賃貸物件で突然立ち退きを求められたら、驚きや不安を感じるのは当然です。「引越し費用はどうするのか」「新しい住まいは見つかるのか」「立ち退き料はいくらもらえるのか」などといった疑問が次々と浮かんでくることでしょう。

一方で、立ち退き料には相場や法的な根拠が存在し、交渉を通じて入居者の負担を軽減できる可能性があります。

この記事では、立ち退き料に関する基本情報から相場、交渉方法まで解説します。立ち退きを求められ、不安を抱えている人はぜひ参考にしてください。

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立ち退き料とは、土地や建物の所有者(賃貸人)が入居者に退去を求める際に支払う金銭のことで、以下のような項目が含まれます。

  • 引越しにかかる費用
  • 移転作業の手間賃
  • 新しい住居を探すための費用

たとえば、移転後の新居で家賃が現在より高くなる場合、差額を一定期間補填するケースや、移転先で必要となる家具の購入費が補償対象となるケースがあります。

 

立ち退き料は、入居者が退去に伴う経済的負担を軽減することを目的として支払われるものです。

 

立ち退き料には、借地借家法第28条において明確な法的根拠が存在し、条文にある「財産上の給付」が立ち退き料のことです。

第二十八条

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

引用:借地借家法第28条

所有者が正当事由に基づいて立ち退きを求める場合、入居者に対して「財産上の給付」を行う義務が定められています。入居者の権利を保護し、所有者が一方的に退去を強要することを防ぐ役割を果たしています。

 

たとえば、立ち退きが求められる理由が賃貸物件の老朽化や建替えであった場合、所有者は入居者が新たな住居を確保するための適切な補償を行わなければなりません。

 

この法的根拠があることで、入居者は不利益を最小限に抑えながら安心して交渉を進めることが可能です。さらに、法的な正当性を主張することで、所有者から適切な補償を受け取るための強力な支えとなるでしょう。

 

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ここからは、立ち退き料の具体的な計算方法と相場について詳しく解説します。

 

立ち退き料の金額は、以下の要素が考慮されたうえで所有者と入居者の話し合いによって決定されるのが一般的です。

  • 引越し費用
  • 移転にかかる実費
  • 移転先の賃料差額

引越し費用には、運送会社への支払いだけでなく、新居での生活を整えるための初期費用や、不用品の処分費用が含まれることがあります。

 

さらに移転にかかる実費として、新居を探すための交通費や不動産仲介手数料、引越し時に必要となる諸手続きにかかる費用などが必要です。

 

また、移転に伴い発生する賃料差額については、移転先の家賃が現在の家賃より高くなる場合、その差額を一定期間補填する形で支払われます。

 

たとえば、現在の家賃が月10万円で移転先が月12万円の場合、月々の差額2万円を6ヶ月分補償する内容です。

 

立ち退き料の相場は、物件の種類や地域、立ち退きの理由によって大きく変動します。一般的な相場は以下のとおりです。

  • 住居:数十万円から百万円程度
  • 店舗・事務所:数百万円から数千万円

住居の場合、家賃や立地、建物の状態などが立ち退き料の金額に影響を与えます。

都市部の高額家賃の物件

引越し費用や移転後の賃料差額が補償に含まれるため、立ち退き料が高額

地方の物件

家賃や物件価値が低く、移転先のコストも抑えられるため、立ち退き料が比較的低額

店舗や事務所の場合は、営業利益への影響や設備の移設費用などが考慮されるため、住居よりも立ち退き料が高額になることが一般的です。

 

特に都心部の商業用物件では立地価値が高いことから、数千万円規模の立ち退き料が支払われるケースも見られます。

 

立ち退き料は、すべてのケースで必ず支払われるわけではありません。正当事由の有無や契約内容により、支払いが発生しない場合もあります。

 

ここでは、立ち退き料をもらえるケースともらえないケースについて解説します。

 

立ち退き料を受け取れるケースは、以下のとおりです。

  • 建物の建替えや大規模修繕が必要な場合
  • 道路拡張や再開発など公共性の高い理由がある場合
  • 所有者に正当事由が認められない場合

建物の老朽化による建替えや修繕では、入居者の生活が大きく影響を受けるため、引越し費用や新居の初期費用などを補償する形で立ち退き料が支払われます。

 

また、道路拡張や再開発といった公共性の高い事業の場合でも、入居者が受ける影響を考慮して補償が行われることが一般的です。

 

さらに、所有者が正当事由を明確に示せない場合でも、円満に立ち退きを進める目的で立ち退き料が支払われることがあります。

 

立ち退き料を受け取れないケースは、以下のとおりです。

  • 契約違反をしている場合
  • 定期借地契約や定期建物賃貸借契約を満了した場合
  • 正当事由が認められる場合

たとえば、入居者が家賃を長期間滞納していたり、契約で禁止されている用途で物件を使用していたりする場合、所有者が立ち退きを求めても補償の義務は生じません。これらは入居者の責任に該当するため、補償の対象外となります。

 

また、定期借地契約や定期建物賃貸借契約では、契約締結時点で契約満了後の立ち退きが前提とされているため、所有者は特別な補償を行う義務を負いません。入居者としては契約満了の時期を事前に把握し、準備を進めることが求められます。

 

さらに、正当事由が認められる場合も、立ち退き料が支払われないことがあります。

 

正当事由の例

建物の老朽化が進み、安全性が著しく損なわれている場合

所有者自身がその物件を居住用として使用する必要がある場合

所有者が提示する立ち退き料が、入居者の損害を十分に補っている場合

このような場合、所有者が立ち退きを求めることには法律上の根拠があるため、立ち退き料の支払いが不要とされるケースがあります。

 

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契約期間内に立ち退きを求められた場合、まずは要求の正当性を確認しつつ、所有者と条件について話し合うことが重要です。特に、立ち退き料の額や引越しスケジュールなどを交渉し、お互いに納得できる形で合意することが求められます。

 

契約期間中の立ち退き要求には借地借家法に基づく正当事由が必要であり、これがない場合、所有者は入居者に対して強制的に退去を要求できません。

 

ただし、正当事由が認められた場合でも、補償内容や条件が妥当であるかどうか慎重に確認する必要があります。所有者と交渉する際には、契約内容を理解し、専門家の助言を受けることも重要です。

 

立ち退き料には正当な理由が必要であり、状況次第で大きな金額になる場合もあります。まずは契約内容を確認し、自分の権利を理解することが重要です。

 

また、納得できる条件で合意するためには冷静に交渉し、専門家のアドバイスを活用しましょう。適切な知識と準備があれば、不安を解消し、前向きな引越しの計画を立てられます。

 

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