住宅ローン控除とふるさと納税は「併用可能」。ただし控除には順番がある
どちらも税負担を軽くする制度ですが、所得税の計算ではふるさと納税(所得控除)が先、住宅ローン控除(税額控除)が後に適用されます。この順番と「住民税から控除できる金額の上限」を知らないまま寄付すると、控除の一部が使い切れないことがあります。まずは全体の仕組みから整理します。
損が起こりやすいのは「確定申告で両方を申告する」ケース
ワンストップ特例制度を使えば、ふるさと納税の控除は住民税側で完結するため、住宅ローン控除の所得税枠を圧迫しません。一方、確定申告で併用すると所得税額が先に減り、住宅ローン控除の引ききれない分が住民税の上限(最高97,500円)を超えて切り捨てられる場合があります。その分かれ目を具体的に解説します。
寄付する前に確認すべき5つのチェックポイント
入居初年度かどうか、医療費控除など他の申告予定はあるか、寄付先は5自治体以内か、シミュレーションで住宅ローン控除を反映したか、住民税の控除上限に余裕はあるか。この5点を寄付前に確認するだけで、「思ったより控除されなかった」という後悔の多くは防げます。実践しやすいチェックリスト形式で紹介します。

年末が近づくと、返礼品のサイトを眺めながら「今年はいくらまで寄付できるんだろう」と考える。そんな習慣が定着した方も多いのではないでしょうか。ただ、住宅を購入して住宅ローン控除を受けるようになった途端、この計算が急に難しくなります。「住宅ローン控除で税金がかなり戻ってくるけど、ふるさと納税の枠は今までどおりで大丈夫?」という疑問は、住宅購入後の家庭でとてもよく聞かれるものです。

結論からいえば、2つの制度は併用できます。ただし、申告方法の選び方と控除の上限を知らないまま寄付をすると、控除の一部が切り捨てられ、実質2,000円で済むはずの自己負担が増えてしまうことがあります。この記事では、その仕組みを順を追って整理し、寄付前に確認しておきたい判断軸までまとめました。
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住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合に、原則として年末のローン残高の0.7%を所得税から差し引ける「税額控除」です。控除期間は新築住宅で最長13年、中古住宅で10年が基本で、所得税から引ききれなかった分は一定の上限内で翌年の住民税からも控除されます(出典:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」)。

 

一方、ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付をすると、自己負担2,000円を除いた金額が所得税・住民税から控除される「寄附金控除」の仕組みです。控除される金額には収入や家族構成に応じた上限があり、上限を超えた寄付分は純粋な持ち出しになります(出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」)。

 

ここで押さえたいのは、住宅ローン控除が「税額そのものから引く」控除であるのに対し、ふるさと納税(確定申告の場合)は「税額を計算する前の所得から引く」控除だという点です。この性質の違いが、併用時の落とし穴につながります。

2つの制度は法律上、問題なく併用できます。多くの家庭では、住宅ローン控除は主に所得税から、ふるさと納税は主に住民税から控除されるため、互いの枠を食い合わずに済むケースが大半です。

 

ただし「大半」であって「全員」ではありません。住宅ローン控除の金額が大きい年や、ふるさと納税を確定申告で申告する年は、控除同士が同じ財布(所得税)を取り合う形になり、結果として控除しきれない端数が生まれることがあります。次の章で、その仕組みを具体的に見ていきましょう。

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確定申告でふるさと納税を申告すると、寄付額(自己負担2,000円を除く)の一部が所得控除として先に差し引かれ、課税所得が小さくなります。課税所得が小さくなれば、所得税額も小さくなります。

 

住宅ローン控除は、その「小さくなった所得税額」から差し引かれます。つまり、ふるさと納税を確定申告すればするほど、住宅ローン控除を受け止める所得税の器が小さくなるのです。

「所得税から引ききれなくても、住民税から引かれるなら問題ないのでは?」と思われるかもしれません。たしかに住宅ローン控除には、所得税から控除しきれなかった分を翌年の住民税から控除する仕組みがあります。しかしこの住民税側の控除には、前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(最高97,500円)という上限が設けられています(出典:国土交通省「住宅ローン減税」)。

