- 建て替え中も固定資産税はかかり、更地で年を越すと税額が上がる
- 固定資産税は毎年1月1日時点の状態で1年分が決まります。住宅が建つ土地は「住宅用地の特例」で課税標準額が最大6分の1に軽減されていますが、解体して更地のまま1月1日を迎えると特例が外れ、土地の税負担が大きく増える可能性があります。その仕組みを数字で確認できます。
- 特例を継続するための5つの要件と「着工」の正しい意味
- 建て替え中でも、前年に住宅用地だったこと、1月1日時点で建築工事に着手していることなど所定の要件をすべて満たせば、申告により特例を継続できます。見落としやすいのが「解体工事は着工に含まれない」という点。基礎工事の着手が基準になる理由と、申告手続きの流れがわかります。
- 1月1日から逆算した建て替えスケジュールの組み立て方
- 解体・建築確認・基礎着工の各工程を1月1日からさかのぼって配置すれば、税負担の急増は多くの場合避けられます。年内に押さえるべき工程を整理したタイムライン表と、契約前に確認したいチェックリストで、工務店・ハウスメーカーとの打ち合わせにそのまま使える判断軸を持ち帰れます。
長年住んだ家の建て替えをいよいよ決めた。ところが工務店との打ち合わせを進めるうちに、「解体のタイミングによっては、土地の固定資産税が跳ね上がりますよ」と言われて手が止まってしまった。そんな経験をしている方は少なくありません。
結論からお伝えすると、建て替え中も固定資産税は発生します。そして、解体から新築完成までの工程が「1月1日」をどうまたぐかによって、翌年の税額は大きく変わります。ただし、これは運任せではありません。制度の仕組みを知り、逆算してスケジュールを組めば、税負担の急増はほとんどの場合避けられます。この記事では、その具体的な要件と段取りを順番に整理していきます。
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建て替え中の固定資産税は「1月1日の状態」で決まる

固定資産税は毎年1月1日時点の所有者・状態に課税される
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)時点で土地や家屋を所有している人に対して、市町村(東京23区は都)が課税する税金です。税額は「課税標準額×税率(標準税率1.4%)」で計算されます(出典:総務省「地方税制度・固定資産税」)。
重要なのは、課税があくまで「1月1日の状態」を基準にする点です。1月2日に家を解体しても、その年の税額は「家が建っていた状態」で計算されます。逆に、12月に解体して更地のまま年を越すと、翌年は「更地」として課税されます。建て替え工事が年をまたぐこと自体は珍しくないため、この基準日を意識するかどうかが、税負担の差につながります。
住宅用地の特例!土地の税負担を最大6分の1に抑える仕組み
住宅が建っている土地(住宅用地)には、税負担を軽減する「住宅用地の特例」が設けられています。軽減の内容は面積区分によって次のように分かれます(出典:総務省「地方税制度・固定資産税」)。
| 区分 | 対象 | 固定資産税の課税標準額 | 都市計画税の課税標準額 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住宅1戸につき200㎡以下の部分 | 評価額の6分の1 | 評価額の3分の1 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 評価額の3分の1 | 評価額の3分の2 |
たとえば敷地が300㎡なら、200㎡までは6分の1、残り100㎡は3分の1で計算されます。多くの戸建ての敷地は200㎡以下に収まるため、実際には「土地の固定資産税が6分の1に抑えられている」状態が標準といえます。
更地で年越しするとどうなるか?シミュレーションで確認
では、特例が外れるとどの程度変わるのでしょうか。土地の固定資産税評価額3,000万円・敷地180㎡(小規模住宅用地)のケースで比べてみます。
- 住宅が建っている場合:3,000万円 × 1/6 × 1.4% = 年間 7万円
- 更地で1月1日を迎えた場合:住宅用地でない宅地(商業地等)は課税標準額の上限が評価額の70%とされているため、3,000万円 × 70% × 1.4% = 年間 29万4,000円
(出典:総務省「固定資産税の概要」)
このケースでは年間の差額が約22万円。建て替えには解体費や仮住まい費用もかかるなかで、段取り次第で避けられたはずの20万円超の出費は決して小さくありません。
特例を継続できる「建て替えの取り扱い」5つの要件
建て替え中でも住宅用地と認められる要件
朗報もあります。1月1日時点で住宅が完成していなくても、既存住宅の建て替えであることが確認できる場合には、申告に基づき住宅用地の特例が継続して適用されます(出典:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」)。
継続適用のためには、おおむね次の要件をすべて満たす必要があります。
- その土地が、前年の1月1日時点で住宅用地であったこと
- 1月1日時点で住宅の建築工事に着手しており、翌年の1月1日までに完成する予定であること
- 建て替えが、建て替え前とおおむね同一の敷地で行われること
