- 空き家900万戸時代に起きていること
- 総務省の2023年調査で空き家は900万戸・空き家率13.8%と過去最高を更新しました。2023年の法改正により、管理が不十分な空き家は「管理不全空家」に指定され、固定資産税の優遇が外れる可能性も生まれています。空き家問題が持ち家世帯の「自分ごと」になった背景を、最新データで整理します。
- 「築20年で建物価値ゼロ」の正体と、変わり始めた評価ルール
- 日本の中古住宅が低く評価されてきた最大の理由は、税法上の「法定耐用年数」を実際の売買価格のものさしに流用してきた慣行にあります。国が建物評価の改善指針を打ち出し、インスペクション(建物状況調査)の説明が宅建業法で義務化された今、何がどう変わるのかを解説します。
- マイホームの資産価値を守る5つの判断軸
- これからの中古住宅は「築年数」ではなく「手入れの記録」で評価される方向に進んでいます。立地だけに頼らず、住宅履歴の保存・計画的なメンテナンス・相場の定点観測など、今日から実践できる判断軸をチェックリスト形式でまとめました。
家を買ったとき、あるいは実家を眺めるとき、「この家、将来いくらになるんだろう」と考えて、少し不安になったことはないでしょうか。ニュースでは空き家の増加が繰り返し報じられ、「日本の家は築20年で価値がなくなる」という話も耳にします。ローンを何十年もかけて返していく資産が、本当にそんなに早く「ゼロ」になってしまうのか。
結論からいえば、その常識は今、少しずつ書き換えられつつあります。空き家の急増という社会課題が引き金となり、国は中古住宅の評価方法そのものの見直しに動いてきました。きちんと手入れされた家が正当に評価される仕組みが整い始めた一方で、何もしなければ従来どおり低く評価され、放置すれば税負担まで重くなるという「二極化」も進んでいます。
この分かれ道で自分の家をどちら側に置くか。それを決めるのは、実は日々のちょっとした習慣と、いくつかの判断軸です。順を追って見ていきましょう。
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空き家900万戸・空き家率13.8%!もう「他人事」ではない

最新データで見る空き家の現状
総務省統計局が5年ごとに実施する住宅・土地統計調査によると、2023年10月時点の全国の空き家数は900万戸と過去最多を更新し、総住宅数6,502万戸に占める空き家率は13.8%と過去最高になりました。そのうち賃貸用・売却用・別荘などを除いた、いわゆる「放置されやすい空き家」は385万戸にのぼります(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」)。
1993年の空き家数は448万戸でしたから、30年間でほぼ倍増した計算です。少子高齢化と核家族化により「親の家を継ぐ人がいない」ケースが増える一方、新築住宅は建て続けられているため、住宅の総数が世帯数を上回る「家余り」の構造が定着しています。
放置された空き家が周囲にもたらす損害
住宅は、人が住んでこそ維持される側面があります。換気や通水、庭の手入れといった日常の管理が止まると、建物の劣化は一気に進みます。倒壊や屋根材の飛散といった安全上のリスク、雑草や害虫・害獣による衛生面の問題、不審者の侵入や放火といった防犯上の懸念。放置された空き家は、所有者だけでなく近隣住民の生活と、周辺の不動産価値にまで影響を及ぼします。
つまり空き家問題とは、「使われない家が増える」ことそのものよりも、「管理されない家が増える」ことの問題なのです。
法改正で「放置するコスト」が上がった
この状況を受けて、2023年12月に改正空家等対策特別措置法が施行されました。従来は倒壊の危険が高いなどの「特定空家」に指定されると固定資産税の住宅用地特例(税負担の軽減措置)が外れる仕組みでしたが、改正により、その予備軍である「管理不全空家」の段階でも、市区町村の指導に従わず勧告を受けると住宅用地特例が受けられなくなりました(出典:国土交通省「空き家対策 特設サイト」)。
住宅用地特例は土地の固定資産税評価額を最大6分の1に軽減する制度ですから、解除されれば土地部分の税額が大きく跳ね上がる可能性があります。「とりあえず置いておく」という選択の維持コストが、制度的に引き上げられたわけです。
こうした流れの受け皿として、自治体が空き家情報を集約する仕組みも広がっています。どんな空き家がどんな価格で流通しているのか、一度眺めてみると「管理された家」と「されなかった家」の差が実感できるはずです。
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なぜ日本の家は「築20年で価値ゼロ」と言われてきたのか
「法定耐用年数」という、ものさしの流用
日本の税法では、減価償却の計算に用いる法定耐用年数が、木造住宅で22年、鉄筋コンクリート造の住宅で47年と定められています(出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」)。これはあくまで税務上の計算ルールであり、「建物が22年で住めなくなる」という意味ではありません。
ところが日本の不動産市場では、この税務上の年数が中古住宅の値付けのものさしとして長く流用されてきました。その結果、木造住宅は築20年前後で建物部分の市場評価がほぼゼロと見なされ、どれだけ丁寧に手入れされた家でも「土地値」で取引されるのが一般的だったのです。
