自己破産を検討している人の中には、生活が立ち行かなくなり、アパートやマンションの家賃を滞納してしまっているケースもあるでしょう。

そして、自己破産した場合に、滞納した家賃が含まれるかどうかで今後の生活プランも変わってくるため、詳しく知りたい大事なポイントだと思います。

そこで今回は、アディーレ法律事務所の弁護士・谷崎翔先生に「自己破産時に滞納した家賃も含まれるのか」について解説してもらいました。
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まず「自己破産」とは、財産や収入が不足して、借金などの債務を返済する見込みがないことを裁判所に認めてもらい、原則として法律上、債務の返済義務が免除される手続のことです(これを「免責」といいます)。

 

そのため、自己破産が認められれば、債務の返済に追われることなく、収入を生活費に充てることができます。近年では、個人の方が金融機関からの借金を返せなくなり、自己破産することもあります。

 

自己破産をした場合に免除される債務には、借りたお金だけではなく、商品を購入した際の代金や部屋を借りた際の賃料なども含まれます。

 

つまり、滞納した家賃についても、自己破産手続により免除を受けることが可能です。

 

ただし、破産手続で免責される家賃は、“破産手続開始決定”がされるときまでに滞納していた家賃に限られます。破産手続開始決定後の家賃は、通常通り発生するので、支払っていく義務があります。

 

 

いつ破産手続開始決定がされるかですが、弁護士が裁判所に破産手続を申立て、裁判所が書類をチェックして不備がなければ、破産手続開始決定がされることになります。

 

なお、東京地方裁判所では非常に多くの破産事件が申立てられることから事件を定型的に処理しており、申立書の提出から3営業日以内に弁護士が裁判所に出向き、裁判官と面接して事件の方向性を打ち合わせます(「即日面接」といいます)。

 

個人の自己破産手続には、“同時廃止事件と“管財事件”の2種類があり、同時廃止事件の場合には、原則として即日面接日の午後5時付、管財事件の場合には原則として即日面接日の翌週水曜日の午後5時付で破産手続開始決定がされるというスピード感のあるスケジュールとなっています。

 

いつ破産手続開始決定がされるのかは大事なポイントなので、弁護士とよく打ち合わせをしておくことが大切です。

 

家賃滞納があり、連帯保証人がついている場合には、本人が滞納した家賃は連帯保証人に請求されることになります。

 

自己破産で滞納家賃が免責された場合であっても、連帯保証人に対する請求が免責されることはありません。そのため、家賃保証会社ではなく親族や知人が連帯保証人となっている場合には注意しましょう。

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水道光熱費とは、一般的に電気料金、ガス料金、水道料金を指します。このうち電気料金とガス料金の滞納については、破産手続開始決定時までに滞納している分は免責の対象となるため支払義務を免れます。

 

水道料金については特殊な取り扱いがされており、上水道料金については免責の対象となり、下水道料金については税金や社会保険料と同じように免責の対象とはなりません。そのため下水道料金だけは支払義務が残り続けることになります。

 

なお、破産手続により電気やガス料金の滞納が免責された場合に、電気やガス、水道を止められないか不安になるかもしれません。

 

しかし、破産手続開始決定がされた後は自己破産申立の前に発生した滞納料金が支払われないことを理由として電気、ガス、水道の供給を止めてはいけないと法律(破産法55条1項)で定められているため、水道光熱費の滞納について免責を受けても、ライフラインが止められることはありません。

 

部屋を借りる際に、家賃1~2ヶ月分程度の敷金を支払っている場合、自己破産して部屋を出る際に敷金は戻ってくるのでしょうか?

 

敷金は家賃滞納が生じたときの担保として要求されるものであるため、賃借人が破産する場合にも、通常どおり滞納家賃や原状回復費用と相殺され、残額があった場合には返却されます。

 

なお、仮に敷金が戻ってきたとしても、破産手続では99万円を超える現金を保有している場合には、破産管財人(裁判所によって選任された破産手続を監督する中立の立場の弁護士)により99万円超過分の現金が処分されます。

 

そのため、高額の敷金が戻ってくる場合には、弁護士に申告してその取り扱いについてよく協議しましょう。

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では、部屋を自身の不注意によって汚したり、傷つけてしまったりして敷金以上の原状回復費用が発生した場合には、原状回復費用を支払う必要があるのでしょうか。

 

破産手続開始決定前に部屋を退去して原状回復費用が発生している場合には、この原状回復費用も破産手続の中で処理されることになり、免責決定の対象となるため支払う義務はなくなります。

 

一方で家賃と同様に、破産手続開始決定後の原状回復費用については、免責の対象とならないため、敷金を超えた金額があれば支払う必要があります。

 

まとめ

・自己破産時にこれまで滞納した家賃も含まれる

・免責となるのは破産手続開始決定時までに滞納していた家賃に限られる

・破産手続開始決定後の家賃は、通常通り支払いが発生する

・破産手続開始決定がいつなのか弁護士と話し合い、把握しておく

・自己破産で滞納家賃が免責されても、連帯保証人に対する請求は免責されない

・滞納した水道光熱費も破産手続開始決定時までの分は免責対象

・敷金は滞納家賃や原状回復費用と相殺され、残額があった場合には返却される

・破産手続開始決定前に部屋を退去して発生した原状回復費用も免責対象

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