賃貸物件を契約する際には、家賃の滞納などに備え、何らかの形で支払いの保証を求められます。物件によっては保証会社を利用できることもありますが、そうでなければ連帯保証人を立てる必要があります。

連帯保証人は近しい相手に頼むのが一般的なため、兄弟や姉妹が賃貸物件を借りる際に、引き受けてもらえないかと相談されることもあるでしょう。

今回は賃貸物件における連帯保証人の役割とリスク、兄弟に頼まれたときの考え方について解説します。

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賃貸物件を借りるときには、保証会社が利用できない場合、保証人ではなく連帯保証人が必要となります。

 

ここでは、保証人と連帯保証人の違いを踏まえて、賃貸物件における連帯保証人の役割を見ていきましょう。

 

連帯保証人とは、主たる債務者と連帯して債務を履行する義務を負う人のことです。連帯保証人は、主たる債務者が支払わない場合に初めて支払い義務を負うのではなく、最初から同等の義務を負っています。

 

したがって、債権者である貸主は、主たる債務者である借主に請求する前に連帯保証人に請求することが可能です。そして、連帯保証人はその請求を拒否することはできません

 

一方、保証人は、債権者から請求された際、主たる債務者に支払い能力がある場合などは、まずは主たる債務者に請求するよう求めることが可能です。

 

以上のように、連帯保証人は保証人よりも大きな責任を負う存在であり、依頼する側も引き受ける側もより慎重な判断が求められることになります。

 

その理由は、連帯保証人には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」が与えられていないためです。

 

■催告の抗弁権

 

催告の抗弁権とは、「まずは自分ではなく入居者本人に支払うように言ってほしい」という権利のことです。

 

保証人には催告の抗弁権があるため、いきなり自分が支払いを命じられた場合は、「先に本人に請求してほしい」と伝えることができます。

 

しかし、連帯保証人にはこの権利がありません。そのため、本人より先に支払いを求められた場合、連帯保証人はそれに応じなければなりません。

 

■検索の抗弁権

 

検索の抗弁権とは、「本人に財産があるのだから、そちらから取り立ててほしい」と訴える権利のことです。

 

保証人には検索の抗弁権があるため、本人の預貯金や財産の存在を証明できたら、本人から先に取り立ててもらうよう抗議することができます。

 

一方、連帯保証人にはこの権利がありません。そのため、本人の財産の有無に関係なく、いきなり連帯保証人自身が支払いを求められてしまう可能性があります。

 

このように、連帯保証人には保証人に認められた重要な権利がないため、実質的には「借りている本人と同等の責任」を担うことになります。

 

賃貸借契約における連帯保証人は、基本的に入居者が家賃を滞納した場合に、代わりに支払いを行うという役割を持ちます。

 

賃貸物件の場合は、借主本人が家賃を支払えなくなったときに、連帯保証人に連絡がいくのが一般的です。

 

ただし、「入居者が孤独死し、発見までに時間がたってしまった」あるいは「ひどい使い方をして修繕が必要になった」といった場合は、連帯保証人が原状回復費用を負担する可能性があります。

 

そのため、引き受ける際には、家賃以外のリスクにも目を向けたうえで判断することが重要です。

 

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連帯保証人は借主と同等の責任を負うことから、誰でもなれるというわけではありません。賃貸物件の入居審査では連帯保証人に関する審査も行われるため、収入などの条件をクリアしている必要があります。

 

連帯保証人を引き受けるには、一般的に以下のような条件を満たす必要があります。

  • 本人の両親や兄弟などの親族
  • 安定かつ継続した収入がある人
  • 信用情報に問題がない人
  • 日本国内に居住しており、連絡がとれる人
  • 連帯保証人になることを承諾している人

本人との関係性については特に厳密な決まりはありませんが、重い責任を負うことから、近しい親族が引き受けるのが一般的です。

 

また、緊急時の連絡先にもなるため、連絡がとれることや日本国内に居住していることが審査で重視されることもあります。

 