欧米との決定的な違い
この慣行は、国際的に見るとかなり特殊です。欧米諸国では住宅流通の7〜9割程度を既存住宅(中古住宅)が占めるのに対し、日本の全住宅流通量に占める既存住宅のシェアは14.7%(平成25年時点の国土交通省政策レビュー資料)にとどまってきました(出典:LIFULL HOME’S PRESS「住宅ローンを組めない中古物件の流通を活性化し、空き家問題の解決を」)。
| 観点 | 日本(従来) | 欧米(米国・英国など) |
|---|---|---|
| 中古住宅の流通シェア | 約15%前後 | 7〜9割程度 |
| 建物評価の考え方 | 築年数で機械的に減価 | 状態・性能を個別に評価 |
| 手入れの市場評価 | 反映されにくい | メンテナンス履歴が価格に反映 |
| 住宅への意識 | 新築志向・使い捨てに近い | 長く使い、直して住み継ぐ |
古い家ほど価値が下がる日本と、手入れされた古い家に買い手がつく欧米。この差を生んでいるのは建物の質の差というより、「評価の仕組み」の差なのです。
実際の寿命と評価のギャップ
日本の住宅性能は年々向上しており、適切なメンテナンスを行えば木造住宅でも数十年以上住み続けられるケースは珍しくありません。それにもかかわらず評価だけが築20年でゼロになるなら、「まだ使える家」が市場で正当な値段を付けられず、売るに売れないまま空き家化していく。空き家問題と中古住宅の評価方法は、こうして根っこでつながっています。
LIFULL HOME'S住宅評価中古マンションを探す LIFULL HOME'S住宅評価中古一戸建てを探す変わり始めた建物評価—「築年数一辺倒」からの脱却

国が打ち出した建物評価の改善指針
国土交通省は2014年に「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定し、法定耐用年数に基づいて一律に減価する従来の評価から、基礎・躯体と内外装・設備を分けて、リフォームやメンテナンスの状態を個別に反映する評価への転換を打ち出しました。「きちんと手入れされた家は、築年数が経っていても相応に評価する」という方向性が、国の指針として明文化されたのです。
インスペクションの説明が義務になった
さらに2018年4月施行の改正宅地建物取引業法により、中古住宅の売買では、不動産会社が媒介契約時にインスペクション(建物状況調査)業者をあっせんできるかどうかを示し、調査が行われていればその結果を重要事項として買主に説明することが義務付けられました。
インスペクションとは、専門家が基礎や外壁のひび割れ、雨漏りの形跡などを調査する、いわば「住宅の健康診断」です。築年数という一つの数字ではなく、その家の実際の状態を確認したうえで売買を判断できる環境が、制度として整いました。買う側にとっては安心材料が増え、売る側にとっては「状態の良さ」を客観的に示す武器が増えたことになります。
固定資産税の評価とは別物である点に注意
ここで一つ、混同しやすいポイントを整理しておきましょう。市場での売買価格の評価と、固定資産税の評価は別の仕組みで動いています。固定資産税の建物評価額は、総務省の固定資産評価基準に基づき「同じ建物を今建て直したらいくらか(再建築価格)」に経過年数などに応じた補正をかけて算出され、3年ごとに見直されます。
したがって「市場評価が変わればただちに固定資産税も変わる」わけではありません。ただし前述のとおり、空き家を放置して管理不全空家の勧告を受ければ土地の税優遇が外れるなど、「管理の状態」が税負担に直結する場面は確実に増えています。固定資産税の軽減措置そのものについては、次の記事で詳しく解説しています。
▶ 関連記事:固定資産税が軽くなる方法はある? 軽減措置と手続き方法をご紹介
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意外と知られていない落とし穴—「立地が良ければ大丈夫」ではない
資産価値の話になると「結局は立地がすべて」という声をよく聞きます。確かに立地は最重要の要素ですが、それだけを頼りにすると足元をすくわれる落とし穴が、実は3つあります。
落とし穴1:記録のない家は「良い家」でも評価されない
これからの建物評価は「実際の状態」を見る方向に進みますが、状態の良さを証明するのは点検記録・修繕履歴・図面といった書類です。新築時の設計図書や、外壁塗装・屋根補修・給湯器交換などの履歴が残っていない家は、たとえ丁寧に住んでいても、査定の場でそれを客観的に示せません。「良い家」と「良いと証明できる家」の間には、価格にして無視できない差が生まれます。
落とし穴2:リフォームすれば必ず価値が上がるとは限らない
「売る前にリフォームすれば高く売れる」と考えがちですが、かけた費用がそのまま価格に上乗せされるわけではありません。買い手のニーズと合わない内装刷新は回収できないことが多く、一方で雨漏りやシロアリなど構造に関わる不具合の放置は、金額以上に買い手の信頼を損ないます。優先すべきは見た目より「構造・防水」の健全性であり、手を入れる順番を間違えないことが重要です。空き家をリフォームで再生する視点は、次の記事が参考になります。
▶ 関連記事:これからも増え続ける空き家。リフォームやリノベーションで中古住宅に新たな価値を
