- 変動金利と固定金利の仕組みと、いま起きている変化
- 変動金利は市場金利に応じて見直され、固定金利は借入時の金利が続くという基本に加えて、日銀の政策金利が約30年ぶりの水準まで引き上げられた現在の金利環境が、それぞれのタイプにどう影響しているのかを最新データで整理します。金利上昇局面ならではの注意点も一緒に確認できます。
- 「借りられる額」と「返せる額」がズレる理由
- 借入限度額は融資比率・返済負担率・完済時年齢などから金融機関が決めますが、その上限額はあなたの家計にとっての適正額とは限りません。額面年収ベースの審査と手取りベースの生活実感のギャップなど、住宅ローンで後悔しやすい構造的な落とし穴を具体的な数字で解説します。
- 変動か固定かを「家計の体力」で決める判断軸
- 金利予測を当てにいくのではなく、貯蓄率・教育費のタイミング・共働きの継続性といった自分の家計側の条件から金利タイプを選ぶ方法を紹介します。7項目のチェックリストで、自分がどちらのタイプに向いているかをその場で確かめられます。
毎月届く住宅情報を眺めながら、「変動のほうが安いのはわかる。でも、この先も金利が上がっていったら……」と、資料の前で手が止まってしまう。そんな経験はありませんか。
長く「超低金利が当たり前」だった日本の住宅ローンは、いま転換点を迎えています。金利が動く時代の住宅ローン選びで大切なのは、金利の先読みを当てることではなく、「自分の家計なら、どちらのタイプでいくらまでなら無理なく返せるか」を自分の言葉で説明できるようになることです。順を追って、一緒に整理していきましょう。
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変動金利と固定金利、まず押さえたい基本の違い

住宅ローンの金利タイプは、大きく「変動金利型」と「固定金利型」の2つに分けられます。名前のとおり、違いは「返済中に金利が動くかどうか」です。
変動金利型:金利が低い代わりに、将来の変動リスクを自分で持つ
変動金利型は、市場金利の動きに応じて適用金利が見直されるタイプです。多くの金融機関では半年ごとに金利を見直し、毎月の返済額は5年ごとに改定する「5年ルール」、改定後の返済額は従来の1.25倍までとする「125%ルール」を設けています(ネット銀行などでは、これらのルールがない商品もあります)。
変動金利の水準は、日本銀行の政策金利に連動する「短期プライムレート」を基準に決まります。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除して以降、段階的に利上げを進め、2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を1.0%程度へ引き上げました(出典:日本銀行「金融政策決定会合の運営」)。これを受けて、各銀行の変動金利の基準金利も引き上げが続いています。「変動=ずっと低いまま」という前提は、すでに過去のものになりつつあります。
固定金利型:金利は高めでも、返済額を借入時に確定できる
固定金利型は、借入時に決めた金利が返済期間中ずっと(または一定期間)変わらないタイプです。全期間固定型の代表が、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する【フラット35】で、2026年8月の資金受取分では、借入期間21〜35年・融資率9割以下の最も多い金利が年3.29%となっています(出典:住宅金融支援機構【フラット35】)。
このほか、当初10年など一定期間だけ金利を固定する「固定期間選択型」もあります。固定期間終了後はその時点の金利で変動型か固定型を選び直すため、「全期間の安心」までは得られない点に注意が必要です。
ひと目でわかる比較表と、いま選ばれている割合
| 項目 | 変動金利型 | 全期間固定型 |
|---|---|---|
| 借入時の金利水準 | 低い | 高い |
| 返済中の金利 | 半年ごとなどに見直し | 完済まで変わらない |
| 金利上昇時 | 返済額が増えるリスクあり | 影響を受けない |
| 金利低下時 | 恩恵を受けられる | 恩恵はない(借り換えは可能) |
| 総返済額 | 借入時点では確定しない | 借入時点で確定する |
| 向く人 | 家計に余裕があり、上昇時に対応できる人 | 返済額を固定して計画を立てたい人 |
