茨城県取手市は、東京藝術大学の先端芸術表現科が設置されていることもあり、アートとのつながりが深い場所です。

この地域では、「取手井野」団地と「戸頭」団地を舞台に、地域のアートプロジェクトとUR都市機構が共同で行う“アートのある団地”プロジェクトが進められています。

今回は、なぜ取手市の団地でアートプロジェクトが発足したのか、その背景や、日常にアートを融合する具体的な取り組みについて紹介します。

プロジェクトの包括ディレクターである羽原康恵さんと、実際に団地で暮らす平井亨季さんへのインタビューを交えながら、魅力的な周辺環境とともにその全貌に迫ります。

取手井野団地の魅力を動画でご紹介!

アパートメントラボ

「取手」駅前

都心から約40km圏内に位置する茨城県取手市は、多くの公園が点在する自然豊かな街。

 

さらに近年は“アートを感じられる街”としても知られ、市内の至るところで暮らしに溶け込むアート作品を目にすることができます。

 

最寄りとなるJR常磐線の「取手」駅からは、「上野」駅まで直通で約40分、東京駅へも約50分と、都心へのアクセスは非常にスムーズです。

 

しかもうれしいのは、「取手」駅が上野方面への始発駅であること。毎日の通勤・通学で座って移動できる可能性が高いのは、大きなポイントです。

 

取手市では、1999年に取手市と東京藝術大学、取手市民の3者が共同で「取手アートプロジェクト(以下TAP」を発足しました。

 

今回は、TAPが発足された理由や、「アートのある団地」プロジェクトがスタートした経緯などについて、TAP包括ディレクターの羽原康恵(はばらやすえ)さんにお話を伺いました。

羽原 康恵さん

アートコーディネーター。特定非営利活動法人 取手アートプロジェクトオフィス 包括ディレクター。1981年高知県生まれ、広島、三重育ち。筑波大学国際総合学類卒業、同大大学院人間総合科学研究科芸術学専攻(芸術支援学)修了。大学院在学中に取手アートプロジェクト(TAP)に2年間インターンとして関わる。2007~2008年、財団法人静岡県文化財団企画制作課プランナーとして複合文化施設での企画運営従事を経て、取手に戻り現職。

――羽原さんは取手についてどういった魅力のある場所だと感じていますか?

 

羽原さん「取手という場所は、“余白”がある街だと感じます。密度が高すぎず、境界線があるわけでもなく、地域に住む人が自分の好きなことを外に向けて表現しやすい環境なんじゃないかと。

 

この良い意味での境界の曖昧さが、作品を生み出すアーティストにとっても適した環境で、たとえば、アーティストが多少変わったことをしたとしても、住んでいる人との衝突が生まれないバッファがあるんです」

 

――アートと日常を融合するのにちょうど良い環境だったんですね。そんな取手でアートプロジェクトがスタートした経緯について教えてください。

 

羽原さん「取手アートプロジェクト(TAP)は、1999年、東京藝術大学の取手キャンパスに先端芸術表現科ができたことがきっかけでした。ちょうど同じ時期に駅前の開発が完了し、取手市から大学にパブリックアート設置のオファーをしたんです。

 

でも、どうせならただ屋外にアートを置くのではなく、地域の人たちとこの街を捉え直すためのアートプロジェクトをやりましょう、と大学側から逆オファーがあったことをきっかけにTAPの活動が始まりました。

 

 

最初の1~2年は、芸術祭を開催していましたが、2000年代後半、全国で大規模な芸術祭が増えてきたことなどを機に、取手ならではのあり方を模索し始めました。

 

この地域に住んでいる人たちと長い時間をかけて一緒に活動したら、芸術と地域にどんな変化が起こるのだろうかと考えました。そこから、地域の人たちと芸術家がともに未知のものごとをつくり、創造性を生かして地域に関わる“継続的な活動”へと移行したんです。

 

今では、郊外の街ならではのテーマを掲げ、10年以上にわたって地域の方々や芸術家とともに活動を続けています」

 

――なるほど、地域の人たちと一緒にというのがTAPの特徴なんですね。プロジェクトのひとつである、“アートのある団地”とはどのようなものなのでしょうか。

 

羽原さん「“アートのある団地”は、取手市内の団地と地域社会を舞台とした、会期などのない、つまり生活の近くでずっと続く通年型のアートプロジェクトです。

 

