不動産の生前贈与でかかるお金は「税金3つ+実費・報酬」
贈与税だけに目が行きがちですが、実際には不動産取得税・登録免許税、司法書士や税理士への報酬もかかります。評価額1,500万円の土地を例にした試算で、トータルでどのくらいの資金を用意すべきかが具体的にイメージできます。
2024年改正で贈与のルールが大きく変わったこと
相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設された一方、暦年贈与の「相続財産への持ち戻し」期間は3年から7年へ段階的に延長されました。改正前の知識のままだと選択を誤りかねない、最新ルールの要点を押さえられます。
「贈与か相続か」を見極める判断軸
登記や取得税のコストは相続のほうが軽く、生前贈与が常に有利とは限りません。ご家庭の状況を当てはめるだけで方向性を整理できるチェックリストで、税理士等へ相談する前の「自分の考え」を持てるようになります。

親から「この土地、私が元気なうちにお前の名義にしておこうか」と言われたとき、ありがたい気持ちと同じくらい、「税金でとんでもない額を請求されたらどうしよう」という不安がよぎるのではないでしょうか。

実際、不動産の生前贈与は、もらう側が思っている以上にお金がかかる場面と、制度をうまく使えばほとんど負担なく進められる場面がはっきり分かれます。その分かれ目を知らないまま名義変更だけ先に済ませてしまい、翌年の申告時期に数百万円単位の贈与税に直面する。これは決して珍しい話ではありません。

しかも2024年には贈与をめぐる税制が大きく改正され、「昔どこかで聞いた知識」がそのまま通用しなくなっています。ここでは、不動産の生前贈与にかかる費用の全体像から、最新の制度、そして「そもそも贈与と相続のどちらが得なのか」という一歩手前の判断軸まで、順を追って整理していきます。
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不動産を無償でもらうと、受け取った側(受贈者)には主に3つの税金がかかります。それぞれ課税のタイミングも納付先も異なるため、まず全体像をつかんでおきましょう。

費用の種類税率・目安納付先・時期
贈与税課税方式により変動(後述)税務署/翌年2月1日〜3月15日に申告・納税
不動産取得税固定資産税評価額×3%(土地・住宅。宅地は評価額の1/2で計算。2027年3月31日まで)都道府県/取得後数ヶ月〜1年ほどで納税通知
登録免許税固定資産税評価額×2%(贈与による所有権移転)法務局/名義変更登記のとき
専門家報酬・実費司法書士・税理士あわせて数万〜十数万円程度+書類取得費依頼時

贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。不動産の場合、課税の基準になるのは購入価格や時価ではなく、原則として相続税評価額(土地は路線価方式などで評価した額)です。市場価格の8割前後になることが多いとはいえ、不動産は金額が大きいぶん、何の制度も使わずに一括で贈与を受けると税額は大きく膨らみます。課税方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、どちらを選ぶかで負担が大きく変わります(詳しくは次の章で解説します)。

不動産取得税は、不動産を取得した人に一度だけかかる地方税です。土地・住宅の税率は本則4%のところ、2027年3月31日までの取得なら3%に軽減され、宅地は固定資産税評価額の2分の1を課税標準として計算できます(出典:国土交通省「不動産取得税に係る特例措置」)。

 

登録免許税は、名義変更(所有権移転登記)の際に法務局へ納める税金で、贈与の場合は固定資産税評価額の2%です。ここで押さえておきたいのは、相続で取得した場合は不動産取得税がかからず、登録免許税も0.4%で済むという点です(出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)。同じ不動産の承継でも、贈与は相続の5倍の登記コストがかかる——この差が、後述する「贈与か相続か」の判断に効いてきます。

名義変更登記は司法書士、贈与税の申告は税理士に依頼するのが一般的です。報酬は不動産の評価額や件数によりますが、それぞれ数万円から十数万円程度が目安です。自分で手続きすることも可能ですが、贈与契約書の作成、評価証明書や戸籍関係書類の収集、登記申請書の作成と、慣れない事務作業が続きます。適用する特例を誤ると税額が大きく変わるため、少なくとも税務申告は専門家のチェックを受けることをおすすめします。

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贈与税には負担を軽くする制度がいくつかあり、どれを使うかで税額はまったく違ってきます。特に2024年1月施行の改正は「どちらの課税方式を選ぶべきか」の答えを変えるほどのインパクトがありました。