実際の利用者はどちらを選んでいるのでしょうか。住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」(2026年1月調査)によると、金利タイプの内訳は変動型75.0%、固定期間選択型14.9%、全期間固定型10.1%で、依然として変動型が多数派です。ただし変動型は前回調査から4.0ポイント減少し、固定型を選ぶ人がじわりと増えています。
また、日銀の利上げを受けて「住宅ローン選択などに変化があった」と答えた人は49.7%にのぼりました(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」)。約半数が借入額や返済期間を見直しているという事実は、「なんとなく変動」で決める時代が終わったことを示しています。
「いくら貸してもらえるか」はどう決まる? 借入限度額の仕組み
金利タイプと並んで気になるのが、「そもそも自分はいくら借りられるのか」でしょう。借入限度額は、主に次の3つの要素をもとに金融機関が総合的に判断します。
融資比率:物件価格に対して何割まで借りるか
融資比率とは、物件価格に対する借入額の割合です。頭金なしのフルローンを扱う金融機関もありますが、融資比率が高いほど審査は厳しくなり、適用金利が高くなる商品もあります。たとえば【フラット35】は、融資率9割以下と9割超で金利水準が分かれています。頭金を1〜2割用意できると、借入額そのものが減るうえ、金利面でも有利になりやすいのが実情です。
返済負担率:年収のうち返済に充てられる割合
返済負担率は、年収に占める年間返済額の割合です。多くの金融機関は年収に応じて30〜35%程度を上限の目安としています。仮に年収500万円・上限35%なら、年間返済額の上限は175万円、月あたり約14.6万円です。
ここで見落とされがちなのが、返済負担率の計算には住宅ローン以外の借入(自動車ローン、カードローン、スマホの分割払いなど)も含まれる点です。ほかの借入があると、その分だけ住宅ローンに使える枠が削られます。
完済時年齢と返済期間:35年ローンが組めるとは限らない
多くの金融機関では完済時年齢の上限を80歳前後に設定しています。仮に上限が80歳なら、35年ローンをフルに組めるのは44歳頃までで、それ以降の借入は返済期間が短くなり、月々の返済額はその分重くなります。「何歳で借りるか」は、借入可能額と毎月の返済額の両方に直結する要素です。
自分の年収や希望条件でどの程度の返済額になるのか、まずは手を動かして確かめてみるのが近道です。
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意外と知られていない落とし穴「借りられる額」と「返せる額」は別物
住宅ローンで後悔する人の多くは、金利タイプの選択そのものより、この落とし穴でつまずいています。銀行が提示する借入可能額を「自分の適正額」と思い込んでしまうことです。
審査は「額面年収」、生活は「手取り」で回っている
返済負担率の審査は税金や社会保険料を引く前の額面年収で計算されます。年収500万円の手取りはおおむね390万〜400万円程度ですから、額面ベースで負担率35%(年175万円)の返済は、手取りベースでは実質44%前後に達します。手取りの4割超が住居費に消える生活は、教育費や老後資金の準備と両立させるにはかなり厳しい水準です。家計管理の実務では、手取り年収に対して25%前後を住居関連費の目安とする考え方が広く使われており、「審査に通る額」と「安心して返せる額」の間には大きな開きがあります。
変動金利は「借りられる額」まで膨らみやすい
もうひとつの構造的な罠が、金利が低いほど借入可能額が大きく計算されることです。変動金利の低さを前提に上限いっぱいまで借りると、金利が上昇した瞬間に返済計画の前提が崩れます。金利が動いたときのインパクトを、具体的な数字で見てみましょう。
試算条件:借入額3,500万円・返済期間35年・元利均等返済・ボーナス払いなし
| 適用金利 | 毎月返済額 | 総返済額(概算) |
|---|---|---|
| 年0.7% | 約9.4万円 | 約3,950万円 |
| 年1.7%(+1.0%) | 約11.1万円 | 約4,650万円 |
| 年2.7%(+2.0%) | 約12.9万円 | 約5,410万円 |
