- 単身赴任なら住宅ローン控除は継続できる
- 住宅の所有者本人が単身赴任しても、生計を一にする家族がその家に住み続けていれば、住宅ローン控除は引き続き受けられます。住民票を赴任先に移しても影響はありません。ただし海外赴任の場合は、住宅を取得した時期(2016年4月1日の前後)によって扱いが分かれるため、自分のケースがどちらに当たるかの確認が必要です。
- 家族全員で引越しても「再適用」で控除を取り戻せる
- 家族帯同で転居すると、その期間は控除の対象外になります。しかし、会社の転任命令などやむを得ない事由による転居であれば、自宅に戻ったときに残存控除期間が残っている限り、手続きをすることで控除を再開できます。転居の回数に制限はなく、短期の転勤を繰り返しても再適用は可能です。
- 「転居前の届出」と「貸すかどうかの判断」が損得の分かれ目
- 再適用をスムーズに受けるには、引越す前に税務署へ届出書を提出しておくことが重要です。また、留守中に自宅を賃貸に出すと、戻ってきた年は控除が受けられず再開が1年遅れます。家賃収入と控除額を天秤にかける判断軸まで含めて、転勤が決まってからやるべきことを時系列で整理します。
辞令は、いつも突然です。「来月から大阪へ」「3年間の予定で海外へ」—マイホームを買って数年、住宅ローン控除を前提に家計を組み立てていた人ほど、頭に浮かぶのは「あの控除、どうなるんだろう」という不安ではないでしょうか。
年末のローン残高の0.7%が税金から差し引かれる住宅ローン控除は、残高3,000万円なら年間約21万円。10年、13年と積み重なれば数百万円規模になる、家計にとって決して小さくない存在です。それが転勤ひとつで消えてしまうのか、それとも守れるのか。
結論からいえば、住宅ローン控除は転勤で自動的に打ち切りになるわけではありません。単身赴任なら継続でき、家族帯同でも「再適用」という制度で残りの控除期間を取り戻せます。ただし、そのためには転居前の手続きが必要で、留守中の家の使い方(空き家にするか、貸すか)によって控除の再開時期が変わるという、あまり知られていない落とし穴もあります。
この先の判断を間違えないために、パターン別の扱いと手続き、そして損得の分かれ目を順番に見ていきましょう。
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まず30秒でおさらい!住宅ローン控除は「住み続けること」が大前提の制度

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、返済期間10年以上の住宅ローンを組んでマイホームを取得した人が、年末のローン残高の0.7%相当額を所得税(引き切れない分は住民税の一部)から控除できる制度です。控除期間は新築住宅で原則13年、中古住宅は原則10年です(出典:国土交通省「住宅ローン減税」)。
なお、2026年度(令和8年度)税制改正により、制度の適用期限は2030年末入居分まで延長され、床面積要件の緩和(原則50m2以上→40m2以上)や、省エネ基準に適合する中古住宅の控除期間の拡充(10年→13年)などの見直しが行われています。借入限度額は住宅の省エネ性能や入居時期によって細かく異なるため、これから購入する人は最新の区分を確認しておきましょう。
適用要件の核心は「居住の継続」
転勤の話に直結するのが、適用要件のひとつである「取得の日から6ヶ月以内に居住し、控除を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること」という条件です。住宅ローン控除は、あくまで「自分が住むための家」を支援する制度。だからこそ、転勤で家を離れることになったとき、「誰が住み続けるのか」「いつ戻るのか」によって扱いが変わるのです。
制度の基礎や申請方法は関連記事で
控除額の計算方法や対象住宅の詳しい条件、初年度の確定申告のやり方は、それぞれ専門の記事で詳しく解説しています。本記事では「転勤時にどうなるか」に絞って進めますので、基礎から確認したい方は以下もあわせてお読みください。
敷金礼金0(ゼロ・なし)物件を探す 一人暮らしにぴったりな物件を探す転勤パターン別早見表—「単身赴任か家族帯同か」で結論が変わる
転勤時の住宅ローン控除は、突き詰めると「その家に生計を一にする家族が住み続けるかどうか」で決まります。まずは全体像を早見表で押さえましょう。
| 転勤のパターン | 控除の扱い | ポイント |
|---|---|---|
| 国内転勤・単身赴任(家族は自宅に居住) | 継続できる | 住民票を移しても影響なし |
| 海外赴任・単身赴任(家族は自宅に居住) | 取得時期による | 2016年4月1日以後の取得なら継続可 |
| 家族全員で転居(国内・海外とも) | 転居中は適用外 | 再入居時に残存期間があれば再適用可 |
| 自己都合の転居(転職・住み替えなど) | 適用外 | 再適用も原則認められない |
単身赴任なら継続できる—住民票の異動も心配無用
所有者本人が単身赴任し、配偶者や子どもなど生計を一にする家族がその家に住み続ける場合、「所有者が引き続き居住しているもの」として扱われ、住宅ローン控除は継続して受けられます。転任の事情が解消したあとは本人がその家に戻って一緒に住むことが前提ですが、通常の転勤であればこの前提は自然に満たされます。
