マイホームを購入するときには、年収、貯蓄額、今後想定される支出とのバランスを見て予算を組むことが大切です。では、世帯年収1,000万円の場合、住宅購入予算はどのくらいが適しているでしょうか。

そこで今回は、世帯年収1,000万円の割合や平均貯蓄額、家計をシミュレーションしたうえで、適切な住宅ローンの返済額や用意しておきたい頭金の目安などを解説します。併せて節約術についてもまとめました。ぜひ、マイホーム購入計画を立てるときの参考にしてみてください。

貯金額

年収1,000万円と聞くと裕福な暮らしをイメージする人も多いでしょう。では、一体どのくらいの割合でいるのでしょうか。まずは年収1,000万円世帯の割合と、その貯蓄額を見ていきます。

 

厚生労働省の「平成30(2018)年 国民生活基礎調査」によると、世帯年収1,000万円以上の割合は12.1%であり、1,000万円〜1,100万円で区切った場合の割合は3%という結果が出ています。およそ88%の世帯が年収1,000万円未満であることが分かります。

 

同調査データから具体的な年収額を見てみると、一世帯当たりの平均年収は551.6万円、中央値(所得が低い世帯から高い世帯に順に並べて2等分したときの境界値)は423万円です。

 

これらの数字から鑑みると、世帯年収1,000万円は少数派であり、高所得世帯層といえます。

金融広報中央委員会が令和元(2019)年に実施した「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上の世帯)」によると、世帯年収1,000万円〜1,200万円未満が、年間手取り収入から貯蓄に充てる率として最も多かった回答が10%〜15%未満というものでした。

 

世帯年収1,000万円〜1,200万円未満における手取り収入からの貯蓄率

年間手取り収入 貯蓄率
5%未満 5.30%
5〜10%未満 20.60%
10〜15%未満 27.50%
15〜20%未満 5.30%
20〜25%未満 6.90%
25〜30%未満 1.50%
30〜35%未満 8.40%
35%以上 3.10%
貯蓄しなかった 16%
無回答 5.30%

※年間手取り収入には臨時収入も含みます。

 

手取り収入とは、収入から税金や社会保険料などを引いた金額のこと。世帯年収1,000万円の場合の年間手取り収入は、居住地域や被扶養者の数などにより異なりますが、730万円〜760万円程度となります。この金額から10%〜15%を貯蓄にまわした場合、年間約73万円〜114万円を貯蓄している計算になります。10年間貯蓄し続ければ単純計算で、730万円〜1,140万円の貯蓄ができるということですね。

 

一方で、「貯蓄しなかった」と回答した人が16%いることも見逃せません。今後も稼げるから貯蓄の必要がないと考えているのか、あるいは貯蓄する余裕がないのか、どちらが多数派でしょうか。以下で世帯年収1,000万円の家計をシミュレーションし、その要因を探ってみましょう。

 

参照:厚生労働省 国民生活基礎調査(2018年)

参照:金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査(2019年)

世帯年収1,000万円の年間手取り収入は、およそ730万円〜760万円だと説明しました。これを12ヶ月で割ると、1月当たりの手取り収入は約61万円〜63万円となります。

 

ここでは、手取り月収を61万円〜63万円とした場合の家計をシミュレーションしていきます。

 

年収1,000万円世帯の1ヶ月の主な消費支出をシミュレーションしてみました。

 

夫婦と子ども2人の家族の場合

項目

金額

食費

8.4万円

家賃

15万円

水道光熱費

2.1万円

生命保険料

4.7万円

通信費

3.5万円

交通費

1.2万円

被服・履物費

1.7万円

保健医療費

1.6万円

自動車維持費

2.2万円

教育費・公立幼稚園(私立幼稚園)

1.8万円(4.4万円)

教育費・公立小学校(私立小学校)

2.7万円(7.5万円)

娯楽費

5.2万円

交際費

2.5万円

その他雑費

3万円

1ヶ月の合計支出

55.6万円(63万円)