- 前年度と当年度で、土地の所有者が原則として同一であること
- 前年度と当年度で、住宅の所有者が原則として同一であること
つまり「同じ人が、同じ土地で、住んでいた家を建て替える」という典型的な建て替えであれば、工事の進み具合さえ要件を満たせば特例は途切れない、という設計です。
「着工」に解体工事は含まれない?基礎工事の着手が基準
5つの要件のうち、最もつまずきやすいのが2番目の「建築工事への着手」です。ここでいう着手とは、水盛り・遣り方・根切りといった住宅の基礎工事に現に取りかかっている状態を指します(出典:東京都主税局「住宅を建て替える土地の特例措置のご案内」)。
「年内に解体まで終わらせたから大丈夫」と考えてしまいがちですが、解体工事はあくまで古い家を壊す工事であって、新しい家の建築工事ではありません。解体が済んだだけの更地の状態で1月1日を迎えると、原則としてこの要件を満たせないのです。なお、自治体によっては1月1日をわずかに過ぎた着工を認める運用(例:賦課期日後の1月末日までの基礎工事着手)を定めている場合もあるため、要件の細部は必ず土地が所在する市町村・都税事務所に確認しましょう。
特例の継続は「申告」が前提—自動では適用されない
もうひとつ見落とされがちなのが手続き面です。東京都の場合、住宅を取り壊したときや建て替え中の特例継続を受けたいときは「固定資産税の住宅用地等申告書」の提出が求められます(出典:東京都主税局「住宅用地の申告等をお願いしています」)。様式や提出期限は自治体ごとに異なるため、解体を決めた段階で役所の資産税担当窓口に問い合わせておくのが確実です。要件を満たしていても申告を忘れれば適用されない可能性がある。ここは建て替え計画の「事務仕事」として、工事の段取りとセットで管理しておきたいポイントです。
意外と知られていない落とし穴「6倍になる」の誤解と、要件を外しやすい3つのケース
落とし穴①「税額が6倍」は正確ではない?ただし油断は禁物
「更地にすると固定資産税が6倍になる」という表現をよく見かけますが、厳密には正しくありません。6分の1になっているのは税額そのものではなく課税標準額であり、特例が外れた宅地には課税標準額を評価額の70%までとする仕組みや負担調整措置が別途働くためです(出典:総務省「固定資産税の概要」)。先ほどのシミュレーションのように、実際の上昇幅は3〜4倍程度に収まるケースが多いのです。
とはいえ「6倍ではなく4倍だから安心」という話ではありません。年間7万円が29万円になれば、家計へのインパクトは十分に大きい。誇張に惑わされず、かといって軽く見ず、自分の土地の評価額で試算しておくことが大切です。評価額は毎年届く納税通知書・課税明細書で確認できます。
落とし穴② 中古住宅を買ってすぐ建て替えるケース
年の途中で古家付きの土地を購入し、すぐ解体して建て替える。この場合、前年の1月1日時点の住宅所有者は売主であり、「住宅の所有者が前年度と同一」という要件を満たせません。
東京都の案内でも、建て替えを行った人が前年度の賦課期日における建て替え前住宅の所有者と別人格の場合、工事中の特例措置は適用されないと明示されています(出典:東京都主税局「住宅を建て替える土地の特例措置のご案内」)。この場合、翌年1月1日までに新居が完成していれば住宅用地に戻るため、「年内完成」を軸にスケジュールを組むのが現実的な対策になります。
落とし穴③ 名義が変わる建て替え—親の家を子が建て替える場合など
親名義の家を解体して子名義で新築する、個人名義の住宅を取り壊して法人名義で建てるといったケースも、「所有者の同一性」の要件に抵触する可能性があります。二世帯住宅への建て替えや相続がらみの建て替えでは、工事のスケジュールだけでなく「誰の名義で建てるか」も税負担に影響することを覚えておきましょう。名義や持分の設計が絡む場合は、着工前に自治体の資産税窓口や税理士に確認しておくと安心です。
後悔しないための建て替えスケジュール—1月1日から逆算する

逆算タイムライン:年内に「基礎着工」まで進めるのが目安
特例を途切れさせないための工程を、1月1日から逆算して整理すると次のようになります。
| 時期の目安 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 着工の6ヶ月〜1年前 | 建築会社選定・プラン確定・資金計画 | 見積り比較と契約はここまでに |
| 秋口まで | 解体業者の手配・仮住まい確保 | 解体は木造30〜50坪で1週間程度が目安だが、繁忙期は着工待ちも |
| 年内のできるだけ早く | 解体完了・建築確認・地鎮祭など | 建築確認済証の取得後でないと着工できない |
| 1月1日より前 | 基礎工事(根切り・遣り方等)に着手 | ここが特例継続の分岐点 |
| 翌年1月1日まで | 新居完成 | 完成予定もセットで要件になる |
工程のどこかで遅れが出ることを前提に、基礎着工は12月ぎりぎりではなく秋〜初冬に設定しておくと余裕が生まれます。逆に、着工が年明けにずれ込みそうなら、いっそ解体自体を1月2日以降に遅らせて「家が建った状態で年を越す」ほうが、税負担の面では合理的な場合もあります。
契約前チェックリスト—工務店との打ち合わせで確認したい7項目
- □ 解体から基礎着工までの工程表に「1月1日」を書き込んで確認したか