「住民票を赴任先に移したら控除が切れるのでは」と心配する人も多いのですが、判断の基準はあくまで家族の居住実態であり、住民票の異動自体は控除に影響しません。
海外への単身赴任は「2016年4月1日」が分かれ目
赴任先が海外の場合は、住宅をいつ取得したかで扱いが分かれます。2016年4月1日以後に取得した住宅であれば、国内の単身赴任と同様に、家族が住み続けている限り控除を継続できます。一方、それより前に取得した住宅では、非居住者となる海外赴任期間中は控除を受けられません。この場合でも、帰国して自宅に再び住めば、後述する再適用の手続きによって残存期間分の控除を再開できます。
家族全員で引越すと、その期間は適用外に
家族帯同で転居する場合は、「家族が住み続けている」という要件を満たせないため、転居している期間の控除は受けられません。ここで諦めてしまう人がいますが、それはもったいない判断です。次章で解説する「再適用」の制度を使えば、戻ってきたときに控除を復活させられるからです。
家賃・賃料6万円以下の快適物件を探す 家具付き・家電付きの物件を探す「再適用」の仕組みを具体例で理解する—残りの控除期間はこう数える
再適用とは、転任命令などやむを得ない事由で自宅に住めなくなった人が、再びその家に戻って住んだとき、残存控除期間について住宅ローン控除の適用を受け直せる制度です(出典:国税庁「No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等」)。
具体例:控除期間13年・4年間の転勤なら
たとえば、新築住宅(控除期間13年)に入居して3年間控除を受けたあと、家族帯同の転勤で4年間家を離れ、8年目に戻ってきたケースを考えます。
- 入居1〜3年目:控除を受ける(3年分消化)
- 4〜7年目:転居中のため適用外(この4年分は消滅)
- 8年目〜13年目:再適用により控除を再開(残り6年分)
つまり「最初の3年+戻ってからの6年=計9年」の控除を受けられる計算です。転居していた期間の分が後ろに繰り越されるわけではなく、あくまで当初の控除期間(この例では入居から13年)の範囲内で、住んでいる年だけ控除できるイメージです。転勤期間が長引くほど消滅する年数が増えるため、残存期間がどれだけ残るかは早めに把握しておきましょう。
転居・再入居の回数に制限はない
再適用は1回きりの救済措置ではありません。転居と再入居の回数に制限はないため、数年おきに転勤を繰り返す職種の人でも、そのたびに要件を満たせば再適用を受けられます。また、所有者本人は単身赴任を続けたまま家族だけが先に自宅へ戻った場合も、再適用の対象になります。
「やむを得ない事由」が絶対条件—自己都合はNG
再適用が認められる転居は、「給与等の支払者からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由」によるものに限られます。会社の辞令による転勤や、それに準ずる事情(転地療養など)が典型です。逆にいえば、転職や住み替えといった自己都合の転居では、再適用は原則として認められません。この線引きは税務上明確なので、「一度離れても戻れば何でも復活する」と誤解しないよう注意しましょう。
バス・トイレ別の物件を探す 駅まで徒歩5分の便利な物件を探す意外と知られていない落とし穴—留守中に「貸す」と控除の再開が1年遅れる

家族帯同の転勤が決まったとき、多くの人が悩むのが「留守中の家をどうするか」です。空き家のまま維持するか、賃貸に出して家賃収入を得るか。ここに、住宅ローン控除の再適用に関わる見落としやすいルールがあります。
賃貸に出していた年は、戻っても控除が受けられない
再適用は原則として「再び住み始めた年」から受けられますが、その年に家を賃貸の用に供していた場合は、再開が翌年からになります。たとえば2027年の秋に賃借人が退去し、同年中に自分たちが再入居しても、2027年分の控除は受けられず、再適用は2028年分からです。年末残高3,000万円なら約21万円—1年分の控除がまるごと後ろにずれる(実質的には残存期間を1年余分に消化する)ことになります。
空き家か賃貸か?判断軸は「家賃収入と控除・コストの天秤」
では空き家にしておくほうが得かといえば、そう単純でもありません。判断軸は次の3点です。
- 賃貸で得られる収入の総額:家賃×貸せる月数。数年単位で貸せるなら、控除1年分(十数万〜数十万円)を上回るケースが多い
- 空き家維持のコスト:固定資産税、火災保険、管理の手間や劣化リスクは、住んでいなくても発生し続ける
- 戻る時期の確実性:帰任時期が読めないなら定期借家契約などの工夫が必要で、家賃はやや低めになる傾向
たとえば月10万円で3年間貸せるなら家賃収入は単純計算で360万円。控除1年分の遅れを差し引いても賃貸が有利になりやすい一方、1年程度の短期転勤なら、貸すことで控除再開が遅れるデメリットのほうが大きくなることもあります。自宅のエリアでどの程度の家賃が見込めるかは、判断の出発点として先に把握しておくと具体的に比較できます。