たとえば、団地の壁にアートを施したり、空き店舗を改装して誰もが立ち寄れるカフェを開いたり、芸術家と地域の方々がいっしょにプロジェクトを動かしたり。活動の中心となっているのが、『取手井野』団地にある『いこいーの+Tappino』というコミュニティーカフェなんです。

 

ここは市の高齢福祉課や団地の自治会、このエリアの民生委員さんと連携して運営しています。100円くらいの運営支援金で誰でも1日出入り自由なので、いつも誰かがお茶を飲んでおしゃべりしています。『一人で来ても自然と知り合いが増える』、そんな場所なんですよ。

 

私たちは作品を飾るというよりは、こうした場を通じてアーティストと住民の方々がつながり、それぞれの“やってみたい”が実現できるような仕組みづくりを目指しています

 

スペースの出入りだけでなく、飲み物のおかわりも食べ物の持ち込みも自由

「いこいーの+Tappino」店内の様子

――地域の人たちとの交流がさかんに行われているんですね。

 

羽原さん「そうですね。つい最近もプロジェクトの一環で団地の壁にアートを描くというプランがありまして、何を描こうかというモチーフのアイデアを地域の人たちから募集していたんです。

 

たくさんの個性的な案が集まったのですが、これは自分たちの住んでいる団地や、この活動に興味を持っていますよ!というメッセージにも感じられて。これから芸術家の方と形にしていくのですが、実際に壁面に現れるのが本当に楽しみです。

 

「取手井野」団地の住民や地域の人から集まったアイデアを参考にして壁面アートが制作されるそう

アートはさまざまな人が種として持っているものであり、自分が好きなことを想像したり、思いついたり、好奇心がうずいて思わず体が動いちゃうみたいなことの根本だと私は考えています。

 

アートプロジェクトの目的は、地域の人たちが持つ創造性や表現したいという気持ちを、外に出す機会を提供することなんです。だから、今回の壁面アートの募集のように、みなさんから積極的に『こういうことをやりたい』という意見をもらえるのは、本当にうれしいですね。

 

このプロジェクトが、団地に住んでいる方はもちろん、広く地域の方々の創造性を引き出し、みんなで一緒に街の未来をつくっていく。そんなきっかけになればと、心から思っています」

「取手井野」団地

アートのある団地は、現在2ヶ所。まずは、プロジェクトの拠点「いこいーの+Tappino」がある「取手井野」団地について紹介します。

 

「取手井野」団地の最寄り駅である、JR「取手」駅周辺は、駅ビル「アトレ取手」や、食料品が豊富な「西友 取手駅前店」など、生活に必要な施設が充実しています。

 

「取手」駅から「取手井野」団地までは、徒歩14~22分、バスで3~7分ほどの距離。駅からのアクセスも良好です。

 

「取手」駅から千葉県「柏」駅までは、JR常磐線快速の利用で最速11分という距離。「柏駅」には、ショッピングに便利な「柏高島屋ステーションモール」や「柏マルイ」をはじめ、映画館やカフェなども充実しており、休日には一日中ショッピングが楽しめます。

 

日常の買い物は取手で、休日は簡単に足をのばすことのできる柏や上野、東京で過ごすという、オンとオフの切り替えができる立地です。

 

「取手井野」団地内は、広々とした住棟レイアウトで、日当たりが良く、通気性にも優れています。敷地内にはプレイロットがあり、保育所や認定こども園も徒歩圏内にあるので、子育てファミリーにもうれしい環境です。

「取手井野」団地には、UR賃貸住宅初の新プランである「サービスフィールド(SF)付住宅」があります。

 

4階と5階をセット貸しする新しいタイプの物件で、家賃5万円台から利用可能です。4階の生活スペースとは別に、内装や間仕切りなどを撤去した5階のサービスフィールドが付いています。

 

上階のサービスフィールドはスケルトンタイプのため、アレンジ次第でさまざまな使い方が可能。趣味の部屋やアトリエ、子どもの遊び場など、ライフスタイルに合わせて使うことができます。

物件例

住宅床面積:直下階住戸48平米×上階住戸(SF)44平米

【間取り図】

住居部分の4階から5階のサービスフィールドへは、共用階段で移動します

5階のサービスフィールドと4階の生活スペースがどういった雰囲気なのか、実際の部屋の様子を見ていきましょう。

5階:サービスフィールド

部屋1

スケルトンタイプで広々としたサービスフィールドは、作業やくつろぎスペースにぴったり。日当たりや風通しもよく、開放的な空間です。

 