※教育費は、学費のほか給食費やレクリエーションなどの学校外活動費も含みます。

 

上記のシミュレーションでは、子どもの学校が公立の場合の合計支出は55.6万円、私立の場合は63万円となりました。私立学校に通わせた場合は手取り月収ギリギリの家計です。公立の場合は貯蓄にまわすことができますが、都心に住んでいる人は家賃がこれ以上かかることも想定できます。

 

一方、地方に住んでいる人は都心に比べて家賃は抑えやすいでしょう。ただし、車が必須な地域の場合、夫婦で1台ずつ車を保有すれば車の維持費が高くなると想定できます。都心も地方も、家計に余裕があるとは言いにくい状況でしょう。

 

前述の家計シミュレーションから、年収1,000万円という高収入世帯でも意外と余裕がないケースがあることが分かりました。子育て世代におけるその主な要因は、子どもに関係する費用にあると考えられます。

 

高収入になるほど手厚い教育を受けさせたいと考える家庭があることはもちろん、所得制限によって各種手当や支援金の対象から外れてしまうケースがあるためです。

 

以下に、世帯年収1,000万円の家庭に影響する主な制度をご紹介します。なお、2020年8月時点の情報となります。最新の制度は官公庁や自治体のホームページをご覧ください。

 

児童手当

中学生以下の子ども1人につき、月額1万円または1.5万円が支給される児童手当ですが、所得が736万円(年収だと960万円)を超えた場合は所得制限世帯となり、特別給付として支給額が5,000円に減額されます。ただし、夫婦共働きの場合はどちらか高いほうの所得で決めるため、仮に夫の年収が660万円、妻の年収が300万円で世帯年収が960万円を超えたとしても、正規の支給を受けられます。

 

参照:「児童手当制度のご案内」(内閣府)

 

高等学校等就業支援金制度

国公私立問わず高校の授業料が支援される制度で、住民税所得割額を基にして支給の有無と金額が決まります。国公立高校であれば年収約910万円未満(目安)の世帯は授業料が実質無償化に。私立高校の場合は年収約590万円未満(目安)の世帯が実質無償化となり、年収910万円未満の世帯も11.88万円の支給を受けられます。しかし、年収910万円以上(目安)の世帯は原則として制度の適用を受けられません。

ただし夫婦共働きの場合は、子どもの年齢によって年収目安1,030万円〜1,090万円であれば11.88万円の支給が受けられます。

 

参照:「高等学校等就学支援金制度」(文部科学省)

 

奨学金

日本学生支援機構の奨学金制度には、無利息の第一種奨学金と有利息の第二種奨学金があり、それぞれ所得制限があります。所得制限は世帯人数により異なり、第一種における一世帯における給与所得の上限目安は657万円〜922万円、二種の場合は1,009万円〜1,300万円となります。年収1,000万円以上の世帯は適用外になる可能性があります。

 

参照:「独立行政法人 日本学生支援機構

 

配偶者控除

配偶者控除は所得に応じて控除額が変わる税制ですが、特に年収1,220万円を超える人に大きく影響します。2018年の税制改正により、控除を受ける納税者の給与所得が1,000万円を超えた場合、配偶者控除の適用外となります。

参照:「配偶者控除」(国税庁)

住宅購入予算

では世帯年収1,000万円の場合、どのくらいの住宅購入予算を立てるとよいのでしょうか。住宅ローンと頭金について見ていきましょう。

 

住宅ローンを借りる際には、「返済負担率」を目安に返済額を検討します。これは月々の収入に対して、どのくらいの額なら返していけるかというもので、住宅ローンを検討するうえで重要な基準です。

 

住宅金融支援機構が提供しているフラット35の基準では、世帯年収1,000万円の場合の返済負担率は35%以下です。そうすると、年間350万円(月にすると約29万円)までなら返済していける計算になります。金利1%、貸出期間35年、元利均等返済で組むと仮定すると、概算で8,000万円(フラット35の融資限度額は8,000万円以下のため)借りられることになります。