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なお、住宅ローンは本来「本人が居住する住宅」のための融資です。賃貸に出す場合は事前に金融機関へ相談し、承諾を得ることを忘れないでください。無断で貸すと契約違反として一括返済を求められるリスクがあります。
戻る予定がないなら「売却」も選択肢に
転勤先での定住が視野に入り、自宅に戻る見込みが立たないなら、再適用にこだわらず売却を検討するのも合理的な判断です。住宅ローン控除は戻って住んで初めて意味を持つ制度なので、「いつか戻るかも」で空き家を維持し続けるより、資産価値が保たれているうちに売る・貸すの比較をしたほうが、トータルの家計にはプラスになることがあります。まずは自宅の現在価値を知るところから始めるとよいでしょう。
オンライン内見ができる物件を探す オンライン相談ができる物件を探す転勤が決まったらやること—時系列チェックリスト
再適用の権利を確実に残すには、引越す「前」の手続きが肝心です。転勤辞令から再入居までの流れをチェックリストで確認しましょう。
転居前(引越しまでに)
- 単身赴任か家族帯同かを決め、控除の扱い(継続か再適用か)を確認する
- 家族帯同の場合:税務署に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を提出する
- 未使用分の「年末残高証明書」などの関係書類を届出書とあわせて提出する
- 賃貸に出す場合:金融機関に相談し、控除再開が1年遅れる影響も織り込んで収支を試算する
- 勤務先の転勤規定(社宅・住宅手当・帰任見込み)を確認する
再入居後(戻ってきたら)
- 再入居した年(賃貸に出していた場合は翌年)の確定申告で、再適用の手続きを行う
- 年末残高証明書など必要書類をそろえて申告する(再適用の最初の年は年末調整では処理できず、確定申告が必要)
転居前の届出手続きの詳細は、国税庁の案内ページで確認できます(出典:国税庁「A1-42 転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出手続」)。再適用初年度の確定申告の流れは、初年度申告の解説記事も参考になります。
また、転勤の引越しは時期が集中しがちで費用の差も大きいもの。辞令が出たら早めに相場を把握しておくと、慌てずに済みます。
まとめと次のステップ
転勤や単身赴任が決まっても、住宅ローン控除がそこで終わるわけではありません。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 単身赴任で家族が住み続けるなら、控除はそのまま継続できる(住民票の異動も影響なし)
- 家族帯同の転居中は適用外になるが、会社命令などやむを得ない事由なら、再入居時に残存期間分の再適用が受けられる
- 再適用の権利を守る鍵は「転居前の届出」。留守中に貸すと控除の再開が1年遅れるため、家賃収入との天秤で判断する
- 自己都合の転居は再適用の対象外。戻る見込みがないなら売却・賃貸への切り替えも早めに検討する
何もせずに引越してしまうと、本来取り戻せたはずの数十万円単位の控除を手放すことになりかねません。逆にいえば、届出書を1枚出しておくだけで選択肢は残せます。まずは自分の転勤がどのパターンに当たるかを整理し、迷う部分があれば専門家に相談してみましょう。住まいとお金の悩みは、中立的な立場のアドバイザーに無料で相談することもできます。
戻る予定が立たず、売却や賃貸への切り替えを視野に入れるなら、まずは自宅の価値を知ることが第一歩です。
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よくある質問
Q1. 単身赴任にあたり、住民票を赴任先に移しても住宅ローン控除は継続できますか?
A1. 継続できます。控除の判断基準は住民票の所在ではなく、生計を一にする家族がその家に住み続けているかどうかという居住実態です。国内転勤であれば、住民票を赴任先に移しても控除に影響はありません。
Q2. 家族全員で3年間転勤し、その後自宅に戻ります。控除はどうなりますか?
A2. 転居していた3年間は控除の対象外ですが、戻ったときに当初の控除期間(新築なら原則13年)が残っていれば、確定申告で再適用の手続きをすることで残存期間分の控除を再開できます。転居前に税務署へ届出書を提出しておくと、手続きがスムーズです。
Q3. 転勤中に自宅を賃貸に出すと、戻ってきたときの控除はどうなりますか?
A3. 再適用自体は可能ですが、再入居した年にその家を賃貸に出していた場合、その年分の控除は受けられず、再開は翌年分からになります。家賃収入と控除1年分のどちらが大きいかを試算したうえで、貸すかどうかを判断するのがおすすめです。また、賃貸に出す前には必ず住宅ローンを借りている金融機関へ相談してください。
Q4. 転職に伴う引越しでも、戻ってくれば再適用を受けられますか?
A4. 原則として受けられません。再適用が認められるのは、勤務先からの転任命令やこれに準ずるやむを得ない事由による転居に限られます。転職や住み替えなどの自己都合による転居は対象外となるため、注意が必要です。
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更新日: / 公開日:2020.02.14










