住宅購入時、その時の収入と支出から住宅の規模を考えます。しかし家計は毎年少しずつ変化します。世帯年収1,000万円ある夫婦と子供一人のご家庭、3,500万円の新築マンションを購入するとどのような家計になるのでしょうか。子供が進学して教育費が変化したらどのような状況になるでしょうか。これまで住んでいた賃貸マンションから2017年に転居した場合の家計の状況について考えてみたいと思います。

まず年収1,000万円、手取額825万円の給与収入のみとします。支出につきましては、総務省「家計調査」のうち年収1,000万円~1,250万円の支出額をベースとします。この調査の数値には、支出がゼロでも平均値に含まれていたり、世帯主や子供の年齢別にはなっていなかったりしていますので、居住費と教育費につきましては、別の調査結果と差し替え、今回の前提条件に合うように調整します。

 

なお今回のシミュレーションを参考に、各項目の数値をご家庭に合わせたものに変更していただき、よりご家庭に合った現実味のある家計状況にしていただいてもいいと思います。

 

住宅ローンの金利タイプは、大きく分けて、変動金利型、固定金利型、固定金利選択型があります。住宅金融支援機構「民間住宅ローン利用者の実態調査」を見ますと、変動金利型が全体の35~40%の割合で選ばれていますが、極端に割合の少ない金利タイプは見られません。いずれにしても、変動金利は将来的に上昇する可能性がありますので、今回はフラット35(2017年3月時点)の金利(9割超借入)で組み込みます。

 

<住宅ローン 利用条件>
フラット35 金利1.560% 借入額3,500万円 返済期間35年

 

この条件をもとに住宅金融支援機構のローンシミュレーションを利用して算出しますと、毎月10.9万円の返済となります。

 

またマンションの場合、毎月管理費や修繕積立金がかかります。管理費と修繕積立金は国土交通省「マンションに関する統計・データ等」を参考にします。この調査によると、管理費は平均月額15,257円、修繕積立金は平均月額9,711円とあります。また固定資産税を年8万円としておきます。そのほかの費用につきましては、調査結果をそのまま使用します。

 

世帯年収1000万円の家庭

世帯年収1000万円の家庭

次に教育費の額を差し替えます。総務省「家計調査」では、子供が小学生の世帯も大学生の世帯もすべて含め、それらの平均値となっています。今回は、年収1,000万円の世帯ですので、文科省「子供の学習費調査 世帯の年間収入段階別、項目別経費の金額段階別構成比」をもとにします。

 

文科省「子供の学習費調査」は様々な区分で平均額が算出されていますので、今回は年収1,000万円~1,199万円のデータを使用します。支出者平均額は、実際に支出した世帯の支出額を平均した金額で、支出していない世帯は含まれておりません。

 

余談ですが、学習費は、必ずかかる学校内費用とご家庭が選択する余地のある学習塾費用や教材費用などの学校外費用に分かれています。必ず必要な学習費は「かかる教育費」、家計の状況によって支出額を変えられる「かける教育費」に分けて考えますと、「かける教育費」の割合が高く、調整の利く支出も多いことに気づきます。子供一人に必要な総教育費となりますと金額が大きくなりますが、融通の利く割合が高いということは、教育費もコントロールすることができる支出項目と言えます。これらのデータは、あくまで各ご家庭が上手くやりくりした結果であることもおさえておいてください。

 

子供の学習費調査

子供の学習費調査

今まで相談に来られたご家庭を考えますと、年収が高いほど貯蓄額が多いとは限りません。それどころか、年収が高いと無駄な支出が目立ちます。ただ私の相談実績をもとにした家計シミュレーションですと、数値が偏る可能性がありますので、今回のシミュレーションでは、なるべく調査結果を修正せず、そのまま使用し客観性を維持しております。

 

