その割合が多ければ多いほど、総支払額を下げることができるのです。
住宅ローンをより低金利で利用できる
住宅ローンのなかには、一定以上の頭金を用意することで、通常よりも低金利で利用できるものがあります。たとえば、「フラット35」では、頭金が1割以上の場合、通常よりも低い金利で借りることができます。
住宅ローンは利用額が高額になるため、利率の違いが返済額に与える影響は大きいといえます。
売却や住み替えのリスクが小さくなる
マイホームを購入する際には、十分にライフスタイルの変化を想定して検討する必要があります。しかし、急な転勤や家族のやむを得ない事情などにより、場合によっては住宅を手放さなければならないケースもあるでしょう。
このときにネックになるのが、「住宅ローンを完済しなければ売却が認められない」という条件です。住宅ローンが残った家を売るためには、売却代金などを返済に充てて完済し、金融機関の抵当権を抹消することが絶対条件とされているのです。
しかし、フルローンで購入した場合は借入額が大きくなるため、売却代金だけでは完済が間に合わないケースも少なくありません。頭金を一定以上用意しておけば、そもそもの借入額が少なくて済むため、売却時や住み替え検討時のリスクも小さくなるのです。
頭金で住宅ローンの返済負担はどのくらい変わる?

それでは、頭金を用意することで、実際にどのくらい住宅ローンの返済負担が軽くなるのでしょうか。ここでは、住宅ローン「3,000万円」を借りるケースを想定して、頭金の割合別に総返済額を計算してみましょう。
シミュレーションの条件は以下のように設定します。
条件
- 住宅ローン借入額:3,000万円
- 金利:フラット35の現在の最頻金利を参考(※)
- 返済期間:35年
- 頭金の割合:なし、1割、2割、3割の4パターン
※2021年8月時点 フルローン:1.540%、頭金1割以上:1.280%
上記のケースで計算すると、実際の総支払額は以下のようになります。
| 毎月返済額 | 住宅ローン総返済額 | 総支払額 |
|---|---|---|---|
頭金なし | 9.2万円 | 3,883万円 | 3,883万円 |
頭金1割(300万円) | 8万円 | 3,351万円 | 3,651万円 |
頭金2割(600万円) | 7.1万円 | 2,979万円 | 3,579万円 |
頭金3割(900万円) | 6.2万円 | 2,606万円 | 3,306万円 |
このように、頭金の割合が多ければ多いほど、総支払額は少なくなります。また、毎月返済額も小さくなるので、将来的な家計への負担も軽くなるのです。
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現在貯金ゼロ「頭金がたまるまで待つ」「すぐフルローンで買う」どちらがいい?

現在貯金がなく、これから住宅を購入したいと考えている場合、頭金がたまるまで待つのと、すぐに購入手続きをスタートするのとではどちらがいいのでしょうか。
ここでは、基本的な考え方と注意点について解説します。
意識しておくべきポイント
頭金を用意するメリットについては、これまでに紹介したとおりです。しかし、現在貯金がない場合は、フルローンで購入するケースと慎重に比較することが大切です。
なぜなら、頭金がたまるまで待っている間に、金利の変動などによって最終的な費用が高くなってしまう場合もあるためです。2021年現在は住宅ローンの低金利時代と呼ばれており、住宅購入に有利な状況が長く続いています。
しかし、経済の動向などによっては、ここから住宅ローン金利が上昇していく可能性も十分にあります。また、現在賃貸物件に住んでいる場合は、家賃を払いながら貯金を続けなければならない点にも目を向けることが大切です。
家賃を支払いながら頭金をためるよりも、先に住宅を購入して、余裕が生まれたときに繰り上げ返済を利用するといった方法のほうが、総支払額が少なく済むケースもあるのです。
頭金ゼロ=自己資金ゼロではない点に注意
これまで見てきたように、住宅をフルローンで購入することは可能であるものの、厳密にいえば「貯金ゼロ」では家を買うことができません。そのもっとも大きな理由としては、売買契約時に支払う「手付金」が挙げられます。
手付金とは、契約の内容に信頼性を持たせるためのお金であり、売買契約のタイミングで、買主が住宅購入価格の1割程度を目安に支払うこととなっています。
契約の成立を担保することが目的であるため、決済・引き渡しのタイミングを迎えたときに手元に返ってくるお金ですが、一般的には購入価格の残代金へ充てられることが多いです。
しかし、このときに注意しておきたいのは、支払うタイミングが「住宅ローン融資実行よりも前」だということです。つまり、手付金は住宅ローンでは賄えず、現金で用意しなければなりません。
そのため、最低限の手元資金がなければ、フルローンでも購入が難しい点は事前に理解しておきましょう。
貯金はいくら残すべき? 頭金の決め方

次に、頭金の金額をどのように決めるべきかについて解説します。
頭金の目安割合
住宅金融支援機構「2020年度 フラット35利用者調査」のデータでは、住宅種別ごとに平均の頭金割合が以下のように示されています。
| 手持ち金 | 割合 |
|---|---|---|
土地付き注文住宅 | 440.5万円 | 10% |
注文住宅(建物の建築のみ) | 619万円 | 17.5% |
建売住宅 | 247.3万円 | 7.1% |
新築マンション | 758.1万円 | 16.7% |
中古一戸建て | 198.7万円 | 8% |
中古マンション | 343.4万円 | 11.6% |
これらから、頭金の平均割合は住宅購入資金の1~2割程度が目安といえます。
ただ、実際に用意できる金額は、貯金額や必要な生活費によっても異なるため、「貯金をいくら残すべきか」という観点を持つことも重要です。
頭金は諸費用と予備費を考慮して決める
頭金を決めるときには、自己資金のすべてを充ててしまうのではなく、一定額を手元に残しておくことが大切です。なぜなら、住宅の購入時には税金や手数料などの諸費用がかかるためです。
また、購入後の生活費や引越し代として、予備費もある程度手元に残しておけると安心です。そのため、残しておくべき現金は、「住宅購入に関する諸費用+半年分の生活費」を目安に計算しましょう。
諸費用については、細かな条件によっても異なるものの、以下が目安とされています。
諸費用の目安
- 注文住宅…物件価格の3〜6%前後
- 新築一戸建て(建売住宅)…物件価格の6〜9%前後
- 中古一戸建て…物件価格の6〜9%前後
- 新築マンション…物件価格の3〜6%前後
- 中古マンション…物件価格の6〜9%前後
また、生活費は家計の状況によっても異なるので、事前に半年間にどのくらい必要であるかを割り出しておくことが大切です。
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「住宅ローンシミュレーション」で無理のない返済計画を立てよう

住宅ローンの借入額を調べたいときには、インターネットなどで自動計算ができるツールを利用すると便利です。
LIFULL HOME’Sの「住宅ローンシミュレーション」では、年収や頭金などの条件を入力するだけで、借りられる住宅ローン金額の上限を知ることができます。頭金の金額が決まったら、現在の年収や返済期間などを入力して計算してみましょう。
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まとめ
- 頭金には「総支払額が少なくなる」「低金利で住宅ローンを利用できる場合がある」「売却や住み替え時のリスク減少」といったメリットがある
- 頭金の割合が高ければ高いほど、総支払額は少なくなり、毎月の返済負担も小さくなる
- これから貯蓄を始める場合は、住宅ローン金利の動きを見ながら購入のタイミングを慎重に検討する
- 多くの場合、頭金は住宅購入資金の1~2割程度用意されている
- 住宅購入時にはさまざまなコストがかかるため、頭金は諸費用や予備費を考慮して決める
更新日: / 公開日:2021.10.22