 

この上限を超えた分は、どこからも控除されずに切り捨てとなります。ふるさと納税の確定申告によって所得税の器が小さくなり、住民税側に回る住宅ローン控除が上限を超えてしまうと、本来受けられたはずの減税の一部が消えてしまう。これが「併用で損する」の正体です。切り捨てが起こると、そのしわ寄せは実質的にふるさと納税の自己負担増という形で表れます。

ワンストップ特例制度は、確定申告をせずに申請書の提出だけでふるさと納税の控除を受けられる仕組みで、控除は全額が翌年の住民税から行われます。所得税には一切触れないため、住宅ローン控除の所得税枠を圧迫しません。

 

つまり、住宅ローン控除を受けている人にとって、ワンストップ特例は「控除同士のぶつかり合いを避けられる申告方法」といえます。両者の違いを整理すると次のとおりです。

比較項目ワンストップ特例制度確定申告
ふるさと納税の控除先住民税のみ所得税+住民税
住宅ローン控除への影響原則なし所得税枠を圧迫する場合あり
利用できる寄付先の数年間5自治体まで制限なし
手続き寄付ごとに申請書を提出年1回まとめて申告
利用できない場合確定申告をする年は無効

注意したいのは、ワンストップ特例の申請を済ませていても、その年に確定申告をすると申請が無効になり、ふるさと納税分も確定申告に含め直す必要がある点です。「申請したから大丈夫」と思い込まず、その年に確定申告の予定がないかをセットで確認しましょう。

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住宅ローン控除を受ける最初の年は、会社員であっても確定申告が必須です。したがって入居初年度は、ワンストップ特例は使えず、ふるさと納税も確定申告にまとめて記載することになります。

 

初年度は住宅ローン控除の金額が最も大きくなりやすい(=ローン残高が最も多い)年でもあります。前述の切り捨てが起こりやすい条件がそろうため、寄付額はシミュレーションで慎重に見極めたい年といえます。

2年目以降、会社員であれば住宅ローン控除は勤務先の年末調整で処理できます。確定申告が不要になるため、ふるさと納税はワンストップ特例で申請すれば、住宅ローン控除と干渉しない形で両方の恩恵を受けられます。寄付先が年間5自治体以内に収まるよう、寄付先を絞るのがコツです。

2年目以降でも、医療費控除・初年度の株式損益通算・副業所得の申告などで確定申告をする年は、ワンストップ特例が無効になります。この場合はふるさと納税も確定申告に含めることになり、初年度と同じく所得税枠の圧迫が起こり得ます。「今年は確定申告をする予定があるか」を、寄付を始める前に一度立ち止まって確認する習慣をつけておくと安心です。

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高額な寄付をしてから気づいても、取り消すことはできません。次の5点を寄付前にチェックしておきましょう。

  • 今年は入居初年度か?:初年度なら確定申告が必須。ワンストップ特例は使えないため、寄付額は控えめに見積もる
  • 今年、確定申告をする予定はないか?:医療費控除や副業の申告があるなら、ワンストップ特例は無効になる前提で計算する
  • 寄付先は5自治体以内に収まるか?:ワンストップ特例を使うなら必須条件。6自治体以上なら自動的に確定申告となる
  • シミュレーションに住宅ローン控除を反映したか?:ふるさと納税サイトの簡易シミュレーションには住宅ローン控除を考慮しないものもある。「住宅ローン控除入力欄のある詳細版」を使う
  • 住民税側の控除に余裕はあるか?:住宅ローン控除の年末残高×0.7%が自分の所得税額を大きく上回っていないかを源泉徴収票で確認。上回っている場合、確定申告での寄付は切り捨てリスクが高い

ふるさと納税の上限額シミュレーションは多くのサイトで提供されていますが、精度は入力項目の数に比例します。年収と家族構成だけの簡易版ではなく、住宅ローン控除額・社会保険料・その他の所得控除まで入力できる詳細版を選び、源泉徴収票(または直近の住民税決定通知書)を手元に置いて入力しましょう。数千円単位のズレが自己負担の増加に直結するため、ここは丁寧に進める価値があります。