次の資料が、手取額825万円で、これまで解説してきました居住費と教育費を反映させたものです。住宅購入のきっかけは、子供の誕生以降のことが多いため、今回は私立幼稚園の教育費を入れております。収支は収入から支出を引いた金額ですが、貯蓄額を表します。手取額825万円に対して貯蓄額が約220万円、月々18万円の貯蓄ですので、理想的な家計です。

 

家計シュミレーションA1

家計シュミレーションA1

別のデータでも考えたいと思います。まず、総務省「平成21年全国消費実態調査」の貯蓄率を紹介いたします。

 

このグラフは、子供の年齢ごとに家計の貯蓄率を表しています。平成16年度と平成26年度の調査結果ですが、基本的な貯蓄率の推移は同じで、子供が小学生までは貯蓄率が高く、中学生になると少し下がり、高校生で貯蓄率ゼロ、大学生でマイナスとなります。貯蓄率を計算する際に保険料は貯蓄に該当するため誤差が出ますが、子供が幼稚園時では、貯蓄率は12%程度となっております。

 

 825万円×12%=99万円

 

子どもの成長段階と家計の貯蓄率(子供一人)

子どもの成長段階と家計の貯蓄率(子供一人)

全国消費実態調査から考えると貯蓄額は99万円、月8万円程度となり、こちらの方があてはまるご家庭も多いと思います。この貯蓄率をもとに支出額を計算したものが次の表です。

 

貯蓄額(収支)から算出しましたので、居住費と教育費以外の支出項目は記載しておりません。年間支出額が726万円で、年間約100万円の貯蓄となります。二通りの住宅ローンを組んだ際の家計について紹介しましたが、より近いものはございますでしょうか。次に特定の支出が変化した場合どのような家計になるか見ていきましょう。

 

家計シュミレーションB1

家計シュミレーションB1

次に教育費を私立幼稚園から私立中学校の学習費に代えてみます。左側(A2)が家計調査、右側(B2)が全国消費実態調査をもとにした家計です。前述のように、収入の20%を貯蓄した方がよいと言われています。そういう意味で左側(A2)は変更後も家計の模範と言えます。

 

右側(B2)は教育費の変化により家計の負担が重くなっていることがわかります。住宅ローンは固定金利であれば一定ですが、借入時には余裕があったとしても、教育費など他の支出の変化で、全体的な収支状況が変化します。

 

手取額825万円に対して、住宅ローンの年間返済額が130.8万円ですので、返済率(返済額÷手取額)は15.9%となっています。返済率による住宅ローンの借入れ判断は他の支出を考慮していないため簡易的なものになりますが、余裕のある返済率になっています。

 

では最後に住宅規模を代えたシミュレーションをしてみたいと思います。

 

家計シュミレーションA2B2

家計シュミレーションA2B2

新築マンションの規模を5,000万円にし、同じくフラット35の固定金利で住宅ローン返済額を計算します。

 

<住宅ローン 利用条件>
フラット35 金利1.560% 借入額5,000万円 返済期間35年

 

借入金額は毎月返済額15.5万円となり、年間返済額は186万円となります。マンションの床面積が広くなれば維持費や固定資産税等の金額も上昇します。居住費を代えたもので、これまでと同じように左側(A3)が家計調査、右側(B3)が全国消費実態調査をもとにした家計となります。家計調査の左側(A3)も貯蓄額が少し心もとない金額になっています。一方、全国消費実態調査の右側(B3)は赤字です。

 

家計シュミレーションA3B3

家計シュミレーションA3B3

年収1,000万円という金額だけで住宅ローンを組むと、状況によっては家計が苦しくなることがわかりました。住まいにどのくらいの金額を使うかはご家庭の価値観によりますので、よりよい住居に住みたい場合は、ほかの支出を見直す必要が出てくるでしょう。

 

できれば現時点だけでなく、10年、20年後の継続的な家計の状況を分析し、収支が厳しくなる時期はないか、安定させるためにはどうすればいいか、長期的な視野で考えますとより安心して住まいへ支出することができます。

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