賃貸物件に入居するためには、初期費用として家賃の数ヶ月分を用意しておく必要があります。
しかし、急な引越しが必要になった場合などでは、資金面にゆとりがないといったケースも十分に考えられます。
今回は一人暮らしの新生活をスタートさせるのに最低でいくら必要なのか、初期費用を抑えるコツも併せて見ていきましょう。
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初期費用にはどんなものがある? 具体的な内訳と費用の目安

初期費用にはさまざまな項目があり、入居前にまとめて支払う必要があります。ここではまず、初期費用の主な内訳や費用の目安を詳しく見ていきましょう。
敷金・礼金
初期費用のうち、もっとも大きな割合を占めるのは「敷金と礼金」です。どちらも家賃を基に計算され、賃料の0~2ヶ月分とされるのが一般的です。
敷金とは、家賃の滞納や退去時の原状回復費用に充てられるお金であり、差し引きされる事項がなければ、最終的には手元に戻ってきます。
一方、礼金は貸主に対する謝礼金に当たり、手元に戻ってきません。
前家賃・日割り家賃
賃貸物件に入居する際には、「前家賃」として事前に翌月分の家賃を支払います。ただし、入居のタイミングや不動産会社によっては、初期費用の段階では不要なケースもあるため、事前に担当者への確認が必要です。
一方、「日割り家賃」は入居する月の家賃のことであり、家賃を入居日から月末までの日数で割って求めます。その際、家賃には管理費や共益費も含めて計算します。
計算式
「日割り家賃=家賃(管理費・共益費込み)÷入居月の日数×入居日数」
たとえば、家賃が管理費込みで6万円の場合、月(30日)で割ると、1日当たり2,000円。21日に入居した場合は、残り10日分として2万円が日割り家賃としてかかります。
仲介手数料
仲介手数料は、物件紹介や契約書作成等の仲介業務をしてくれた不動産会社に支払うお金です。上限は法律で「家賃1ヶ月分+消費税(※)」と定められており、多くの場合は家賃の0.5~1ヶ月分+消費税とされています。
※長期にわたる空き家物件の場合は「長期の空家等の媒介特例」に伴い、仲介手数料の上限が「家賃2ヶ月分+消費税」となります。ただ、上乗せ分は貸主からの受取分に限定されるため借主への影響はありません。※2024年7月1日より適用
初期費用は家賃の5~6ヶ月分が目安
初期費用の主な項目を表でまとめると、以下のとおりになります。
敷金 | 0~2ヶ月分 |
|---|---|
礼金 | 0~2ヶ月分 |
前家賃 | 1ヶ月分 |
日割り家賃 | ~1ヶ月分 |
仲介手数料 | 0.5~1ヶ月分+消費税 |
火災保険料 | 約2万円 |
鍵の交換代(消費税込) | 約2万円 |
これら項目に加えて、保証会社を利用する場合は、別途で保証料がかかることもあるため注意しておきましょう。
初期費用は家賃を基に計算される項目が中心であるため、賃料に応じて大きく変化します。細かな条件によっても異なるものの、家賃の5~6ヶ月分が相場です。
初期費用は最低いくらかかる? 引越しに必要なお金のシミュレーション

最終的な初期費用は、項目ごとの細かな条件によって大きく異なります。ここでは、いくつか条件を変えながら、具体的な費用をシミュレーションしてみましょう。
なお、今回は国土交通省が公表している平均家賃「7万8,069円」を基に、家賃を7万8,000円として計算していきます。
また、共通の条件として、どのパターンも「30日ある月の16日に入居」「鍵の交換代と火災保険料は2万円ずつ」を前提に算出します。
敷金と礼金、仲介手数料が各1ヶ月分の場合
まずは、標準的なケースを例に挙げて、具体的な初期費用を見ていきましょう。
敷金と礼金、仲介手数料がそれぞれ1ヶ月分となっている場合、最終的な初期費用は以下の表のとおりです。
敷金 | 7万8,000円 |
|---|---|
礼金 | 7万8,000円 |
前家賃 | 7万8,000円 |
日割り家賃 | 3万9,000円 |
仲介手数料(消費税込み) | 8万5,800円 |
火災保険料 | 2万円 |
鍵の交換代(消費税込み) | 2万円 |
合計 | 39万8,800円 |
合計は39万8,800円となり、家賃のおよそ5~6ヶ月分であることが分かります。
あくまで目安であるものの、平均的な家賃の物件に住む場合は、このくらいの初期費用を用意しておく必要があると考えられます。
敷金と礼金なし、仲介手数料が半額の場合
次は、前の例と比べて極端に初期費用を抑えられるパターンを想定して、実際に計算してみましょう。
敷金 | 0円 |
|---|---|
礼金 | 0円 |
前家賃 | 7万8,000円 |
日割り家賃 | 3万9,000円 |
仲介手数料(消費税込み) | 4万2,900円 |
火災保険料 | 2万円 |
鍵の交換代(消費税込み) | 2万円 |
清掃費(消費税込み) | 4万円 |
合計 | 23万9,900円 |
まず、敷金と礼金がかからないため、どちらも0円で計算されます。
ただし、敷金がない物件では、代わりに清掃費が必要となる場合も少なくありません。具体的な費用は部屋の広さなどによって異なりますが、今回は目安として4万円に設定しました。
さらに仲介手数料が0.5ヶ月分となった場合は、合計が23万9,900円となり、家賃の3ヶ月分程度まで抑えることができます。
このように、初期費用は条件によって大きく変動するため、項目ごとの費用を具体的に確認していくことが大切なのです。
一人暮らしにぴったりな物件 敷金礼金0(ゼロ・なし)物件できるだけ安く抑えたい…契約に必要な初期費用は20万円以内に収まる?