 

ただ、前述の家計シミュレーションや制度の所得制限を加味すると、月に29万円も住宅ローンの返済に充てるのは現実的ではないでしょう。

 

住宅金融支援機構の「2019年度 フラット35利用者調査」によると、実際に住宅ローンを利用している人の返済負担率の平均値は21.7%です。この平均値を基に考えると、年収1,000万円世帯の返済額の目安は、年間約217万円(月にすると約18万円)ということになります。

 

また、住宅金融支援機構の「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」によると、住宅ローンの貸出期間の平均は26.7年となり、7割以上の人が30年以下の期間で借りています。

 

このデータを基にして、仮に金利1%、貸出期間25年、元利均等返済で組むと、融資額上限は概算で5,307万円です。しかし、家庭によって必要な生活費や子どもの教育費などは異なるもの。住宅ローンは借りられる額ではなく、現実的に返済していける額に設定することが重要です。

 

 

住宅金融支援機構の「2019年度 フラット35利用調査」によると、自己資金は融資額の平均10〜20%ほど。先ほど計算した融資額から計算すると、頭金は少なくとも530万円(5,307万円×10%)は準備しておきたいところです。

 

頭金があれば総返済額を抑えることができたり、金融機関によっては金利が優遇されたりするメリットがあります。できるだけ用意しておくのが賢い選択といえるでしょう。

 

LIFULL HOME’Sでは、家計から住宅購入予算を試算できる「おうち予算シミュレーション」を設けています。年齢、家族構成、年収などを入力するだけで簡単に試算できるため、ぜひチェックしてみてください。

 

参照:住宅金融支援機構 2019年度 フラット35利用者調査

https://www.jhf.go.jp/files/400353155.pdf

 

参照:住宅金融支援機構 2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査

https://www.jhf.go.jp/files/400351738.pdf

節約術

世帯年収1,000万円にもなると、平均的な家庭より生活レベルを上げたい気持ちが働くでしょう。しかし、頭金や住宅ローンの返済、教育にかかる費用を考えると、節約するに越したことはありません。ここでは特に注目してほしい3つをご紹介します。

 

生活費のうち、まずはコントロールしやすい食費、娯楽費を抑えましょう。たとえば、年収額の中央値である423万円世帯の食費は月7万円程度となり、年収1,000万円世帯と比べて約1.4万円少ないです。娯楽費については2万円程度の差があります。食費と娯楽費を節約すれば、月に数万円の節約も可能です。また、後述しますが家賃の見直しも節約に大きく貢献します。

 

生命保険は所得控除の対象となるため、所得税の負担が大きい高収入世帯は有効に活用したいもののひとつ。住宅購入時には、万一の場合に住宅ローンの残高を肩代わりしてくれる団体信用生命保険も検討しましょう。

 

iDeCo(イデコ)とは私的年金のことで、自分で掛け金を拠出して運用し、60歳以降に老齢給付金を受け取る制度です。一般的な生命保険と異なり、掛け金全額が所得控除の対象になるため節税効果が高め。老後の備えを検討する際には選択肢に入れてほしい制度です。

最後に、賃貸物件における家賃目安について見ていきます。

 

家賃は収入の25%以下が適正といわれています。世帯年収1,000万円の25%ということは、年間250万円、月々約20.8万円を家賃に充てられる計算です。

 

ただし、家庭によっては学費や食費が多くかかる場合もあるため、年収の20%以内(年間200万円、月16.7万円)以内に抑えておくと安心でしょう。特にこれから住宅購入を検討している人は、できるかぎり家賃を抑え、その分を住宅購入資金にまわすのが賢明です。

日本は収入が多くなるほど納税の負担が増える国です。年収1,000万円世帯については、手当や制度の所得制限を受けて適用外となったり減額になったりと、税制面の恩恵を受けにくい面があります。

 

住宅を購入する際には、月々の生活費や保険料などを見直すきっかけにもなるため、これを機に改めて家計を細かくチェックしてみることをおすすめします。

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