暦年課税は原則的な方式で、1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を引いた額に課税されます。親や祖父母(直系尊属)から18歳以上の子・孫への贈与には税率の低い「特例税率」が適用され、たとえば基礎控除後の課税価格が1,000万円以下なら税率30%・控除額90万円で計算します(出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」)。

 

注意したいのは、贈与者が亡くなった場合、相続開始前の一定期間内の贈与は相続財産に加算される「生前贈与加算」です。この期間が2024年以降の贈与から従来の3年から7年へ段階的に延長されました(延長された4年分については合計100万円まで加算対象外。出典:国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」)。「相続税対策として毎年少しずつ贈与する」戦略は、以前より長い時間軸で計画しないと効果が薄れる、ということです。

相続時精算課税は、原則60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選択できる方式で、贈与者ごとに累計2,500万円までの特別控除があり、超えた部分には一律20%が課税されます。贈与した財産は相続時に相続財産へ合算して精算されるため、「税金の先送り」に近い制度ですが、評価額が将来値上がりしそうな不動産なら、贈与時点の低い評価額で固定できるメリットがあります。

 

そして2024年改正の目玉が、この制度に毎年110万円の基礎控除が新設されたことです。基礎控除の範囲内の贈与は申告不要で、相続時の加算対象にもなりません(出典:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」)。暦年課税の持ち戻しが7年に延びたのと対照的に使い勝手が向上したため、不動産の一括贈与では有力な選択肢になっています。ただし、一度選択すると同じ贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない点は従来どおりです。

婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与した場合、基礎控除110万円とは別に最大2,000万円まで控除できる特例があります。同じ配偶者からは一生に一度しか使えません(出典:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」)。なお、親から住宅購入の「資金」を援助してもらうケースには別の非課税特例があります。資金贈与を検討している方は、住宅の資金援助を受ける人は要チェック! 贈与税の仕組みと特例もあわせてお読みください。

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制度の名前だけ並んでいても実感が湧きにくいので、モデルケースで試算してみましょう。

 

〈前提〉父(70歳)から長男(40歳)へ、土地を一括贈与。相続税評価額1,500万円、固定資産税評価額1,300万円。ほかに同年の贈与なし

項目暦年課税を選んだ場合相続時精算課税を選んだ場合
贈与税(1,500万−110万)×40%−190万=366万円特別控除2,500万円の範囲内のため0円(要申告・相続時に精算)
不動産取得税1,300万×1/2×3%=19.5万円同左
登録免許税1,300万×2%=26万円同左
専門家報酬(目安)10万円前後10万円前後
当面の負担合計約421万円約56万円

同じ土地でも、課税方式の選択だけで当面の負担が360万円以上変わります。ただし相続時精算課税の「0円」は免除ではなく先送りであり、この1,500万円は将来の相続税の計算に組み込まれます。相続財産の総額が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に収まるご家庭なら結果的に税負担なしで済む一方、資産が多いご家庭では相続税率とのバランスを見た設計が必要です。

 

※税率・控除は執筆時点の制度に基づく概算で、実際の税額は個別事情により異なります。

生前贈与は「早く渡すほど得」というイメージが先行しがちですが、実務ではむしろ相続まで待ったほうが総負担が軽いケースが少なくありません。判断を誤りやすいポイントを3つ挙げます。

先ほどのとおり、贈与では不動産取得税(3%)+登録免許税(2%)がかかるのに対し、相続なら不動産取得税は非課税、登録免許税は0.4%。上のモデルケースなら、贈与の約45.5万円に対し相続は約5.2万円と、移転コストだけで約40万円の差がつきます。

亡くなった親の自宅の土地を同居の子などが相続する場合、「小規模宅地等の特例」により評価額を最大80%減額できる可能性があります。しかしこの特例は相続・遺贈で取得した宅地が対象で、生前贈与でもらった土地には適用されません。実家の敷地のように評価額が大きい土地ほど、贈与によって失う節税効果も大きくなります。二世帯住宅での適用については、二世帯住宅で小規模宅地等の特例は適用される?で詳しく解説しています。

特定の子だけが不動産の贈与を受けると、相続時にほかの相続人から「特別受益だ」と主張され、遺産分けでもめる原因になりえます。贈与契約書をきちんと交わすのはもちろん、可能であれば贈与の段階で家族全体に意図を共有しておくことが、円満な承継への近道です。

 