- □ 解体工事は「着工」に含まれないことを前提にスケジュールを組んでいるか
- □ 建築確認申請の提出・取得時期は年内着工に間に合うか
- □ 土地・建物の名義は建て替え前後で同一か(変える場合は影響を確認したか)
- □ 自治体の住宅用地等申告書の様式・提出期限を確認したか
- □ 更地で年越しした場合の税額を、自分の評価額で試算したか
- □ 工期遅延時の代替プラン(着工前倒し/解体延期)を建築会社と共有したか
このチェックリストを打ち合わせに持参し、工程表と突き合わせるだけで、税金面の「うっかり」はかなりの確率で防げます。建て替えの経験が豊富な会社であれば、この論点は先回りして提案してくれるはずです。会社選びの段階なら、建て替え案件の実績を比較の軸に加えてみるのもよいでしょう。
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「建て替えかリフォームか」で迷いが残るなら
税金や解体費まで含めて総費用を見積もると、「そこまでかけるなら大規模リフォームのほうがよいのでは」と迷いが生じることもあります。どちらが得かは建物の状態・耐震性・今後住む年数によって変わるため、費用の内訳を並べて比較するのが近道です。中立的な立場で整理したい場合は、無料で利用できる相談サービスを挟むと判断がしやすくなります。
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建て替え後の固定資産税はどう変わる?資金計画はトータルで
土地の特例は戻るが、建物の税額は新築評価で上がる
新居が完成すれば、土地は再び住宅用地として特例の対象に戻ります。一方で建物は、古い家の評価額から新築の評価額に置き換わるため、建物部分の固定資産税は建て替え前より上がるのが一般的です。新築住宅には一定期間税額が減額される措置もありますが、「建て替えたら固定資産税が全体として安くなる」とは限らない点は、資金計画に織り込んでおきましょう。
毎年の税負担も含めて「建てられる予算」を考える
建て替えの資金計画では、建築費・解体費・仮住まい費に目が行きがちですが、住み始めてからの固定資産税・都市計画税は数十年払い続けるランニングコストです。建物の仕様やグレードによって評価額も変わるため、複数の建築会社のプランと概算費用を早い段階で見比べておくと、無理のない予算ラインが見えてきます。まずは気になる工法や価格帯のカタログを眺めて、相場感をつかむところから始めるのが負担のない一歩です。
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まとめと次のステップ
建て替え中の固定資産税は、「1月1日にどんな状態か」と「5つの要件を満たして申告できるか」でほぼ決まります。仕組みを知らないままスケジュールを組むと、避けられたはずの数十万円を毎年の税負担として支払い続けることになりかねません。逆に言えば、基礎着工の時期と名義の設計、申告の3点さえ押さえれば、税金面の不安はかなり小さくできます。
建て替えは人生でそう何度もない大きなプロジェクトです。「いつか」と先延ばしにしている間も建物の老朽化と解体費・建築費の相場は動いていきます。まずは情報収集の一歩として、建て替えに強い会社の事例やカタログを眺めて、自分の家ならどんな計画になりそうかイメージをつかんでみてはいかがでしょうか。
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よくある質問
Q1. 建て替え中の仮住まいに住んでいる間も、固定資産税の納税義務は自分にありますか?
A1. はい。固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、実際に住んでいるかどうかは関係ありません。建て替え中で仮住まいに移っていても、土地(および1月1日時点で残っていれば旧建物)の固定資産税は所有者であるあなたに課税されます。
Q2. 12月中に解体が終わり、着工は2月になりそうです。何かできることはありますか?
A2. まず建築会社に基礎工事の前倒しが可能か相談しましょう。難しい場合は、解体自体を1月2日以降に延期して「家が建った状態」で年を越す選択肢もあります。また、自治体によっては賦課期日直後の着工まで認める運用もあるため、土地所在地の資産税窓口に要件を確認してください。
Q3. 特例の継続に申請は必要ですか? 何もしなくても適用されますか?
A3. 東京都では住宅の取り壊しや建て替えの際に「固定資産税の住宅用地等申告書」の提出が求められており、他の自治体でも同様の申告制度を設けているのが一般的です。要件を満たしていても申告がなければ適用されないおそれがあるため、解体を決めた時点で窓口に確認し、期限内に提出しましょう。
Q4. 建て替えではなく、更地にしてしばらく土地を持ち続ける場合はどうなりますか?
A4. 住宅の建築予定がない更地は住宅用地に該当しないため、特例は適用されず、住宅が建っていたときより土地の税負担は重くなります。活用予定が定まらないまま所有し続けるより、売却や土地活用も含めて早めに方針を決めるほうが、負担を抑えやすくなります。
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更新日: / 公開日:2019.08.30










