連帯債務者の仕組みと、連帯保証・ペアローンとの決定的な違い
連帯債務型は1本の住宅ローンを夫婦2人が「同格の債務者」として背負う契約です。名前が似ている連帯保証型や、契約が2本になるペアローンとは、返済義務・住宅ローン控除・団信・諸費用の扱いがそれぞれ異なります。本文では3方式を一覧表で整理し、どこで差がつくのかをひと目で比較できるようにしています。
契約前に知っておきたい3つの落とし穴
連帯債務型には「団信の保障が片方に偏りやすい」「産休・育休・退職で住宅ローン控除を使いきれず、贈与税リスクも生じうる」「離婚してもローンと共有名義は自動では解消されない」という、契約時には見えにくい注意点があります。それぞれの仕組みと回避策を、根拠となる制度とあわせて具体的に解説します。
わが家に連帯債務型が合うかを自己診断できる「5つの判断軸」
金融機関の選択肢、今後10年の働き方、団信の備え、持分割合の設計、万一の出口戦略という5つの質問に答えるだけで、連帯債務型・連帯保証型・ペアローンのどれを軸に検討すべきかの方向性がつかめるチェックリストを用意しました。

理想に近い物件が見つかったのに、どちらか1人の年収では借入希望額にわずかに届かない。共働きのご夫婦が住宅購入で最初にぶつかる壁は、意外にもここではないでしょうか。

「2人の収入を合わせれば買えるはず。でも、ペアローン? 連帯保証? 連帯債務? 何がどう違うの?」と、似た言葉の多さに戸惑ってしまう方は少なくありません。実際、総務省「労働力調査」によれば、2023年時点で共働き世帯は1,206万世帯と、専業主婦世帯(404万世帯)の約3倍にのぼります(出典:労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計 図12 専業主婦世帯と共働き世帯」)。夫婦2人の収入で住宅ローンを組むことは、いまや特別な選択ではなく「多数派の悩み」になっているのです。

なかでも「連帯債務者を立てる」という方法は、契約を1本にまとめながら夫婦2人とも住宅ローン控除を受けられる、共働き世帯と相性のよい仕組みです。ただし、その恩恵は「夫婦2人が返済し続けられること」を前提に設計されています。前提が崩れたときに何が起きるのかまで理解して選んだ夫婦と、メリットだけを見て選んだ夫婦とでは、10年後の安心感が大きく変わります。

似た制度との違いから、見落としがちな落とし穴、そして「わが家はどれを選ぶべきか」の判断軸まで、順を追って整理していきましょう。
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連帯債務者とは、主たる債務者(主債務者)と連帯して、同じ債務の全額について返済義務を負う人のことです。夫婦で連帯債務型の住宅ローンを組む場合、契約は1本ですが、夫婦それぞれが「主債務者」「連帯債務者」として連名で契約し、2人とも金融機関に対して借入額全体の返済義務を負います。

ここで押さえておきたいのは、主債務者と連帯債務者は名称こそ違うものの、金融機関から見た返済義務は対等だという点です。「連帯債務者は補欠」ではありません。たとえば夫が主債務者、妻が連帯債務者となった場合でも、金融機関は夫婦のどちらに対しても、残債全額の返済を請求できます。

 

一方で、夫婦2人が正式な債務者となるからこそ、収入を合算して審査を受けられ、後述するように2人とも住宅ローン控除の対象になれる、という設計です。義務と権利がセットになった仕組みだと理解しておくと、この後の話が飲み込みやすくなります。

名前の似た「連帯保証型」、そして共働き夫婦がよく比較する「ペアローン」との違いを表に整理します。

項目連帯債務型連帯保証型ペアローン
契約本数1本1本2本
返済義務夫婦2人とも全額に義務債務者1人(保証人は債務者が返済不能時に義務)それぞれ自分の契約分+互いの連帯保証
収入合算できるできるそれぞれの収入で審査
住宅ローン控除2人とも対象(負担割合に応じる)債務者1人のみ2人とも対象(各契約分)
団信原則、主債務者のみ(フラット35はデュエットで2人加入可)債務者のみ2人ともそれぞれ加入
諸費用(事務手数料・印紙代等)1本分1本分2本分
物件の所有権共有が一般的債務者の単独所有共有

連帯保証型では、保証人側は住宅ローン控除を受けられず、物件の所有権も持ちません。ペアローンは2人とも控除・団信の対象になりますが、契約が2本になるぶん諸費用がかさみます。連帯債務型は、いわばその中間で「1本の契約で2人分の控除を狙える」バランス型といえます。ペアローンの詳しい仕組みは、共働きの場合に検討したいペアローンとは?もあわせてお読みください。