制度面の最新動向にも触れておきます。総務省の告示改正により、2025年10月1日からふるさと納税ポータルサイトによる寄付者へのポイント付与が禁止されました(出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト(制度改正について)」)。「ポイント還元率が高いうちに駆け込みで寄付する」という行動は過去のものとなり、今後は返礼品の内容や寄付の使い道、そして自分の控除上限に基づいた計画的な寄付がいっそう重要になります。住宅ローン控除との併用を考えるうえでも、年末にあわてて寄付額を積み増すのではなく、年の前半から上限を把握して配分していく進め方が理にかなっています。

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住宅ローン控除の控除額は、年末のローン残高・住宅の環境性能・入居時期などによって変わります。つまり「どの物件を、いくらの借入で買うか」が、そのまま今後10年以上の税負担とふるさと納税の余力に影響するということです。住宅購入を検討し始めた段階から、毎月の返済額と控除額をセットで試算しておくと、購入後の家計の見通しが立てやすくなります。

 

返済額の試算や住宅ローンの基礎知識は、購入検討の早い段階で一度整理しておくのがおすすめです。

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住宅ローン控除には、床面積や住宅の性能(省エネ基準への適合など)といった適用条件があります。同じ価格帯でも、条件を満たす物件と満たさない物件では、10年以上にわたる控除額に大きな差が生まれることがあります。気になるエリアの物件を眺めながら、「この物件なら控除はどうなるか」という視点を持っておくと、後悔のない選択につながります。

 

まずは相場感をつかむところからで構いません。

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住宅ローン控除とふるさと納税は併用できますが、「入居初年度・確定申告をする年は寄付額を慎重に」「2年目以降はワンストップ特例を基本に」という2つの原則を押さえるだけで、控除の切り捨てはほとんど防げます。逆に、この仕組みを知らないまま毎年なんとなく寄付を続けていると、気づかないうちに数千円〜数万円単位の控除を取りこぼしている可能性もあります。年に一度、源泉徴収票が手元に届くタイミングで自分の控除の全体像を見直す習慣が、いちばんの防御策です。

 

「自分の場合はいくらまで寄付して大丈夫なのか」「住宅購入後の家計全体をどう組み立てるか」といった個別の資金計画は、一人で悩むより専門家に整理してもらうほうが早いこともあります。ハウジングアドバイザーに無料で相談できる窓口もあるので、確定申告シーズンの前に一度話を聞いてみるのも一つの方法です。

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Q1. 住宅ローン控除を受けていると、ふるさと納税の上限額は必ず減りますか?

A. 必ず減るわけではありません。2年目以降にワンストップ特例制度を使う場合、ふるさと納税の控除は住民税側で完結するため、住宅ローン控除の影響をほとんど受けません。上限額が実質的に目減りしやすいのは、確定申告で両方を申告し、かつ住宅ローン控除額が所得税額に対して大きいケースです。

 

Q2. 入居初年度にふるさと納税をしてはいけないのでしょうか?

A. してはいけないわけではありません。初年度は確定申告が必須のため控除の干渉が起こりやすいというだけで、シミュレーションで住宅ローン控除を反映した上限額を確認し、その範囲内で寄付すれば問題なく併用できます。迷う場合は、上限の目安より少なめに抑えておくのが安全です。

 

Q3. ワンストップ特例を申請したあとに、医療費控除で確定申告が必要になりました。どうすればいいですか?

A. 確定申告をするとワンストップ特例の申請はすべて無効になります。医療費控除と一緒に、その年のふるさと納税の寄付金控除も確定申告書に記載してください。記載を忘れると、ふるさと納税分の控除が受けられなくなってしまうため注意が必要です。

 

Q4. 住宅ローン控除の額が所得税より大きいかどうかは、どこで確認できますか?

A. 勤務先から受け取る源泉徴収票の「源泉徴収税額」と、住宅ローンの年末残高証明書から計算した控除額(残高×0.7%)を比べるのが手軽です。控除額が源泉徴収税額を上回っているなら、超過分は住民税側(最高97,500円)に回るため、確定申告でのふるさと納税は切り捨てリスクを意識しましょう。

 

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更新日: / 公開日:2019.08.16