賃貸物件でペットを飼育する際には、さまざまな面で通常とは異なるルールが適用されます。「敷金償却」もその一つであり、主として賃貸物件でペットの飼育を許可する際などに用いられる特約を指します。

今回は敷金償却の基本的なルールと、ペットの飼育条件として採用されやすい理由、トラブルを避けるための注意点をまとめて見ていきましょう。

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敷金償却の仕組みについて、ここでは敷金の意味も確認しながら見ていきましょう。

そもそも敷金とは、賃貸物件を借りる際に貸主に預ける担保のようなお金を指します。入居後に「家賃の支払いが滞った」「借主の使い方が原因で部屋のキズや汚れ、設備の故障が生じた」という場合に、損失をスムーズに補填することを目的として支払います。

 

敷金はあくまで「預け金」であるため、退去時の原状回復でこれといった問題がなければ、そのまま返還されるのが前提です。また、借主が原因のキズや汚れ、故障などを修繕する場合も、修繕費が敷金内で収まるのであれば、差額は手元に返ってきます。

一方、敷金償却とは、敷金のうちあらかじめ指定された分が返金されない特約のことです。敷金償却された金額は、原状回復のために用いられることを前提としています。

 

たとえば、「敷金家賃3ヶ月分・敷金償却家賃1ヶ月分」という条件であれば、少なくとも家賃の1ヶ月分は徴収されることとなります。そのうえで、原状回復にかかった費用を踏まえて、残りの家賃2ヶ月分の敷金から残りが返金されるということです。

 

たとえ修繕費用などが発生しなかったとしても、最初に支払った金額が戻るわけではなく、この点が敷金償却の大きな特徴といえます。なお、西日本では慣習として敷金償却を「敷引き」、敷金を「保証金」と表現することも多いです。

従って、西日本では契約時に「保証金」として家賃の数ヶ月分を支払い、そのうちの一部が「敷引き」として償却されるため、実質的には敷金償却のある賃貸借契約であると解釈できます。

 

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冒頭でも触れたように、敷金償却はペットを飼育する際の条件として採用されることも多いです。ここではその理由について解説します。

ペットの飼育許可は、貸主からすると「ニオイ・汚れ、キズ」の発生リスクが大きい側面があります。通常と比べて、ニオイの除去やキズの補修費用が高くなりやすいため、退去時の費用負担がたびたびトラブルの原因となっています。

 

そこで、原状回復費用を確保する手段として用いられるのが敷金償却です。敷金償却を導入すれば、修繕や清掃に必要と想定される費用を入居時に回収できるため、貸主としては安心感が強いといえるでしょう。

敷金償却には、貸主の考え方によってさまざまなパターンがあります。たとえば、ペット可の物件でも基本的には通常の敷金と同じ仕組みを導入し、ペットを飼育する入居者のみにペット敷金を別途請求するというケースです。

 

そして、ペット敷金については「明け渡し時に全額を償却する」と契約書に盛り込むことで、ペットを飼育しない入居者とのバランスをとるのが狙いです。また、飼育頭数が多い場合などには、状況に応じてさらに家賃数ヶ月分を敷金償却に加えるということもあります。

 

敷金償却については、特に「こうしなければならない」という決まりがないので、物件ごとのルールを確認しておきましょう。

敷金償却については、貸主と借主の間で認識のズレが生じやすく、思いもよらないトラブルに発展してしまうこともあります。ここでは、具体的な事例をもとに、敷金償却の取り決めがどのように影響するのかを見ていきましょう。

事例の概要

  • 借主は犬の飼育を条件に敷金の全額(10万円分)償却の同意をした
  • 借主は「部屋にキズをつけていない」「犬はカゴに入れて飼っていた」と主張し、敷金の返還を求めた
  • 借主による部屋の使い方や清掃に問題はなかった

これは、契約時に敷金償却特約を結んでいたところ、退去時になって借主が返還を求めたという事例です。部屋の使い方に問題なく、清掃もきちんと行われていたものの、返還は認められるのでしょうか。

この事例では、事前に敷金の全額償却の同意があったことと、その金額が10万円と適正な範囲内であることから、返還は認められないと考えられます。仮にカゴから一切出さずに飼育していたとしても、ニオイや毛が飛び散る可能性は否定できず、消臭や消毒は必要といえます。

 

さらに、場合によってはクロスの張り替えなども行わなければならない可能性があるため、10万円の敷金償却は妥当といえるでしょう。

一方、原状回復の際に超過分の費用が発生したとしても、すでに敷金償却が行われているので、基本的には新たな請求ができないと考えられます。この事例の敷金償却には、「ペット飼育によるリスクを10万円でカバーする」という意味があるため、特別な損害が出ていない限り、敷金償却の範囲以上の請求はできないといえるでしょう。

 

ただし、ペット以外の借主の故意・過失については、別途で請求される可能性はあります。このように、敷金償却はペットの飼育による責任の範囲と限度が明らかになるという点で、借主を守る性質も持っているのが特徴です。

 

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最後に、賃貸物件でペットを飼育するうえで、トラブルを避けるために押さえておきたい注意点を確認しましょう。

まずは、物件を借りる際に取り交わす賃貸借契約書の内容をきちんと確認することが大切です。何かトラブルが発生すれば、契約書の内容に沿って対応が進められるので、事前に目を通しておくと安心です。

 

同じペット可の物件でも、飼育できるペットの種類や数、敷金償却の有無、守らなければならないルールは異なるので、必ず契約書を確認しておきましょう。

契約書にはやや難しい言葉や表現も含まれるため、不明な点があれば、遠慮をせずに不動産会社の担当者に尋ねることが大切です。また、飼育したいペットの種類や数が決まっている場合は、部屋探しの段階で担当者に相談し、一緒に物件を見つけてもらうのも一つの方法です。

契約違反を行った場合は、敷金償却以上の費用を請求されても拒否できない可能性があります。たとえば「途中で頭数が増えてしまった」「飼育許可は小型犬のみとされているにもかかわらず猫を飼った」といった場合には、違約金とともに状況に応じた損害賠償を請求される可能性もあるので避けましょう。

賃貸物件で安心してペットを飼うためには、ペット飼育に理解のある物件を探すのが近道です。ペットの飼育を前提にした物件であれば、他の入居者も同じような条件であるケースが多く、近隣トラブルに発展するリスクが軽減されやすくなります。

 

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最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:敷金償却とは?

A:本来は預かり金である敷金の一部または全額を退去時に償却し、借主に返還しないという仕組みです。貸主からすれば、原状回復に必要な費用をあらかじめ確実に回収できるという狙いがあります。

Q:ペット飼育で敷金償却が用いられやすい理由は?

A:ペットの飼育はキズや汚れ、ニオイなどのリスクが高く、退去時の費用をめぐってトラブルが起こりやすいのが特徴です。そこで、トラブルを避けて確実に費用を確保する仕組みとして、敷金償却が導入されている物件も少なくありません。

 

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更新日: / 公開日:2025.02.22