金利が1%上がるだけで毎月の負担は約1.7万円、総返済額では約700万円変わります。変動金利を選ぶこと自体が悪いのではなく、「この増加分を吸収できる家計かどうか」を確認しないまま選ぶことが問題なのです。金利上昇時の具体的なリスク試算は、関連記事「変動金利の住宅ローンは危険? 金利が1%・2%上がったら毎月いくら増えるか計算してみた」でさらに詳しく確認できます。
「いくら借りられるか」を銀行に聞く前に、家計を見る
同じ年収500万円でも、独身の人と子ども2人の世帯では、住居費に回せる金額はまったく違います。銀行はあなたの教育方針も生活スタイルも知りません。だからこそ、審査の前に「わが家の家計なら月いくらまでなら生活を圧迫しないか」を自分たちで決めておくことが、あらゆる住宅ローン戦略の出発点になります。家計簿の数字から逆算して予算を組みたい方は、無料の試算ツールを使うと現実的なラインが見えやすくなります。
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後悔しないための判断軸—変動か固定かは「金利予測」ではなく「家計の体力」で決める

「結局、金利はこれからどうなるんですか?」これは専門家でも正確には答えられない問いです。将来の金利を当てにいく発想を捨て、確実にわかっている自分の家計側の条件から選ぶ。これが、金利が動く時代の合理的な決め方です。
変動金利が向いているのは、上昇時に「対応する手段」がある家計
変動金利の本質は「低い金利と引き換えに、金利変動リスクを自分で引き受ける」ことです。したがって向いているのは、リスクが現実になったときに対応できる家計です。具体的には、毎月の返済額が上がっても吸収できる貯蓄や収入の余裕がある、繰り上げ返済に回せる資金を確保できる、共働きで収入源が複線化している、借入期間が比較的短い、といった条件を満たす世帯です。
固定金利が向いているのは、返済額の「確実性」に価値がある家計
一方、固定金利の本質は「保険料として上乗せ金利を払い、将来の確実性を買う」ことです。これから教育費のピークを迎える、収入の変動が大きい自営業・フリーランス、頭金が少なく借入額が大きい、金利ニュースのたびに不安になりたくない。こうした世帯にとって、返済額が完済まで確定している安心感は、金利差以上の価値を持ちます。変動と固定の選び方をタイプ別にさらに掘り下げたい方は、「住宅ローンは変動金利と固定金利どちらがいい? 違いや選び方を解説」もあわせて参考になります。
「変動か固定か」家計体力チェックリスト
次の7項目のうち、いくつ当てはまるか数えてみてください。
- 毎月の返済額が2万円増えても、貯蓄ペースを維持できる
- 生活費の6ヶ月分以上の預貯金を、住宅購入後も手元に残せる
- 世帯収入が2本立て(共働き等)で、片方が減っても返済を続けられる
- 今後10年以内に教育費の大きなピーク(大学進学など)が来ない
- 金利ニュースを見ても、感情的に不安にならず淡々と対応できる
- 半年に一度、住宅ローンの金利と家計を見直す習慣を作れる
- 金利が上がったら繰り上げ返済や借り換えで対応する、と具体的に決めている
5個以上当てはまるなら、変動金利のリスクを引き受ける体力がある家計といえます。3〜4個なら、当初10年固定などで様子を見るか、変動でも借入額を抑えるのが現実的です。2個以下なら、全期間固定で返済額を確定させたほうが、長い目で見て家計と心の安定につながります。
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繰り上げ返済は本当にお得? 手元資金とのバランスで考える
金利上昇局面では「早く返して利息を減らしたい」という気持ちが強くなります。繰り上げ返済は元金を直接減らすため利息軽減効果が高いのは事実ですが、急ぎすぎには落とし穴があります。
手元資金を減らしすぎると、かえって高くつく
住宅ローンは、生活基盤を支えるローンとして数あるローンの中でも金利が低く設定されています。繰り上げ返済で手元資金を使い切ったあとに教育費や急な出費が発生し、教育ローンやカードローンなど住宅ローンより高金利の借入で穴埋めすることになれば、せっかくの利息軽減効果は帳消しどころかマイナスです。繰り上げ返済は「生活費6ヶ月分+今後5年以内に見えている大型支出」を手元に残したうえで、その余剰分で行うのが原則です。
住宅ローン控除の適用期間中は、効果を比較してから
