賃貸物件を借りる際には、入居審査で「安定して家賃を支払えるかどうか」がチェックされます。そのため、基本的には無職のままで賃貸物件を借りるのは難しいといえます。

しかし、事情によってはやむを得ず一時的に収入が途絶え、その状況で部屋探しをしなければならないケースもあるでしょう。

今回は、無職・母子家庭(ひとり親家庭)の方が部屋探しをするうえで、どのような方法なら借りられるのか、具体的な選択肢や利用できるサポート制度を紹介します。

賃貸物件を探す家賃補助のある物件(特定優良賃貸住宅)

 

無職で賃貸物件を探す場合は、やはり「安定した収入源がない」という点がネックになります。ここでは、収入がない状態でも部屋探しを進められる可能性として、5つの選択肢を紹介します。

 

入居審査では仕事による稼ぎだけでなく、元の配偶者からの養育費も収入として認めてもらえる場合があります。

 

金額や頻度、大家さんの考え方にもよりますが、「毎月安定して支払われている」「家賃を十分に支払える金額である」などの条件を満たせば、審査ではプラスの材料になりやすいでしょう。

 

十分な預貯金があることを示せば、無職であっても入居審査に通過する可能性があります。

 

具体的な金額は物件によっても異なりますが、一般的には「家賃2年分程度」の預貯金があれば審査では有利になるとされています。

 

たとえば、家賃5万円の部屋を借りるなら、120万円程度の預貯金があれば無職でも審査に通る可能性があると考えられるでしょう。

 

養育費の一括払いや財産分与などで十分な預貯金がある場合は、不動産会社の担当者にその旨も含めて相談してみるのがおすすめです。

 

本人名義での契約が難しい場合は、親族や元の配偶者の協力を得て、代理で契約を結んでもらうという方法もあります。

 

代理契約の場合、契約者に十分な収入があれば、入居者自身に収入がなくても賃貸物件を借りることが可能です。

 

ただし、元の配偶者名義での契約は、審査で不利になってしまう可能性もあるので注意が必要です。

 

大家さんからすると、離婚した相手が必ずしも安定的に家賃を支払ってくれるとは限らないという不安が生まれるため、審査をスムーズに進めるには事情をていねいに説明する必要があります。

 

また、必然的に元配偶者も新居の住所を把握するため、離婚後も円満な関係を継続できることが前提となります。

 

「これまで生活していた拠点から実家までの距離が近い」「両親との関係性が良好」といった条件に当てはまっている場合は、一度実家に身を寄せてから体制を立て直すのもひとつの方法です。

 

新たに仕事を探すためには、連絡先と住所が必要になる場面が多いです。実家にいる状態であれば、連絡先と住所が明確になるため、仕事探しを進めやすくなるでしょう。

 

無職のまま無理に賃貸物件を探すよりも、安定した生活環境で仕事を見つけ、その後に物件探しをする方がスムーズなケースは多いといえます。

 

母子家庭の場合は、国や自治体が整えている助成金や支援制度を利用することで、入居審査が有利に運ぶ可能性もあります。

 

詳しい内容は後ほど紹介しますが、自治体によっては、家賃補助などを手厚くカバーしているケースもあるのでチェックしてみるとよいでしょう。

 

入居審査に通るためには、審査で重視されやすいポイントを知っておくことも大切です。ここでは、入居審査を受けるときに、チェックされやすいポイントを確認しておきましょう。

 

先ほどもご紹介しましたが、入居審査では家賃の支払い能力が重視されます。「安定した収入がある」、あるいは「家賃2年分に相当する十分な貯蓄がある」といった点が見られます。

 

無職の方が審査を受ける際には、今後仕事をする意思があるのか、勤務先の見通しは立っているのかも重視されます。

 

たとえば、「子どもの保育園が見つかったら仕事に出られる」「過去に働いていた就職先で雇ってもらえることが決まっている」などの事情があれば、あらかじめ伝えておくとよいでしょう。

 

賃貸物件を借りる際には、万が一家賃が払えなくなった場合に備えて、連帯保証人を立てる必要があります。

 

連帯保証人の支払い能力や信用情報も審査されるため、十分な収入のある親族がいれば相談しておきましょう。

 

なお、物件によっては連帯保証人の代わりに、家賃保証会社の利用を認めていることもあります。ただし、この場合は家賃保証会社の審査にも通る必要があるので、場合によっては不利になる可能性もあります。

 

入居審査では、入居後のトラブルを避けるために、本人の人柄やマナーなどもチェックされます。

 

これらのチェックは、不動産会社の担当者が行うのが一般的であるため、不動産会社に足を運ぶ際は身だしなみや言葉づかいにも十分な注意を払いましょう。

 

母子家庭の場合は、子どもの年齢がチェックされることもあります。

 

年齢が小さい場合は、夜泣きなどで騒音トラブルになるリスクもあるため、大家さんの考え方や物件の防音性などによっては敬遠されてしまうケースもあります。

 

審査に不安がある場合は、マイナスイメージを和らげるために、生活リズムや防音対策などを伝えておくとよいでしょう。

 