〈贈与に向くか、相続まで待つべきかの判断軸チェックリスト〉

  • □ 将来値上がりが見込める土地・収益を生む不動産である → 贈与向き(評価額を早期に固定できる)
  • □ 相続財産の総額が相続税の基礎控除内に収まりそう → 相続向き(贈与コストが丸ごと余計になる)
  • □ 親の自宅の敷地で、小規模宅地等の特例が使えそう → 相続向き
  • □ 渡したい相手が決まっており、相続人間の争いを避けたい → 贈与向き(遺言との比較も検討)
  • □ 贈与税・取得税を払う現金の余裕が受贈者にある → 贈与も選択肢(不動産だけもらって納税資金がないのは危険)

チェックの結果を持って税理士や自治体の無料相談に臨むと、相談の質がぐっと上がります。

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贈与そのものは口頭でも成立しますが、口約束は履行前なら撤回できるうえ、税務署や他の相続人への説明にも困ります。必ず書面を残しましょう。

「誰が・誰に・いつ・どの不動産を・どんな条件で」贈与するのかを明記し、双方が署名・押印します。物件は登記簿の記載どおりに特定し、登記費用や固定資産税の負担区分も盛り込んでおくと後々のトラブルを防げます。

登記事項証明書、固定資産評価証明書、贈与者の印鑑証明書などをそろえて申請します。このタイミングで登録免許税を納付します。登記費用の内訳を詳しく知りたい方は、不動産登記にかかる費用 登記費用の相場と計算方法が参考になります。

贈与税の申告期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです(出典:国税庁「No.4429 贈与税の申告と納税」)。相続時精算課税や配偶者控除は、税額がゼロでも申告して初めて適用される点に注意してください。「税金がかからないから申告不要」と思い込んで期限を過ぎ、特例が使えなくなるのが典型的な失敗パターンです。

なお、贈与を受けた土地の使い道に迷っている場合は、住むか・貸すか・売るかで税金や維持費の考え方が変わります。周辺でどんな土地や物件がどのくらいの価格で動いているかを眺めておくと、資産としての立ち位置がつかみやすくなります。

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不動産の生前贈与は、贈与税・不動産取得税・登録免許税という3つの税金と実費・報酬がかかる一方、相続時精算課税の年110万円基礎控除の新設など、使い方しだいで負担を大きく抑えられる制度も整ってきました。逆に、何も調べないまま時間だけが過ぎると、暦年贈与の持ち戻し期間(7年)が実質的に短くなっていき、選べたはずの選択肢が減っていきます。親御さんが元気で意思確認ができるうちにこそ、家族で方向性を話し合う価値があります。

 

まずは今回のチェックリストでご家庭の状況を整理し、固定資産税の課税明細書で評価額を確認するところから始めてみてください。そのうえで、贈与された(される予定の)不動産を将来どう活かすかを考えるなら、エリアの相場感を早めに知っておいて損はありません。

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Q1. 親の土地を110万円ずつ分割して贈与すれば、贈与税はかからない? A. 土地の持分を毎年少しずつ移転する方法は理論上可能ですが、そのたびに登記費用や不動産取得税がかかり、税務上「最初から全体を贈与する約束だった」と見なされるリスクもあります。持分贈与を検討する場合は、必ず税理士に事前相談することをおすすめします。

 

Q2. 名義変更だけして贈与税の申告をしなかったらどうなる? A. 登記情報は税務署も把握できるため、無申告はいずれ発覚する可能性が高く、本来の税額に加えて無申告加算税や延滞税が課されます。特例の適用も受けられなくなるため、期限内(翌年2月1日〜3月15日)の申告は必ず行ってください。

 

Q3. 相続時精算課税を選ぶと、必ず相続税がかかるのですか? A. いいえ。贈与財産は相続時に相続財産へ合算されますが、合算後の総額が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、相続税はかかりません。資産規模がこの範囲に収まるご家庭では、贈与税ゼロ・相続税ゼロで承継できるケースもあります。

 

Q4. 住宅ローンが残っている家でも生前贈与できますか? A. 抵当権が付いたままの贈与は、金融機関の承諾が必要になるのが一般的で、ローン残債ごと引き受ける「負担付贈与」は税務上の扱いも通常の贈与と異なります(時価ベースでの課税など)。ローンが残っている場合は、完済後の贈与や相続まで待つ選択も含め、金融機関と税理士の双方に相談してから進めてください。

更新日: / 公開日:2019.07.01