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用期間中は、年末ローン残高に応じて所得税等が軽減されます。控除率と適用金利の関係によっては、控除期間中に急いで残高を減らすより、控除終了後にまとめて繰り上げ返済したほうが有利になるケースもあります。ご自身の適用条件と金利で、必ず比較してから判断しましょう。
「返済を急ぐ」より「いつでも返せる状態」をつくる
金利が動く時代の繰り上げ返済は、「予定どおり実行する義務」ではなく「金利が上がったときに使える切り札」と捉えるのが実践的です。余剰資金を確保しておき、変動金利が一定水準を超えたら繰り上げ返済で元金を圧縮する。この選択肢を持っているだけで、変動金利のリスクはかなりコントロールしやすくなります。金利の全体像や各商品の仕組みを整理したい方は、住宅ローンの情報ページも役立ちます。
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まとめと次のステップ
変動金利は「低さ」と引き換えにリスクを自分で持つ仕組み、固定金利は「上乗せ金利」と引き換えに確実性を買う仕組み。どちらが正解かは金利の未来ではなく、あなたの家計の体力で決まります。そして金利タイプ以前に、「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」を自分たちで決めておくことが、住宅ローンで後悔しないための一番の土台です。
「金利がどうなるかわからないから、動かないでおこう」と考えたくなる気持ちもよくわかります。ただ、様子見をしている間にも金利や物件価格の前提は少しずつ動いていて、判断材料を持たないまま時間だけが過ぎると、いざ動くときに慌てて「借りられる額」で決めてしまいがちです。大きな決断はまだ先でかまいません。まずは今日、シミュレーションで「わが家の返せる額」を数字にしてみる。そのうえで、その予算でどんな住まいに手が届くのかを眺めてみる。その小さな一歩が、金利のニュースに振り回されない軸をつくってくれます。
「自分の家計だとどっちの金利タイプがいいのか、誰かと話しながら整理したい」という方は、中立的な立場のアドバイザーに無料で相談できる窓口もあります。
よくある質問
Q1. 変動金利と固定金利、結局どちらを選ぶ人が多いのですか?
A. 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」(2026年1月調査)では、変動型75.0%、固定期間選択型14.9%、全期間固定型10.1%と、変動型が多数派です。ただし変動型の割合は前回調査から4.0ポイント減っており、金利上昇を受けて固定型を選ぶ人が増える傾向にあります。多数派かどうかよりも、自分の家計がリスクを吸収できるかで選ぶことが大切です。
Q2. 変動金利で借りたあと、金利が上がったら固定金利に変更できますか?
A. 多くの金融機関では、同じ銀行内での金利タイプ変更や、他行の固定型ローンへの借り換えが可能です。ただし、変動金利が上がる局面では固定金利はそれより先に上がっていることが多く、「上がってから固定に逃げる」作戦は思ったほど機能しないことがあります。変更や借り換えには手数料もかかるため、当初の選択時点でリスク許容度を見極めておくのが基本です。
Q3. 頭金なしのフルローンでも大丈夫ですか?
A. フルローンを組めるかどうかと、組んで安全かどうかは別問題です。頭金がないと借入額と毎月返済額が大きくなるうえ、融資率が高いと金利が高くなる商品もあります。一方で、手元資金をすべて頭金に入れて預貯金が尽きるのも危険です。生活費6ヶ月分程度の予備資金を残したうえで、無理のない頭金と借入額のバランスを設計しましょう。
Q4. 夫婦のペアローンにすれば借入額を増やせますが、注意点はありますか?
A. ペアローンや収入合算を使うと借入可能額は増えますが、どちらかの収入が育休・転職・退職などで減っても返済額は変わりません。「2人の収入が今のまま続く前提」で上限まで借りるのは、変動金利で上限まで借りるのと同じ構造のリスクを抱えます。片方の収入だけでも返済を続けられる水準に借入額を抑えておくと安心です。
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更新日: / 公開日:2016.10.03