賃貸物件を探す 家賃補助のある物件(特定優良賃貸住宅)

 

母子家庭では、両親がいる子育て世帯が受けられる支援に加えて、いくつかの特別な手当・助成金を利用することができます。

 

公的な支援制度を利用することで、部屋探しをスムーズに進められる場合もあるでしょう。

 

いくつかの手当・助成金をピックアップして説明します。

手当・助成金の名前

特徴

児童扶養手当

・国の支援制度

・通常の児童手当に加え、別枠で親の所得と子どもの人数に応じた手当が支給される

児童育成手当

・自治体の支援制度

・子ども1人当たり1万3,500円/月が支給される

ひとり親家庭住宅手当

・自治体の支援制度

・住居費の一部補助が受けられる

 

児童扶養手当とは、通常の児童手当に加え、ひとり親世帯を対象に支給される国の補助金のことです。

 

金額は所得に応じて全部支給・一部支給の2通りに分かれており、全部支給の場合は1人目の子どもが「月額4万3,160円」、2人目は「月額1万190円」、3人目からは「月額6,110円」が支給されます。

 

(出典:こども家庭庁『児童扶養手当について』)

 

児童手当や児童扶養手当とは別枠で、ひとり親家庭を対象に、子ども1人当たり月額1万3,500円が支給される制度です。

 

自治体が独自で行う支援制度であり、地域によって支援の有無や内容が異なるので、お住まいの自治体の窓口で確認してみましょう。

 

ひとり親家庭を対象に、住居費に関する手当を支給する支援制度です。自治体によって取り組みの有無や名称、内容は異なります。

 

たとえば東京都世田谷区では「月額最大4万円の家賃減額」、東京都武蔵野市では「月額家賃1万円の減額」などの枠が決められています。

 

お住まいの自治体について調べる際は、児童育成手当と併せて住宅に関する支援制度がないかも確認しておくとよいでしょう。

 

無職・母子家庭で部屋探しをするうえでは、一般の賃貸物件だけでなく、公的なサポートに基づいた住宅に目を向けてみることも大切です。

 

ここでは、公的な支援を受けられる住まいの選択肢を3つ紹介します。

 

公営住宅とは、自治体が低所得者向けに貸し出している住宅のことです。大きな特徴は2つあり、そのうちの1つは「家賃が所得に応じて設定される」という点にあります。

 

所得が低い場合には、それに応じて家賃も減額されるため、収入が少ない状態でも部屋を借りられる可能性があります。

 

また、「礼金・仲介手数料・更新料が無料」であるため、トータルコストを大幅に抑えられるのもメリットです。

 

エリアによっては、住宅セーフティーネット制度を活用したひとり親世帯向け専用住宅に入居できる場合もあります。

 

たとえば、JKK東京(東京都住宅供給公社)が提供する世田谷区の専用住宅では、部屋探しが難しいひとり親世帯を対象に、通常よりも安い家賃で賃貸が行われています。

 

家賃の減額分は、住宅セーフティーネット制度に基づいて世田谷区が国に支払う仕組みとなっているため、サポート制度が安定しているのが特徴です。

 

母子生活支援施設とは、社会福祉法人の「全国母子生活支援施設協議会」が運営する施設のことであり、生活が厳しい母子家庭の保護・支援を目的としています。

 

独立した居室で生活でき、利用料は所得に応じて決まるため、一時的に身を寄せる場として活用されるケースが増えています。

 

さらに、施設には専門的な知識を持った支援員や指導員がいるため、生活やDVに関する支援なども行ってくれるのがメリットです。

 

自治体の福祉事務所が窓口になっているため、まずは窓口に足を運び、住まい探しが難しい状況などを相談することが大切です。

 

(参考:全母協『母子生活支援施設について』)

 

母子家庭はさまざまな理由から部屋探しに苦労してしまうことも多いため、初めから理解のある不動産会社に協力を依頼するのもひとつの方法です。

 

ひとり親世帯に理解のある不動産会社なら、行政の手続きや審査のポイントなどにも明るいため、安心して相談することができるでしょう。

 

LIFULL HOME’Sの「FRIENDLY DOOR」というサービスでは、部屋探しをしたいエリアを絞り込み、ひとり親世帯に理解のある不動産会社を簡単に見つけることができます。不動産会社探しにぜひご活用ください。

 

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無職・母子家庭で賃貸物件を借りるにはどんな方法がある?

 

基本的には無職のままで賃貸借契約を結ぶのは難しいため、「養育費を収入とする」「十分な貯蓄があることを示す」「収入のある親族などに代理で契約してもらう」「実家に戻って生活環境を立て直す」といった方法が考えられます。また、「自治体の支援や助成金を活用する」ことも検討してみるとよいでしょう。

 

母子家庭が受けられる助成金や支援制度にはどんなものがある?

 

国が行う支援としては、通常の児童手当や児童扶養手当が挙げられます。また、自治体独自の制度として「児童育成手当」や「ひとり親世帯住宅手当」などが扱われていることもあります。

 

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