なお、定年退職をした公的年金の受給者も、安定的な収入があると見なされるため、賃貸物件の連帯保証人を引き受けることは可能です。ただし、家賃が高額な場合は審査で落ちてしまうこともあるので注意しましょう。

 

以下の条件に当てはまる場合は、連帯保証人になることはできません。

  • 無職または収入がない人
  • 破産者

  • ほかの人の連帯保証人になっている人

  • 成年被後見人、未成年者

  • 連帯保証人になることを承諾していない人

無職や収入がない人、自己破産をしている人、すでにほかの人の連帯保証人になっている人は、支払い能力や信用情報などが問題となり連帯保証人になることはできません。

 

また、法律行為能力のない未成年者や成年被後見人も連帯保証人としては認められません。

 

前提として、連帯保証人は連帯保証人自身が承諾して初めてなることができるため、兄弟でも断ることは可能です。しかし、兄弟が物件を借りるためとなれば、むげに断るのが難しい場合も多いでしょう。

 

ここでは、兄弟から連帯保証人を頼まれたときの考え方について解説します。

 

これまで見てきたように、連帯保証人には重い責任が発生します。安易な気持ちで連帯保証人になってしまうと、万が一の際に返済の義務を負い、連帯保証人の生活が脅かされることにもなりかねません。

 

なりたくないときや責任を負いきれない場合は、はっきりと断ることも大切です。リスクと本人との信頼関係を踏まえて慎重に判断しましょう。

 

冒頭でも紹介したように、賃貸物件のなかには保証会社を利用することで連帯保証人が不要となるケースもあります。保証会社とは、入居時に保証金を支払うことで、連帯保証人の代わりをしてくれる会社のことです。

 

貸主にとっても、個人ではなく法人が保証をしてくれるという安心感があるため、近年では保証会社利用可の物件は増えてきています。

 

保証会社が利用できる物件だと、無理に親族が連帯保証人を引き受ける必要がない可能性があるため、本人にその旨を伝えてみるとよいでしょう。

 

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連帯保証人の責任は重いため、以前から安易に引き受けたことによるトラブルが頻発していました。そこで、2020年の民法改正により、連帯保証人の仕組みが大きく変更され、不適切な形での契約が行われにくくなっています。

 

最後に、連帯保証人に関する主な変更点を2つに分けて見ていきましょう。

 

主たる債務者の収入や財産が分からないまま連帯保証人になるのは、リスクが大きすぎます。

 

そこで2020年の改正民法では、連帯保証人を依頼するときには依頼者本人の十分な情報提供が必須となり、不十分である場合には、連帯保証契約そのものを取り消せるようになりました。

 

たとえば、「財産や収支の状況」「その他の債務の有無や履行状況」などを明確にしないまま契約した場合は、後から取り消すことが可能です。

 

これにより、「よく分からないまま連帯保証人を引き受けてしまった」というケースは起こりにくくなると考えられます。

 

もう一つの改正点は、個人が連帯保証人を引き受ける場合は、「極度額」を決めなければ契約は無効になるというものです。

 

「極度額は○○円とする」「賃料および管理費・共益費の〇ヶ月分」など、負担上限の具体的な取り決めが必要になったため、連帯保証人が無制限に責任を負うというリスクは解消されました。

 

連帯保証人を引き受ける場合はこれらの改正点も踏まえ、当事者間でルールをていねいに決めていくことが大切です。

 

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賃貸物件における連帯保証人の役割は?

 

借主が家賃を滞納したときに、代わりに支払いの責任を負うのが主な役割です。また、原状回復費用が必要になった場合も、代わりに費用を負担する可能性があります。

連帯保証人と保証人の違いは?

 

連帯保証人には、保証人に認められている「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」がありません。そのため、実質的には債務者(借主)本人と同等の責任を負うこととなります。

2020年の民法改正で連帯保証はどのように変わった?

 

連帯保証を依頼する際には、債務者が自身の状況をきちんと明示しなければ、後から契約を取り消せることとなりました。また、連帯保証の契約時には極度額を決め、あらかじめ責任の範囲を明確にすることが義務付けられています。

 

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