部屋1別角度

アーティストの方だと作業スペースに、会社員の人でもテレワークの仕事場として使用したり、自分の趣味の部屋として活用したりすることもできます。

 

子どもがいる家庭なら、キッズスペースにすれば下の階は自分たちの居住スペースなので、足音が響くのを気にする必要もありません。

 

部屋2

こちらは先ほどとは別のサービスフィールドです。スケルトンタイプなのは変わりませんが、柱や梁(はり)の位置は部屋ごとに微妙に異なります。

 

部屋2別角度

サービスフィールドに水道やガスは通っていませんが、電気は利用可能です。

 

 

コンセントやテレビアンテナ端子があり、エアコンを設置することもできます。

4階:生活スペース

 

こちらは、4階の生活スペースとなる住居部分で、窓が多く、明るい印象です。3Kの間取りで、3人以上のファミリー世帯や子育て世帯が暮らせる十分な広さがあります。

 

サービスフィールド付住宅でどういった暮らしができるのか、実際にサービスフィールド付住宅に住んでいる平井亨季(ひらいこうき)さんに、この物件を選んだ理由や住み心地などについてお話を伺いました。

平井亨季さん

1996年広島県生まれ。2019年に東京藝術大学美術学部・先端芸術表現科卒業。2021年に東京藝術大学大学院映像研究科・メディア映像専攻修了。2023年夏より、UR賃貸住宅サービスフィールド付住宅を利用しながら、展示や上映会、読書会などの活動を精力的に行う。

――この物件に入居された経緯を教えてください。

 

平井さん「もともと取手には、東京藝術大学への進学を機に住み始め、卒業後も住み続けていました。そんな中、2023年にTAPの羽原さんからこのサービスフィールド付住宅の募集連絡をいただき、すぐに入居を決めたんです」

 

――実際に住んでみて、どんな点に魅力を感じますか?

 

平井さん「4階と5階の2部屋を借りられて家賃5万円台というのは、都心ではまず考えられない価格ですよね。

 

サービスフィールドは一般的な賃貸と違って制約が少なく、空間を自由自在に使えるのが気に入っています。日当たりや風通しも良いので、創作活動の場として本当にぴったりです」

 

――具体的には、どのように活用されているのですか?

 

平井さん「私自身は、単なるアトリエとしてだけでなく、友人たちと作品を見せ合うプライベートな展示会を開くなど、交流の場としても活用しています。

 

親しい友人との交流の場としても活用

団地まで来てもらった友人とは、1〜2時間かけてゆっくり作品を見ながら話すことが多いんです。

 

居酒屋とかで話すよりも落ち着いて深い話ができるので、社会に出てから疎遠になりつつある友人との関係性をつなぎ直す、そんな場所にもなっていますね。

 

こういう使い方ができるのは、普通の賃貸ではなかなか難しいと思います」

 

――お話を聞いていると、本当に色々な使い方ができそうですね。

 

平井さん「生活と作業のスペースを完全に分けられるので、私のようなアート制作に限らず、イラストレーターや漫画家の方などにも、すごく使いやすい物件じゃないかなと思います。

 

 

たとえば、サービスフィールドを仕事場にして下の部屋でアシスタントが仮眠したり、集中して仕事をする場所とご飯を食べる場所を分けたり、備え付けの棚に本や資料をたくさん置いたりといった使い方もできそうですよね。

 

普通の賃貸物件では難しい使い方もできて、作業にも集中できるかなり理想的な物件なので、気になった方はぜひ現地でどんな雰囲気なのか見ていただきたいですね」

 

アートのある団地プロジェクトの2ヶ所目が、「取手井野」団地から約7kmの場所にあり、利根川が近くに流れる緑豊かな「戸頭」団地です。

 

「戸頭」団地の最寄り駅は、関東鉄道常総線「戸頭」駅です。「戸頭」駅から「取手」駅までは常総線で13分ほどなので、都心へのアクセスも良好。

 

また、常総線で「守谷」駅まで出れば、つくばエクスプレスで都心に出るという方法もあります。

 

 

駅から「戸頭」団地までは徒歩3~18分ほどで到着します。団地の敷地内は歩車分離のゆったりとした構造になっており、子育て世帯にも安心の生活環境です。

 

保育園や小学校、中学校にも隣接しており、徒歩圏内にスーパーマーケットやドラッグストア、100円ショップなどもあります。

 

 

団地に隣接したショッピングモール、「フォレストモール取手」にはスーパーマーケット「ロピア」やドラッグストアの「サンドラッグ」のほか、カフェや美容室、歯科医院なども。団地から徒歩で行けるのがうれしいポイントです。