注意したいのは、連帯債務型を取り扱う金融機関が限られることです。代表格は住宅金融支援機構の【フラット35】で、民間金融機関では一部にとどまります。連帯保証型やペアローンに比べて選択肢が狭いため、「金利や団信の条件が気に入った銀行が、そもそも連帯債務型を扱っていなかった」という順番のミスマッチが起こりがちです。ローンの方式を先に決め打ちせず、候補の金融機関が対応しているかを早い段階で確認しておきましょう。

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連帯債務型が共働き夫婦に選ばれるのには、明確な理由があります。

住宅ローンの借入可能額は申込者の年収をもとに算出されるため、1人の年収では届かない金額でも、夫婦の収入を合算することで希望額に近づけられます。「あと数百万円で希望の物件に手が届く」という場面で、物件の妥協ではなく契約方法の工夫で解決できるのが収入合算の価値です。なお、合算できる収入の範囲(パート収入の扱いなど)は金融機関ごとにルールが異なるため、事前確認が欠かせません。

連帯債務型では、要件を満たせば夫婦それぞれが自分の負担割合に応じて住宅ローン控除を受けられます。住宅ローン控除は年末のローン残高等に控除率0.7%を乗じた額が所得税等から差し引かれる制度で、新築住宅等は原則13年間適用されます(出典:国土交通省「住宅ローン減税」)。1人では所得税・住民税の額が控除枠に届かず使いきれないケースでも、2人に分かれることで世帯として控除を活かしやすくなるのは、共働きならではの利点です。

ペアローンは契約が2本になるため、事務手数料や印紙代などの諸費用も2契約分かかります。連帯債務型は契約1本なので、諸費用は1本分。「2人とも控除を受けたい、でも初期費用は抑えたい」という夫婦にとって、コスト面の合理性は見逃せません。

 

自分たちの年収でどこまで借りられそうか、まずは数字の感覚をつかんでおくと、この後の判断がぐっと具体的になります。

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ここからが本記事の核心です。連帯債務型のデメリットは「取扱金融機関が少ない」だけではありません。契約時には見えにくく、数年後に表面化しやすい3つの落とし穴を押さえておきましょう。

一般的な団体信用生命保険(団信)は主債務者のみが加入対象で、連帯債務者は加入できないことが少なくありません。この場合、主債務者に万一のことがあればローン残債は保険で完済されますが、連帯債務者側が亡くなった場合、ローンは1円も減らずに残ります。返済を2人で分担していた家計ほど、この非対称は深刻です。

 

フラット35には、連帯債務の夫婦2人で加入できる「デュエット(ペア連生団信)」があり、どちらか一方に万一のことがあった場合に持分や返済割合にかかわらず残債全額が弁済されます。利用する場合は借入金利に年0.18%が上乗せされます(出典:住宅金融支援機構「【フラット35】よくある質問」)。

 

金利上乗せをコストと見るか、家計を守る保険料と見るか。連帯債務者側の収入が家計に占める割合が大きいほど、加入の価値は高まります。民間ローンで連帯債務者が団信に入れない場合は、収入保障保険などで別途カバーする設計も検討しましょう。

連帯債務型は「夫婦2人が働き続けて返す」前提の契約です。出産・育児・介護・病気などで一方の収入が途絶えても、返済義務は消えません。もう一方が事実上肩代わりすることになりますが、ここに2つの問題が潜んでいます。

 

1つめは住宅ローン控除です。控除は所得税等から差し引く仕組みのため、休職・退職で所得がなくなった側はその期間、控除を受けられません。「2人分の控除」という当初のメリットが目減りします。

 

2つめが贈与税です。本来の負担割合を超えて一方が返済を肩代わりした場合、その肩代わり分は贈与とみなされる可能性があり、年間110万円の基礎控除を超えると贈与税の課税対象になりえます(出典:国税庁「タックスアンサーNo.4402 贈与税がかかる場合」)。

 

数年以内に一方の休職・退職の可能性が高いなら、最初から連帯保証型を選ぶ、返済比率に余裕を持たせる、育休給付でカバーできる範囲に月々の返済額を抑えるといった設計が現実的な回避策になります。

連帯債務は、離婚しても完済まで解消されません。家を出た側にも残債全額の返済義務が残り続けます。さらに物件は共有名義のため、売却には共有者全員の同意が必要で、どちらか一方の判断で売ることはできません。「連帯債務の解消」と「共有名義の解消」という2つのハードルを同時に越える必要があり、借り換えや売却で対応するにも相手の協力と審査が前提になります。

 

縁起の悪い話に感じられるかもしれませんが、これは「離婚を想定して契約するな」という話ではなく、出口の難易度を知ったうえで持分割合や返済計画を丁寧に設計しておくべき、という話です。次の章の判断軸5がまさにこの視点です。

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3つの方式のどれを選ぶかは、金利や控除額の損得だけでは決められません。次の5つの質問に夫婦で答えてみてください。