落とし穴3:相続してからの「とりあえず放置」が一番高くつく
実家を相続したものの方針が決まらず、数年放置してしまう。これが最も損失の大きいパターンです。人が住まない家の劣化は速く、市場価値は下がり続け、管理不全空家に指定されれば税負担も増えます。2024年4月からは相続登記も義務化されており、「決めない」こと自体にコストがかかる時代になりました。実家の処分・活用の具体的な進め方は、次の記事で詳しく整理しています。
▶ 関連記事:【2026年最新版】空き家税・固定資産税を踏まえた実家の処分・活用ガイド
おすすめ特集から新築一戸建てを探す おすすめ特集から中古マンションを探すマイホームの価値を守る5つの判断軸【保存版チェックリスト】
ここまでの内容を、今日から使える判断軸に落とし込みます。すべてに「はい」と答えられる状態を目指しましょう。
| 判断軸 | チェック内容 | |
|---|---|---|
| 1 | 記録を残しているか | 新築時の図面・確認済証、修繕やリフォームの見積書・領収書・写真を1つのファイルに保管している |
| 2 | 計画的に直しているか | 外壁・屋根は10〜15年周期、水まわりは劣化サインが出たら早めに、と「壊れてから」ではなく計画的に手当てしている |
| 3 | 客観評価を活用しているか | 売却や住み替えを考える際、インスペクション(建物状況調査)で状態を客観的に示す選択肢を知っている |
| 4 | 相場を定点観測しているか | 自宅周辺の類似物件がいくらで売り出されているか、年に1〜2回はチェックしている |
| 5 | 家族と話せているか | 実家や自宅の将来(誰が住むか・売るか・貸すか)について、家族と一度でも話し合ったことがある |
まずは「4. 相場の定点観測」から始めるのがおすすめ
5つのうち、最も手軽で効果が大きいのが相場の把握です。自分の家の周辺で、似た広さ・築年数の物件がどう値付けされているかを知るだけで、「うちの家は今どちら側にいるのか」の感覚がつかめます。売る予定がなくても、健康診断と同じ感覚で眺めておく価値があります。
▶ LIFULL HOME’Sで自宅周辺の物件の参考価格を調べてみる
購入検討中の方であれば、同じ視点を「買う側」から使えます。管理状態や修繕履歴に注目しながら中古物件を見比べると、価格表の数字だけでは見えない「評価される家」の条件が立体的に見えてくるはずです。
まとめと次のステップ
空き家900万戸という数字は、遠い地方のニュースではなく、「管理されない家は評価されず、税負担まで重くなる」という新しいルールが全国の持ち家に適用され始めたサインです。一方で、記録を残し、計画的に手入れされた家が正当に評価される仕組みも着実に整ってきました。同じ築20年でも、これからは「価値が残る家」と「残らない家」の差が開いていきます。
何もしなくても今日明日で困ることはありません。ただ、相場を知らないまま、記録を残さないまま数年が過ぎると、いざ住み替えや相続の場面で選択肢が狭まっている。それが一番もったいないパターンです。まずは自宅や実家の「今の立ち位置」を知ることから始めてみてください。匿名で使える簡易査定なら、営業連絡を気にせず一歩目を踏み出せます。
売却・住み替え・実家の扱いなど、状況が複雑で自分では整理しきれない場合は、中立的な立場のアドバイザーに無料で相談できる窓口もあります。
よくある質問
Q1. 木造住宅は本当に22年しか持たないのですか?
いいえ。22年という数字は税務上の減価償却に使う法定耐用年数であり、建物の物理的な寿命ではありません。適切なメンテナンスを行った木造住宅は、それよりはるかに長く住み続けられるケースが多くあります。問題は「実際は使えるのに、評価だけが早くゼロになる」慣行にあり、国はその是正に取り組んでいます。
Q2. インスペクション(建物状況調査)は必ず受けないといけませんか?
義務ではありません。2018年の宅建業法改正で義務化されたのは、不動産会社が「インスペクション業者をあっせんできるか」を示し、調査済みの場合に結果を説明することです。ただし、売主にとっては建物の状態を客観的に示せる材料に、買主にとっては購入判断の安心材料になるため、中古住宅の取引では活用を検討する価値が高い制度です。
Q3. 空き家を相続しそうです。今から何を準備すればよいですか?
まず、家の書類(登記関係・図面・修繕履歴)の所在を親と一緒に確認し、「住む・貸す・売る・解体する」のどの方向性がありえるかを家族で話しておくことが第一歩です。相続登記は義務化されており、放置して管理不全空家に指定されると固定資産税の優遇が外れるリスクもあります。方向性が定まらない場合も、相場の把握と現状の維持管理だけは早めに始めておきましょう。
Q4. 建物の評価方法が変わると、固定資産税は上がりますか?
市場での売買評価と固定資産税評価は別の仕組みのため、売買の評価改善がただちに税額に反映されるわけではありません。固定資産税評価額は固定資産評価基準に基づいて算出され、3年ごとに見直されます。ただし、空き家を放置して「管理不全空家」や「特定空家」として勧告を受けると住宅用地特例が解除され、土地部分の税額が大幅に増える可能性がある点には注意が必要です。
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更新日: / 公開日:2016.10.02