作品名:「Book climbing(ブック・クライミング)」

戸頭団地で目を引くのが、壁面アートシリーズ「IN MY GARDEN」です。

 

これはTAPの「アートのある団地」プロジェクトの一環で、団地にまつわるエピソードを住民の方から募集し、それを基にアーティストが物語を描いたもの。団地全体で11棟、15もの作品が楽しめます。

 

作品名:「sometime(サムタイム)」

 

それぞれのアート作品には、タイトルとともに参考となったエピソードがあり、団地の近くに設置されているプレートにその由来が記載されています。

 

作品は単なる壁画ではなく、部分的に立体になっているのも面白いところ。どれも団地の風景に見事に調和しており、暮らしの中にアートが息づいているのを感じられます。

 

作品名:「美しい住まい」

作品名:「Life style(ライフ・スタイル)」

作品名:「Cafe terrace(カフェ・テラス)」

作品名:「非日常口」

2013年から始まったこの壁画プロジェクトは、自治会や町会、そして多くの地域住民の方々の想いを汲み取りながら、3年がかりで完成しました。

 

一つひとつの作品が、今では団地の風景に欠かせない一部となり、地域の方々に愛され続けています。

UR都市機構 千葉エリア経営部 小山さん(左)、長田さん(右)

最後に、UR賃貸住宅の小山さんと長田さんに、「取手井野」団地と「戸頭」団地の物件のポイントと、UR賃貸住宅を選ぶメリットについてお話を伺いました。

 

小山さん「『取手井野』団地も『戸頭』団地も、近くに利根川が流れていて、緑が多いエリアです。団地内はベンチもたくさんあり、歩くだけでも楽しめると思います。都心へのアクセスがしやすい立地でありながら、鳥の鳴き声も聞こえ、自然環境が魅力的な場所です」

 

サービスフィールドの使用例

長田さん「今回ご紹介したサービスフィールド付きの物件は、アトリエや作業場などの広いスペースが必要なクリエイターの方はもちろん、自宅で仕事や作業をする時間が多い方家賃を抑えたい方、そしてアートにふれながら団地のゆったりとした雰囲気の中で暮らしたい方におすすめです」

 

小山さん「『取手』駅まではバスの本数が多く、都心への通勤・通学もしやすいです。郊外の緑豊かな場所でアートにふれながら生活してみたいという方は、ぜひ一度団地にいらっしゃってください」

 

UR賃貸住宅は、「礼金ナシ」「仲介手数料ナシ」「保証人ナシ」「更新料ナシ」の4ナシで、引越しの初期費用が抑えられる点が魅力です。

 

契約は自動更新のため、面倒な手続きがなく、UR賃貸住宅からUR賃貸住宅へ転居する場合は「住み替え制度」を利用して敷金の引き継ぎが可能です。

 

また、条件を満たせばお得な家賃プランや「子育て割」などの制度を利用できるのもうれしいポイント。

 

自然が身近に感じられる住環境や、リノベーション済みで収納の多い物件を多数取り扱っているので、住みたい部屋が見つかるはず。

 

UR賃貸住宅についてもっと知りたいという方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

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取手井野団地の魅力を動画でご紹介!

アパートメントラボ

 

都心から電車で1時間以内の場所にある茨城県取手市。「取手井野」団地と「戸頭」団地は、アートのある団地として地域住民に親しまれており、団地内にはアートが自然に溶け込んでいます。

 

団地内の部屋はリノベーション済みの清潔感ある空間で、アトリエスペースや子ども部屋にするなど、住む人のライフスタイルに合わせて自由に活用できるサービスフィールド付住宅があることも大きな魅力です。

 

お得な家賃帯で、ゆったりとした自分好みの暮らしがかなえられる取手エリア。新しい住まいを探している方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

また、URとTAPによる新たな企画として、「そうぞうする団地」ラッピング列車の走行を開始しました!

 

車体のコーディネートはTAPが担い、「取手井野団地」と「戸頭団地」の名称と団地での日常や創造の風景をモチーフとしたデザインで彩られています。

 

多くの方にラッピング列車をご覧いただくことで、UR賃貸住宅と団地の魅力をPRしていきます。みなさまぜひ取手エリアに足をお運びください!

 

【運行期間】令和7年12月1日~令和8年11月30日(予定)

【運行区間】関東鉄道常総線「取手」駅~「水海道」駅を主とする区間

更新日: / 公開日:2025.08.08