  1. 借りたい金融機関は連帯債務型を扱っているか?—扱っていなければ、その銀行では連帯保証型かペアローンが選択肢になります。方式より先に金融機関の対応状況を確認するのが手戻りのない順番です。
  2. 今後10年、夫婦2人とも働き続ける見通しは立っているか?—出産・転職・独立などの予定があるなら、収入が減る期間の返済と控除への影響を織り込んで比較しましょう。
  3. 連帯債務者側に万一のことがあったとき、残債を返せる備えはあるか?—フラット35ならデュエット加入を検討。民間で団信に入れないなら、生命保険での補完まで含めて考えます。
  4. 持分割合と実際の負担割合を一致させる設計になっているか?—ズレがあると贈与税リスクや控除の取りこぼしにつながります。頭金の出どころも含めて割合を決めましょう。
  5. 万一関係が変わったときの「出口」を話し合えているか?—売却か、どちらかが住み続けて借り換えるか。答えを固定する必要はありませんが、選択肢を知っておくことが最大の備えです。

5つの質問を踏まえると、連帯債務型が向いているのは「夫婦とも正社員などで収入が安定し、長期的に共働きを続ける計画があり、初期費用は抑えつつ2人分の控除を活かしたい夫婦」です。

 

反対に、数年以内に一方が休職・退職する可能性が高い夫婦や、団信の保障を2人とも金利上乗せなしで確保したい夫婦は、連帯保証型やペアローンを軸に比較したほうが納得感のある選択になりやすいといえます。4方式を横並びで見直したい方は、共働き夫婦が住宅ローンを組むには? 4つの選択肢とそれぞれの特徴が整理に役立ちます。

方式選びに迷ったときは、制度の比較からいったん離れ、「世帯の手取りから無理なく返せる月額はいくらか」という原点に戻るのが有効です。返済額に余裕があれば、どの方式を選んでも落とし穴の影響は小さくできます。家計ベースで予算感を確かめてから方式を選ぶ、という順番もおすすめです。

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連帯債務型は、1本の契約で収入合算と2人分の住宅ローン控除を実現できる、共働き夫婦にとって合理的な選択肢です。同時に、団信の偏り・休職時の控除と贈与税・離婚時の解消の難しさという3つの落とし穴は、契約後に知っても打てる手が限られます。だからこそ、5つの判断軸を夫婦で確認する「契約前のひと手間」が、10年後の安心を左右します。

 

「制度は理解できたけれど、うちの場合はどれが正解か決めきれない」。そう感じたら、それは検討が順調に進んでいる証拠です。判断材料が出そろった今のタイミングで、中立的な立場のアドバイザーに家計と希望条件を整理してもらうと、迷いが具体的な返済計画に変わります。相談は無料なので、セカンドオピニオン感覚で使ってみてください。

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一方で、資金計画を先送りにしている間にも、金利や物件価格の環境は少しずつ動いていきます。「借りられる額」と「買いたい物件の相場」を早めに突き合わせておくことは、それ自体が機会損失を防ぐ行動です。まずは2人の予算帯でどんな住まいが選べるのか、眺めてみることから始めてみませんか。

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Q1. 連帯債務者と連帯保証人は何が違うのですか?

A. 連帯債務者は主債務者と対等に「自分の借金」として全額の返済義務を負い、要件を満たせば住宅ローン控除の対象にもなります。連帯保証人はあくまで債務者の返済を保証する立場で、債務者が返済している限り請求は受けませんが、住宅ローン控除は受けられず、物件の所有権も持ちません。

 

Q2. 連帯債務者も団信に入れますか?

A. 一般的な民間住宅ローンでは、団信の加入対象は主債務者のみで、連帯債務者は対象外となるケースが多いのが実情です。フラット35であれば、夫婦2人で加入できる「デュエット(ペア連生団信)」を金利年0.18%上乗せで利用できます。民間ローンで加入できない場合は、収入保障保険などでの補完を検討しましょう。

 

Q3. 妻が産休・育休に入ったら、住宅ローン控除はどうなりますか?

A. 住宅ローン控除は所得税等から差し引く仕組みのため、休業で所得が少ない(またはない)年は、その分控除を受けられなくなります。返済義務自体は続くため、配偶者が本来の負担割合を超えて肩代わりすると贈与とみなされる可能性があり、年間110万円の基礎控除を超えると贈与税の対象になりえます。復職時期や返済比率に余裕を持った計画が大切です。

 

Q4. 離婚したら連帯債務は外れられますか?

A. 離婚しても、金融機関との契約上の連帯債務は自動では解消されません。解消するには、残債の一括返済、単独名義への借り換え、物件の売却などが必要で、いずれも相手の協力や金融機関の審査が前提になります。共有名義の物件は共有者全員の同意がないと売却できない点にも注意が必要です。

 

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更新日: / 公開日:2019.07.25