新生活を始めてからは、毎月の生活費を確保しながら安定的に家賃の支払いを続けなければなりません。そのため、貯金のすべてを初期費用に充てるのではなく、ある程度の余力を残しておきましょう。
家賃を抑えることが初期費用を抑える基本
初期費用を安くするうえで基本となるのは、何よりも家賃を抑えることだといえます。
住宅市場動向調査によれば、家賃の全国平均は7万8,069円となっているものの、約半数が家賃7.5万円未満の物件に住んでいるといったデータも出ているのです。
東京都23区内でも、平均より安い賃料の物件を見つけることは決して難しくありません。
また、敷金・礼金なしの物件を見つける、仲介手数料の少ない不動産会社を探すといった方法もあります。
初期費用を20万円以内に収める例
今回は「6.5万円のワンルーム」を借りるケースを想定して、初期費用が20万円以内に収まるかどうかシミュレーションしてみましょう。まず、「敷金・礼金ゼロ」「仲介手数料半額」の条件を設定します。
また、日割り家賃の発生を可能な限り少なくするために、月の最終日(30日)に入居することにしましょう。すると、合計は以下の表のように18万2,917円となりました。
敷金 | 0円 |
|---|---|
礼金 | 0円 |
前家賃 | 6万5,000円 |
日割り家賃 | 2,167円 |
仲介手数料(消費税込み) | 3万5,750円 |
火災保険料 | 2万円 |
鍵の交換代(消費税込み) | 2万円 |
清掃費(消費税込み) | 4万円 |
合計 | 18万2,917円 |
あくまでも一例にすぎないものの、初期費用を20万円以内に収めることも不可能ではありません。
家賃・賃料7万円以下の物件引越し料金と家具・家電費用を安く抑えるコツ

初期費用としては、入居に必要な費用だけでなく、引越しにかかるコストにも目を向けておく必要があります。ここでは、引越し料金と家具・家電購入費用を抑えるコツを見ていきましょう。
引越し費用の相場と安く抑える方法
引越し費用を左右するポイントは「荷物量」と「時期」です。初めての一人暮らしの場合、すでに単身で生活をしていた人と比べて、荷物の量が少ないのが一般的だといえます。
そのため、比較するとコストは安く抑えられるケースが多いです。また、時期については2~3月の繁忙期に比べて、梅雨や夏の閑散期の方が安くなります。
具体的な相場は3万円程度とされており、荷物量や距離が増えたり、細かな時間指定などをしたりすると料金が高くなります。費用を抑えるためにも、まだ家具や家電をそろえていない場合には、引越し先で購入するように意識しておきましょう。
家具・家電を安くそろえる方法
家具・家電を安く手に入れるためには、複数の家電量販店の価格を調べて、相場を確かめておくことが重要です。
また、あまりグレードの高いものを選ぶよりも、必要な機能だけを見極めて、最低限のものを購入しましょう。
特に、初めての一人暮らしにおいては、実際に使ってから必要以上に高いものを購入してしまったと感じるケースも少なくありません。
新品へのこだわりがないものについては、リサイクルショップやフリマアプリなどで目当ての商品を探してみるのもひとつの方法です。
引越し料金の見積もりをする 家具付き・家電付きの物件初期費用は分割払いもできる? 具体的な方法と知っておくべき注意点

物件によっては、初期費用の分割払いに応じてもらえることもあります。どうしても一括で用意ができない場合には、分割払いを検討してみるのもいいでしょう。
しかし、その際には注意しておかなければならないポイントもあります。
初期費用の分割払いに関する注意点
初期費用の分割払いは、すべての物件や不動産会社で認められるわけではありません。場合によっては、分割が認められる項目が限定されていたり、クレジットカード払いのみに限られていたりすることもあります。
そのため、支払い方法とともに、どの範囲まで分割払いが認められるのか、必ず事前に確認しておきましょう。
また、分割払いを選択した場合、入居してからの金銭管理に細心の注意が必要となります。家賃のほかに分割払い分のお金を用意しなければならないため、計画的に残高を管理する必要があるのです。
特に、クレジットカード払いの場合は、決済から遅れて請求がくる点にも目を向けておきましょう。
クレジットカード利用可能物件初期費用の仕組みとコストを抑えるポイントを知っておこう

- 初期費用にはさまざまな項目があり、相場の目安は家賃の5~6ヶ月分
- 同じ賃料であっても、細かな条件によって初期費用には大きな差が生まれる
- コツを押さえれば、一人暮らしの初期費用を20万円以内に抑えることも可能
- 引越し料金や家具・家電購入費用を抑えることも意識しておく
- 分割払いを行う場合には細心の注意を払う
更新日: / 公開日:2021.01.29










